ちょっと不快に感じさせる描写かもしれませんので、ご容赦ください。
横須賀鎮守府とは違う、とある鎮守府。そこに一隻の艦娘がいた。彼女の名前はポーラ。イタリアから日本へ着任した艦娘である。
彼女は今日も飲んだくれていた。しかしそれは、“ワイン好きだから”浴びる程飲んでいるのではない。“嫌なこと”があって飲んでいる。いわば
「とうとう一人になっちゃったか~」
彼女の所属する鎮守府は、閑散としていた。艦娘はポーラ以外誰もおらず、妖精さんは工廠やドッグ等、必要最低限の数しか居ない。
それもその筈。ここの提督は、つい先日憲兵によって逮捕されたのだ。容疑は、“海外艦娘に対しての差別”や、“一部艦娘へのセクハラ・パワハラ”である。それはもう『艦娘に嫌われる提督』だった。しかし戦果は挙げてる上に、典型的なブラック鎮守府とは違い、過度な暴力や資源回収の強制といった事はしない。暴力というよりはネチネチと嫌味を言う男だった。
しかし、勇気を出した一部の艦娘が憲兵へ直談判し、それ等の発言記録等が証拠となり、この鎮守府は終わりを迎えた。その瞬間に、他の艦娘たちは我先にと他の鎮守府へ異動したのである。
そして残念ながら、ポーラはその時の“大異動”に乗じることが出来なかった。元は『イタリアから派遣された艦娘』である為、“異動の手続き”やその受理等が間に合わなかったのである。
故に彼女は、一人寂しくワインを飲む。
「前までは美味しいと思ってたのに、全然美味しくないや……」
中身の残ったワイングラスを投げ捨てる。“悲鳴のような音”を立ててグラスは砕け散った。そんな事には目もくれず、ポーラは俯いて泣いた。
「日本なんか……来なきゃ良かった……」
肩を震わせる彼女を慰める者は、居なかった。
泣いてから暫く経っただろうか。顔を上げたポーラは、ワインの瓶を手に持つとラッパ飲みした。もう“何もかもがどうでも良い”という感情とアルコールが混ざり、彼女はあっという間にグデングデンとなった。
「プハーッ! どうせなら~、妖精さんたちと一緒にパーッとやっちゃおうかな~、うひひ~!」
フラフラと歩き出すポーラ。その行き先は工廠である。
「ボンジョルノ~! 妖精さ~ん、一緒にお酒飲みましょう~!」
だが、工廠妖精さんは別の妖精さんの所にいるのか、出てくる気配がない。
「お~い! 出てこないと、
普通の提督ならば「やめろぉ!」と言いたくなるような事を言いつつ、彼女はフラフラと広い工廠を歩く。
「む~……。私は有言実行な女なのです!」
そう言うと、ポーラは燃料やらボーキサイトやら弾薬やらと、資源を適当に
だが、この時彼女は“勘違い”していた。彼女が資源を投入している装置は、“艦娘を
建造完了までの時間が表示される。
「あれ~?
どこからかボトルを取り出し、またラッパ飲みするポーラ。しかしそれも長続きせず、瞬く間に彼女は眠ってしまった。
朝。“誰か”が体を揺さぶっている。
「う、う~ん……? 誰~?」
目を開けると、工廠担当の妖精さんが体を揺さぶっていた。
「お~妖精さん。おっは~……。ん? お水? ありがとう~」
手渡された水を飲む。頭がスッキリし、現状を確認する。
「……何で
残り時間が数分となっている建造装置を見て、首を傾げる。だが、すぐに妖精さんが説明してくれた。
「あ~、もしかして酔っ払ってる時に“やらかしちゃった”感じ~? ……妖精さん、そこで勢い良く頷かないでよ」
そうこうしてる間に残り時間が0を表示し、装置の扉が開かれる。その艦娘は高らかに言い放った。
「わーっはっはー! 我が名は学園艦『アンツィオ高校』! 尊敬と親しみを込めて“ドゥーチェ”と呼ぶがいい!」
というわけで、別のところでアンツィオ参戦です!
では、次回もお楽しみに!