ストゲノム~紅の魔女と翠色のハンサムボーイ~   作:鳩屋

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ワルイコの兵器解説(雑)小説ストゲノム。二話目です。


2.C.V.33

「風を切れパクマシーン33号!!具体的には時速60キロ、おっぱいを全身に受けて窒息する気持ちになるでごぜーますよ!!」

「死ね!!」

「アヒィン!?」

 ゴキゲンなエンジン音を響かせながら戦車でグラウンドを疾走するパクマンの顔面にマルチナの大きく振りかぶったJFW精神注入棒がクリーンヒット。おっぱいを感じる為に頭を外に出していたのがまずかった。

「流石ティナ姉ちゃん!!」

「ナイスバッチ!!」

 マルチナの腰の入ったスイングに子供たちから歓声が沸く。

「かーっ!!性懲りもなく貴様という奴は!!お前やフェルの胸が不甲斐ないせいで俺はおっぱい欠乏症だというのに!!」

「おっぱいが不甲斐ないって表現は斬新だよ。てか、どっからその持ってきたのさ、その豆戦車。竹井大尉に怒られる前に返してきなよ」

 ちなみにパクマンの駆る例の戦車アニメでも有名な軽自動車サイズの豆タンク、カルロベローチェ……CV33では時速60キロは出ない。パクマン大誤算。

「竹井……関節……分解……うっ、頭が……」

 ガタガタと震えだすパクマン。先日の零式54型再強奪事件の後、静かな怒りに震える竹井醇子大尉による尋問はパクマンの心に深い傷を負わせた。

「おっぱいが、いっぱい……」

「そんなにおっぱいが好きならジェンタイル大尉の所にでも行ったら?」

「バッカお前!!そんな事したら大惨事確定だ!!アイツ俺がロボットだからって平気で脳天リボルバーでぶち抜いてくるんだぜ!?」

 病院から退院してきたその日、初対面のパクマンに対して最早得意のボクシングすら面倒と言わんばかりにガチ拳銃で仕留めに来たドミニカ・S・ジェンタイル大尉。

 勿論ジェーンにちょっかいを出したからだ。

「兎に角、グラウンドの整備を手伝う気が無いならどっか行ってよ。てか明らかに邪魔しに来てるだけだよね」

「そうだそうだ!!」

「いい加減にしろパクマン!!」

子供たちの為に504の皆が協力して作った基地の脇のグラウンド。勿論遊んだ後はグラウンドの整備だ。重いコンダラでゴロゴロとグラウンドを慣らしていたロマーニャのキッズたちもキャタピラで突撃してきたパクマンの蛮行に怒り心頭だ。

「オレが邪魔をするだと!?くそう、ガキの癖に言いたい事言いやがって、目にモノ見せてやる!!」

 そういうとパクマンがコンダラをカルロベローチェの後ろにセット。どうやって?知るか。

「パクマシーン33号改始動!!ヘイキッズ、カモン!!」

 運転席に飛び乗り、子供たちを戦車に乗せる。走り出したカルロベローチェの背後でコンダラがゴロゴロ。時速40キロでみるみるうちに整備される地面。

「すごーい!!パクマン!!」

「ティナ姉ちゃんよりはやーい!!」

 流石は子供の扱いに定評のあるパクマン。即席ロードローラーに子供たちもアツい手のひら返しだ。

「パクマン!!パクマン!!」

「ふっふっふ、今回ばかりはマルチナも俺を尊敬、パククールって奴だな!!」

「前!!前!!」

「ああん!?前?前に何が……ッ!?」

 扶桑皇国の白の士官服を身に纏い、その手には旧友、若本徹子より預かりし名刀『虎徹』。

 静かな闘気を宿らせた扶桑皇国海軍大尉、竹井醇子が真っ直ぐ向かってくるパクマシーン33号改に向け、にこり、と笑顔を見せる。

 いかん!!このままでは子供たちが危ない!!

「国旗を降ろせ!!総員退艦!!この船は間もなく沈む!!」

 パクマンの号令と共に子供たちがグラウンドへダイブ。勿論安全に配慮してパクマシーンは徐行運転、流石気遣いの出来る男、パクマンは一味違う。

「パクマン!!早く逃げてっ!!」

「男にはやらなくてはいけないことがある!!司令官たるもの最後まで船を降りるわけにはいかんのだよ!!」

 そう言って再度パクマシーンが諄子に向かって再加速。何故!?これが男の生きざまか。

「うおおおおおおっ!!」

 諄子とパクマンが交錯するのとほぼ同時。

 諄子の抜き放った虎徹の刀身が、静かに空を切った。

 

「……月が……綺麗だな、艦長……」

 

 敗因:キューポラから顔だして ガタガタ不整地にっこにこ

 

「パクマーン!!」

 子供たちの声がグラウンドに響き渡る。

 二話目にして、パクマン、胴と首が泣き別れ。

 さようなら、パクマン。さようなら、ハンサム。

 

「あぶねー!!オレの首が外れなけりゃマジで死んでた!!」

「全く、何してるんですか!!子供を戦車に乗せるなんて!!」

 脅威の回復力。たった一行で帰って来るパクマン。ウルトラマンもびっくりだ。

「バカ」

 ぽつり、とマルチナが呟く。ちなみにパクマンもマルチナも、グラウンドのど真ん中で扶桑の懲罰である『正座』の真っ最中だ。

「貴女もです、マルチナ!!貴女が付いていながら……」

 そう言いながらちらり、とパクマンを見る。足の関節があるのかすら怪しい癖に正座っぽい姿勢で苦しそうにしているハンサムロボとマルチナを見比べ、大きくため息。

「……貴女がついていても駄目そうね」

 この基地でパクマンを止められるものはドミニカか諄子くらいだ。諄子ですら、厳しく叱った翌日には平常運転に戻るパクマンを持て余しているくらいなのだ。マルチナ一人では荷が重い。

「近くの陸軍から緊急無線が届いてます。緑色の謎の物体が基地に進入、戦車一台を強奪して逃走中、ネウロイの可能性もあり。注意されたし、とのことです」

 諄子がパクマシーンことカルロベローチェとパクマンを見比べる。状況証拠ばっちり。さあ、自白せよ。

「お、オレじゃない!!仮に緑だとしてもこんなハン」

「えいっ」

「ぐわあっ!!腕が、腕がッ!!」

 容赦なく虎徹でパクマンの腕を切り落とす諄子。気の無い掛け声の割にやることがえぐい。

「くそぉ、腕が一本持ってかれちまった……」

「それくっつければ治る奴だよね、僕知ってるよ」

 茶番につき合ってられるかとばかりに冷たく言い放つマルチナ。

「俺は、ただ子供たちの笑顔が見たかっただけなのに……」

「……」

「……」

 パクマンの言いたいことも解る。不安な思いをしている子供たちを笑顔にさせたい。それは皆同じ思いだ。マルチナ達がグラウンドを作ったのも、諄子やドッリオがそれを認めたのも子供たちの為だ。しかし。

「パクマン、貴方の気持ちは尊重するけど、現地部隊とのいざこざを作ってまでやる事では……」

「ウッホウッホ」

「ゴリラ返事とはいい度胸ね!!」

「竹井大尉!?落ち着いて!!」

 

 その日の夜。

 

 中島錦はライトを手に基地内を歩いていた。その腕には『憲兵』の腕章、そして反対の手にはJFW精神注入棒。

 ウィッチ用の宿舎は男性用の宿舎とは異なる建物で、ウィッチ以外の物の出入りは基本的に禁止されている。

 だが、少し前からパクマンが基地に住みつくようになったため、ウィッチ達は自衛の為に夜は交替でウィッチの宿舎の見回りをしており、中でも真面目な錦は自ら率先して見回りを行う事が多かった。

 

 廊下を歩いていると、がたり、と入り口の方から音が鳴る。

 

「……誰だ、パクマンか?」

「チガイマス」

「よし通れ」

 パクマンではない事を確認した錦が再び見回りに戻る。

 

「いや!!今のパクマンだろ!!総員緊急配備!!パクマン進入、パクマン進入!!」

 

 プワーーーーーーーーーーーーーオ!!(パクサイレン)

 

 夜の宿舎にけたたましい音が響き渡り、各部屋から寝間着姿のまま思い思いの獲物を手にしたウィッチ達が飛び出してくる。

「あの丸緑!!いつもいつも人がぐっすり寝てるのを邪魔して!!今日という今日はただじゃ置かないわってワーォゥ!!」

 箒の枝を握りしめて廊下に出るなり思わずブリタニッシュな悲鳴を上げるパトリシア。目の前にはパクマン、ではなく、機関銃を両手に持ち、その片方をこちらに向けているドミニカ。

「何だ、パティか。気を付けろ、今の私は気が立っている」

「なんてもの持ち出してるのよドミニカ!!」

 タンクトップとズボンだけという格好のまま重火器の両手持ち。まさか廊下にランボーがいるとは思わなかった。

「気にするな。奴をスクラップにする為でお前に向けるつもりはない」

「いましっかり向けてたじゃない!!」

「細かい事を」

「それ!!ついうっかりでぶっ放したら普通に死ぬものを手に言っちゃ駄目な奴!!」

 重火器の扱いは慎重に。

「二人共!!パクマンは!?」

「竹井大尉まで何持ってきてるんですか!!その扶桑刀って本物じゃないですよね!?」

 寝間着代わりの作務衣の上っ張り姿で手にはいかにも業物な扶桑刀の拵。

「本物じゃないと斬れないじゃない」

 にっこり。にっかり青江ならぬにっこり竹井。ヤバい。目が笑ってない。

「こちらにいましたか」

「ルチアナ、それにフェルも」

「今三階を見回ってきましたがパクマンは見当たりません」

「ねえ、どうして皆部屋にそんなものがあるの?」

 クロスボウを手にしたルチアナを見てパトリシアが呟く。

「ふぁ……夜中なのに面倒ねぇ。正直関わり合いたくないわぁ」

 一方、他の皆ほどやる気が無いのか、寝間着姿のまま『ブサイクスレイヤー』と書かれた布団叩きを手にしていたフェルナンディアが欠伸をかみ殺す。普段なら真面目にやれと怒るところだが、今のパトリシアにとっては唯一の安心材料だ。

「そういえば隊長。パクマンが昼間隊長の居ないところで『フェルとフェラってなんか似てるよね』とか言ってました」

「やろう、ぶっこわしてやる!!」

「布団叩きで!?」

 一発でエンジンのかかるフェルナンディア。

「二階はもう見たから、後は下だな」

「部屋の中もちゃんと見た?」

「私の部屋は大丈夫だ。誰も……いや、何もない」

(ジェーンね)

(ジェーンですね)

(ジェーンがいるのね)

 ちらり、と皆がドミニカの部屋の扉を見るが、重火器二丁装備の部隊最強ウィッチの前で余計な事を口にするわけにはいかない。

「あ、居た居た、おーい、皆」

 階段を上がってきたマルチナが皆の姿を見つけてトイレの詰まり取りを持った手を振る。

「何持ってんのよ、マルチナ」

 今までで一番謎な武器だ。いや、ある意味嫌だけど。

「だって、トイレに入った途端にサイレンが鳴ったんだもん。ビックリした拍子で……」

「言わなくていいわよ!!」

 そう言えば一人だけ寝間着じゃなく制服姿だ。一体どんな惨事にあったのかは聞かないのがレディの嗜みである。

「一階見て来たけどいないみたい。上は?」

「いや。二階も三階もいない。そうなると屋上か?」

「危機を察知して部屋に戻ったのかもしれないわね」

「じゃあ僕と錦たちで上見てくるよ」

「そうか。ならば我々はパクマンの部屋だな」

 二手に分かれるパクマン討伐部隊。片方はつまり取りだが片方はガチ武装。パクマンの命運やいかに。

 ぞろぞろとパクマンの部屋に向かう諄子たちを見送り、マルチナは屋上……ではなく一階、錦と天城が使っている部屋へと向かう。

「皆、行ったよ」

「すまなかった……」

「ありがとうございました」

 そこに居たのは錦と天城、そして。

「全く、錦ちゃんはうっかりさんなんだから」

「ああ……まさかパクマンだと思っていたものが、片言のロマーニャ語を喋る迷いゴリラだったとはな」

「ウホ、ゴメンナサイ」

 錦の隣でぺこり、と錦に頭を下げる迷いゴリラ。

「正直に話そうと思っていたのだが、皆のあの調子だとこのゴリラにも危害が加わるかもしれないからな……それに……」

 済まなそうな顔をそのままマルチナに向ける錦。

「だ、大丈夫です。私がこっそり洗濯しておきますから、ばれないですよ」

「うん。ありがとね、天城」

「ウホホゥ」

 自分で口走った以上もう手遅れだという事に気が付いていないマルチナがホッとしたように笑顔を見せる。

「全く、自分の粗忽さにあきれるよ、自ら見回りに志願しておいてこれでは……」

「そ、そんな事無いですっ!!」

「……え?」

 珍しく強い口調の天城の声に、思わず錦もマルチナも、ゴリラも天城を見る。

「錦ちゃんはしっかりしてるよ!!いつもドジな私を励ましてくれるし、昼間あれだけトレーニングして、夜も起きてるんだから疲れててもしょうがないよ!!」

「そうだよね、錦は皆の代わりにいつも見回りしてくれてるんだし。こっちこそ、いつもありがとね、それに、ごめん。これからはもっと僕も見回り手伝うよ」

「ウホッホ、ニシキ、イイヤツ、ナカマ」

「あ、ああ、そうか……」

 ぽつり、と呟き顔を伏せる錦。

「あ、錦さん、顔真っ赤ですよ」

「う、うるさい天城!!」

「ウッホホホ!!」

 あはは、ウホホと笑いあう三人と一匹。

 一方。

 

「喰らえ!!ブサイクスレイヤー!!ブサイクスレイヤー!!」

「アヒィン!?は、ハンサムだから痛くないもんッ!!」

「隊長、次は私、私に叩かせてください」

「ヒィッ!!こんな激しいプレイ、パク壊れちゃうっ!!」

 




 しれっとゴリラから仲間認定された錦の命運やいかに。
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