わたしの位置からは、司令の姿が見えない。
不安が、背筋を這い上がってくる。司令との絆は、力強くわたしを後押しすると同時に、不安という足かせにもなる、諸刃の剣。
ただ、時折頭に響く司令の声以外にも、何となくだが司令の存在が意識に浮かぶ。これもスキルとやらの効能だろうか?
おそらく今は、わたしの左側、右の方陣の中に紛れて、最前線でわたしを見てくれている!
敵は、戦闘能力をなくしつつある。
今や司令が創る二度目のファイアウォールに向け、闇雲に打ち込んでくるだけだ。
司令はファイアウォールの幅を狭め、その分厚みを増し、敵の目から少しでもわたしの姿を隠そうとしてくれている。
勿論、炎の壁自体には敵弾を防ぐ効果はない。次々と敵弾がファイアウォールを突き抜け、わたしの艤装アームを掠る。その弾頭が音速を遥かに超えるのは、わたしも敵も同じ。わたしも装束の一部が裂けるが、この程度なら体内のエネルギーを消費しつつも、瞬時に再生される。
敵まで約50メートル、砲戦としては、お互いほぼゼロ距離。
故に、お互いの弾着精度も、ほんの僅か数センチの差。だが、今のわたしなら、直撃でなければ問題ない。
ゼロ距離にして司令の魔法が創り出した、仮想のアウトレンジ。
ここまでくれば、正しく弾着観測の有無で勝敗が決まる。
今こそ、敵が司令のいる右の方陣に再び注意を向ける前に、この戦いを終わらせる!
『そうだ、いいぞ磯風、残った敵の魔物は疲弊している。次、俺がファイアウォールを解除したら、そのまま突入しろ!12.7cmの射線の先に気をつけろ、味方に当てるなよ!』
そうだ!待っていたぞ司令!その命令を!
まるで、この磯風の考えている事が、口には出さずとも伝わっている様じゃないか!
えっ!?
・・・伝わっているのか!?
口には出せない、想いとか!?
い、いや、今はそんな場合じゃない!
司令の姿が見えないという不安を、ついに訪れた機会、敵陣突入の高揚が消し去る。
良いだろう!
この磯風だけでは単縦陣とはいかないが、残敵を掃射する!
『今だ!』
目前の炎の壁が、かき消える。
突然の出来事に、敵の反撃が一瞬遅れる。
敵の驚きが、射線の乱れになって伝わってくる!
中央の敵に着弾、これまでの砲撃で与えた傷の奥で炸薬が弾け爆散、体ごと数メートル跳ね上がる。
後、二つ!
右の方陣に近い方の敵が、跳ね上がり落下する敵の黒煙に紛れ駆け出すわたしに、再度照準を合わせようしている。
その瞬間、敵の体を雷撃が包み込んだ!
一瞬硬直した敵の目に、狙いたがわず連射を叩き込む!
敵は体内の弾薬を誘爆させ、残る一体の射線をも揺るがせて体ごと爆散する。
後、一つ!
最後の1体は、その顎から突き出た単装砲を持ち上げるが、させるかァ!!
魔物の視線が、わたしを射抜く。
まだ、コイツも諦めてはいない、だが!
「磯風を!舐めるなぁ!!」
敵の単装砲の下を掻い潜り、わたしの連装砲が顎の奥へと届く。
顎の中で弾けた12.7cmの連射が、敵のはらわたを抉り、敵は膨れ上がる様に爆散した。
つづく、です。。。多分。