キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワ様の優雅な雄英生活   作:DEMIDEMI

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五武蓮様、らすとすたんど様、誤字報告ありがとうございます。


第三話  ドルオタ

僕、緑谷出久が彼女と初めて会ったのは試験会場だったんだ。

 

その時僕は会場の扉を前にして、ガチガチに緊張していた。

オールマイトからワン・フォー・オールを受け継いだのはこの間の事だし、周りの受験生はみんな個性を使いこなせているような人ばかり。

本当に僕で大丈夫なんだろうかと、先ほど女の子と話した浮ついた気分はどこかへ吹き飛んで緊張感だけが膨れ上がっていた。

大丈夫、落ち着け。あれほど体を鍛えたんだ。オールマイトのお墨付きもあるし、きっと大丈夫。

いくらそのように考えても、次から次へと襲ってくる体の震えは止まらない。

 

 

その時、ふと目の端に彼女の姿が映ったんだ。

 

輝くような銀髪に少々目は大きいものの黄金比ともいえる顔。他の受験生より一回り以上小さいその体は、とても同じ年齢には見えない。

その小ささも相まって、譬えるなら魂を吹き込まれた人形が動き出した。

僕にとって彼女の第一印象はそのようだったんだ。

そして何よりその目が気になった。

外見の美しさに反比例するように、その目はとても濁ってた。

世界を拒絶するようなその目。

その目がつっと動き、僕の目と合った、その時

その目を見た途端、僕は彼女のその目から目を離せなくなったんだ。

その目で・・・

彼女は何か助けを求めている。証拠はないけど、彼女の助けてというような声が聞こえた気がした。

それが僕には何故か、小さい女の子が泣いているような・・・とても悲痛な泣き声に聞こえて、彼女の方に一歩足を踏み出しかけた。

 

でもその瞬間・・・

 

「はいスタート」

急に試験が始まった。

とまどってると他のみんなが会場に向かって走っていくのが見えた。

わー出遅れた。

 

急いでその後を追おうとすると、残っているのが僕だけじゃない事に気が付いた。

白い彼女もその集団に交ざろうとせずに。

 

「ふん」

彼女は我先にと走り去っていく集団に目を向けると

心底馬鹿にしたようにため息をついたんだ。

その顔にはさっきの悲痛な助けを求めるような様子は一切無かった。

「目先の利益に釣られた馬鹿共に同調しない所は、流石の見識と誉めてやろう」

そしてそのまま僕の目を真っ直ぐに見て

「ただ我が幕下にするにはいささか力不足だ。励むが良い」

 

そういうとゆっくりと振り向くと歩き去っていったんだ。

 

その後ろ姿を見ていると、母さんとオールマイト以外に初めて認められた気がしてきた。

心の底から何か不思議な力が湧きだしてくる。

先ほどまであった不安はどこかに吹き飛んでいた。

 

「はいっ」

 

思わずそう答えると、僕は彼女の後に続くようにロボット達に向かっていった。

 

 

 

 

 

☆     ☆     ☆

 

 

 

 

 

皆様如何お過ごしでしょうか?

こちらキーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワでございます。

 

前回、喋る畜生めに学校に入らないかと勧誘されたワタクシめですが、

学校と言えばコミュ障にとっての地獄。

コミュ障オブコミュ障、史上最強のコミュ障、コミュ障を超えたコミュ障、コミュ障を極めし者ともいえるワタクシにとっては無間地獄とも言えるでしょう。

 

無論ワタクシは断る気バリバリでした。

しかし何という事でしょう。

前世でのトラウマを思い出して固まった隙を突かれ、妹たちにYESと返答されてしまったのです。

おお、一番の敵は身内に居るというのはこのことだったのでしょう。

 

「大丈夫だよ、お姉ちゃん」

「私たちお姉ちゃんのやりたい事知ってるから協力する」

 

呆然としている耳に妹たちのたわ言が響き渡ります。

私のやりたい事?

私のやりたい事とは完全な引き籠り生活で、学校に行くという事とは対極に位置するんですが…。

 

「大丈夫。きっと夢は叶うから」

 

そのセリフ、某しろがね司令とか思い出すから止めてくれませんかね。

 

 

「それじゃあ一応形式として試験だけ受けてもらうのさ。君の個性が気になっている先生方も多いしさ」

 

私の承諾の言葉を聞くと「詳しくはここの先生から聞いてくれ」と、災厄をもたらした畜生めと影の薄そうな兄ちゃん、腹に何か抱えてそうな金髪のおばは…お姉さんは満足げに去っていきました。

 

うおおお、カムバック。カムバック。

私に断りの言葉を言わせて!!

 

その後・・・

なんとか断る口実を見つけるべく奮闘していたのですが、便所飯を主食とするワタクシには相談すべき友達もおらず、先生方は厄介払いする気満々で、ここから雄英高校の入学者が出るのは名誉な事という口実で積極的に追い出しにかかる始末。

 

コミュ障の割に空気が読めて、肝心なところで小心者なワタクシがそんな雰囲気に竿を差せるはずもなく・・・

 

 

 

気が付けば受験の日が来てしまっておりました。

 

受験勉強?やるわけないでしょ。

前日どころか今朝まで遊び惚けておったわ。

おかげさまで完全寝不足。ただでさえ生気の無い目が、余計に生気がなくなっております。

 

やる気とか完全マイナス120%のまま会場に入ると、そこは嫌になるほど暑苦しかった。

どいつもこいつも目を血走らせて必死だねぇ。

ま、わたしゃ一足先にリタイアさせてもらうかね。

ついでに実生活からもリタイアできて、引き籠り生活に入れるんだったらベストなんだけど。

 

そう考えながら全くやる気のない目で会場を見渡していると、

ふいに緑っぽい黒髪の男の子が目に入った。

 

うーん、あんまり似てないというか完全別人なんだけど、何となくあの子ってガチムチと同じ雰囲気なんだよね。

漂わせてる空気とか、内にある力とか。

 

そこまで考えて、私の脳裏に稲妻のようにある考えが閃いた。

あの二人の共通項。

ガチムチと男の子、似ても似つかぬ二人を結び付ける線がはっきりと見える気がした。

 

あの二人…まさかあの二人に共通しているものは・・・

 

 

どう考えても変な性癖に違いない。

 

一方のガチムチはいきなり私に抱き着いてくるロリコン。

一方の男の子は、どう贔屓目に見てもオタク。絶対部屋に好きなアイドルとかキャラのフィギア飾っているタイプでしょう。

そう囁くのよ、私の中の兄弟が。

 

基本私の中の総軍にも、類友という事でオタクが多い。

というか融合された経緯を見るに、ほとんどオタなわけであって…自分の精神状態に悪いのとブーメランになるのでこれ以上深く考えない事にするが、その彼らが囁いてくるのです。

 

ヤツは俺らと同類だ。

いやヤツは我々よりもっと濃い。

いや俺の方がもっと濃い。

 

底辺同士のマウンティングが始まったのを無視して、彼について考える。

 

問題は彼の対象が二次であるか、三次であるかですが・・・

そこで私の中の兄弟たちが再び囁く。

あのタイプは二次元には興味が無い。三次だ、三次元に執着するタイプだ。

 

流石は類友、こういうのを見抜くのは上手い。

 

というわけで自分は彼をドルオタと呼ぶことに決定しました。

きっと彼の部屋には記念品やらフィギアやらが、所狭しと並べられてるに違いない。

 

そこまで考えた時、ふと彼と目が合ってしまいました。

その目、数ある受験生の中から私だけに興味を持ったかのような目。

私は…私は…あのドルオタに目を付けられたのではないか。

 

あのガチムチといいコイツといい、なんで自分が変質者ホイホイみたいになってるの??

やばい、助けて・・・。

うわ、何か寄って来そうな雰囲気。

 

「はいスタート」

とかなんとか言ってるうちに、いきなり試験が始まった。

合図も無しかよ。

ロシアの死刑囚だって、よーいドンくらい言ってくれますぞ。

 

売れないまま歳だけとった中年バンドマンみたいなのが、なにやらわめきたてて煽っております。

中年バンドマンがえらそーに学生に向かって説教する姿は、老害の見本みたいですね。

俺のようになるなって意味ですかね?

ああ、もっと若いうちからリーマンとか真っ当に働いておけば。

実戦にカウントダウンは無い。とかそんな事言ってますが、実際にカウントダウンが迫っているのは彼の人生みたいな気もするのですが・・・。

 

一斉に受験生が入り口に殺到する!!

その様子を見ていると通勤快速満員電車で半死半生になったリーマンたちを見ているようで、何とも微笑ましい気分になってきますね。

前世でも今生でもあんな目に合うのは御免こうむりたいものであります。

 

ま、わたしゃ合格する気ないし、のんびり行きますかね。

あれ?あのドルオタも取り残されてる。

え?まさか私と一緒になるためにわざと遅れた!?

 

ターゲットにされたら困るので、皆から取り残されているドルオタの傍によって話しかけておく。

 

あなたがいい人ってのはわかってる。

でも私はあなたと一緒にいられないの、ごめんなさい。

 

まあそういう意味の事を自分なりに伝えると、これ以上接触するのは危険とばかりに彼を後にする。

幸い試験始まってるのでそっちに逃げれるし。

 

これで万事OKと遠ざかりながら、ふと彼を見てみると・・・

どうしよう。私をすっごいキラキラした目で見つめてる。

 

 

その目を見て私は自分の失敗を悟った。

私の中のゴース…もとい兄弟たちも囁く。

 

彼は・・・彼は・・・

彼はドルオタよりもっと厄介な存在、ストーカーだったと。

 

 

やばい、やばい、やばい、やばい、やばい

 

失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した

失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した

失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した

 

あたしは失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した

失敗した失敗した失敗したあたしは失敗した失敗

 

 

優しい言葉でふんわりと伝えたのは間違いだった。

ストーカーって絶対そういうのを勘違いして、自分の都合のいいように捉えるよ。

 

 

しかも彼の様子を見るに、最悪のタイプのストーカーだ。

 

具体的に言うと好きな相手の髪の毛を食べたり、対象の観察日記を記したノートを何十冊も持ってるような・・・。

 

 

いやホントどうしよう・・・。




くりえぃと☆雄英高校
(登山)
爆豪「くぅきがうまぁい」(山頂で)
出久「身体が軽い」(荷物を下ろしながら)
轟 (無言で帰る準備)

次回はヒロアカ二次チート主の本領発揮の入学試験。
デクたちはキーラ様の無双を止めることが出来るのか!!
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