仮面ライダー×Fate/GrandOrder 残光記憶都市 作:地水
某所。
ローブを纏ったその男は部屋の中に積み上げられた物体を眺めていた。
白い骸骨によって積みあがったソレはまるで死神が作った器のようだ。
男はほくそ笑みながら口を開いた。
「面白いものだ、サーヴァントというのは…」
その物体から這い出てくる影から漏れ出し、人型の異形へと形成されていく……。
やがて『シャドウサーヴァント』と呼ばれるソレになると立ち上がり、建物の外へと向かっていくその光景にニヤリと笑う。
「人類史に刻まれた偉人・英雄が英霊として昇華され、その一面を使い魔として扱う……」
男は立ち上がり、思い返す。
かつて野望の後一歩の直前にて「とある仮面ライダー」の前に倒され、敗北に散った自身は時空の狭間を彷徨った。
いつ消滅するか分からない自身がどうにか生き永らえる方法を探していた。やがて男が見つけたのは、『一つの世界』。
そこは時間の歪みによって生まれた世界が元の形に戻る際、一部が廃墟となって繋がった世界だった。
人がいない世界へたどり着いた男は、そこで繋がったとある異世界にある『サーヴァント』という存在を知ったのだった。
サーヴァントは男にとっては好都合だった。
すぐさま手持ちの技術を応用して疑似的ながら英霊召喚に成功。男は魔術師のサーヴァント・キャスターとして蘇った。
今ではセイバー・オルタ達三騎の黒化英霊を召喚に成功し、自らの野望のために使役し続けてきた。
「いい、実にいい。これほど素晴らしい『兵器』がどこにあったか!コイツらならば、!」
ローブの男―――キャスターはそう高笑いを上げながら、魔法陣を呼び出してある物を取り出す。
その金色に輝く物体は、立香がよく知る聖杯だった。
――――
ジャンヌ・オルタとディケイドオルタを加えた4人は焚火を中心に囲んでいる。
ライダーの姿から変身を解いた響一郎とディケイド・オルタは、
ジャンヌ・オルタは響一郎を見ながら忌々しく呟く。
「まったく、ライダーのサーヴァントがアイツと同じ類だったとはねぇ…」
「やれやれ……お褒めにいただきありがとうと言っておくよ、アヴェンジャー」
「お互い初対面のはずなのに、」
「いいえ、別に?たーだどこかの誰かさんの同類ってのが気に入らないだけよ」
「そこまでにしておけ。他人に当たるのはどうかと思うぞ」
不機嫌な彼女にそう宥めるのはフードを目深に被った青年。
その青年―――人間時のディケイド・オルタはジャンヌ・オルタに飲み物を注がれたマグカップを渡す。
『一体何処から取り出したのか』と考えがよぎりながら立香は受け取ったマグカップを口に含む。
「どうだ?美味いか?美味いだろう」
「鬱陶しい!黙ってなさいよ仮面野郎!」
「お前の熱はちと危険だなぁ。おれに妬いてくれるのはある意味心地いいが」
「チッ、なによ涼しい顔してイラつかせるわね」
ディケイド・オルタがフードの奥で笑っている事にジャンヌ・オルタはイラつき、舌打ち交じりに悪態をづく。
彼女を他所にディケイド・オルタは立香の方へ視線を向けて、彼に尋ねる。
「確か藤丸立香だったか、お前はおれ達に関していくつか訊ねたいことがあるんだろ?」
「は、はいそうです」
「大体わかった。まずおれとジャンヌ・オルタは君の味方で間違いない」
「少なくともあのサーヴァント達と敵対しているという点では俺達と一緒ですね」
「まあな。おれ……いや、おれ個人の目的としてはこの世界を広げる黒幕をぶったおす事だ」
「一体なんのためにだ、ディケイド」
今まで黙っていた響一郎が口を開く。
やれやれと言いながらディケイド・オルタは続けて話を続ける。
「はっきり言おう。この世界を放っておくと大変なことになる」
「どういうことだ?」
「ここを巣食っている奴によって別の世界……予測だけど藤丸立香の世界、もしくは近しい並行世界が侵蝕されるのさ」
「侵蝕されるってこの世界にか?一体何が目的なんだ…」
「アイツにとって都合のいい世界に塗り替えるのさ。それも魔術師のような常人じゃない奴らでも対処しようがないようにな」
立香とジャンヌ・オルタに向けて放ったディケイド・オルタの言葉に驚愕を受ける。
「魔法……いや違うな、お前達の世界じゃ魔術と魔法は別物だっけか。それらを行使する魔術師がいるのはご存じかな」
「うん、まあ…」
「――もしも、世界中の人間が魔術師だった世界を生み出すと、としたらどう思う…」
「えぇ!?」
「ちょっと待って、んなバカな事できるわけないでしょ?」
驚きの声を上げ、ジャンヌ・オルタは否定する。
そもそも立香の知る魔術の世界は『神秘を秘匿するべきもの』で『迂闊にその神秘を一般人に触れさせてはならない』。
魔力を用いて人為的に神秘・奇跡を再現する術は、魔術師の最大目的『根源へと至る事』への最大の道。
だが、大勢に知られてしまえば魔術師が学ぶ価値がなくなってしまう。
ゆえに、魔術世界とは神秘であり、神秘であり続けるから魔術として存在できるという…。
だから世界中の人間が魔術師の世界という最大の矛盾などありえない。
だがその既成概念をぶち壊してくるようにディケイド・オルタは説明する。
「残念ながらアイツが持っている力はそんなでたらめな願いさえ叶えられるんだよ。今のアイツには」
「アイツ?敵の正体を知っているのか?」
「サーヴァント・キャスター……頭も回るし力もある厄介な奴さ。アイツは事実上科学より魔術が文明として進歩した世界を作ってしまった」
「キャスター……魔術に通ずるサーヴァントか。それが俺達の敵か」
響一郎は飲み物を啜り一息をついてからやれやれ、というふうに力なく笑った。
ガラスが既に砕かれた窓の向こうに立つ塔を見やりつつ、ディケイド・オルタは決意の目をしながら呟く。
「止めなくんちゃならねえんだよ。この霊基(からだ)がそう叫んでるんだから」
「…ともかく、藤丸立香の世界に悪影響を及ぼすことは分かった」
飲み物を飲み終えた響一郎が口を開く。
やれやれと言いながら彼は、ディケイド・オルタに近づいて問いただす。
「だが一つだけ分からないことがある。お前たちの目的だ」
「俺の目的?聞きたいのか?」
「無駄よ、ライダー。そいつははぐらかすの上手いから本音は聞くのは至難の業よ」
「酷い言いようだなアヴェンジャー……ということで、そこは突っ込まないでくれると助かるよ」
「おい、そういうわけには……」
ジャンヌ・オルタの横槍も気にせずディケイド・オルタに響一郎が問いただそうとする。
そこに両者の割って入ったのは今まで黙っていた立香だった。
「とーにーかーく!状況はなんとなくだけど分かった。このままほっといたら悪い奴の思い通りになっちゃうのは」
「どうするんだ、藤丸立香」
「多分、誰かが不幸になるのは確かだ……だから俺はキャスターの企みを止める」
「随分と決断が早いな」
「俺ができることって、このくらいしかないから」
苦し紛れの笑みを浮かべる藤丸立香。
その様子を響一郎はやれやれとため息をつきながら笑って返す。
「ははっ、んじゃあ決まりだな。やってやるか」
「ふん……で?どうするの?敵に見つからずどうやって行くの?」
「そりゃまた何故」
「何故ってアンタねぇ!ただでさえシャドウサーヴァントがいるくせに」
「なぁに、仮面ライダーはサーヴァント(そっち)と負けず劣らずトンデモ具合はすげえよ」
ジャンヌ・オルタの言葉に対してディケイド・オルタはある一枚のカードを取り出す。
そういってディケイド・オルタが掲げたカードには『牛を模した緑の列車』の姿があった。
―――――
巨大な塔の上に建てられた城、この特異点を維持しているキャスターはその内部にいる。
かつて自身の野望の暗躍するために仕えていた城・エメラルド城と酷似させており、かつての敗北を思い出すようだと皮肉めいているとキャスターは思う。
あの時と違うのは、王に仕えてる大臣ではなく強大な英霊を従える王として君臨している。
「忌々しいが今は違う。今はサーヴァントという心強い使い魔がいるからな」
キャスターの手元にはセイバー・オルタ、アーチャー・オルタ、バーサーカー・オルタの三騎士が控えている。
反転しながらも正規の英霊である彼らならば、まず負けはしないだろう。
彼らに劣りながらもシャドウサーヴァントも散らばって位置しており、簡単には近づけはしない。
「さぁ、やってみせろ。やれるものならな」
ニヤリと口角を釣り合上げるキャスター。近づけさせない自信があるからだろう。
もっともその自信が打ち砕かれるのが
まず気付いたのは城の下の塔に散らばっていたシャドウサーヴァント達。
少しの地鳴りの後、何かを削るようなのような機械音が響き渡る。
やがて轟音と共に地面の下から現れたのは、巨大なドリルを持った二両編成の列車。
ライダーカード【ATTACK-RIDE ZERO-RINER】によって呼び出された仮面ライダーゼロノスが所有する時の列車【ゼロライナー】を駆るディケイド・オルタは、ジャンヌ・オルタに文句を入れながらマシンゼロホーンを操縦する。
「ハイヤァァァー!!」
「ちょっと!ディケイドォ!こんなのありなの!?」
「ハッ!もうちっと柔軟になれ!このくらいの無茶じゃないと英霊どもになめられるか!」
「だからって地面を掘って近づくって無理やりすぎるわ!!!」
途中で襲い掛かるシャドウサーヴァント達を蹴散らしながら城へと目指していくゼロライナー。
その背後を追って3号と立香が乗るトライサイクロンが、ゼロライナーから離れまいと走る。
「行くぞ、藤丸。フルスロットルで行くぞ」
「大丈夫、うん大丈夫だ……!」
「どんな英雄だろうがただでついてこれるとは思うなよ」
「いってくれ、ライダー!!」
加速度を上げていくトライサイクロンはゼロライダーの後に続いて向う。
そのあとを追って戦車に乗ったシャドウサーヴァント達がトライサイクロンを狙う。
車体をスピンさせ、ガトリング砲を乱射して薙ぎ払っていく。
シャドウサーヴァントを蹴散らしていく様子を見て、キャスターはニヤリと笑う。
「また阻むか、仮面ライダー……いいだろう!まだまだ私を楽しませるか!いけっ!」
キャスターの命令に従い、跳びあがって向った三騎のサーヴァント達。
塔を上がっていくトライサイクロンとゼロライナーに対し、それぞれの攻撃が仕掛けていく。
「うわっ!」
「しがみ付いてろ藤丸!さらに飛ばすぞ!」
アクセルを踏み、ゼロライナーを追い越してさらに加速していくトライサイクロン。
一方、ゼロライナー内部にいるディケイド・オルタはジャンヌ・オルタを無理やりひっ掴まえて、新しいカードを装填する。
「掴まれジャンヌ!」
「ちょっと待ちなさいってきゃあ!?」
【ATTACK-RIDE!GATACK-EXTENDER!】
ゼロライナーから飛び出したディケイド・オルタらが乗るマシンゼロホーンは、今度は仮面ライダーガタックの愛機である青いバイク・ガタックエクステンダーへと姿を変える。
ガタックエクステンダーはバイクの姿からサーフボードの形になったエクスモードに変形し、飛行能力で飛んでいく。
城から降りてくる三騎のサーヴァントに気付くと、新しいカードを装填する。
「おい、3馬鹿。お前らの相手はこっちだ!!」
【ATACK-RIDE!KERBEROS!】
ディケイド・オルタはG3-X専用のガトリング式機銃・ケルベロスを手に持つと、それを三騎士目掛けて引き金を引いた。
無数の弾丸が発射され、サーヴァント達に向かっていくも効き目が薄い。
三騎相手に大立ち回りを繰り広げる二人に対し、
「ジャンヌ!ディケイドさん!」
「行きなさいよ、マスター!」
「……わかった!無事でいて!!」
トライサイクロンはそのまま塔を駆け上がり、城へと向かっていく。
彼らを見やりながら、ディケイド・オルタは呟く。
「別に言ってもよかったんだぜ?ジャンヌ」
「ふん、3対1じゃあ負けるくせに何言ってるの」
「お優しいこった。ありがたい限りだよ」
皮肉交じりに笑うジャンヌ・オルタにため息をつくディケイド・オルタ。
三騎が武器を構えながら迫る中、二人は走り出した。
―――――
城にたどり着いたトライサイクロンは城壁をぶち破り、最深部へと到達する。
そこにあったのは白い骸骨によって積みあがった器のようなもの。
藤丸立香はそれを見開き、驚く。
「なんだ、これ……」
「『タナトスの器』、膨大な魔力の貯蔵を可能とする魔術道具だ」
「……!!」
振り向くと、そこにいたのはローブの人物―――キャスター。
立香をかばって3号が出ると、拳を前に出しながら構える。
「お前がキャスターか。何故こんな回りくどいことをする」
「回りくどいだと?」
「お前、こっち側の人間だろ。わざわざ二度も同じことをして」
「あぁ、そういうことか。つまり同郷というべき人間ということか、ライダー」
そういってキャスターはローブを外すと、そこに現れたのは一体の怪人。
かつて【オーマ大臣】として魔法の国として暗躍して、住人すべてを怪物・ファントムとして変貌させようとした存在。
巨大な鱗をその身にまとう金色の竜のファントム・ドレイク、それがキャスターの正体である。
「魔力の塊であるファントムの私は、クラスキャスターのサーヴァントとして、『復活』した」
「正直、私は運がよかったよ。あの魔法使いに倒されて消えていくはずだった幻想がこんな形でチャンスを掴ませてくれるとは」
「妄執と狂気しかないあの世界の人間にとって、これほどの策謀は防ぎようがないからな」
ファントム・ドレイクの語り、立香とは構える。
このままにしておけば、いずれ誰かが泣くことになる。それだけは避けたかった。
強大な敵の前に震える立香の前に、3号は訊ねる。
「どうするんだ?立香……不安か?」
「ああ……だけど、そんなの見過ごせない。《まだ、俺はあの世界を取り戻せてはいない》!」
「だったら戦えないお前の代わりに俺が戦う」
「……ありがとう、ライダー」
立香の答えを聞いて一歩踏み出す3号。
右手首を左手で抑え、力を振り絞りながら走り出していく。
「立香の世界を……塗り替えさせはしない!」