ガルパン最終章の第三話、事情が色々と変わって観れるようになったので、行ってきました!
いやー……ガルパンはいいぞ!
いつも通りの晴れた空。横須賀鎮守府のマスコットこと愛は、今日も元気に過ごしていた。
「行ってきまーす!」
「転ばないようにするのよ~」
ニコニコと笑みを浮かべながら愛を見送った大洗は、他の艦娘たちの洗濯に取りかかった。
さて、ある程度まで走った愛は、周りをキョロキョロと見回すと、目的地まで小走りで向かう。そこにいたのは――
「天龍お姉ちゃん~! 龍田お姉ちゃん~!」
「おー、愛!」
「今日も来てくれたのね。偉いわぁ」
天龍と龍田の2人だった。彼女たちは元々、愛が“姫„と呼ばれていた頃から、軽巡ツ級のコンビだった。艦娘に戻ってからは横須賀鎮守府で生活している。
「それじゃあ、水やりすっか!」
「うん!」
「ジョウロはこっちよ~」
3人が育てているのは、花。それも只の花ではない。
「母の日に、大洗さんにプレゼントするのよね。楽しみだわ~」
「うん! お母さん喜んでくれるかなぁ?」
「お前が毎日水やりして育ててんだ。きっと泣いて喜ぶぜ!」
育てているのは、カーネーション。日頃の感謝を込めて大洗にプレゼントしたいと、愛が考えたのだ。小さな花壇だが、花束にするには十分な数が植えられている。当然、サプライズで渡すため天龍と龍田以外には内緒にしていた。
「あっ、天龍お姉ちゃんの頭に毛虫~」
「うわぁぁぁぁ!? た、龍田ぁ、取ってくれぇ!」
「天龍ちゃんったら、もう~」
3人とはいえ、それはとても賑やかな光景だった。
しかし、数日後。その日は晴れてはいたのだが、とても強い風で、暴風警報が発令されるほどであった。
「今日は遠征もお休みみたいね~……」
心配そうに外を見る大洗だったが、一方で愛の心配は、例のカーネーションにあった。
「(大丈夫かな……)」
そしてその不安は的中してしまう。風が収まった翌日に3人で花壇を訪れると……
「あらあら……」
「こいつはひでぇ……」
辺り一面に葉っぱが散乱し、折れた花もある。花びらもそこそこ散らばってることから、もう少しすれば咲いていたのだろう。
「う、ううっ、グスッ……! うえぇぇぇぇぇん!」
愛は大粒の涙をポロポロと流していた。大洗に喜んでもらうために育ててきたカーネーションが、たった1日で台無しにされてしまったのだ。幼い彼女にとって、そのショックは計り知れない。
だがそんな時、優しく頭を撫でたのは天龍だった。
「愛、諦めるのはまだ早いぜ?」
「天龍お姉ちゃん……?」
「まだ何本かは折れてない。プランターに植え替えて咲かせよう」
「……そうねぇ。ここで諦めるのは悔しいものねぇ」
確かに、まだ何本かは耐えている。大きな花束にするには少なすぎるが、それでもプレゼントとしては十分な本数だろう。
「……うんっ!」
愛は涙を拭き、残ったカーネーションを大切に植え替えた。
そして、ついに母の日がやって来た。
「お母さん」
「ん? なぁに?」
「いつもありがとう。これ、プレゼント!」
愛が取り出したのは、小さな小さな花束。しかしそれはとても美しい、赤いカーネーションだった。
「まぁ、とても綺麗……!」
「本当はもっと沢山咲かせたかったけど、少なくなっちゃった……」
「まさか、育てていたの!? 愛ちゃん……!」
大洗は嬉し涙を流しながら、愛を強く抱き締めた。
「とっても、とっても綺麗なカーネーションよ。愛ちゃん、ありがとう。あなたのお母さんで本当に良かったわ……!」
「お母さん、大好き……」
「私もよ、愛ちゃん……!」
その様子を、扉からこっそり見ていた天龍と龍田は、微笑んだのだった。
読んでいただき、ありがとうございました。