キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワ様の優雅な雄英生活   作:DEMIDEMI

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psycho law様、誤字指摘ありがとうございます。


第五話  ポイント

彼女が教室に足を踏み入れた瞬間、時間が凍り付いた。

少なくともその場にいた全員がそのような感覚に襲われた。

 

見た目は普通の少女。

しかし受験会場にいた彼らは知っている。彼女が会場を蹂躙する様を。

あの狼の咆哮を。

 

新学年、新生活ともなれば誰もが浮かれるもの。

しかし彼女はそんな事を一切感じさせない、感情が一切浮かんでいない凍ったような目でクラスを一瞥すると、自分の席につきひたすら正面を見ていた。

それは一切感情を感じさせないロボットのような動き。

周囲を拒絶するかのようなその動きに、誰もが声をかける事が出来なかった。

しかしそれも彼女が席に着くまで。

静かだった教室は彼女を除いて、再び活気に溢れた会話に満ち溢れだした。

 

しかしその会話も再び静まる事となる。

 

「おい、白女」

先ほどまで飯田と言い争いをしていた爆豪が、つかつかと彼女の前に近寄って行き、

指さし宣言するように言い放った。

「お前合格一位だからって調子に乗ってんじゃねーぞ!!次は俺が絶対に勝つ!」

堂々とした宣言に辺りがさらに静まりかえる。

対した彼女は・・・

「ふう」

と呆れたように息をついた。

「ふん、弱い犬ほど良く吠える。というのは本当らしいな」

あまりと言えばあまりな言葉に一瞬爆豪はあっけに取られるも、

「お前、どういう意味だ!!」

凶悪な顔をさらに凶悪にして彼女に詰め寄る。

一触即発。言葉通りの空気が辺りに満ち、周りの人間も固唾を飲んでその様子を見守る。

「騒ぐな凡愚。どういうも何も言葉通りの意味だ。自分の力量も弁えず喚き立てるなど、己の無力を際立たせるにすぎん。私に勝ちたいのなら黙って行動に移したらどうだ。もっとも・・・」

と、顎で入り口を差し占めると、再び言葉を続けた。

「機会はすぐにありそうだがな。もっともそれを生かせるかどうかは貴様次第だが」

と彼女の言葉に示された方向を見ると、入り口に担任らしき男が立っていた。

「はい、騒いでたのは二人だけ。合理的と言いたいけどそういう空気でもないね。ま、とりあえずお前ら、着替えてグラウンドに出ろ」

 

 

「次、キーラ」

(やれやれ)

相澤は心の中で秘かにため息をついた。

ゆっくりと前へ進み出た少女。相変わらずその目に光は宿っていない。

(オールマイトから聞いたヴィランの犠牲者か)

それはそうとして問題は彼女が過去のトラウマを乗り越えられるかどうかだ。

(入試の様子を見ると前向きになろうとはしているみたいなんだがなあ)

しかしこの様子を見ると、自発的に何かを成そうとは考えていないのかもしれない。

ヒーローは個性だけで務まる甘いものじゃないと相澤は知っている。

ヒーローは一芸だけで務まるようなものではないのだ。

故にいかに凄い個性を持っていてもやる気が無ければ彼女とて・・・

「ほう・・・」

彼女の投げた白球は軽々と空の彼方へと消えていった。

続いての競技もそのハイスペックな身体能力を生かし、楽々とトップを取っていく。

 

しかしその様は

過去のトラウマから自ら抜け出そうとあがく少女。それを落とす事はもう相澤は考えていなかった。

 

「ちなみに除籍ってのは嘘な。お前らをやる気にさせる合理的虚偽」

 

その言葉を聞いた瞬間、わっと湧きたつ生徒たち。

ただそんな中、ひたすら輝き無き絶望したような目で自分を見つめていた少女が、心に棘の様に刺さっていた。

 

 

 

 

 

☆     ☆     ☆

 

 

 

 

 

桜舞う入学の季節。皆様如何お過ごしでしょうか。

キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワでございます。

 

入試が終わって一安心。どうせ落ちただろうし、これからは引き籠り生活を満喫するぞ。と新生活に向けて意気込んでいたワタクシですが、しばらくして合否の通知書が届きました。

で封を切ってみると現れたのはまさかのガチムチではありませんか。

映像だけとはいえ、外見小娘の部屋に入れた彼は心持嬉しそうです。あーやだやだ。

 

 

で、そのガチムチ。

試験の寸評をどうのこうの言ってたのですが、結果はまさかの合格。

しかも何か特待生とかいうわけのわからない称号付き。

ゲームの隠しトロフィーとかは嬉しいのですが、現実の称号ってのは基本面倒ごとが付属してくるので全然うれしくありません。

バイトリーダーとか名ばかりの責任者とか・・・。

しかしあれだけ試験会場壊しまくって暴れたのに何故合格なのでしょうか。

「当然だね」

「お姉ちゃんが落ちるはずないもんね」

主犯者達が何やら足で言っております。意には沿いませんが叱る気にならない、くっ、これが可愛いは正義というヤツですか。

爪牙どもも自分の中で「然り然り」「ウラーウラー」と大騒ぎ。

お前らは可愛くないから黙れ。

 

ところで今ガチムチの台詞の中に聞き逃せない言葉が入っていました。

「私も雄英高校に勤めることになる」

・・・正気でしょうか?

ロリコンと教師って絶対混ぜてはいけない言葉。人体錬成とかメじゃない最悪の錬金術じゃないですかね??

すごいなー雄英高校。「ぷらすうるとら」って良識を超えていけって意味も含まれてるんすかね?

今からあの畜生が報道陣に囲まれて頭を下げる姿が目に見えるようです。

 

 

 

で呆然としているうちに時間は過ぎ、入学の日になってしまいました。

 

ワタクシなぜか学校の寮に入れることになったのですが、

 

嫌々ながら登校すると教室がまたうるさい。

お子様が入ってきたのが珍しいのか一瞬静かになりますが、しばらくすると何事も無かったかのようにまた騒ぎ出します。

やたら騒ぎまわる若人たちを前にすると、これからこの騒がしい連中と過ごさなければいけないのか。と自分の目がマッハで濁ってくるのが自覚できます。

とりあえず昼食に備えて便所の場所をまず確認してこようと思います。

 

何やらヤンキーとガリ勉風の眼鏡が言い争っております。

ヤンキーは一見突っ張ってそうですが、実は細かい事にうじうじ悩む感じ。格下に負けただけで退学考えちゃうようなタイプで、

眼鏡の方は一見真面目そうなのですが、何やらやたら兄弟に拘るタイプとみた。

だから私は彼らを「ヘタレ」「ブラコン」と心の中で呼ぶようにしてあげました。

あと教室にはドルオタもいました。

ドルオタも何やら試験中に知り合ったらしき女の子と話しております。ストーキングのターゲットがそちらに向かったのは一安心。後は彼女が警察に駆け込む事のないよう祈るばかりです。

部屋に盗聴器とか仕掛けないよね??

 

幸いドルオタ以外顔見知りはいないので、自分の机に向かうとぼんやりと宙を見つめて話しかけるなオーラを自分の周りに展開。

これで余程のことが無い限り、自分に声をかけようという酔狂な御仁はいなくなったでしょう。

あーあ、早く放課後にならないかなあ。

 

とか考えておりますと、空気が読めないのかヘタレがこちらに向かってきます。

何やら一位がどうのこうの吠えておりますが、中身はヘタレでも見た目はヤンキー。かつて勇気を出して近所のコンビニに行った折にオタク狩りにあったトラウマが蘇り、こちらもヘタレな自分としては何も言う事が出来ませなんだ。なんか妹が代わりに言ってたような気がしますが・・・。

 

で、そんなヘタレとの言い合いを他人事のように見ていますとチャイムが鳴って、何か小汚い男が入ってまいりました。

ホームレスかな?

このおっさん、いきなり何やら喋りだすにどうもこのクラスの担任らしい。

え?この生活無能力者っぽい人が?

 

この不審者が言う事をぼんやり聞いてますと、合理的じゃないとかこれから体力測定みたいなのやるから庭に出ろとおっしゃっておられます。

素晴らしい。私も合理的じゃないのは嫌いなんです。

何より自己紹介とかいう無駄なものがなくなったのは、何より歓迎すべきことだと思います。

無駄は嫌いです。無駄なんだ…無駄だから嫌いなんだ。無駄無駄…。

素晴らしい先生に当たって一年間楽しそうです。

私は心の中で彼に3キーラポイント上げました。ちなみにキーラポイントを一万貯めると何かいい事が起こります。

 

で同じクラスのJK共が何やら話しかけてくるのに、適当に相手をしながら着替え校庭に出て

始まりました体力測定っぽいの。

何やら個性を使ってボール投げたりジャンプしたらいいらしく、周囲がにわかにざわめき出します。

でそれを鎮めるように担任が一言、

「最下位は除籍にする」

・・・は?今なんと?

最下位は除籍?

・・・除籍、なんと素晴らしい言葉。

ようはここで最下位になれば、あの素晴らしい引き籠り生活をまた送れるのですね。

引き籠り…それはアーサー王の目的がアヴァロンで引き籠り生活だったのを見ればわかるように、人類永遠の夢です。

普遍的無意識の最上位なのです。

それに協力してくれるとはなんとありがたい。

生活無能力者改め担任の先生に2キーラポイント差し上げましょう。これで合計5ポイント、彼には頑張ってもらいたいものです。

 

でまずはボール投げ。「死ねぇ」とか物騒な声上げるヘタレを筆頭に、皆それぞれ人間とは思えないような記録を出しております。

さて、私の番です。ではここで「やーん、ワタシお箸より重いものを持った事ないのー」的なアレを醸し出しながら記録一メートルでも目指すと・・・

「「だめだよ、お姉ちゃん」」

ウェッ!いきなり妹たちに声をかけられて思わず力んでしまい、その拍子に白球はぐんぐん空へと・・・。

「測定不能」

無慈悲な声と共に周りが騒ぎ出します。ああ、自分の目が死んでいるのが自分でもわかってしまう。

「だめだよ、お姉ちゃん。わざと退学目指そうなんて」

「そうそう、ちょっとは力を入れないとね」

オーマイガ。妹たちには当然ながら見抜かれていました。でも怒る事はできません。

なぜなら可愛いは正義。彼女らは特別な存在だからです。

「然り然り」「ウラーウラー」

お前らは黙れ。

 

ともあれ妹たちに応援されたのでその後は普通に頑張りました。

この体妙にスペック高いので、割とあっさり一位に。

この結果には妹たちも大喜び。

爪牙たちもサイリウム振って、一糸乱れぬオタ芸を披露しております。

ちょっと待て、お前ら。その揃ってきてる法被どこから出した?

え?個性?個性って言ったら何でも許されると思うな。

 

ちなみにワタクシに勝つ宣言してきたヘタレは二位にもなれませんでした。

二位は何か色んな道具作り出していたお嬢様っぽい人。とりあえず彼女の事は発育の暴力と読んでおくことにしましょう。

戦闘で核兵器とか作ってこないよな・・・。

大気圏外から鉄の棒とか落とされたらどうしよう・・・。

 

「ちなみに除籍ってのは嘘な」

ファッ!!!

今何と・・・最後に担任の先生から信じられない言葉が発せられました。

今日はだめでもこの先きっと除籍になれると信じていたのに・・・。

 

先生は私を裏切った・・・私の心を弄んだんですね・・・

先生改め住所不定無職にマイナス25ポイント。

 

ぐぬぬぬぬぬ。

 




現在のキーラポイント

ふわふわ女子:50ポイント(ストーカーのデコイとしてポイントアップ)
担任    :20ポイント
ストーカー :-50ポイント(ストーカーこわい)
ガチムチ  :-一万ポイント(言わずもがな)
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