キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワ様の優雅な雄英生活   作:DEMIDEMI

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huntfield様、誤字報告ありがとうございます。

何が起こったああぁぁぁぁぁぁ。

UA一万越え。お気に入り700件越え・・・。

ああ、これはきっと夢だ。万仙陣が回っているに違いない。
世界は私の形に閉じている。

いや、本当にありがとうございます。
今後とも拙作ではありますが、よろしくお願いいたします。


第四話  歩道が広い

蹂躙。

 

会場を言い表すにはその一言で十分だった。

 

唸りを上げるは二つの車輪。

一点のロボが動こうとして車輪の下で原型を留めず、

飛び掛かろうとする二点のロボは狼に食いちぎられ、

三点のロボは離れた場所から狼の咆哮によって砕け散った。

点の差など関係ない。全ては我が前に粉砕されるのみ。

車輪が唸りを上げる。

獣の咆哮が木霊する。

その声の前に全ては無価値。前に立ちはだかる物は全て粉砕し、押し進むのみ。

 

「軽すぎるぞ、貴様ら。加減が難しいではないか」

玉座に座すは一人の少女。

その双眸には倦怠の色を湛え、ゆったりと椅子に寄り掛かる姿はまさにこの場の王者であった。

 

試験官も受験生も思わず手を停めて、その姿に魅入ってしまう。

 

戦車を曳くは双頭の狼。

彼らが曳くは至高の玉座。

何人たりとも我が前に立ちはだかる事を許さず。

 

・・・・・・・・

 

試験が始まった少し後。

他の受験生に遅れて少女はゆっくりと進み出た。

少しの遅れなど取るには足らない。貴様ら凡愚とはこの程度、ハンデにすらならない。

そう高らかに謳い上げるが如く、彼女が場に顕現させたのは一台の戦車であった。

 

瞬間、他の受験生もそれを見ていた先生方も、全てがそれに目を奪われた。

 

華美と無骨、豪奢と質実。

相対する二律背反を完全に同居させたそれはまさに美術品にして兵器。

 

馬の代わりにそれを曳くのは双頭の狼。

普通の狼を遥かに凌駕する大きさ。一方は目を爛々と輝かせ、一方は目を包帯で覆うという違いはあるものの、全身から発するは獲物は全て逃がさないという狩人の意思。

 

少女はその王座に座すと、身体を左にもたれかからせた。一見リラックスしたようなその姿勢。

「ロムルス、レムス征けい」

しかし彼女がゆったりと身を横たえると同時に・・・空間が爆発した。

文字通りに音を置き去りにして戦車が駆ける。

一瞬にして前に立ちはだかるロボ五体が鉄くずへと還った。

蹂躙は続く。

センサーでこちらの動きを感知する?下らない。動く前に潰せばよかろう。

1点、2点、3点?関係ない。我が前には全てが塵に過ぎん。

言葉にせずとも彼女がそう言うのがわかる。彼女の駆る戦車がその答え。

 

それを見た受験生たちも様々に反応する。

「死ねえ」

ある者はロボットを爆破しながら、決意に満ちた瞳で彼女を見つめる。

「俺が一位になるんだ。邪魔すんじゃねえ」

 

ある者は

「くっ、なんていう強個性だ。早く得点を獲得しておかなければ点数が無くなる」

冷静に計算を立て

 

ある者は

「わわわわわわ」

会場の混乱に右往左往する。

 

 

「凄いわね、彼女」

「アレガ校長ノ言ッテイタ生徒カ。特待生トシテノ実力ハ問題ナサソウダ」

「というか他の生徒に得点行き渡るのか」

その様子を目にした教師達の間にざわめきが起きる。

推薦入学者の個性も強いが、彼女の個性はそれを遥かに凌駕する。

 

しかしそんな騒ぐ先生方とは裏腹にオールマイトの表情は苦り切ったままであった。

出久の事もそうであったが、キーラのあの目。

出会った時と全く変わらない生気を失った目。その目が間に合わなかった。とオールマイトを責めるように感じられるのだ。

「キーラ少女、君はあの日の悪夢からまだ抜け出せていないのか。いや、まだ早い。この雄英高校で生きるべき意味、そして仲間を見つけてくれたなら」

オールマイトの願いとは裏腹に、彼女はひたすら場を蹂躙する。

あたかも全てを拒絶するが如く。

 

しかしその時、ふいに受験生たちは足を止め、すぐさま悲鳴を上げ逆方向に走り、否、逃走を始める。

彼らの前にあったのは巨大な影、すなわちビルほどもある妨害用のロボであった。

それは

逃げようとする者、状況を調べるべく立ち止まる者、いたずらに右往左往する者、場は瞬く間に混乱に包まれた。

 

しかし彼女は揺るがない。

相変わらず一切に興味を失ったかのような光なき目でそれを一瞥すると、瞬く間にその両足をすり抜けるように戦車を駆り、それまでと何ら変わらぬかのように得点を稼ぎ始めたのである。

 

ただそんな中、一人の少女が、瓦礫に足を取られる。

周囲は全てライバル、彼女が脱落するのは時間の問題と見えた。また周囲もわざわざライバルを助けるほどのお人よしはいない。

たった一人の少年を除いて。

 

教員と受験生は再び目を奪われた。

しかし今度その中心となっているのは美しくも容赦ない少女ではなく、たった一人の平凡な少年によって。

オールマイトが笑みをこぼす。

今、彼は自分の蒔いた種が芽吹くのをはっきりと確認したのだ。

 

ただ・・・その下半身は依然として健在。

ただそれは半身を失った影響でふらふらと傾き・・・

助かったと地面に倒れ伏す出久と思わず腹の内容物を出してしまったお茶子。

ゆっくりとその上に・・・。

 

 

「馬鹿な・・・」

彼らは自分の見たものが信じられなかった。

残された妨害用のロボの下半身。それでもビルの半分はあろうかというソレを彼女が片手で持ち上げている。

アレの重さがどれほどあるかなど知りたくない。

それを軽々と持ち上げる彼女。一見少女が玩具を与えられたかのような笑みで軽々と歩を進めるが、その身体にかかっている重さが只事でないのは彼女が歩くたびに地響きがするのをみると一目瞭然。

「そら、受け止めて見せろ」

見下すような、嘲笑するような笑みを浮かべながら

それは軽々と宙を舞い、残っていたロボットを押しつぶした。

 

周りが呆然とする中、一人オールマイトだけが会心の笑みを浮かべていた。

心配していた緑谷少年は、あのエグゼキューター相手に周囲にヒーローとしての輝きを見せつけた。

そして周りの全てを拒絶するような目をした少女も、やはり極限の状況においては人を守るべく動いた。

彼はそれが何よりもうれしかった。

 

 

 

誰もが呆然とする中、一人彼女だけが周囲を睥睨するかの如く薄い笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

☆    ☆     ☆

 

 

 

 

 

ぐーてんもるげん皆様。

キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワでございます。

今回の挨拶は車上からお送りしております。

 

 

現在のワタクシの状況は戦車の上。

と言っても現代のあの女子高生共が乗りこなす砲塔のついたあちらではなく、

古代ローマとかが使っていた、馬に引くいわゆるチャリオットってヤツです。

妹たちも悪ノリして狼の恰好になって車を引く気満々。

双頭の狼というあんまりなデザインに思わず頭を抱えたくなってしまいます。

妹たちよ、お前たちいつの間に中二病に罹患していたのだ・・・。

 

大体なんで戦車出せるんだよ、狼になれるんだよ、と突っ込むと

「「個性」」

という答えが返ってまいりました。

それ以上突っ込むと負けの様な気がしますので、ここは流しておきます。

 

で調子こいて妹に言われるままに、出発の合図をしたのですが

気分は出発後すぐに後悔に代わりました。

乗り心地が・・・。

 

で、その乗り心地なわけですが

現代の車がいかに研究者の苦心の上に成り立っているかが実感できる乗り心地なわけです。

一言で言うと最悪。

揺れるってレベルじゃない。口開くと舌噛むので何も喋れないし。

 

 

畜生!どうせこんなもの出すんだったら、現代のにしろよ。

ティガーとか男の浪漫に溢れてるだろ。

無理だったらチハでもいいよ。

 

操縦?簡単だろ?

女子高生でも出来るんだよ。大和撫子の嗜みだろ。

 

これホント揺れるんだよ。

座席にしがみついとかなきゃ振り落とされるし、

ちょっと気を緩めたら腹の中のものが全部逆流、

ゲロインの座待ったなしだよ。

 

 

あ、失礼。取り乱しました。

 

というわけでゲロを我慢しつつ、いつもながら死んだサバの目で座席にしがみついているわけですが、

正直揺れて揺れて周りに気を配る余裕がねぇ。

 

何か車輪の下でグシャグシャと何かひき潰すような音が聞こえるんですが、まさか他の参加者轢いてたりしないよね。

他の人轢いて許されるのはGTAの主人公とDIO様だけですよ。

 

ここは運転してる妹たちの良識に期待したいところですが、ここ最近の彼女ら斜め下への突っ走りっぷりを見ているとそれが神頼みよりさらに低い可能性であるのはファイガを見るよりも明らか。

 

なんか耳に妹たちの嬉しそうな騒ぎ声が聞こえてきて、それと同時に何か壊れる音するんですが、それに比例してこちらのテンションは下がっていくわけであります。

 

ホント警察沙汰だけは勘弁してください。

あと人型の物を轢いてるのも、ホンモノじゃありませんように。もし本物でも試験中の事故って事で勘弁してくれますように。

 

でもまあこれで試験無事落ちれるだろうなあ。

元より落ちる気満々で試験の内容あんまり聞いてなかったけど、確かロボット倒していくんですよね。

確かにロボット倒しているけど、これだけ会場引っ掻き回して物をぶっ壊して周りの受験生の邪魔しているんだから落ちれますよね。

普通試験会場で騒ぎまくるヤツとか、退場ですよね。

お願いだからそう言って・・・。

 

で、妹がちまちまとロボット相手にカーマゲドンをやっているのを、友達がゲームやってるのを横で見てるような感じでボーっとゲロ我慢しながら見ておったわけですが、

急に周りが悲鳴を上げて逃げ出し始めました。

何事かと見ますと、ビルくらいあるでかいロボが出現しておりました。

 

そういえば何か隠しキャラでるとか言ってたようなそうでないような・・・。

エク…何とかいったような気がしましたが良く覚えていないので、仮にゴンザレスと命名。

倒したら15ポイントくらい貰えたような気がするな、コイツ。

 

で、まあ妹らはコイツも轢き潰すのかと思いきや、

思いっきりドリフトかけて、でかいのを無視。小さいのをプチプチと轢いております。

なるほど、でかいボスキャラより小さい雑魚を多数倒す事で高得点を目指すというクリア上の知恵なわけですね。

あのでかいのも一撃で倒せそうだから、ポイント取っておいた方が良さそうなのになあ。

隠しトロフィーとかもらえそうな感じだし。

 

とまあデカブツを無視して相変わらずGTAを楽しんでおりましたら、

ファッ!!!!!!

あのドルオタ、デカブツをぶっ壊しやがった。

 

マジかあ・・・。

きれいに上半身を消し飛ばしやがった・・・。

性欲異常者と強個性、最悪のコラボを有する彼を見て、今後の警察に対して涙を禁じえません。

 

と思ってると、壊し残した下半身がぐらりと揺れて、

あ、親方!ゴンザレスの下半身がドルオタと女の子の上に。

うは、彼らの冒険はここで終わってしまうのか?

女の子は気の毒ですが、ドルオタがここでリタイアするのは今後の世界の為になるでしょう。

 

ん、ドルオタの近くに何か光ってるものが・・・・

 

アレ私のスマホじゃねぇか!!!!!!

やばい やばい やばい やばい

終わったらトイレでスマホのゲームやろうと黙って持ち込んでたのが裏目に出たあ。

間に合え、間に合え、間に合え。

 

意外と何とかなるもんですね。

無我夢中で飛び込んだら、何とか間に合いました。

データー保存してなかったので、死活問題。人間死ぬ気になれば何でもできるものですな。

自分のスマホを守る。

これは女の子の色香に惹かれたドルオタを上回る偉業だと言えましょう。

しかしコレ軽いな。

先生か業者、予算を中抜きして肝心な部分以外ハリボテで作ってるんじゃなかろうか。

 

どうせここまで妹方が色々壊しておる会場をですが、落ちるための止めとしてもう少し壊しとくことにします。

そーら、ポイっと。

 

ストライク。良い感じで命中したので思わず会心の笑みがこぼれます。

ビルが二三棟半壊状態になったし、これだけあちこちぶっ壊しておいたら落ちれるでしょう。

見たか、妹。これがお姉ちゃんだよ。

妹も感動したのか、投げる時何か言ってたし。

 

 

で、終わった後なんですが、先ほど大活躍したドルオタ、なんか地獄の淵を覗き込んだような顔して蹲ってるのが面白かったです。

あれだけ大活躍したら合格決まったようなもんだろうになあ。

 

終わった後にお気に入りの結婚引退でも聞いたのかな。


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