「では、司令の力では、海から来る敵は、倒す事が出来ないという事か?」
まぁ、出来ないけどね。
そんなに、はっきりと言わなくても、いいんじゃないかな?
普通の魔物なら、何とかなるんだけどね。一応俺、魔術士だしね。陸に住む普通の奴ならね。普通じゃないのは、ちょっと厳しいんだよね。
腕組みをした磯風が、正面から俺を糾弾している・・・、つもりは多分、本人にはなくて、ただ事実を確認しているだけなのだろう。仁王立ちして睨んでる様にしか、見えないけどね。
とりあえず、ここで見栄を張って、『俺だって、ヤレば出来る!』などと嘘を言っても仕方ない。特に元カノというのは大抵は、こちらの嘘を見抜くスキルがある、というのが世のお約束だろう。
「う、うむ」
「司令一人では、ギタギタに裂かれ、ボロボロにされて殺されてしまうだろう、と?」
「う、うむ・・・」
・・・磯風さん何か、楽しんでません?
口角が上がってますけど?
「そうか。いいだろう。この磯風、戦歴なら、あの雪風にも遅れはとらぬ。・・・大丈夫、わたしが、護ってあげる」
え!?
何、その男前なセリフ!
惚れちゃうよ!?
既に惚れてるケドね?ついでに、既に振られたケドね!
凹むよなぁ。
まぁ、磯風からすれば、自分が振った相手でも、躊躇いなく接するのが武人の嗜み。
というか、今更全く気にしてないというか、単に俺が気にされてないだけ、ということですね。はい。良く分かってます。
さて、こうして無事に『魔術士提督は、実戦では役に立ちません』宣言が出来たところで、いよいよ何かしらの策を考えねばならない。
駆逐艦である磯風の力を最大限に生かすには、やはり雷撃戦だろう。水雷戦隊で夜襲を掛け、アウトレンジから酸素魚雷を叩き込む。
これだ!
磯風と言えば、第十七駆逐隊。磯風と浜風、浦風、谷風、そして磯風の最後を看取った雪風って、磯風しかいないし。
・・・分かってたけどね。
だが、たとえ単艦だろうとも、やはり魚雷の攻撃力は破格だ。
小さな体に大きな魚雷、この娘の胸部装甲以外は中学生並みの小柄な体格でも、装備数は限られるにしても雷撃一撃の破壊力は大きいだろう。正しく小型艦に大きな攻撃力を持たせる、その為の魚雷装備だ。
「磯風、そう言えば磯風の艤装を見せてくれないか?」
「ここでか?」
即答ですか!?
べ、別に下心とか、ないんだからね!?
勿論、間違ってポロリとかしてくれても、一点凝視の瞬間記憶を最大効率で発揮する所存です。
「・・・第十七駆逐隊磯風、推参」
目前に立つ磯風が、眩い輝きに包まれる。
おおっ!
こ、これはっ!
あー、ちょっと期待してたけど、リアルでも〇ューティーハニーみたいな変身シーンはありませんでした。それはそれとして。
あー、それって多分、12.7cm連装砲?
・・・終わった。
この艦娘、魚雷持参してないじゃん!
でも、ひょっとして、一見持ってなさそうでも、やっぱり魚雷発射管とか使うときに現れるのかな?駆逐艦の艦娘って、皆それなりに雷装値高いよね?
「あ、ありがとう。一旦しまってくれ。今の装備は、12.7cm連装砲と三連装機銃の様に見えたのだが、磯風も魚雷を放てるのかな?」
「うむ、元々魚雷も装備していた、というより、わたしの前世での最後は、砲撃処分でその魚雷を誘爆させて貰ったのだが、残念ながら今のこの船体には雷装は無い様だな」
「つまり?」
「・・・つまり、今のわたしに可能なのは、砲撃戦だけだな」
磯風の目が泳いだ。
そうですよねー。
終わった。