学園艦が鎮守府に着任しました   作:G大佐

41 / 54
おはようございます。前回のシリアスとはうって変わって、今回は(ある意味)皆様お待ちかねの回になるかと思います。

それでは、どうぞ。


虚栄の終わり

 横須賀鎮守府にて。

 

「ぜ、全滅……? 大本営直属の航空部隊が、一体の“姫”に全滅……!?」

 

 同志からの報告を受けた少将は、航空隊全滅の報告を受けて、青褪めていた。

 

「対空に特化した姫だと? 新種の個体という訳なのか……? そ、その姫と学園艦娘どもはどうなった! 姫一体だけではなく、他にもflagship級の敵艦がいただろう!! 攻撃隊とは別の偵察機を飛ばして、状況を記録してる筈だ!」

 

 そのような事がある筈ないと、少将は顔を真っ赤にして怒鳴る。だが、次の報告を受けて、受話器を持つ手がワナワナと震えた。

 

「轟沈後に“ドロップ”だと!? それも全個体が高レベル!? 貴様は俺をバカにしてるのか!? ドロップから生まれる艦娘は一体だけだ! 複数がいっぺんにドロップするなどあり得ない!! 高レベルであることもだ!!」

 

 そうは言われても、事実を報告するしかない。少将の部下は声を震わせながら続けた。

 

「つまり、学園艦娘どもは無傷だと……そう言いたいのだな……?」

 

 少将は大きくため息を吐いた。そのまま椅子に座り込む。

 

「もう良い……。報告は結構だ」

 

 受話器を乱暴に置くと、頭を抱えて考え込む。

 

(どうすれば良い!? このままでは、学園艦娘を救出できたどころか、ドロップ艦も手に入れ、新個体の深海棲艦の情報も入手できたという事で、横須賀提督の一人勝ちになってしまう! それは、彼に指揮権を与えた元帥と中将にも好印象を与えることになる!)

 

 冷や汗がダラダラと流れ、白い軍服の背中部分は汗で大きく染みが出来る。

 

(いっそ、航空戦力を持つ各鎮守府に出撃命令を出して、再び攻撃させるか!? いや、それだけでは駄目だ。潜水艦娘たちによる雷撃……雷撃機をもってしても沈まないのならば連合艦隊を組ませての攻撃を……! いや、それでさえ通じるかどうか……!)

 

 それどころか、日本の防衛力を一気に低下させてしまうことに気付かないあたり、この少将と言う男が、今この時どれだけ自分の事しか考えていないかが分かるだろう。

 

「これは夢だ……! 俺は夢を見ているんだ……!」

 

 

「残念ながら、これは現実だ」

 

 

「っ! げ、元帥……。中将に横須賀提督まで……!」

 

 執務室に現れたのは、元帥に中将、横須賀・佐世保・呉の三人の提督だった。

 

「作戦指揮権の強奪に、航空部隊の独断出撃、それによる戦況の悪化……」

「それだけではない。提督たちへの不当な拘束、近隣に勤める憲兵の勝手な異動……。随分と派手にやってくれたな、少将」

「くっ……!」

 

 少将は悔しさで表情が歪む。そこへ、元帥が合図をかけた。

 

「憲兵! この男を連行しろ!」

 

 執務室へ、元帥らと同派閥の憲兵隊が突入し、少将を拘束しようとする。だが、最後の悪あがきと言わんばかりに、彼は暴れ始めた。

 

「触るな! 憲兵如きが俺に触るなぁ! 元帥! 元はと言えば貴様がぁぁ!」

 

 憲兵たちの手を振り払い、手に拳銃を持って元帥へと突進する少将。

 

「元帥っ!」

 

 中将と提督たちが慌てて庇おうとするが、目にも止まらない速さで何者かが割込み、少将の拳銃を持つ手をはたいて、銃を床へと落とす。そのまま流れるように彼の腕をつかみ、一本背負いが決まった。

 

「がっ、ああぁっ!」

「お前の配下と、お前の指示で動いた憲兵隊。彼らは儂の部下が拘束させてもらったぞ」

「貴様は……!」

「しがない運転手だよ」

 

 運転手に取り押さえられた少将は、勝ち目が無くなったことを悟り、ガックリと項垂れた。

 

 

 

 

 

 憲兵に連行されていく少将を見送ると、元帥たちは横須賀提督たち三人へと向き直る。

 

「すまなかった。儂らがより強く警戒していれば、このような事にはならなかった……」

「頭をお上げください、元帥! 我々を助けてくださったことには、感謝しています!」

 

 自分達が許可しない形で航空隊が発進したことを知った元帥たちは、指揮権を持っているはずの横須賀提督に何かあったことを察した。さらに反対派の憲兵隊までもが動いたことを知った彼らは、元憲兵隊長である運転手にも連絡した。

 残念ながら、航空隊による爆撃などは止めることが出来ず、結果として大洗達は悲しい思いをすることになる。

 

「あの、少将たちはどうなるのでしょうか……」

「先ほども言ったように、彼はやり過ぎた。指揮権の強奪、君たちへの不当な拘束、先程の抵抗は殺人未遂と捉えてもおかしくない。さらに、航空隊の独断出撃に、戦況悪化と、戦力損失の責任もつくだろう」

「その事を認めていた他の士官たちも、軍法会議に掛けることになる。重罪は免れないだろう」

「そして儂らには、監督不行き届きという責任がつく。だが、儂らは受け止めるつもりだよ」

 

 少将へ罰を与えた上で、自分たちも責任を取る。元帥たちはそう言ったのだ。

 

(私たちのために動いてくれたというのに……)

 

 横須賀提督たちが悔しい思いでいると、無線が入った。彼は急いで応答する。

 

「リーナ達か! 申し訳ない! こちらでもトラブルが発生し……え?」

 

 リーナから受けた報告に、彼は驚いた。

 

「建造装置を使わせてほしい、だと?」

 

 その言葉に、一同は顔を見合わせるのだった。

 




あんまりキッツい罰を具体的に書いちゃうと「それ、組織としてどうなの?」となりそうなので、厳罰が下されることを示唆するような感じになりました。そうですね……後の罰は皆様の脳内でお願いします。

さて、何やらリーナさん達から依頼があったようですが、果たして……? 気付いたとしても、ネタバレ防止のために、感想欄にはあまり書かないで下さい。お願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。