ハンサム×ウィッチ、時々ズボン。
※この作品にはハンサム成分が含まれています。
「チャオ!!僕赤ズボン隊のパクマン!!パンタローニロッシとパンツハイタロー二ウッシッシって何か似てるよね!!」
「何自然に赤ズボン穿いてんのよ!!それはね、ロマーニャ公国の精鋭しか履くことの出来ない……」
「ウッホウッホ」
「ゴリラ返事とはいい度胸じゃない!!」
「仲いいね、隊長とパクマン」
マルチナ・クレスピ曹長が朝から陽気なフェルナンディア・マルヴェッツィ少尉とパクマンを見て呆れた様に肩をすくめる。
「……それより、あのパクマンさんが履いている赤ズボン、誰のでしょうか?」
「え?ちょっと待って。隊長のでしょ?そうだよね?そうだって言って?」
「もしそうなら、もっとひどい事になってると思いませんか?」
ルチアナ・マッツェイ少尉の言葉にマルチナが沈黙。
「……僕、部屋の更衣室調べてくる」
「ええ。事と次第によっては機関銃を持ちだす事態になりそうですね」
ルチアナも立ちあがろうとしたその矢先。
「パクマン貴様!!朝から人のズボンを持ち出すとはいい度胸だ!!」
ばん!!と荒々しく扉が開き、アンジェラ・サラス・ララサーバル中尉がポニーテールを靡かせながらパクマンの頭に強烈な回し蹴りを叩き込む。
「ギャーッ!?俺じゃない!!このズボンが赤ズボン隊の一員として俺を認めた結果、履いてほしいと頼んできたから仕方なく……」
「嘘をつきなさい!!」
「あふぅん!?」
続いて部屋に飛び込んできたパトリシア・シェイド中尉が『JFW精神注入棒』と書かれた樫の棒でパクマンを殴りつける。ナイスコンボ。先日基地を訪れた501JFWの坂本美緒少佐が餞別代りに置いていったものだ。その際は一体何故こんなものを、と誰もが思ったが、今現在対パクマン用懲罰兵器として予想外の活躍を見せている。
「てめーパティ!!思い切りぶん殴りやがって!!頭の形がスケベ椅子みたいになっちまっただろうが!!パティとパンティって似てるよね!!」
「知らないわよ!!パンティって何よ!?ていうかパクマン!!アンジーのズボンを早く脱ぎなさい!!私だってまだ履いた事が無いのに!!」
「何言ってんのパティ!?」
謎の変態告白にマルチナが目を丸くする。
「成程、二人共名誉赤ズボン隊に憧れているという事か。だがな。シェイド中尉、パクマン。それは実力で勝ち取るものだ。私のズボンを履いたからと言って赤ズボン隊の一員になれるわけではない」
「え!?嘘!!被害者なのに意味をはき違えてる人がいる!!」
「う、うん……ごめんねアンジー」
「謝るところそこじゃないよね!?後アンジーはもう少しパティを警戒しなよ!!」
「ズボンだけにはき違えるか。良いセンスしてるじゃねぇか、マルチナ」
「黙れブサイク!!」
次から次へと繰り出されるボケをコートの外へ正確に蹴り飛ばすマルチナ。流石、サッカーが得意なだけはある。きっとポジションはセンターバックだ。
「ああ?そんなに俺に相手をしてほしかったのか?マルチナ・クレスピ?いいぜ、来いよ」
「行かないよ!!あ、来るな!!唐突にズボンを引っ張るな!!」
「オーエス、オーエス!!エス!!イー!!エックス!!」
「助けて!!隊長!!ルチアナー!!」
「やっぱりルチアナの淹れたお茶美味しいわー、癒されるわー」
「ありがとうございます。竹井大尉から頂いた扶桑の玉露ですよ」
「くっそあいつら!!自分達に被害が及ばないと確信した瞬間からの和みムードか!?」
赤ズボン隊の結束とは何だったのか。ていうか止めて、伸びる。ズボンが伸びる。
「何か面白そうな気配を感じて!!」
ばたん、と扉が開くとともに部屋に明るい声が響く。
「やった!!少佐が来た!!これで勝てる……あれ?何そのカメラ?」
部屋に飛び込んできたフェデリカ・N・ドッリオ少佐が、アフリカの加東圭子もかくやとばかりの無駄の無い動きで手にしたカメラを構える。
「うーん、良いわねマルチナ、ナイスセクシー。もっと笑顔で、ほら!!セクシー!!」
「ふざけんなこの野郎!!あ、止めて写真撮らないで!!おいこらいい加減に……あ、止めて、脱げる!?ズボン脱げる!!」
「うるせぇ!!パンツじゃないから恥ずかしくないんだろ!?」
「パクマン、グッジョブよ!!さあ、マルチナ、笑って、せくしー!!」
「駄目だこの部隊!!止めろ!!止めてください!!嫌、止めて!!誰か助けて!!パパー!!ママーっ!!」
「そこまでだ!!この破廉恥丸緑!!神妙にしろ!!」
ばん、と扉が再度開かれ、『憲兵』と扶桑語で書かれた腕章を腕に、中島錦少尉と諏訪天城少尉が部屋に飛び込んでくる。
「え、えっちな事はいけません、パクマンさん」
「んー?聞こえんなぁ。あ、エッチの所をもっと大きな声でお願いします天城さん」
「聞こえてんじゃねぇかこの緑野郎!!」
「ゴリラっ!!」
錦の踵落としが華麗にパクマンにヒット。
「天城にセクハラなんて少佐が許してもこの俺が許さねえからな!!」
「くッ……村の掟は絶対……我を倒せし者の言う事は何でも一つ従わなくてはいけない。錦よ、貴様に従おう……」
「解ればいいんだ、解れば。よし、行くぞ、天城」
「え?」
「こんな奴に関わってても時間の無駄だ。ほら」
「で、でも、その腕章……」
パクマンを殴り本来の目的を忘れて満足したように部屋を後にする憲兵ゴリラ……もとい錦と、ちらちらと振り返りながらもその後を追う天城。
扉が閉まり、一瞬部屋に沈黙が訪れる。が。
「アルダーウィッチーズ!!ロマーニャパクマン中隊リブートっ!!」
「何しに来たんだよあいつらっ!!くそぉ!!捕まって堪るかっ!!」
「はっはっは、どこへ行こうというのだね。君は今エロス王パクマンの前にいるのだよ」
「うわ足長っ!?キモっ!!」
部屋を飛び出したマルチナを追い、足を伸ばし大股で部屋を後にするエロス王パクマン。
「「「「……」」」」
しばらく無言が続くが、ずずっ、と残ったお茶を啜り、フェルナンディアが一言。
「……そう言えば午後から訓練だったわねー」
「フェル隊長、どういう練習にします?」
「そうねえ、アンジーは怪我から復帰したばかりだし、連携の確認かしらね」
「その前に入院生活で体が大分鈍ってるからな。基本的な体力づくりに専念したくもあるが……」
「あ、それなら私も付き合うわ」
「じゃあみんなで基地の周りのランニングからかしらね」
和気あいあいと訓練の予定を立てる504の面々。
ルチアナなどいなかった。いいね。
「ふんふふふーん」
ハンガーの中で鼻歌を歌いながらストライカーユニットを整備している一人の少女。
「……大将も帰って来たし、きっちり点検しないとね」
誰ともなしに口にして、ぽっ、と頬を赤らめる。
「ち、違うんだから、そんなんじゃないんですよ」
誰ともなしに言い訳を始める挙動不審者……ではなくジェーン・T・ゴッドフリー大尉。
見ての通りの恋する乙女だ。
「私がきちんと細かいセッティングをしないと、大将はいちいちうるさいんですよ。エンジンの吹き上がりが気にくわないとか、操舵感覚が鈍いとか。だから私が点検しておかないと……」
誰ともなしに説明を始めるジェーン。
『久々だというのに素晴らしい仕上がりだ。流石はジェーンだな』
『そんな、いつもの事ですから……あっ』
『そうか。なら、『いつもみたいに』これからベッドで……』
『た、大将……』
「やだもぅ大将~、そんなんじゃないんですって~」
誰ともなしに妄想をエスカレートさせた挙句うっとり顔で頬に手を当て体をくねくねさせるジェーン。このままでは大将と入れ違いでジェーンが病院に行く事になりそうだ。
「あっ、ジェーン!!そのユニット!!」
ハンガーにマルチナの声が響き、はっ、とジェーンが我に帰る。
振り返ると、非常口のキャットウォークの上からマルチナがこちらを見下ろしていた。
「マルチナさん!?これはその……」
今しがたの奇行が見られたと思い、慌てて言い訳しようと口を開きかけた矢先。
キャットウォークの上から飛び降り、すぽん、とユニットを装着する。
「えええっ!?何しちゃってるんですかマルチナさん!!」
「借りるよ、ジェーン!!」
「待って、それは大将の!!私の貸しますから、それだけは!!」
ジェーンが止めるのを無視してハンガーから直接滑走路へ飛び出していくマルチナ。
「飛べないパクマンはただのハンサム!!パク一番、出るっ!!」
「パクマンさんまで!?何なんですか一体!?」
マルチナを追ってハンガーに飛び込んできたパクマンが扶桑の新型ストライカーユニット『零式54型』に飛び乗る。先日補給部隊を護衛してきてくれた扶桑海軍のウィッチから『モブごときに新型など勿体ない。こうしてくれる!!』と言ってパクマンが取り上げたものだ。
『返して!!あたしの新型返して!!』と泣きながらパクマンの頭を殴打していたあの扶桑の小柄なモブウィッチは今どうしているのだろうか。
その後事態を知った竹井醇子大尉にパクマンが殴り飛ばされ、この機体はお詫びの品と共にジェノヴァに寄港している扶桑海軍に送り返される手筈になっていたはずだ。だが。
「ウフフ、パーソナルマークもばっちり決まってるぜ」
「いつの間に!?持ち主が見たらまた泣きますよ!?何ですかその無駄にリアルなゴリラの落書き!!」
最早手遅れである。さらば零式、こんにちはゴリラマシーン。
「レッツパクジェット54号!!目指すは女風呂!!待ってろ美少女!!テイクオフ!!」
滑走路を駆けていくパクマン。何で飛べるのかとかはどうでもいい。レシプロなのにジェットなのも些細な問題だ。そう、緑色の謎のハンサムがこの世界にいる時点でそんな事は些細な事に過ぎない。
だが。
「……今お風呂に入ってるのって、食堂で働いているマダム達ですよね」
ジェーンがぽつり、と呟く。
ロマーニャのマンマ達の怒りに触れたパクマンがどうなろうが知った事じゃない。巨大な鍋で日々兵士たちのパスタをかき回すルチアナの足より太い腕から繰り出されるマンマパンチで死ねばいい。
「ロマーニャのマンマ舐めんじゃないわよ!!」
「くらえ、パスタパンチ!!パスタパンチ!!」
『メーデーメーデー!!ワレ被弾セリ!!コチラパク一番、コチラパク一番』
この話が嫌いになってもアルダーウィッチーズとパクマンは嫌いにならないでください。