ヤムチャな俺が目覚めたらシガンシナ区の門が蹴り壊されるところだった   作:@さう

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ちょっぴり介入

005ちょっぴり介入

 

 

 

 トロスト区の決戦が始まった。

 

 俺はどうするべきがずっと悩んでいたのだが、その悩みはあっさり吹き飛んだ。

 

 エレン、ミカサ、アルミンの三人が強すぎるのだ。

 

 超大型巨人がトロスト区の壁をぶっ壊して巨人の群れがなだれ込んできた。

 そして、死者は大量に出ているのだがおそらく原作よりもずっと少ない。

 

 壊れた門の近くで三人がゴミの様に巨人を処理していく。

 撃ち漏らした巨人を、余裕をもって訓練兵と壁工事団が処理していく。

 

 

 ぼけっとしていたが、俺も少し手を貸す事にした。

 巨人を倒すのではない。

 ここで介入したいと強く思ったのは二つ。

 

 

 一つは、トロスト区から逃げる人たちの手助け。

 

 あれよ。荷車が詰まって通れないっていうシーン。

 

 今回はミカサがずっと前線にいるのであれを処理できる人間がいない。

 

 三人は頑張っているものの、撃ち漏らしが結構いて、街に侵入して人を食ってる。

 撃ち漏らしを倒す兵士も、すぐに来れるというわけではない。

 

 避難できるならした方がいい。

 

 俺はやっぱり殺すというのが苦手なのかもしれない。

 死については、開拓村でもその前の人減らし作戦でもたくさん見てきたが、殺すのはまだ慣れていない。

 

 

 トロスト区の出口、というかウォールローゼの入り口に行ってみると、案の定荷車が詰まって避難民がギャーギャー喚いている。

 

 俺はフードをかぶって近付き、荷車を持ち上げて退かした。

 

 一瞬その場の空気が凍った。

 

 とりあえず

「さぁ! みんな逃げろ!」

 と叫んで、超スピード移動でその場を去った。

 

 突然現れ、素手で馬車を持ち上げて退かし、そして消えた謎の人影。

 

 人々は最初戸惑っていたものの、子連れの家族が走り出したのをきっかけに皆ウォールローゼ内へと逃げていった。

 

 

 もう一つ。

 マルコの回収である。

 

 こいつは実に悲惨な死に方をする。

 マーレ戦士三人の会話をうっかり聞いてしまい証拠隠滅のために殺された。

 しかも立体機動装置を奪われて巨人に食わされるという方法で。

 三人もパニックでこの方法しか選べなかったのかもしれないが、これは避けたい。

 

 マルコはアルミンとも仲がいいし、頭も良い。

 隊長候補の一人だ。

 マルコの立体機動装置を奪われない事で、この先の話に影響あるかもしれないが。

 

 その辺で戦っていたマルコを見つけ、

 

「あっちだ! あっちで友達が食われてるんだ!! 助けてくれ!!」

 

 と、避難民に混じって呼びかけた。

 気を探って、ライナー、ベルトルト、アニの位置は分かっている。あいつら集まって今頃この光景見てるんだろう。

 

 それとは逆の方へマルコを誘導した。

 

 マルコはやっぱ良い人らしく、

「任せてください!」

 と言って、そっちの方向の巨人へと向かっていった。 

 他にも数人の兵士が同じ巨人を目指している。

 連携すれば簡単に倒せるはずだ。

 生き残れるだろう。

 

 

 この二つの介入は、あの三人が強すぎるのを見た後に決めた、結構行き当たりばったりな判断だった。

 

 これはもう無理だと感じたんです。

 

 あの状態でエレンが巨人化するかわからんし。

 

 

 

 俺は二つの仕事を終えて、さっきから固まったままのマーレ戦士三人組に近寄った。

 

 

 

「うそだろ…… エレン、ミカサ、それにアルミンまで……」

「あいつらあんなに強かったのかよ……」

 

 ライナーとベルトルトは冷や汗かいている。

 作戦失敗みたいなもんだしな。

 それに、あの三人内輪で戦う分にはともかく、対人格闘訓練で本気を出したら簡単に相手を殺せてしまうぐらいには強い。

 全力で戦う姿なんて見たことなかったんだろう。

 俺もその辺は注意したし。なるべく強さを見せてはならない。脳ある鷹は爪を隠す的な事を延々と。

 

 ……さっきから気になってるんだが、ミカサ……

 あいつ、立体機動装置を使ってはいるんだが、なんだか体がめちゃくちゃ軽くなってないか?

 他の同じ体格の兵士よりも、明らかに速い。

 立体機動装置の巻き取りも早いし、滞空時間も長い。

 無意識に舞空術の入り口に片足突っ込んでるんじゃないのか?

 

「だから言っただろ。あいつら実力を隠してるって」

 

 そう言ったのはアニだった。

 こいつはアルミンから武術を習っていたし、側にいる時間が長かった。

 本人も格闘技を習っていたし、うっすら気付いていたみたいだ。

 

「これじゃ…… 作戦が……」

「俺が鎧の巨人になってアイツらを……」

 

 ライナーの言葉が詰まる。

 仲間を殺してしまう事の躊躇もあるかもしれないが、それ以上に、勝てないと感じているんだろう。

 その直感は正しい。

 

 リヴァイより強いのが三人もいて、しかも連携が取れているのだ。

 いくら鎧の巨人といえど、勝てない。

 

「アタシはごめんだよ。アタシは元々中央での諜報任務だ。アンタ達でなんとかしな」

 

「おい! アニ! 逃げるのか!」

 

 アニは二人を鼻で笑って、この場を離れ、三人が撃ち漏らした巨人の撃退にしれっと加わった。

 

 

 

 ーーーーーーー

 

 

 

 なんというか、リヴァイ兵長が来る前にトロスト区住人は避難を完了し、巨人もほとんどいなくなってしまった。

 

 おそらくウォールマリア内の人々を巨人化させて集め、この時のために準備していたのであろう巨人の一軍はほとんど全て討ち取られた。

 ウォールマリアの中にはまだいるかもしれないが、トロスト区侵攻用の巨人はもう居なくなったみたいだ。

 

 

 

 エレンは巨人にならなかった。

 

 そして、さっき到着したピクシス司令達が穴をどうするか話し合っている。

 

 

 

 原作ぶっ壊れたんだけど……

 これもうどうしようか……

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーー

 

 

 アニの諜報任務は妄想です


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