ヤムチャな俺が目覚めたらシガンシナ区の門が蹴り壊されるところだった 作:@さう
あとは小話を少し考えていたけど、話自体ができてるわけではないです。
010とりあえずの決着
車力の巨人の中の人、ピークは困っていた。
あのヤムチャとかいう男と出会ってから、なんだか色んなものが馬鹿馬鹿しく感じてしまう。
九つの巨人の一つ、車力の巨人を継承した。
それなりにできるつもりだし、エルディア人の名誉回復とか、多少はそういう気持ちもある。
それより何より、あんなひどい場所でも、仲間はみんな良い奴だし、みんな好きだし。
あんまり熱い意思みたいなものはないけど、いっちょやってやっか! 程度の気持ちはあった。
でも、あれは無理だと思う。
ライナー達の報告で、ヤバイのが三人いるってのは知ってた。
でも、あのヤムチャってのは、なんか手から変なの出てるし。
よその国ではそういう空想科学的な兵器を実用化させたんだろうか?
巨人が本当にゴミの様にやられてるし。
巨人の力はもう時代遅れ感あったけど、これはいよいよどうしようも無くなってきた。
マーレ国のエルディア人収容所はどうなるんだろう。
用済みにはなるだろうけど、あれは世界共通のサンドバッグで国民の不満を逸らすための政治的な意味合いもある。
巨人の力が用済みになって、解放されて散り散りに逃げられたらいいけど、まとめて殺処分か、解放されても社会的に抹殺されて、仕事にも就けず、餓死やリンチで死んでいくんだろうか。
……くっせ……
背中から嫌なにおいがする。
ベルトルト…… それはない。それはないわ……
樽の中だから背中まで落ちてはきてないけど……
くっせ……
ーーーーーーーーーーーーー
「ライナーああああああ!!! ライナーあああああああ!!!」
鎧の巨人は回復が遅い。
胸の大穴も千切れた膝もなかなか元に戻らなかった。
焦れたエレンは現在鎧の巨人の指を一本一本切断したりミンチにしたりしている。
こええ……
あれはエレンがキレてるのもあるけど、やっぱ突然巨大な気を引き出してしまって、それに呑まれてる感ある。
獣の巨人も車力の巨人もドン引きで寄って来ないし。
ジークとピークは、まぁ、殺す気は無いし、それはそれでいいんだけど。
エレンもライナーにロックオンしてから他の巨人には目もくれて無い。
でも、鎧の巨人は回復力がちと劣るので、そのうち飽きて、ほかの巨人をロックオンするかもしれん。
巨人というか、次はあの樽の中のベルトルトを引きずり出して拷問だろうな……
「アルミン、ミカサ、あの金髪真ん中分けの巨人いるだろ。あれを殺さないで捕獲してくれ。他のは殺してしまってもいい」
「えっ はい」
ダイナさんの巨人は結構でかい。
「できそうか?」
「殺すのは簡単ですけど…… 立体機動装置のワイヤーを使えばなんとかできるかも……」
「大丈夫か? 一応備品だろ?」
こいつらフル装備で来てるけど、調査兵団の仕事とか、備品勝手に持ってきたりとか、大丈夫か?
結構長い間拘束しておくことになるかもしれないから、立体機動装置持って帰れないかもしれない。
「あ、これは憲兵団のものです。アニが持ってきてくれました。管理がズサンだから三つぐらい無くなっても気付かないとかなんとか」
そういや立体機動装置が横流しされてるって話もサイドストーリーかなんかであったな。
「エレンのと合わせれば三つですし。あの大きさの巨人でもなんとか」
エレンの装備は最初のロケット体当たりの時に千切れてその辺に転がっていた。
「じゃあ、たのむわ」
「ヤムチャさんはどうするんですか?」
「弟子を諌めるのも師匠の務めだよ」
ちなみに、ミカサ全然喋らねぇ。
エレンをずっと見てる。
ただのヤンデレなら有りなんだが、これも巨人の悲しい運命の一つだと思うと、かわいそうに見える。
俺が一歩踏み出そうとした瞬間、大爆発が起こった。
土煙と熱波が辺りを蹂躙する。
俺は気でバリアを作り、隣にいたアルミンとミカサをかばった。
凄まじい速度で膨張した空気が辺りの土をめくりあげ、草原を一瞬で荒地に変える。
気圧が上がったのか下がったのかわからないが、空気の密度が変わり、音が聞こえ辛くなった。
アルミンとミカサも耳を押さえている。
横から叩きつけられる衝撃の数秒後には、逆方向からの衝撃。
爆発の吹き戻しだ。
何が起こったか。
原作読んでたしわかるよ。
だんだんと土煙がはれていく。
さっきまで車力の巨人が控えていた後方に巨大な影が見えた。
煙が風でながされ、それは姿を現わす。
全高60m。
超大型巨人。
地球で言うと20階建のビルぐらいだろうか。
ぶっちゃけ、現代人からするとそんなに大きくは無い。
自衛隊で簡単に駆逐できてしまうだろう。
だがこの世界において、あれはまさに『破壊の神』であり、恐怖の象徴なのだ。
獣の巨人が結構遠くに転がっていた。
爆発の衝撃をまともに受けたらしい。
気を探って、車力の巨人も見つけたが、肩あたりから千切れて転がっている。
あれもう少しでうなじ潰れて死んでたかもしれないじゃん。
ベルトルトのやつ、ちゃんと樽から出て巨人化したんじゃないのかよ。
びびったのか?
こんな爆発の中だが、エレンは普通に立っていた。
服はボロボロで皮膚も爆風で巻き上げられた小石で擦り傷だらけだけど、気を纏っているから大きな傷は無い。
「ははは…… ははは、あははははははは」
笑っている。
だいぶ低い声で笑っている。
「ベルトルトぉぉぉ…… お前もかよ…… 巨人のお友達ってだけじゃなかったんだなぁ。お前も巨人だったのかよ…… しかも、てめぇが門をぶっ壊した張本人じゃねぇか!」
エレンはゆっくりと超大型巨人に近付いていく。
遠近感ちょっとおかしいし、あんなに小さな人間が闘志をみなぎらせて超大型巨人に向かっていく様はなんだか浮世離れしている。
「ライナーと、お前、お前ら、どんな気持ちで俺たちと一緒に訓練してたんだよ、俺も皆んなも、お前らの事尊敬してたんだぞ。どんなつもりで、一緒にいられたんだよ、なあ! ベルトルトおおおおおおおお!!!」
エレンの気が膨れ上がった。
ベルトルト、超大型巨人は右足を上げ、振り下ろす。
エレンを踏みつぶそうとした。
今のエレンでもあの巨体、あの質量に踏み潰されるのは結構キツイだろう。
巨人は見た目程の質量は無いと言っても、あのサイズだ。
ただの踏み潰すという行動が強力な破壊攻撃になる。
……普通の人間が相手ならば。
あれは、遅すぎる。
地響きと突風が広がった。
超大型巨人の右足が大地に沈む。
そこにエレンはいなかった。
「ベルトルトおおおおおおおおお!!!」
エレンはこの一瞬で超大型巨人60mの巨体を駆け上がっていた。
エレンは超大型巨人の右肩に辿り着き、その顔面に飛びかかってぶん殴った。
どん、と上空から衝撃波が降ってくる。
エレンがジャンプするための足場になった超大型巨人の右肩がちぎれた。
その隣では、顔面が消し飛んでいる。
ちぎれた超大型巨人の腕が降ってきた。
激しい地鳴り。土煙が上がる。
さっきから土煙ばかりなんだが、肺とか大丈夫かこれ。
続いて、頭を失った超大型巨人が膝から崩れ落ちて、土下座の様な姿で地面に倒れた。
土煙やら超大型巨人の蒸気やらで視界が悪いし、衝撃音で耳はバカになるしめんどくせぇ。
俺は気を放って、風を起こし、煙を吹き飛ばした。
すげぇな。
超大型巨人をワンパンかよ。
俺の隣でミカサが
「……スーパーエルディア人……」
ボソッと言うもんだから、アルミンまで
「スーパーエルディア人……強いっ」
とか言い出すし。
痒くなるからやめてほしい。
超大型巨人はどうでもいい。
ダイナさんの巨人は結構遠くに吹き飛ばされてるけどまだ生きてるみたい。よかった。
ベルトルト無茶しやがる。
いくらびびったり焦ったりしたからって、車力の巨人ピークの上でそのまま巨人になるとか。
鎧の巨人はまだ回復せず、仰向けに倒れたまま。
もしかするとあれは防御も兼ねているのかもしれん。
首筋は地面側だし。
あとはひたすら皮膚を硬化させれば超大型巨人の熱波やその他諸々を防御できる。
いや、普通に戦意喪失しているだけかもしれんけど。
エレンマジこわかったし。
獣の巨人ジークの方は、吹き飛ばされた後、そのまま距離を取ってるけど何をするでもなくこっちを観察している。
「……じゃ、二人とも頼んだぞ」
「あっ、ハイ」
超大型巨人の登場で仕切り直しになったが、二人は俺の指示通り、ダイナさんの巨人を捕獲に向かった。
爆風で遠くに吹きとばされているのはそれはそれで良かったかもしれない。
巻き添えくらいそうだったし。
アルミンとミカサはちょっと遠くに転がっていたエレンの立体機動装置を回収し、体が千切れてのたうちまわっているダイナさんの巨人の元へ向かった。
さて、俺も働かないと。
エレンは地面に倒れた超大型巨人をメッタメッタにしている。
鎧の巨人よりもやはり脆く、エレンの手や足で体の一部がどんどんミンチになっていく。
あれ痛覚とか多少あるよな? 生きたまま体をミンチにされるとかエゲツない拷問だわ……
鎧の巨人もだが、そう何度も巨人化できるわけではないし、巨人化していても疲労は溜まる。
鎧の巨人ライナー、そして、現在生きたまま体をミンチ肉に作り変えられている超大型巨人ベルトルトもさっきから動かない。
グロッキーだろう。
「おい、エレン、その辺にしとけ」
「ヤムチャ…… なんで止めるんだよ」
ギロリ、と、エレンが俺を睨む。
「まさか、あんたも」
「いや、俺は人類の味方だよ」
「だったらなんでっ」
「落ち着け。そいつら殺しても死んだ人達は返って来ない。それよりも生かして償わせる方法がある。そいつらには利用価値があるからな」
「っぐっ……ううううううっ」
元々の恨みもあるだろうが、今は巨大な気に呑まれて情緒不安定。
「ヤムチャああ!! なんで! ちくしょおおおおおお!!」
エレンの周りの空気が歪み、気の炎が上空へ吹き上がる。
「収まりがつかんのはわかる。エレン、久しぶりに組手でもどうだ? 全力でかかってこいよ」
「ヤムチャ、あんた…… うおおおおおおおおおおおお!!!」
堪えきれなかったのか、言葉もそこそこにエレンが突撃してくる。
足場になった超大型巨人の脇腹あたりが消し飛んだ。
鎧の巨人もだが、シェイクされ過ぎて中身もう死んでないだろうな?
どん、と轟音が空気を叩く。
エレンの突撃を俺は受け止めた。
「うっ、うぐぐぐぐぐヤムチャああああ!!」
体当たりを止められたエレンは足を踏ん張り、今度は全力でブローを繰り出してきた。
「ほいっ」
俺はそれを難なく受け止める。
エレンは頭に血が上ってるせいで攻撃が雑になってる。
ギリギリと金属が擦れる様な音がエレンの右拳と俺の左手の平の間から響いてくる。
「ヤムチャ! あんた! どんだけ力隠してたんだよ!」
エレンが叫び、拳を離して、今度はローキックを繰り出してきた。
ちょっとは頭を使ったらしい。
俺はそれを超スピードで避け、エレンの後ろに回り込む。
エレンの目の前から突然消えた様に見えるが、エレンも気を感じられる。後ろに回ったのは分かっただろう。
すぐに体をひねって向き直ろうとするが、遅い。
「エレン、気を纏えよ!」
俺はエレンの腰に取り付き、エレンを大地からぶっこぬいた。
上半身を回転させ、エレンをひっくり返す。
エレンの肩から上が地面に激突し、大地が揺れた。
岩盤がめくれ、爆風が辺りをまっさらにしていく。
バックドロップ。
これで脳震盪でも起こしてくれればいいかと思ったが。
俺はエレンから離れて構えた。
エレンはフラフラになりながら立ち上がる。
あとひと押しか。
エレンは『道』を使って気を出している。
その出口が今一時的に広がって、膨大な気が溢れだしている。
巨人の『道』を通ってくる気に底があるかはわからない。
だが、どれだけ多くの気が流れて来ようと、エレンの生身には限界がある。
それは怪我だったり疲労だったり精神ストレスだったりする。
エレンの纏う気を突破するダメージを与え続ければ倒れるだろう。
界王拳だって限界超えたら体が爆発しちゃうらしいし。
エレンが叫んだ。
「うおおおおおお!!」
気が膨れ上がる。
俺の攻撃で霧散した分を『道』から補充したのだろう。
同時に、自分に喝を入れる事もできたようだ。
目つきが少しスッキリしている。
「うおおおっ!」
再びエレンは突撃してきた。
我が弟子ながら単純なやつよ。
「狼牙風風拳!!」
俺が教えた技を俺に使うとは!師匠冥利に尽きるぜ!
どどどどどど、衝撃波を撒き散らしながら連続突きが飛んでくる。
俺はその全てを同じスピードで突きを繰り出して撃墜した。
「くっ!」
エレンは拳を引き、俺に組みかかった。
対人格闘訓練の賜物か。
俺は特に抵抗せず、大外刈りに似たその技を受ける。
背中が地面に叩きつけられた、その瞬間、エレンの手を取って、引く。
引き込みながら足を使ってエレンを自分の隣に叩きつけた。
ごばっと土塊が巻き上がり、衝撃を殺せないままエレンは転がって吹き飛んだ。
エレン、ちょっと漫画間違えてるんじゃないかというぐらいに強い。
だが、まだまだだ。
この先はわからないが、現時点では俺より弱い。
巨人の『道』の出口がどれだけ広がるかわからないが、この世界の感じから言って、世界を壊す程ではないかなと感じる。
ドラゴンボール世界には惑星ぐらい簡単に破壊できるやつがゴロゴロいたし。
俺、ヤムチャは地球人だが、やろうと思えばできないことはない。
俺が死んだのはフリーザ最終形態相手だった。
俺もクリリンも原作より微妙に強くはなっていた。
あの時、最長老様に潜在能力解放してもらって、クリリンの戦闘力は1万を超えていたし、俺もギリギリ負けてるけど1万は超えていた。
こっちに来てから、組手はあまり満足にできなかったが、気の鍛錬は怠らなかった。
感覚だが、エレンの戦闘力は1000ぐらいだろうか。
ナッパが4000程だったので、ナッパより弱いが、ラディッツ編の悟空やピッコロよりは強い。
ナッパぐらいになって気を放出するのを覚えたら『クンッ』で街を破壊できてしまうので、エレンがまだこれぐらいというのはそれはそれで良い事なのかもしれない。
だが、人間やモノの硬さが現実地球とたいして変わらないこの世界では無敵だろう。
田舎の農夫が戦闘力5。これはこの世界でも感覚的に変わらないみたいだ。
個体差があるのでざっくりとだが、巨人達で戦闘力30というところか。
超大型巨人でも200あるかどうか。
ラディッツ編のピッコロや悟空が平時300から400だった。
ピッコロや悟空は気を使う事ができるのでやはり超大型巨人は数値以上に相手にならないだろう。
戦闘力が倍違えば相手をゴミの様に処理できる。
エレン達三人は、戦闘力100から200というところ。
つまり、人間サイズで超大型巨人並みの気を持っている。
体のサイズが違いすぎるから単純な比較はできないが、戦闘力30そこらの巨人なんてゴミみたいなもんだろう。
そういう事を考えた上でも、エレン、あの超エルディア人が化け物だというのがわかる。
いかんせん、戦闘力の数値は原作やアニメで違ったりする。
ラディッツ編からフリーザ編の最後のあたりまで使われていたが、それ以降はインフレし過ぎたからかあまり使われなくなった。
スーパーサイヤ人の戦闘力が億を超えているとか、スーパーベジータの戦闘力が3万とか、情報が錯綜している。
ここの一般的な人間を戦闘力5とした時、超エレンはだいたい1000ぐらい。
この世界でこの戦闘力なら無敵だろう。
だが、今は俺がいる。
吹き飛ばされ、転がった先でエレンは体勢を立て直し、再び俺に突っ込んできた。
ホントお前突っ込むの好きだな。
子供の頃からそうだったし。
エレン全力加速の全力ストレートを受けた。
ごん、と、鈍器同士がぶつかった様な音が響く。
俺の手とエレンの拳で圧縮された空気が爆発し、あたりを吹き飛ばす。
「うおおおおおお!!!」
間髪入れずにエレンの連続攻撃が繰り出される。
俺はその全てを難なく受ける。
エレンは戦闘力バカになっている。技が追いついてないし、舞空術も覚えて無いから衝撃を食らうとそのまま吹きとばされてしまう。
気弾で牽制もできんし。
戦闘力で勝ってはいるが、それ以上に弱く感じる。
まぁ、こいつこの世界の主人公だし。
俺がいる事で俺より強くなる可能性もあるかもしれん。
それから五分ほど、エレンの猛攻を受け続けた。
ーーーーーーーー
エレンは全力を出して、あっという間にパワーダウンし、気絶した。
まだ周りに巨人残ってるのにスッキリした顔で。
その頃にはもうダイナさんの拘束も済んでいた。
ボンレスハムみたいになってる。結構グロい。
気絶したエレンを当たり前の様にミカサが抱えた。
どうやら運搬係は任せろという事らしい。
鎧の巨人ライナー、そして超大型巨人ベルトルトと派手にやらかしたのだ。
向こうのトロスト区からも見えていただろう。
さっさと退散せねばいかん。
なんとか回復した車力の巨人、そしてボケーっとした獣の巨人に、俺は近付く。
「アルミン、ミカサは先に帰れ。トロスト区から離れて、壁を登るんだ。あの巨人はここに置いとけ」
「はい」
ミカサはエレンを肩に担いて、なんか尻を撫でまわ…… うらやまけしからんが、見なかった事にしよう。
「立体機動装置使ってしまってるけど、大丈夫か?」
「壁なら駆け上がったり、欠けてるところとかに指引っ掛けたりして十分登れます」
「そうか。じゃあ、戻っててくれ。後でこっちから連絡する」
というわけで、アルミン、ミカサ、気絶したエレンは退場となった。
無垢の巨人は近くに姿が見えないし気も感じないので大丈夫だと思うが、念のため、ブレードだけは持って行ってもらった。
二人と抱えられた一人が見えなくなった頃、獣の巨人と車力の巨人は人間に戻った。
ピークはだいぶ疲れた様子だった。
そら体半分以上吹き飛ばされてたしな。
回復に体力使ったんだろう。
「久しぶりだな、ジーク」
「……ああ」
ジークの顔色も悪い。
わからんでもない。
スーパーエルディア人エレンは化け物だった。
そして俺はそれを軽くあしらう様な超化け物。
今更になって恐怖が湧いてきたんだろう。
「ライナーとベルトルト全く動かないんだけど。これ中で死んでるって事はないよな?」
「体がかなり破損しているし、強い衝撃で何度も揺さぶられていたから気絶してるんだろう」
との事。
車力の巨人ピークが背負っていた物資はバラバラに飛び散っていたけど、ロープもあった。
俺は何度か超スピードで加速し、それを拾ってきた。
目の前で俺の姿が消えて、ロープを持って再び現れた時、ジークもピークも表情が抜け落ちていた。
もう考えるのやめたんだろう。
アニの時もこんな感じだったか?
鎧の巨人と超大型巨人からライナーとベルトルトを引きずり出し、とりあえず簀巻きにした。
「ジーク、あれ、わかるか?」
俺が指差したのは立体機動装置のワイヤーでボンレスハムみたいになってる巨人、ダイナさんだ。
腕脚が細いタイプの巨人なので、拘束されて、芋虫の様にも見える。
こっちを見据えて、うぞうぞ動いている。
「面影があるとは……思っていた」
ダイナさんは、ジークの母親だ。
グリシャさんと共にジークがマーレに売ってしまった。
無垢の巨人は始祖の巨人から別れた九つの巨人のどれかを食うことで人間に戻り、巨人化能力を手に入れる。
それは継承の儀式でもあるのだが。
いまここには九つの巨人の力を持つ人間が四人いる。そのうち二人は意識不明だ。
「ライナーとベルトルト、どっちにするか、お前が選べ」
ジークに選択させる事にした。
だがこれは最初から選択肢が決まっている。
ライナーとベルトルトは正直どっちも生かしておけない。
だが、危険なのはどっちかと考えれば自ずと答えは出る。
ダイナさんの事は、俺は原作読んで、ジークは実体験として知っている。
エルディア人の王家の血筋で、グリシャさんと共にエルディア人の権利回復のため組織に属していた人間だ。
そしてグリシャさんと結婚し、ジークが生まれた。
だがその活動は子供のジークからみてもずさんなもので、やがて見つかって処刑されるのは目に見えていた。
ジークは両親を売った。
ダイナさんは、そういう思想を持ってはいたものの、やはり女性だし、王家の血筋であるという自負があったからか、物腰も柔らかかった印象がある。
キレて突っ走ったりはしないタイプだ。
そんなダイナさんにどっちを食わせるのか。
「ベルトルト君を…… 食わせよう」
超大型巨人は俺やエレンの敵ではない。アルミンやミカサでも体のサイズが違いすぎるので苦労はするだろうが、頑張れば倒せるだろう。
だが、巨人化する時の被害が半端無いし、体がでかいだけにちょっと暴れただけでも街中ならとんでもない数の死者を出す。
ダイナさんは、必要ならば巨人化するだろうが、そもそもエルディア人の復権が目的の思想犯だ。
このパラディ島のエルディア人を殺して回ろうとはしないだろう。
より危険な方をダイナさんに食わせる。
どっちを選ぶかなんて最初から決まってる事を、いちいちジークに選ばせたのは、精神的な負担を与えるためでもある。
ちょっと意地悪してやろうと思って。
それに、流れに乗せられているが、自分の手で母親を元に戻すという行為に何か感じて欲しいからでもある。
ジークもまた原作の重要メンバーだ。
この世界を、エルディア人をハッピーエンドにするため、エルディア人安楽死計画以外の方法をこれで思い付くキッカケになってくれればありがたい。
原作主要キャラである彼が思い付く事に意味がある。
俺は簀巻きで気絶したままのベルトルトを引きずっていって、ダイナさんに食わせた。
ベルトルトは気絶したまま噛みちぎられ、咀嚼され、ダイナさんの腹に収まった。
少し前を置いて大量の水蒸気が吹き出す。
巨人の巨体を構成していたものが霧散して、だんだんと縮んでいった。
水蒸気が晴れた後には、立体機動装置のワイヤーと、そしてひとりの女性が倒れていた。
「うう…… あああ……」
意識はあるようだ。
ユミルの話によれば、巨人化した後も、僅かに意識は残っているらしい。
このパラディ島をさまよい、人を見つけたら襲って食う。
なんでそんな事をしなければいけないかもわからない。
泣き叫び、命乞いをする人間を、捕まえて、食う。
「悪夢のようだった」らしい。
ダイナさんはトロスト区にも入ってた。
あそこで多くの人を食っただろう。
その記憶も朧げながら残っているはずだ。
これから苦労するかもしれない。
ジークはダイナさんに歩み寄り、自分の服を、ダイナさんに掛けた。
一度は捨ててしまった母親と、ジークは再会を果たした。
ピークは俺の隣で、何を考えてるのかわからない表情をしているが、その瞳からは涙が溢れ落ちていた。
母親が追放されて、巨人に変えられて、人を食いながら生きていた。
彼女たちはそんな残酷な世界で生きている。
ライナーは…… どうしよう。
とりあえず鎧の巨人の髄液は使えるから生かしたままどっかに置いとこうか。
ーーーーーーーーーー
さて、俺の原作介入、原作クラッシャー化はどんどん進んでいる。
まずエレンだが、グリシャさんが王家の始祖の巨人を食って、さらにエレンに自分を食わせた。
つまり、エレンの中には始祖の巨人と進撃の巨人が存在する。
始祖の巨人は全てのエルディア人を操れるが、巨人継承の際、記憶もある程度受け継がれる。
始祖の巨人の場合、王一族の思想が強く継承されてしまい、戦えなくなるらしい。
それがどんな思想かは原作でも俺が読んでた時点では明かされてなかった。
だがこの始祖の巨人の力は、王家の血筋が継承しなければうまく使えないらしく、エレンは知らない内に継承してしまっているものの、始祖の巨人の力は使えず、同時に、王家の思想にも支配されていない。
そして、ジーク。
彼は王家の血筋であり、獣の巨人の継承者でもある。
その母ダイナは、というか、彼女こそが王家の末裔であり、ジークの母親。
そんな彼女が、超大型巨人を継承した。
まだ絡んでいないクリスタ(本名ヒストリア)がいるが、ここで実験できると思うのだ。
ジーク達マーレのエルディア人は、医療技術で巨人から髄液を取り出す事ができる。
実際ジークはその髄液を使って無垢の巨人を大量生産していた。
俺が介入してしまったせいで消えたシーンだが、エレンが鎧の力を得るために飲んだのも、おそらく鎧の巨人、それもだいぶ昔の代のヤツの髄液だと思う。この辺は予想だけど。
さて、エレンから髄液を抽出して、王家の血筋の人間に摂取させたらどうなるだろうか?
始祖の巨人継承者は、その思想について語らない。
ケニーアッカーマンもよく知らないみたいだった。
しかし、前継承者、ヒストリアの義理の姉に当たる人物は、もう少し話がわかるやつだった様に思える。
彼女の記憶も、解放されていないが、エレンの中にある。
原作クラッシャーな俺としては、この辺どうなるかが気になるところだ。
そもそも試されてすら居なかった、始祖の巨人の能力のコピーである。
始祖の巨人は『道』が交わる一点らしいので、もしかすると十全に使えるのは一人だけかもしれない。
だが、王家の血筋なだけのジークは微妙に巨人を操る能力を持っている。
エレンも、原作ではダイナの巨人と接触しただけでその力を少し発揮していた。
ダイナさんを助けた事で、この世界には、王家の血筋がヒストリアを加えて三人いる事になる。
原作でもこっちでも、グリシャさんが結構殺しちゃったけど。
……いや、あのオッさんが残ってるか。ヒストリアの父親が。
その辺の話聞いてないけど、こっちではグリシャさんあいつも殺してないかな……
何をどうするかは特に決まってないが、切り札が増えた感はある。
手札が増えればジークも何か思いつくかもしれない。
始祖の巨人の力がわずかなりとも移植できるのであれば、さらに選択の幅は広がるだろう。
ジークはダイナさんを抱き上げた。
「じー……く?」
ダイナさんの意識はまだ混濁しているようだが、息子の面影はわかったらしい。
ダイナさんは今、余命十三年が確定した。
だがそれでもジークはダイナさんより早く死ぬ。
ダイナさんは、自分の一人息子であるジークを見送らなければならない。
そんな不幸が起こらない様に原作を変えたい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・エレン
進撃の巨人
始祖の巨人(王家の血筋でなければ力を発揮できない)
・ジーク(エレンの義兄)
獣の巨人
王家の血筋
・ダイナ(ジークの母親)
超大型巨人
王家の血筋
・クリスタ(ヒストリア・レイス)
第104期の女神
王家の血筋
ここまでは、できました。
後色々小ネタは考えてあるのですが、大筋の話は決まっていませんので、更新未定です。
というか、絵を描かないとお金無いし、今月も来月も返済ヤバイし。
お金稼いでから続き考えて書きます。
いつになるかわかりませんが、次回の更新ができたならば、またお読み頂けるとありがたいです。
m(_ _)m
ここまで読んで下さって、ありがとうございました