さて、今回はサブタイトル通りハロウィンネタです。学園艦娘たちが仮装をするようですよ?
それでは、どうぞ!
秋も深まり、肌寒さも感じ始める季節。横須賀鎮守府はまたもやお祭りの空気になっていた。今日は10月31日……ハロウィンである。
鎮守府内の廊下には、駆逐艦の娘たちが折り紙や色紙などで作ったコウモリや、ジャック・オー・ランタン、お化けなどが飾られている。そして鎮守府の入り口近くには、オレンジ色のカボチャで作られた本物のジャック・オー・ランタンが飾られていた。これは、学園艦娘『大洗』が鎮守府の農園で育てていたカボチャである。ランタン製作には駆逐艦だけでなく巡洋艦たちも協力した。
さて、そんなハロウィン一色の横須賀鎮守府だが、艦娘たちはコスプレを楽しんでいた。魔女や幽霊、少しメイクを施してゾンビ風にしたりアニメや漫画のキャラクターを真似るなど、思い思いの仮装をしている。
「俺のは少し地味すぎたか……?」
そうボヤくのは、横須賀提督である。彼もコスプレをしていた。
白い軍服から黒い軍服に、肌はおしろいを艦娘から借りて白くし、カラーコンタクトも入れて赤目にしている。彼のテーマは『深海棲艦の提督』であった。クールな雰囲気を見せ、艦娘たちからは密かに好評なのを彼は知らない。
そこへ声をかける者がいた。提督が振り向くと、深海棲艦のチ級の仮面が視界に入る。
「ヨォ、提督……」
「どわぁぁ!? て、天龍か! 脅かすなよ!」
「へへー、どうだ? チ級の仮面を作ってみたんだ」
「元深海棲艦のお前が着けると笑えねえよ……」
中には、天龍のように仮面やアクセサリーだけと言う軽い仮装の艦娘もいる。
何か用事があるのかと、横須賀提督は襟を正して質問した。
「で? 俺に何か用か?」
「おう。大洗たちを見かけなくてさ。どこに居るか知らねえか?」
「そう言えば、全然見かけないな……」
こういうイベントを一番楽しむのは、学園艦娘たちである。だと言うのに、横須賀提督は彼女たちの姿を見ていなかった。
「ふーむ、探してみるか」
「付き合うぜ、提督」
こうして、天龍と横須賀提督によって、学園艦娘の捜索が始まったのである。
その場にいたのは、見慣れない人物だった。
「あれって……」
「魔法少女、て奴か?」
「おや、提督に天龍殿」
「ん? その呼び方は……」
「もしかして、知波単か!?」
「はい! いやぁ、仮装……いえ、この場合は『こすぷれ』と言うんでしたか? 中々良いものでありますな!」
何と、目の前にいる『魔法少女』は、知波単であった。さすがにレプリカだろうが、薙刀を持っている。何かやらかすと自害をしそうだ。
「しかし意外だぜ。知波単はこう、日本の妖怪とかやりそうなイメージだったけどよ」
「実は私も考えたのですが、何故か『この仮装をしないと』と言う気持ちになったのであります」
「不思議なこともあるもんだなぁ……」
無事に見つかったことに安堵しつつ、残りの学園艦娘を探すことにした。
「あら~、提督に天龍さん~」
「す、すげえ……」
「どこ見て言ってんだ提督」
次に会ったのは、黒い翼に山羊の角、豊満な胸と言うまるでサキュバスを思わせるコスプレをした人物であった。どこかの骸骨魔法使いの戦闘メイドをしていそうである。
「さぁ、私は誰でしょうか~?」
「この声……フリーか!」
「えぇ……。その胸どうしたんだよ……」
「機密事項で~す♪」
喋り方はいつもの様におっとりとしているが、その気になれば雰囲気を変えることが出来るかもしれない。
「もしかして、フリーも何かこう、使命感みたいな感じでその格好を?」
「あ、分かっちゃいました~? この仮装は妙にしっくり来るんですよ~」
学園艦娘は、仮装に不思議な使命感を持つのだろうか。ますます謎が深まるばかりである。
次の学園艦娘は……
「アンタの理性ブッ飛ばすから!」
「「いや誰だよ!!」」
面影すら残ってなかった。刺々しいデザインのベースギターを持ち、服もどことなく毒々しい。どこかの毒タイプのジムリーダーのような格好である。
「ふふ、たまには羽目を外すのも良いかもしれませんわね」
「まさかのリーナぁ!?」
「こうも面影を無くすことが出来るのか……」
しかし、何でよりによってお嬢様からバンドガールに変わるのか。相変わらずリーナは何処かフリーダムな所がある。
「ところで、リーナは楽器弾けるのか?」
「……何それ美味しいの?とだけお答えしましょう」
「素直に弾けないって言えよ……」
これで、残る学園艦娘は2人。その2人はいつも一緒にいるので、簡単に見つかるだろう。
「あ、お兄ちゃんに天龍お姉ちゃん!」
「おぉー、愛。お前さんは……女子高生か?」
「この格好だと、無性にラーメンが食べたくなるの」
「…………?」
トテトテと駆け寄ってきた娘は、嘗ては深海棲艦の姫だった『愛』。彼女はどこかの高校の制服を着ているようだが、何故ラーメンと繋がるのだろうか。
「提督さん、こんにちは」
「大洗か。む? その格好は……」
学園艦『大洗』の格好は青色のセーラー服だが、脇が出ている。だが横須賀提督は、その格好に見覚えがあった。
「どうしたんだよ、提督?」
「いや、大本営の資料に、不思議な艦娘の情報があってな……。今は行方知れずらしいが、おぼろ気に撮られた姿と似てる気が……」
「気のせいじゃねえの?」
「……かもしれんな」
気のせいと判断し、話を進める。
「君たちの姿を見なかったものだから探していたのだけれど、大きなトラブルが無いようで安心したよ」
「もうそろそろ、佐世保提督さんと呉提督さん、それと中将や元帥もいらっしゃいますね~。では、参りましょう~」
夕方。横須賀鎮守府のパーティー会場は仮装集団の場所となっていた。
「元帥。その格好、お似合いですよ」
「そうかね? いやぁ、まさかこの歳になって仮装するとは思わなかったよ。妻のオススメでね」
元帥は某宇宙戦艦の艦長の仮装をし、
「中将もよくお似合いですわ」
「君も、それは魔法使いかね?」
「えぇ、普通の魔法使いです」
中将は『憤怒』の大総統、呉提督はとある幻想の郷に住む白黒魔法使いの格好をしていた。
「君は何で赤くなってるのかな?」
「これ、女の子なんですよ……。運転手さんのような格好が羨ましいです……」
佐世保提督はどったんばったん大騒ぎなパークの人間、運転手は某モビルファイターの師匠の格好をしていた。
そして、各鎮守府の学園艦娘も仮装をしている。
「何よもう~! みんな面影無いじゃない~」
「それはお前もだろうサンダース! うぅ、もうちょっと派手な仮装にすれば良かったか……?」
佐世保鎮守府のサンダースは、黒髪ロングに白衣という仮装。マニュアルに従うあまりヒスタミンなどを大量分泌しそうである。
同じくアンツィオはバレーボールのユニフォームを着ていたが、何故か大洗のアヒル妖精さんと同じ格好をしていた。
「みなヘビーな仮装をするのだな」
「それはアンタもでしょ、黒森峰に継続!」
「口癖の『ゲソ』を忘れてるぞ、プラウダ」
「て言うか~、百鬼夜行?」
呉鎮守府の黒森峰は褐色肌に赤目の某宇宙戦艦の搭乗員の仮装をしている。
プラウダは海からやって来た侵略者の仮装なのだが、どうも口癖である『ゲソ』をつけ忘れるのが多いらしい。
そして一番面影が残ってないのが継続で、金髪にガン黒と言う格好だけではなく言葉遣いも変わっていた。手に持ってる物はレプリカだが、もし本物ならば惑星も破壊できそうである。
そして、パーティー本番。テーブルには沢山の菓子が置かれている。開始の音頭は横須賀提督がとった。
「それじゃあ……Trick or Treat!」
今年のハロウィンは仮装祭り。横須賀鎮守府は、今日一日だけカオス鎮守府となったのであった。
皆さんは、学園艦娘たちがどんな仮装をしたか分かりましたか? 答え合わせは17時過ぎに活動報告で行う予定です!