キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワ様の優雅な雄英生活 作:DEMIDEMI
死柄木弔は初めからその少女が気に入らなかった。
死んだような何の感情も映しださないその目。
ヴィランの中には死んだような目をする者は珍しくないのだが、彼女の目はそれらとは全く違っていた。
まるで・・・まるで生きながら地獄を覗き込んだ事のあるような目。
かつて個性を発動させた時の自分の様な目。
そう思った時、彼は思わず彼女の頭を掴んでいた。
間髪入れず個性を発動させる。
結果、彼女の頭は塵になった。
・・・これで大丈夫。自分の鏡はもういない。
自分は二人もいらない。先生に目をかけてもらえるのは自分だけでいい。
そう思った瞬間、
腹部に強烈な衝撃が走った。
「がっ!!」
有り得ない、彼女の頭は確かに自分の個性で崩したはず。
なのに、一瞬で再生している。
これは超回復、それに自分の腹部を襲った衝撃は明らかに人の出す力を逸脱していて・・・。
二つの個性?まさか、コイツ先生から個性をもらって・・・。
「再生に超パワー・・・なんだよ、それ、チートかよ、その個性」
吐瀉物に塗れながらも見上げるも、その双眸は何も宿さないままこちらを見下ろしていた。
負けられない。コイツは俺だ。
起き上がろうと四つん這いになった時、顎に強烈な衝撃が走った。
蹴り上げられた…。
そうわかったのは背中を大地に打ち付けた後であった。
「ぐ・・・」
呻きながらも起き上がろうとするも、脳が揺らされたのか全身に力が入らない。
唯一動く目だけに力を込めて、せめてもの抵抗に彼女を見返す。
自分をあれ程痛めつけたにも関わらず感情を感じさせないその瞳。そしてその傍に落ちているのは・・・。
「父さん・・・父さん・・・」
そのまま死柄木の意識は闇に落ちていった。
その後もこの少女は死柄木の感情を逆なでする行動を取り続けた。
自分らがアジトとしているバーに事もあろうにヒーローの人形を飾りだしたのである。
それも選りによってオールマイトとエンデヴァーを・・・。
自分の原点を汚すような、自分の原点を嘲笑うかのような行動。
耐え切れず少女の頭を砕くべく一歩前に出・・・ようとした
行動に移さなかったのはまた彼女の眼を見てしまったため。
No.1ヒーローとNo.2ヒーローを見つめるその目に言い知れぬ絶望を見てしまったからだ。
言い知れぬ哀しみを秘めたその瞳から、一筋の涙が流れ落ちるのを見てしまったからだ。
「もう大丈夫、僕が来た」
かつて先生に言われた言葉が脳裏に蘇る。
ああ、そうか。コイツも。
ヒーローに対して言い知れぬ絶望を抱えているのか。
ヒーロー人形を前に涙を堪え立ち尽くす少女。その少女にかける言葉は無く、死柄木はそのままそっと踵を返した。
やがて準備は整った。
とはいえ自分は雄英高校に忍び込んだ他はほぼ何もしておらず、計画を立て準備を整えたのはほぼ先生であるが。
まあ、そんな事はどうでもいい。必要なのはオールマイトを殺すというゲームをクリアする事だけだ。
しかし集められたヴィラン・・・
「なんだ、こんなガキがボスかよ」
「コイツ殺して俺がリーダー乗っ取った方が早くねえか」
騒ぎ立てるヴィランたちを前に死柄木は軽く絶望していた。
先生が集めてくれたのはいいが、どいつもこいつも数合わせ。
大した個性も無いくせに口だけは一人前の輩ばかりが揃っている。
俺はこんなバカどもとオールマイトと闘わなければいけないのか。
いやオールマイトは予定通りに脳無に殺させるとして、こいつらには子供の相手をさせるつもりだが、先ほどから騒ぎ立てるばかりでこちらの言う事等聞きもしない。
とんだクソゲーになるなら、いっそ今のうちに・・・。
思わず血が噴き出すのも構わず首筋を掻きむしろうとしたその時。
ふう。
溜息をつく音が聞こえた。
騒ぐヴィランを嘲笑うかのようなその声は響き渡り・・・。
そちらを見ると、相変わらず死んだ目をした女がいた。
何故か全身を隠すようにローブを身に纏っている。
隠された顔の下でその目が、自分の目と合った、そんな気がした時。
その姿が掻き消えると同時に轟音が鳴り響いた。
「・・・!?」
先ほどまで文句を言っていたヴィランは掻き消え、同じ場所には彼女が立っていた。
そのヴィランは向こうで壁にめり込んでいる。
辺りは一瞬で静寂に包まれる。
明白な力の差を見せつけられ、先ほどまで騒いでいたヴィランたちは今は狼を前にした羊のように青くなっている。
「何を・・・」
何をしているのかと問いかけようとした時、彼女はつと元の場所に戻った。
そして促すようにこちらを見つめる。
後は自分に任せるというのか。
ああ、そうだな。オールマイトを殺すのは俺でなくてはいけないんだ。
それにしてもいつも余裕の顔しているこいつは・・・
ああ、全く。
本当にこの女は気に入らない。
☆ ☆ ☆
皆様ごきげんよう。
こちらキーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワ改めラグナロクでございます。
いやいや、ここは悪の女幹部らしくご挨拶したほうがいいのかしら?
ふははははは、どいつも指の一本程度で消し飛ばせるような雑魚ども、ごきげんよう。
というわけで前回パンストの勧誘を受けまして、悪の組織に所属し中二臭い二つ名ももらった私でありますが、
・・・この組織結構ダメダメでありました。
いや来た当初は割と期待していたんですよ。
ヴィラン組織に相応しく四天王だとか、強化改造された戦闘員だとか。
この組織、人数がいねえ。
勧誘したパンストがボスというか黒幕らしいんですが、これがなかなかベッドから起きれない半病人。
本人が言うには昔No.1ヒーローと戦ってこういう体になったらしいのですが、しょせんパンストが言う事。
それは絶対にフカシで下着ドロでもした際に高所から落ちたとか、そういうんじゃないかと睨んでおります。
いっちょ前に専属の医者も付けるというナマイキっぷり。
でいきなりそんな事実を突き付けられて、失敗したなと思ってたところに追い打ち。
この組織、配下が医者のけて二人しかいません。
巨大犯罪組織と思ってたのが軽犯罪を楽しむ単なる迷惑な集団だったと判明して、思わず死んだサバの目になる私に彼らが紹介されました。
一人は黒霧さんといって、ワタクシごときに丁寧な挨拶をしてくれるという組織唯一の常識人枠。
自分の手足をワープゲートにして移動できるという個性も超便利個性。
私は彼を敬意を込めてどこでもドアと呼んでおります。
で、問題はもう一人。
死柄木弔とかいうクソガキがおります。
コイツは初対面の折、いきなり触るというセクハラ犯してきたのでとりあえずボコっておきました。
その際に
「個性が、チートが」
とか呻いていたので、個性中二病とかそういうものでしょう。
大丈夫、無駄に全能感は誰もが通る道だから。
この野郎は全身に手の形のアクセサリーをつけるという勘違いファッションが特徴的でして、
多分アレです。ヒッキーだった私にはよくわかりませんが、「はらじゅく」とかいう遠い地にこういう格好のが蠢いていると聞いたことがあるので、そういうのを気取っているのでしょう。
「黒く染まれ」
とか
「ガイアが俺に」
とかそういう雑誌見て勘違いした人間の末路を見ているようで、腹立ちと同時に妙な憐れみを感じます。
あとそういう意識高い系に相応しく目が死んでいるのも特徴。
個性「アンデッド」とかかな?
で最初の喧嘩の時、このアクセが取れた時に
「倒産、倒産」
と呻いていたわけですが、制作会社が潰れて絶版のレアアイテムになってるんでしょうか。
もしそうなら少し悪い事したなと。
他にもギガントマキアとかいう私同様中二称号をもらった人がいるらしいんですが、彼にはまだ会った事がありませぬ。
何でもナンバーワンヒーロー後の戦いを見据えて隠してあるというとか教えてもらったんですが、絶対にフカシで軽犯罪でも犯して捕まったんじゃないかとかってのに推測しております。
立ちションとかね。
以上私含め六人が組織の総数であります。
ダメな方向で少数精鋭とはこれ如何に?
で、初っ端から気勢をそがれたワタクシでありますが
パンストから次の計画を聞かされた時は思わず目が点になりました。
雄英高校襲撃!?
確かこちらに来て仕入れた知識だと、トップクラスの進学校でヒーローも先生として働いてるとか。
名前が売れてないからといって一発でかい花火を打ち上げようとするのは失敗の元なんですが・・・。
まあどうせ入ってみたとか言って不法侵入。
それを動画サイトに上げるとかそういうレベルでしょうけどね。
で、名前を売るといえばこの組織。今まで名称も無かったらしく急遽決める事になったわけですが、パンストの一声で
『ヴィラン連合』
とかいう身も蓋もない名前に決まってしまいました。
人には中二ネーム与えておきながら、たまに投げやりになるんだよなあ、このパンスト。
で基本考えるのはパンストと医者、たまにどこでもドア。
私らはその間何もしていなかったのですが、ガイア君ひたすら陰気臭いだけなのであまり絡まず。
溜まり場らしいバーみたいなトコを、もらったお小遣いで買ったフィギア飾ったりしてオタ部屋に改造して遊んでました。
ただこの世界のフィギア。ヒーローとかいう実在の職業の物が大半を占めているのですが、
一番人気が全身タイツのガチムチという所にこの世界の闇を感じざるを得ません。
二番手のヒーロー、赤髪の暑苦しそうなおっさんのも手に入ったので、並べて飾ってみましたがむさくるしさがさらに倍。
明らかにいけないプレイの真っ最中の二人にしか見えませぬ。
この何となく嫁さんに逃げられて子供は反抗期真っただ中な感じのするおっさん、この背中が煤けてそうなおっさん、彼が炎で作ったらしきバタフライマスクを着けているのがプレイの真っ最中感に拍車をかけております。
このおっさん、この姿でヒーロー活動をするって本気でしょうか?変態という名のカリスマでも目指しているのでしょうか。
名前エン・・・何とか言ったみたいですが、よく覚えられないので仮にパピヨンと呼んでおくことにします。
というかテレビ等ぼんやり見ている時、たまにこのおっさん映るのですが、明らかにNo.1のガチムチに対して色々拗らせている様子。
これはアレですね、いわゆる愛情の裏返しというヤツですね。
ガチムチに対してひそかに想いを寄せるパピヨン。その想いは彼の個性「火」となって燃え盛るのであった。
しかしガチムチはその想いに気付く事無く、弟子との禁断の愛に生きるのであった。
絶望するパピヨン、その想いはいつしか愛情から憎悪に代わり、彼はバタフライマスクで己の本心を隠しガチムチをライバル視する事となったのである。
昼ドラみたいですが、多分間違ってないような気がします。
しかし手に入るフィギアがほぼおっさんだけとは・・・。
あの美少女フィギアに囲まれたわが城は今いずこ。
俺は美少女並べたいんだよ!!ガチムチのおっさん並べたいわけじゃないんだよ!!
目が死んでいくのが自分でもわかりました。
情けなさに涙が出るのを必死で我慢します。あ、我慢しきれずに涙が二三滴・・・。
ああ18禁ヒーロー。貴女だけが私の救いです。
三十路近いらしいけど。
で私が遊んでいるうちに何か計画がどんどん進んでいったらしいのですが、
いやー居るもんですね。暇なバカ。
迷惑動画に参加したいという知識が三歳児の時点で止まってそうなのが、声かけるとワラワラ集まってきたみたいです。
ドイツもコイツもIQ低そうで非常に結構。
あ、あと一人こちらには秘密兵器がいます。
色々能力掛け合わしたというワタクシとキャラが被る、見えてる脳みそがチャーミングな脳無君です。
脳があるのに脳無とはこれいかに。
これは死柄木のいう事しか聞かないので、多分ばれた際主犯として出頭する鉄砲玉役でしょう。
高校に不法侵入とか一見してダメとしか言えない事をやっているのに、そういうみみっちい計算をする所が更にダメに輪をかけていると思います。
で、万が一迷惑動画がニュースに取り上げられたとします。
基本お茶の間の反応としてはいいとこバカがバカな事してるな。でしょう。
ま、それだけならいいんですが、デジタルタトゥーになって未来永劫恥晒すことになったらと思うと・・・。
こんなバカと同一視されて将来に禍根を残す事になるとまずいので、自分だけは顔が見えないようにローブ被って・・・と。
いう事聞かないバカがいて、なんか死柄木が縋るような目で見てきます。仕方ないので一発殴ってと、軽くなる個性か吹っ飛んでいきましたね。
良し大人しくなったね。全く遠足行く前の園児か、お前ら。
どこでもドアがワープさせてくれるらしいので、ちゃちゃっと行ってちゃちゃっと帰ってきますか。
はぁ、行きたくねえ。