同じクラスの女の子に意気込んで告白して振られてしまった場合、その後も毎日同じクラスで顔を合わせるというのは、かなりハードというか、何か罰ゲームに等しいのではないだろうか。勿論、相手が30人、40人の中の一人なら、お互い気まずく視線を逸らすだけで、何とか卒業までやり過ごせない事もないだろう。
だが、もし二人しかいないクラスだとしたら。
その気まずさは、かなりの物だろう。
今、俺の置かれている立場は、そんな感じだ。
・・・終わってる。
宿を出て、とぼとぼと工房に向かう。
街の大通りの喧騒も、俺には、まるで耳に入ってはいなかった。俺の後ろには磯風がついて来てくれているが、・・・いや、ひょっとしたら既に俺から逃げ出して、何処かに行ってしまったかもしれない。
宿を出る時も、俺たちの余りに気まずい雰囲気に、宿の主人が『あー、今度ご利用の際は、先にそこの角にある魔法薬の店で、一包、処方して貰ってからが良いかもしれませんぜ。ちーとばかり、高いンですがねぇ』とか、慰めてくれた。
ありがとうな、店主。だが、そういう理由じゃないからな!
寧ろ、ギンギンな状態で放り出されたら、その方が困るだろうが。
こっちは、それ、以前の問題だ。
・・・何の自慢にも、ならないがな。
だいぶ日が傾き、朝から迷宮に潜っていた冒険者たちが、その日の収穫を自慢げに会話しながら今夜の夕餉の店を探している。
かつての国境側には大洋が迫る断崖絶壁に変わり果てたが、反対側の森林地帯はいまだ多くの獣が住み、麓にある地下迷宮も変わらず通常運行中のはずだ。
どれ程、世界が滅亡の危機に瀕してはいても、世間の生活が変わらなければ緊迫感は薄い。
そんなもんだ。
「助けて下さい!!」
いきなり、目の前に女の子が飛び込んで来た。
唐突な事でビックリだが、仮にこの少女Aは、愛宕(仮)としておこう。・・・名前は、重要だ。
胸部装甲的に、ではなく、碧眼金髪且つベレー帽的に。
・・・ただ、こう、何ていうか、弾けたのは間違いない。
とりあえず、その愛宕嬢(仮)を背後に匿いつつ、前方に目を向ける。
俺の目前には、ガラの悪そうな3人の冒険者のなりをした男たちがいた。
「なんだぁ、手前!魔術士風情が、俺らの邪魔しようってか!?」
「優男さんよぉ、ケガする前にサぁ、後ろのその女、こっちに渡してくんねぇかなぁ?」
「こっちもよ、別に捕って食おうっ、てんじゃ、ネぇんだよ。ただそのお嬢さんとな、一緒に晩飯でもどうか、って事なんだ」
あー、良くある、こういうの。
テンプレ、だよね。
1対3だが、初撃で雷撃を真ん中の一人、その腰の剣を狙えば、こいつの動きは止められる。残り二人、火炎を壁状に広げれば、流石に二の足を踏むだろう。うまく手加減出来れば、誰一人命を奪う事もなく、この愛宕嬢(仮)をつれて逃亡可能だろう。
俺の提督時代、確か愛宕も可愛い部下の一人であったはずだ。
そう考えれば俺には、愛宕似のこの娘さんを助ける義務がある。
出来れば、最愛の磯風に手酷く振られたこの傷心を『んもぅ、意外と甘えん坊なのですね』って感じで慰めてほしい。
そういう決意(下心とも云う)を、具体的な作戦計画に昇華させようとした、その瞬間。
既に、目前の三人は周囲の無辜の通行人たちを巻き込みながら、遥か後方へと跳ね飛ばされていた。
「第十七駆逐隊磯風、推参!」
あ、磯風いたの、忘れてた・・・。