「・・・勝った、のよね?」
女神は水晶球から目を離すと、そのまま床にへたり込んだ。
参った、この「提督」と「磯風」の二人、どうも胃に優しくない。
寧ろ、これまでの勇者の方が手堅いというか、手慣れているというか。
それはそうだ、この世界では、勇者というのは云わばこの世界の最先端。
これまでに培われた多大な歴史を積み重ね、その集積として伝説的な武具を身に纏って、多くの国々が全力でサポートしている。
だからこそ、前回の勇者もここまでは、これた。
あの六蛇の魔物を倒す、ここまでは。
だが、この後に訪れるだろう『姫』に、全て殺されてしまった。
今世の魔王、『戦艦棲姫』に。
前回の勇者は多大な時間を掛けて六蛇の魔物の防御力を削ぎ、屠った。今回の「提督」と「磯風」は、それに比べれば、極めて短い時間で同等の敵を倒している。それだけ考えると、今回の二人の方が幾分、実力はあるのかもしれない。
見ているこちらは、とても気楽には見ていられなかったのだが。
今回も同じ様に、再び追い打ちを掛ける様にあの『姫』が現れるとするなら、前回以上に素早く敵を屠った事で少しだけ、時間の余裕が得られたのだろうか?
余り、役には立たないだろうが、それでも時間は貴重だ。
そうであるならば、何とか今のうちに、あの二人を更なる高みに引き上げてやらないといけない。
もう、負けられないのだから。
ここで二人を失えば今度こそ、国が亡びる。
残された国々も確実に、一つまた一つと失われることだろう。
考えたくもないが、全ての国がその土地を失えば、間違いなく人間は亡び去るだろう。
それだけは、避けなければならない。
だが、少なくともこちらが、あの魔物たちが取り入れた『概念』に対抗する、新たな『概念』を手に入れる事が出来たのは、間違いない。
『提督』と『艦娘』の絆が、あの『深海棲艦』を倒す力となる。
ただ、普通に考えれば、『駆逐艦』は『戦艦』には勝てない。
持てる力が違い過ぎる。
たとえ、『提督』というサポートがあっても、無理な物は無理。
だが、彼の『世界』では、史実として多くの『戦艦』が沈んだ訳で、『戦艦』が『戦艦』を打倒した事例ばかりではないはず。
『駆逐艦』が『戦艦』を倒した、そんな都合の良い事実はないだろうが、それでも、何か手はあるかもしれない・・・。
否、やはり今度の戦いは『提督』が、鍵となる。
女神は今一度、立ち上がった。
残念だが、あの薄い本に浸る楽しみは、後日とするしかあるまい。
女神はベッドサイドのテーブルに置いてあるそれに、今一度未練の視線を向けた。
仕方あるまい、まずは・・・。
第1章、完
第1章、完
つづく、です。。。多分。