大晦日。それは家事をする艦娘たちにとって、恐らく色んな意味で激しい戦いになる日である。
「トイレの掃除終わったよー!」
「工廠の方の手伝いに行って! 夕張さんや明石さんだけで大変なの!」
「買い出し組は鎮守府正面入口に集合ー!」
艦種問わず、全員が年の瀬の大掃除に取りかかっていた。何せ横須賀鎮守府は所属する艦娘が多く、彼女たちが住む部屋の数も多ければ、艤装などを開発する工廠も広い。全員が協力しないと、一年の汚れを落とすことは出来ないのだ。
「大淀さん、こちらの資料は向こうの棚に置けば良いかしら?」
「はい、そこですリーナさん! それが片付け終わったらこちらの書類たちをファイリングしておいてください!」
「了解よ」
「雑巾、不足分を買ってきましたー! 雑巾がけはお任せください!」
「私も手伝おう、知波単」
「助かります、長門殿!」
「お正月のおせちはOKね~」
「フリーさんが、料理できるなんて……」
「彼女は2つの学校が統合して出来た艦ですからね~。意外とお料理出来るんですよ~」
「さ、鳳翔さんに大洗さん、大晦日の料理の準備よ~」
学園艦娘たちも新年を迎えるための準備を手伝っていた。特に厨房は、正月のおせちなどを作る分もあって負担は凄まじい。料理が得意な艦娘たちが集まって、対処に当たっていた。
だがこの時、誰も気付いていなかった。必要とする食材の量が
『本当に良いのか?』
「うん! 一緒にお正月しよ!」
そして夜。それぞれ自分の部屋でテレビを見たりして楽しんだ艦娘たちは、食堂へ集まっていた。横須賀提督が盃を手に壇上に立つ。
「諸君。今年は新しい仲間たちが一気に増え、そして色々と大きな騒ぎもある年だった。しかしこうして全員で年を越せる事を嬉しく思う!」
そして、ついに0時を迎えた。新年である。
「乾杯!」
「「「「乾杯!!」」」」
新年の挨拶が溢れる食堂から、蕎麦つゆの良い香りが漂ってきた。
「お蕎麦お持ちしましたよ~」
「熱いので気を付けてくださいね」
海老の天ぷらが乗った蕎麦を艦娘たちはそれぞれ受け取って、食べ始める。
「うーん、美味しい~!」
「蕎麦つゆの味って、何でこんなにホッとするんだろ……」
「天ぷらもサクサクプリプリで美味しい~!」
蕎麦をすする音、天ぷらをかじる音で笑顔になる艦娘たち。横須賀提督はその光景に微笑みながらも、大洗から蕎麦を受け取った。
「はい、どうぞ~」
「ありがとう。ズズッ……うん、落ち着くな」
「はい、どうぞ~」
『うむ、いただこう』
ニコニコと隣の艦娘にも蕎麦を手渡し、愛と共に食べようとする大洗。その時、何か違和感があった。
「ん~?」
不思議に思って隣を見て……驚愕した。
『美味い! やはり良いものだな、年越し蕎麦というものは!』
「美味しいね、三笠お姉ちゃん!」
横須賀提督と似た軍服を着た女性。愛と共にニコニコと蕎麦をすすっている彼女を、大洗は知っていた。
「えぇぇぇ!? み、三笠さん!?」
「え? ……ブッ!? ちょ、三笠さん!?」
大洗と横須賀提督の大声で、他の艦娘達も一斉に注目した。そこには、確かに見慣れない人物。だが2人が言ったその名前を思い出し……。
「「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」」
驚きの叫び声が食堂に響いた。
まさかまさかの、三笠さん登場! と言うわけでお正月編に続きます! 来年もよろしくお願いします!