ヤムチャな俺が目覚めたらシガンシナ区の門が蹴り壊されるところだった   作:@さう

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もうわからん

006もうわからん

 

 

 トロスト区の門はそのままになっている。

 

 トロスト区の中には巨人が数体いるものの、住人の避難は完了している。

 

 壁の上では戦っていた第104期訓練兵達とその他、そして出張ってきたピクシス司令達が集まっている。

 

 壁を塞ぐための資材がくるのを待っている状態だ。

 

 あそこにちょうど良いサイズの大岩があるんだけど……

 どうしよう…… 俺が持って行って塞ごうかな?

 

 

 トロスト区内に超大型巨人が現れて、ウォールマリアの門を破壊する可能性も考えたが、そんなに連続ではなれないらしい。

 ライナーとベルトルト、そしてアニも、訓練兵に混じってる。

 平静を装ってるのがなんだかなぁ

 

 かく言う俺もまた、ピクシス司令の連れてきた兵士を一人攫って眠らせ、服を奪ってここにいる。

 

 

「ほら、あの大岩、三人がかりなら持ち上がるんじゃないか?」

 

 というエレンの声が聞こえる。

 他の人には聞こえてないみたいだけど、物騒な事を。

 

 住民の避難は完了しており、死者も驚くほど少なかったためか、なんだか気の抜けた雰囲気が漂っている。

 資材が届かなければやる事ないし。

 

 エレン達三人はピクシス司令の近くにいる。

 なんか褒められたり話をしたりしていたが、そんなに長くもつわけもなく、なんとなーく話がなくなって、現在適当にフラフラしている。

 

「あっ!」

 

 と声をあげたのはアルミンだった。

 あいつ気の使い方は上手いからな。巨人の動向を見るために気配を探っていて俺を見つけたという感じか?

 目が合ったので、俺はアルミン達のところへ歩いて行った。

 

「よう。怪我してないか」

「はっ、怪我もなにも、巨人てこんなに弱かったんだな」

「エレン、それは慢心。気を抜いてやられたらかっこ悪いでしょ」

 

 つまららなそうなエレンと、それを嗜めるミカサ。そして苦笑いのアルミン。

 ずっと遠くから見てはいたけど、こうして話してみるとやはり懐かしさを感じる。

 

「ヤムチャさんも兵士になったんですか?」

「ああ、これな。借り物だよ」

 

「ヤムチャさん、たまに訓練所に来てましたよね?」

「気付いてたのか?」

「はい。ヤムチャさんの気は巨大だからすぐにわかります」

 

 アルミンは気付いていたみたいだ。

 

「俺も気付いてたぜ。……たまに」

 

 とはエレン。

 ミカサは何も言わないが、こいつは多分、というか間違いなく気付いてただろう。

 

「お前ら、よくやった。なんというか…… やり過ぎなぐらい良くやった」

 

 とりあえず褒めた方がいいだろう。

 実際に彼らのおかげで沢山の人が助かったのだから。

 原作から外れてしまったのでこの後はもう予測不能だけれども。

 

「ヤムチャならあの大岩簡単に持ち上げられるだろ。あれで穴塞いでくれよ」

 

 エレンよ。お前本当に俺に対して遠慮がないな。

 

「もう夕暮れだし。日が沈んだらな」

 

「なんだよ。また能ある鷹は爪を隠すとかってやつかよ。こんな時に」

 

「まぁな」

 

 

 

 

 それから調査兵団が帰ってきた。

 

 

 ピクシス司令とエルヴィン団長、そしてエレンが集まってなにやら話をしている。

 まぁ、興味はあるけど、俺はマーレの三人組を見張っている。

 

 

 

 

 ーーーーーーー

 

 

 

 夜になった。

 

「うおおお! すっげ! やっぱヤムチャすげぇな!」

「ちょっとエレン、静かに!」

 

 俺とエレン、そしてアルミンとミカサもトロスト区に降りていた。

 

 巨人は暗くなると活動を停止するため、俺たち人間が居てもトロスト区は静かだった。

 

 壁修復資材はまだ届かない。

 

 そんな中、俺は例の大岩を持ち上げて、よいしょよいしょと運んでいく。

 

「俺の体の気の流れをちゃんと見ているんだぞ」

 

 という修行じみた言葉も忘れない。

 

 壁の上で少し慌ただしい感じもするが、まぁ、うっすら岩が動いてるぐらいしか見えないだろう。

 この暗闇の中で俺たちまでは見えない。

 サーチライトなんて無いしな。松明じゃ無理だよ。

 

 

 地響きが起こり、一層壁の上が騒がしくなった。

 これでほとんど全ての兵士が気着いただろう。

 

 さっそく確認のため兵士が降りて来たので、俺たちはさっさと逃げた。

 

 

 

 トロスト区の穴は、夜の間に塞がった。

 大岩が転がっていって、ハマったらしい。

 

 なんとも奇妙な出来事だが、ともかく、トロスト区は再び人類の手に戻った。

 

 リコの名シーンがなくなってしまって悲しい。

 

 

 そしてエレンは後どのタイミングで巨人化できるんだろうか……

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 第104期訓練兵はまさかの死者ゼロでトロスト区戦をくぐり抜けた。

 

 調査兵団への志願者は原作の通りのメンバーと、それに数人増えている。

 マルコも調査兵団に志願している。

 

 マルコの死をきっかけに調査兵団に入るはずのジャンまで、調査兵団に志願した。

 ジャンは原作に比べるとエレンとの軋轢がほとんど無い。

 トロスト区の活躍から、どうやらエレンについて行けば出世できると考えたらしい。

 ある程度実績を積んだ後に、内地勤務を希望するつもりだとか。

 

 

 開拓村に帰り、エレン達三人が調査兵団に入ったのをカルラさんとアルミンのお爺さんに伝えた。

 

 二人ともなんとも言えない表情をしていた。

 

 それから少しして、憲兵の態度が変わった。

 やたら気に掛けてくるし、うちの近くを憲兵がウロウロしている。

 三人の英雄の家族である。なんか上からお達しとかあったんだろう。

 監視の役目と、もしもの時には人質にでもしようというハラだろう。

 

 

 アニはやはり憲兵団に入った。

 

 

 

 厄介な話になるが。

 エレンが巨人化していない事で、マーレ三人組はエレンが巨人の力を持っている事を知らない。

 なので、壁外調査中に女型の巨人に襲われる事もない。

 

 アルミンの観察眼が活躍する機会が一つ消えた。

 

 ペトラは多分生き残ると思う。

 

 

 エレンの義理の兄はもう来てるんだっけか? まだか?

 

 

 

 もう原作ぶっ壊れてるし。

 ドラゴンボールの時よりも俺の存在が、というか、俺の強さがこの世界に影響を与えられるレベルだし。

 ドラゴンボール世界じゃ俺なんてたいした事なかったしな。

 

 そんなわけで、マーレ三人組とユミルに接触しようか悩んでいる。

 

 九つの巨人の面々は寿命が限られていて、その点においてはちょっとかわいそうにも感じている。

 エレンだってあと何年だろうか。

 みんな若いうちに死ぬ事になる。

 

 その運命を変える方法を俺は知らない。

 

 ライナーとベルトルトは殺しすぎている。

 今更和解なんて無いが、だとしても、彼らを希望と信じている人々が本国にいる。簡単に殺してしまうのはまずいと思う。

 

 どうすりゃいいのかわからないからこその話し合いだ。

 

 でも、どうやって接触したものか……

 

 

 

 

 ーーーーーーー

 

 

 

 アニはおそらく女型の巨人にならないだろう。

 

 まずエレンが巨人だと知らないし、女型の巨人になって調査兵団の邪魔をしに行ったところであの三人プラスリヴァイ兵長にはまず間違い無く勝てない。

 

 それに本来の任務が諜報であれば、そんなに大げさには動かないだろうと踏んだ。

 

 全てほぼほぼ希望的観測だけど。

 

 

 接触するとすれば、ベルトルトは最初に除外だ。

 話をしようとして巨人になられたら面倒だから。

 巨人化前に殺せる自信はあるが、もし失敗すればあの巨体が現れ、周りの人も建物も吹き飛ぶ。

 それは厄介だ。

 そしてライナーは話が通じなさそう。あいつ原作でも精神ボロボロだったし。

 

 エレンの義兄は話通じそうだけど、今はちょっとどこにいるかわからない。

 まだパラディ島に来てないのかもしれない。

 

 ユミルは多分話ができると思う。

 あいつクリスタ命だし。クリスタが無事ならなんとでもなるだろう。

 でも調査兵団はまとまって動いていたため、接触は今回見送った。

 

 そんなわけで、俺はアニと接触する事にした。

 建物が多い中央に詰めてるから一人になる機会はいくらでもある。

 アニはライナーやベルトルトの様に、民族の名誉がーとか考えてなそうな分交渉できると思った。

 家族に会いたいんだろ?

 舞空術ですぐだし。

 

 

 もうこうなったら原作に介入して、まだ見ぬハッピーエンドに無理矢理もっていくしかないと俺は考えた。

 

 

 そんなわけで、俺はウォールシーナを越えて、中央に来ていた。

 

 アニに会うついでに、あのおかっぱも見ておきたい。

 リアルおかっぱどんな感じなんだろうか。

 

 

 アニの気はわかる。

 

 アルミンに鍛えられていたらしく、他よりも結構大きい。

 アニも子供の頃から親に鍛えられてたみたいだし。

 感覚をつかむの早かったみたいだ。

 

 

 

 とりあえず人気がないところまで付けて行こうと思い、距離を取って尾行した。

 

 アニは巡回警備中のふりをして、なんかサボってる。

 銃を持っているし、新米とはいえ憲兵が街中を歩いているわけだから巡回なんだろうけど、やっぱサボってる。

 そういう風に見える。

 やる気なさそーな顔してるしな。

 

 

 アニはふらりと裏路地に入っていった。

 

 休憩タイムかな。

 

 と、アニの気が消えた。

 

 しまった! まさか路地裏で強盗か何かに見つかって刺されたのか?

 首や心臓をやられたら、頭を岩で殴りつけられたり、それで死んだり気絶したりしたら回復力を発揮する暇も無い。

 この世界がヤバイってのを忘れてた。

 ドラゴンボールも仙豆も無い。

 

 開拓村でボロボロと人々が死んでいったのを思い出す。

 今でこそ安定しているが、当時は酷かった。

 

「くそっ!」

 

 俺は超スピードで移動し、一気に路地裏へ駆け込んだ。

 

 空気を震わせる音と共に立ち止まる。

 

「おまえ……」

 

 そこにはアニが立っていた。

 

 俺が来るのを知っていたかのように。じっとこちらを向いたままで。

 

 アニから気を感じない。

 

 ……まさか……

 

「あんたがヤムチャさんだね…… 驚いたよ。こんな化け物が居たなんて……」

 

 アニはダラダラと冷や汗をかいている。

 やる気なそーな顔で、ダラダラと。

 ポーカーフェイスというか、顔がそういう顔なんだな。

 

「どうするつもりだい? アタシを殺す気…… なら既にやってるはずだよね……」

 

 アニは、アルミンに色々教わっていた。

 そして、気を感じる事が出来るようになったのだろう。

 アルミンは人に教えるの上手いみたいだな。

 

 そして、気の操作を覚え、気を消すという事について思い至った。

 

 いざという時にわからなくなると困るから、三人に気を消す事については教えなかったし、俺も、三人が気付いてくれるように気を消したりはしていなかった。

 

 アニは、気を消してしまう事を考え、そして習得した。

 

 考えてみれば当然だ。

 あの三人は気を察知する事ができる。

 とすればどこにいても自分の位置がバレる事になる。

 女型の巨人になってもそこに自分がいた事が分かっていたら、簡単に正体がバレてしまう。

 

 これも俺が蒔いた種か……

 

「壁の中にこんな化け物がいたなんて…… 知りたくなかったよ」

 

 あんまり化け物化け物言わないでくれるかな……

 そんな俺を超能力的な何かで簡単に爆散させたフリーザ様とかどうなるんだよ。

 

 女型の巨人になって逃走する、という発想はもう無いらしい。

 銃もこっちに向けず、震えながら抱きしめている。

 まぁ、俺が一瞬でここに現れたの見てるしな。

 

「殺しはしない。話がある」

 

「へぇ…… 面白い話だといいんだけどね……」

 

 

 

 そんなわけで、俺はアニと接触した。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 新米の憲兵が一人で出歩けるかは謎。

 


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