今の磯風の力、舐めないで貰おう。   作:アルティフィナ

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第2章、2.装備

磯風は、確か陽炎型駆逐艦の12番艦だったはずだ。俺が「提督」として戦っていた頃の初期装備は、砲雷撃よりも爆雷やソナーに偏っていた記憶があるが、陽炎型である以上、磯風も当然高い雷撃能力を持っていた。

史実としても複数の魚雷発射管を持ち、61cm4連装の魚雷発射管からは九十三式酸素魚雷を発射可能、この九十三式の炸薬重量は約500kgにも達する。魚雷だから当然水中爆発となる故に単純比較は出来ないが、炸薬重量だけで言えば戦艦クラスの(大口径艦砲で主要な、徹甲弾ではなく)炸薬弾頭のそれにも匹敵する。

果たして『深海棲艦』に徹甲弾が有効なのか、炸薬弾が有効かという本質論はさておき(置いちゃうんだ・・・)そもそも大口径主砲や徹甲弾頭には縁のない駆逐艦では、雷撃にこそ主砲を上回る最大の攻撃力があると考えて良いだろう。

 

問題は、残念な事に磯風は、この魚雷を持ってきてくれなかった、という事ですね。

 

 

「すまない、司令。雷装については、かつて装備していた記憶はあるのだが、今のわたしには新たな装備として、具現化する事が出来ない様だ」

 

磯風が普段のドヤ顔な感じを止め、ちょっとしゅんとした表情で落ち込んでいる。

可愛い。

もう少し、このままでいて貰おう。

 

迷宮で行った実験では、俺が用意した実在する剣や弓を、磯風に装備して貰う事も出来た。不思議な事に、磯風がそれらを装備として認識すると、一旦その存在を消し去ることも再度出現させる事も自在に可能となる。

但し、磯風が装備出来る武具の数はそれ程多くなく、12.7cm連装砲も併せても2つまでが限界の様だった。俺が左右両手に、それぞれ剣と盾を持つのと変わらない。

・・・俺は魔術士だから、剣も盾も不得手だがな!

 

磯風の装備容量限界に関しては、それ程、融通が利く訳ではない。

普通に考えて『深海棲艦』相手に剣よりは、12.7cm連装砲と25mm三連装機銃の方が有用だろう。

つまり現状では、簡単には磯風を強化する事は難しい訳だ。

 

 

「俺の方は、魔術というより魔法を駆使して、磯風が使える新たな武器の具現化が出来そうなんだがな。問題は実際にそれを使用していた磯風程には、魚雷の正確なイメージが出来ないし、まして具現化に必要な魔力も足りない」

「つまり、司令にも魚雷は作れないという事だろうか?」

「そうだな」

「魔術士たる司令を以てして、全く役に立たないと?」

「・・・まぁ、そういう事だ」

 

何、何時の間にか、ドヤ顔が復活してるの?

何かこの娘、俺をディスる時は、凄く良い顔になるんですけど?

俺の精神耐性高くないんだし、キミはもう少し落ち込んでくれてても、良いんだからね?

 

 

魔法というのは無から有を創り出せる訳ではなく、実際には等価交換に過ぎない。

素材を元にして、魔法陣や詠唱で明確な変性のイメージを為し、魔力をエネルギーとして新たな構成を形造る。

素材は当然変性が楽な、つまり変化が少なくて済む物が良いが、万物が四大元素に還元出来る以上は、四大元素だけでも創造は出来なくはない。その場合は触媒として賢者の石を大量に消費する事となり、目的の生成物の価値よりも、必要となる素材の価値が上回る場合も生じる。因みに俺は磯風を召喚する為に、俺がこれまでの魔術士人生でため込んできた賢者の石を、全て綺麗さっぱり消費し尽くした。

 

そういえば、確か前世でも磯風を得る為に、全ての資材を消費した記憶がある。

バケツとか。

バケツに何が入っていたのか、今では良く思い出せないが、磯風というのは金の掛かる娘であるのは間違いない。

まぁ、好きな女に貢ぐのは、男の甲斐性ってもんさ。

振られたけどな。

ちょっと、落ち込む。

 

それはそれとして。

簡単に言えば、鉛から金は造れるけれど、消費する賢者の石の価格を考えると、素直に金を買った方が安い訳だ。

 

 

「つまり、魔力はともかくとして、この磯風の持つ魚雷のイメージを、如何にかして司令に伝える事が出来れば、司令の魔法で魚雷を創れる訳だろうか?」

「まぁ、そうなるかな?」

「そ、そうか。うむ・・・」

「どちらにせよ明確なイメージを得ても、俺が扱える魔力では、魚雷を造るには足りない」

 

九三式酸素魚雷は全長900cm、重量で3t近くある。魔法による等価交換を前提とした場合、実はホムンクルスである磯風より断然に重い。

それはそうだ。

胸部装甲と、かなりアレな性格以外は基本的に中学生外見の磯風が、重量的にはそれ程重い訳ではない。

 

そんな事を話つつ(勿論、胸部装甲と性格に関する俺の評価は、俺の胸の内だけの話だ)、磯風と二人でとぼとぼと、迷宮から女神が購入した山小屋に戻ってきた。

女神が転移の魔法陣を用意してくれているらしいが、あちら側から召喚するなら別として、こちらから魔法陣へと帰還転移するならば、転移に際し俺の魔力が要らない訳でもない。

まぁ、たいした距離でもなし、普通に歩けば事足りる。

これを魔力の倹約という。

けして俺がケチな訳ではない。

 

うん?

見上げる山小屋だが、何か少し増改築というか、リフォームされた感がある?

入口に掛けられた認証の魔法を抜け中に入ると、何故か目前に暖簾が?

 

少し、というのは前言撤回。

かなり違う、というか、暖簾に書かれた『秘湯 女神の湯』って何?

 

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