「ふむふむ、要するに、この『提督』とやらが『艦娘』を率いて、『深海棲艦』を粉砕する訳ね!?」
見つけた!
女神は、思わず両手を握りしめる。
魔族が身に着けたスキルは、恐らくはこの世界の『概念』に違いない。
魔王が海から来たから、この様な『概念』を取り入れたのか?
それとも、この『概念』に従い、わざわざ海を拠点にしたのか?
どちらにしても、『深海棲艦』と魔族の生態は、かなり似通っている。ならば、『深海棲艦』を倒せる者を召喚する事が必要だ。
とは言え、問題は幾つかある。
魔族は『深海棲艦』のスキルを身に着け、それを攻撃の手段にしている。
では、勇者にこの『艦娘』の艤装を与えれば、魔族に勝てるだろうか? これなら、宝剣を与えるのと、何ら変わりない。勇者が『艦娘』の艤装を扱えれば、何とかなりそうなのだが。
勇者が『ファイアー!』とかって、いけてると思う。
ただ、使い方が理解出来なければ、あるいは艤装を具現化しても維持出来なければ、宝の持ち腐れというか、失敗に終わるだろう。少なくとも剣に比べるとだいぶ複雑だ。
あの艤装とやらは、直接それで魔物を殴る訳ではないらしい。中にはそういう手段もあるらしいが、マイナーっぽい。
多分、より簡単なのは、艤装を持つ『艦娘』ごと召喚する事。
やっぱり勇者はボツ。
よし、とりあえず、『艦娘』は必要だわ。
だが、『艦娘』だけでは、何やら力を発揮出来ないらしい。
この艤装という武具は、絶えずメンテナンスが必要なところが痛い。
だが、戦いで使ったら一度消して、次の戦いの際に具現化すれば。燃料、弾薬満タンの新品に。
コレなら、なんとか、なるかしら?
そもそも、どうして補給とか、そんなメンドクサイ『概念』を織り込むの?
何処の軍隊だって、普通自分たちだけで戦うじゃない?
かのナポレオンだって、そうじゃん!
現地で搾取しろよっ、って、民に迷惑掛ける案を女神が推奨して如何する・・・。
あ、だから焦土作戦で負けたのか。
まぁ、剣だって折れるし、弓は良くても矢は消耗品か。
仕方ない、ここは妥協が必要だろう。
とりあえず、これならいける。
次。
ふむ、艤装は良いけれど、『艦娘』自身の『入渠』って・・・。
とりあえずは、温泉地を本拠地にすれば?
精霊の泉みたいな?
これも、何とかなるかしら?
霊験あらたかな秘湯、と言うことで。
後の問題は、何故だかこの『艦娘』、妙な縛りがある。
何故、『艦娘』だけで戦えないの?
『提督』って、いるの? 必要なの?
むぅ、確かに兵站を整える事も、戦略を練る者も必要か。
いや、確かにそうだけれど。
何か、納得がいかない。
女を戦わせて、男だけ安全な場所で待ってます、って、何ソレ?
女神の握りしめた手のひらに、爪が食い込む。
いっそ、男を『艦娘』にするかしら?
『男(艦)娘』みたいな?
うーん、ここで余り『概念』を崩し過ぎると、上手くいかない。
仕方ない、ここも妥協が必要だ。
女の子だ。
代わりに『提督』には『童貞失くしたら、死んじゃうスキル』を与えるかしら?
それも良い手だが、戦うより(ヤってから)死ぬ方を選ばれても困るわよね・・・。
だったら連れてくるのは、男には甘い顔はしない娘。この『有明の女王』?とかって娘とかは、少なくともウチでは、お呼びじゃない。
いくら強くても、『ヘイ、テートク!』みたいな娘もダメ。
うん、この娘。『たとえ司令が相手でも、容赦なぞしない』コレだ。
勿論、『本物』を連れてくる。『概念』だけじゃなく、水底に眠る、本当の英霊。
さて、『艦娘』は決まりとして、この『提督』って、どうしても必要?
やっぱり、いらなくない!?
私だって天地開闢以来、独り身なのに!?
・・・コホン。
ちょっと、私情を挟みそうになってしまったわ。
せめて、『提督』も女性にするかしら?
今回、情報収集する中で、この世界にはそういう『概念』も沢山見かけた。
ちゃんとコピーしてきたから、後で一人で楽し・・・。
そうじゃない。
まずは、この『提督』を如何するか、だった。
どうせなら、この『提督』にも戦わせたい。勇者にこの『概念』を学ばせて『提督』に仕立てるかしら?
うーん。流石に一度に二人、それも一人は『本物』の英霊となると、一度に召喚というのは厳しい。とてもこの百合なる世界を描いた薄い本を、熟読する余力もなくなってしまう。
既にこの世界にいる魔術士で、『提督』の才のある輩はおらんのか?
・・・そう言えば一人、何年か前にこちらの世界に流れてきた転生者がいたはず。
ちょっとは気にしてやっていたが(実質、ほってあったが)、確か魔術士になっていた。
こ奴、確か自分は『提督』だったとかって、言ってなかったかしら?
当時は良くわからん事を言うと思って、ほってあったのだが。
・・・むむっ、此奴だ!
元『提督』発見!
何々、前世は、と。
イベント期間中一睡もせず『乙』クリア後、衰弱死?
良く分からんが、死を賭して『提督』をやり切ったのか?
良いではないか。
此奴、魔術士なら猶更、再び『提督』として最前線で死しても、本望であろう。
こ奴らなら、否、こ奴らしか、あり得ない!
これで勝つる!