きっと黄泉比良坂は、こんなところでは、と思ってしまう。
そんな薄暗い下り坂を、降りていく。
妖精さんてば可愛いけど、やっぱり元はゴブリンというか。
穴倉好き、なんですね。
ある種共感は覚えるんですけど、自宅の地下をこんなに掘っちゃって、大丈夫かなーと、心配にはなりますね、はい。
前をトコトコと歩く妖精さんを追いながら、俺はこの後の戦いを思い描いていた。
前世史実に於ける最大規模の上陸作戦は1944年6月6日、連合軍によって行われたネプチューン作戦、所謂ノルマンディー上陸作戦だろう。
迎え撃つドイツ軍は上陸予想地点を絞り込めてはいなかったが、防衛の方針に於いても、軍内部での統一が出来ていなかった。
すなわち、上陸した連合軍を敢えて内陸部に引き込み、橋頭保を固めきれないうちに、これを撃滅する意向の西方総軍ルントシュテット元帥。まだ連合軍が海の中でもがく上陸前、水際で殲滅する意向のB軍集団ロンメル元帥とで、軍上層部でも意見が対立していた。
深海棲艦が陸に上がって攻めてくる時、もし橋頭保が必要なら、そこを叩くのはアリだろう。だが、奴らは少数精鋭であり、物資の陸揚げが必要な訳でもなさそうだ。
かと言って、腐っても深海棲艦(腐ってないけどね)の、海上での機動力は地上と違って艦娘に匹敵するだろう。機動力が低下した、上陸してきた深海棲艦を叩くというのは間違っては、いなさそうではある。
そもそも、ドイツ側の元の防衛策は『大西洋の壁』と呼ばれた、云わば大西洋沿岸版の万里の長城であり、約5000kmに及ぶ要塞化という非現実的なプランであった。
その壁が未完成であるが故に、現実的な対策を検討する中で意見が割れた訳でもある。
幸か不幸か、深海棲艦の上陸地点は、如何やら鎮守府の目の前らしい。
どちらかというと、不幸だと思います、はい。
次もそうだと決めつけるのは良くないが、仮に次回も同じであれば、隣国が沈んで出来たあの絶壁は、十分に壁になりうるのではないか?
断崖絶壁と新たな海岸線の間には、僅かな砂浜が形成されている。そこに上陸した深海棲艦に、断崖上から浦風の持つ爆雷を投射する。
前回は深海棲艦が崖の上に上ってからの戦いだったが、それは騎士団が遠距離から投射可能、且つ有効な武器がなく(弓矢だけではキツイよね)、引きずり込む以外に選択肢がなかったからだろう。
「なぁ、妖精さんたちって、あの深海棲艦の接近を検知出来るの?」
『出来ますよ~、あ、今、「やった、ピケット艦獲得!」とか思ったでしょ~?』
ギクっ
『やですよ~、そんな役は~。代わりに深海棲艦が接近したら、発報する仕掛け位なら出来ます~』
おっ、それだっ!
坂を下りきると、鎮守府の玄関にあったのと同じような、緑の木の扉があった。妖精さんが、俺を振り返る。
『工房へようこそ~』