キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワ様の優雅な雄英生活   作:DEMIDEMI

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氷餅様、誤字報告ありがとうございます。


第一話  如是畜生発菩提心

部屋の中には少女が一人横たわっていた。

 

彼女はひたすら美しかった。

彼女を一言で表現するなら、美の顕現。それ以外言い表せないであろう。

光を受け輝く銀髪も、極上の陶磁器を思わせる透き通るような白い肌も、普通より大きめのその双眸も、何もかもがこれ以上ない絶妙のバランス、黄金比を保ってそこに存在した。

窓の外に舞い散る雪明りを受ける彼女は、まさに雪の妖精。

少しでも動けばそのまま彼女は淡雪の如く溶けて消えてしまうのではないか。そんな儚さを感じさせる彼女はまさに眠り姫であった。

 

しかしそんな逡巡を覚えたのは束の間、自身の持つヒーローとしての使命感が彼を突き動かし、彼女を驚かせないよう願いながらもその巨体を部屋の中へと乗り入れた。

 

気配を感じてか、彼女の瞼がゆっくりと持ち上がる。

二三度瞬きをした後、さらにゆっくりとした動きで半身を持ち上げこちらに顔を向けた。

ああ、その瞳。

その瞳はガラス玉を思わせた。

意志の光を宿すことなく、何を映すこともなく、ただぼんやりとこちらに向けられているだけ。

 

今までどんな苦難が彼女に課せられてきたのか。

今までどんな実験が彼女を苦しめてきたのか。

今まで彼女は何を奪われてきたのか。

その瞳にはどのような地獄が映し出されてきたのか。

 

自身の意思を奪われたかのような、全てを諦めたかのような、そんな力なき瞳を見つめてるうちに、彼の総身に彼女を襲った理不尽な運命に対する憤りと共に力が蘇ってきた。

 

おもむろに彼女に近寄り万感の想いを込め抱きしめると、もう大丈夫、何もあなたを傷つけることはないとばかりに高らかに宣言する。

 

 

 

「もう大丈夫。私が来た!!」

 

 

 

しかしその声を聴いても、彼女の双眸からはぼんやりと力が抜けたままであった。

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 

 

 

☆     ☆     ☆

 

 

目が覚めると女の子になっていた。

何を言っているのかわからないと思うが 

俺も何が起こっているかわからない。

 

 

起きてぼんやりと鏡を見た時、第一に思い浮かんだのはそんな言葉でした。

 

あれ?俺って確か高校中退引きニートだよね。

ここ十余年部屋か一歩も出た事なくて、仕事も将来の貯えもない。

そんな人生ナイトメアモードから一発逆転の目が出たのかしら。しかもこの体結構美人じゃない、やったーこれで人生イージーモードだ。レッツ玉の輿。

混乱の余りアホな事を考えながら辺りを見回すとあら不思議。

ここ自分の部屋じゃございません。

人に見られたら恥ずかしさの余り全身の穴から血を噴き出して憤死するようないらんデーターが入ったパソコンも、トイレ替わりのペットボトルも、中学の同級生が結婚したと聞いて憤怒の余り穴を開けた壁も、ここには全くないではありませぬか。

代わりにこの部屋にゃベッドが一つ鏡が一つあるだけ、他には家具も何もないどころか生活感が一切ありませぬ。

あとは窓が一つあるのとドアが一つあるだけ。

 

と、ここまで

あれ?これってもしかして転生ってヤツですか?

今にあのドアを開けて神様が入ってくるはず、そしてチートを与えてくれるはず。

どんなチートがいいかな。

ゲートオブバビロンは当然かな~。スタンド全種類でも全然OK。

神様が美人だったら付いてきてもらうってのもいいな~。

夢は広がる。

あ、でも神様転生だったらおまけで自宅のあのパソコン破壊してくれんかな。

と、自分はワクワクしながら待っておりました。

 

やがて扉がゆっくり開くと…

そこから入ってきたのは汚らしいおっさんだった…

俺の夢と希望とワクワクを返せ…。

 

自分の目が凄い速度で濁っていくのがはっきりとわかりました。

で、そんな濁った目を見て、何か自分が絶望してるとか勘違いしたおっさんは得意げに自分の状況を語り始めたわけでありまして…

 

曰く、ここは個性が幅を利かせる世界だとか

曰く、自分はヴィランでもう助けは来ないだとか

曰く、最強の個性を作るだとか

 

まあ聞いてない事までベラベラ喋る喋る。絶対このおっさん小物だわ、と自分の中で評価が確定した瞬間でありました。

で、この小物のいう事を要約すると

ここは個性っていう一人一人違った特殊能力が使える世界で、おっさんはヴィランって悪役側。

で、そのヴィランにはオ…何とかいう個性を奪う厄介なのがいて、おっさんの所属してたトコはその傘下になれと脅されたのを断ったら、あっさり壊滅させられるという始末。

で、その何とか(現在の写真を見せられたら黒マスクに変なスーツなので、以下変態仮面に統一)に復讐すべく、最強の個性を作りだすべくワタシに目を付け、妹以外身内がいないので攫ってきたらしいのですわ。

 

後、今の説明じゃ正直なんで女の子になってのか全くわからないけど、憑依って奴なのかなあ。

深く考えるとなんでこの世界に飛ばされたのかわけわかんなくなるし、うん、今そう決めた。

 

 

で、肝心の俺の持つ個性は『黄金瞳』。

総身から溢れ出るカリスマで平伏した相手を細胞の一片まで支配するという、

要はニコポ、ナデポの上位互換みたいなもんですな。

 

「お姉ちゃん」

「会いたかったよー」

 

で、そんな個性を「妹たちの命が惜しければ協力する事だな」とか高笑いしてるおっさんに使ってみたところ…あっさり妹たちを連れてきました。

この妹たちがもう可愛いのなんの。

名前はロムルス、レムスというらしいんだけど。

今の俺に似た整った顔立ちに輝くような銀髪。透き通るような白い肌。

髪は俺と違いショートカットなんだけど、それが似合う似合う。

そんな二人が

「お姉ちゃん」

といって縋り付いて甘えてくるわけですよ。

おお、楽園はここにあった。

うんうん、これからはお姉ちゃんがずっと一緒にいてあげるからね。

 

 

 

…物理的に一緒になるとは思わなかった。

 

いやね、喜びの余りその晩は一緒に寝たわけです。大きめのベッドに川の字になって。

うおお、妹が両側から縋り付いてくる。

やわらけー、いい匂い。

見よ!全て遠き理想郷はここにあった。

と至福に包まれながら俺も眠りに落ちたわけですが…

 

朝起きると両足が妹になっていた。

何を言っているのかわからないと思うが、

自分自身ホント何が起きているのかわからない。

 

で半泣きになりながら妹が起きるのを待ち、何が起きたのか聞いてみたところ…

どうもこの妹のうち一人の個性が「融合」というもので、効果は自分自身が好きなものと一体化できるというやつらしいです。

で、その個性と俺の「黄金瞳」が上手い具合に組み合ってこうなったと。

さらにはそれを見ていたもう一人が、ずるいずるいと騒いだものでもう片方の足にくっつけてあげたと。

うん、優しいね。良く出来たね。もうそういう問題じゃないけど。

え?大丈夫?普段は中に隠れているから、出てくるまで見た目は以前通り?

うん、良く出来たね。問題の本質はそこじゃないけど。

じゃ満足したら離れようか。え?細胞レベルで支配されてるからもう離れれない?

いやそれ大問題だよね。

 

「これでずっと一緒だよ」

「私たちもうお姉ちゃんから離れないよ」

「ロムもレムも」

 

悲報。妹たちがヤンデレでした。

これで

「モウ ズット ニガサナイ」

とか言われたらちょっとちびってたかもしれない。

 

さらに最悪なのは、そこに朝食持ってきたおっさんが来たこと。

ほら、妹たち。おっさん何かティンときたって顔してるじゃん。

 

え?妹みたいにどんどん俺と融合させていったら、個性が進化して強くなるかもしれない?

だめだから。それ絶対に失敗してドツボに嵌るルートだから。

妹も家族が増えるって言葉に嬉しそうにうなずくんじゃない。

 

おっさんホントに黄金瞳の影響下にあるんだろうな。

え?強くなければいけませぬ。実験せねば覚えませぬ。

いやそんなトチ狂った武士道求めてないから。

 

変態仮面も他から力取ってるけど大丈夫だった?

いや、あれどう見てもラスボスの器だから。

こっちはヒロインだから、ね、無茶やめよ。

どう考えても、変態仮面より、ずっと強い!!ってならないよ。

 

大体今あんたどんな顔してるかわかる?

俺がメガテンで合体事故目当てに、リセマラした時の顔だよ、それ。

 

え?材料は攫ってくるから大丈夫?

おっさん、あんた今材料って言ったね。

やっぱメガテンのノリじゃねーか。

 

 

 

で、それからのおっさんは俺と融合さすべく様々な人を攫ってきたわけなんですが、

気になるのはそれが男ばっかりで、しかもワタクシを見る目が完全にオタサーの姫を見るヲタの目なのであります。

多分これ、黄金瞳使わなくても反応が変わらない気がする…。

で、融合して一つになったらもう戻れんよ、もう逃げられんがなあ。とおっさんから脅されても、なんのその、アイドルの握手会に並ぶような勢いで嬉々として融合されるわけです。

おっさん、これ人選完全に間違ってるよ。

嬉しそうなその様子に相手の人生を取り込むという行為に対しての良心の呵責は一片たりとも浮かぶことなく、逆にホントにいいの?お前ら軽く考えすぎじゃね?とこちらが不安になってくる始末。

でもかつての自分を思い出してみると、美女に「私と一緒になって」なんて誘いが来たりすると何の迷いもなくホイホイその誘いに乗るだろうし…あ、これって完全に類友というか同族が集まってるわ。

 

で、そんなかつてのワタシみたいな連中を融合する事、幾百日。

とうとう自分の中の総軍が三千を超えました。

もうね、内部完全に握手会どころかコンサート。

響き渡るは武道館やドームを揺るがさんがばかりの俺を湛えるコール。

黄金瞳と融合の副作用か何かで彼らに親愛の情を抱いてなかったら耐えきれなかったね。俺じゃなきゃ完全に参ってるよ。

あとおっさんが完全にマネージャーか何かにしか見えなくなってきた。

 

 

 

でそんな融合融合の毎日を送っていたわけなんですが、

ある朝ふと目を覚ますと、何やら様子が違う。

起き抜けの寝ぼけ眼で入り口を見ると、全身タイツの金髪ガチムチが立ってました。

いつも融合してる連中と毛色が違うし、もしかして変態?ワタシ貞操の危機?

まだ半分寝てる頭で混乱してると、

このガチムチはつかつかと近寄ってきて、あろうことかワタクシを抱きしめたではありませんか。

「もう大丈夫。私が来た!!」

いや、呼んでねーよ。それにいきなり抱きついてくるって、やっぱりこのガチムチ変態だ。

え?何?俺、変なビデオに売られたの?

これから下着一つでレスリングでもしなきゃいけないの?

 

 

ガチムチの汗臭さに包まれながら、どんどん目が死んでいくのが自分でもわかりましたとさ。

 

 




くりえぃと☆雄英高校

エンデヴァー「おはよう、焦凍。今日も朝からがんばってるねぇ」
轟焦凍   「誰だ?お前?」
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