仮面ライダー×Fate/GrandOrder 残光記憶都市   作:地水

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 恐らく一番力をいれたであろう戦闘シーン。


第4話

「ハァ!!」

「ヌゥン!」

 

まずぶつかりあったのは、3号が繰り出した拳とファントム・ドレイクの振りかざした大剣・タイラントの攻撃だった。激しい金属音が響き渡り、両者はいったん離れると次の一撃を叩き込むために再び近づく。

 

3号は右フック、左ストレート、右足回し蹴り、左足前蹴りといった格闘攻撃を披露していく。一方、ファントム・ドレイクはそれらをタイラントで捌いていくと、強烈な一撃を3号へ向けて斬り放った。

 

「食らえ!」

「ぐあっ!?」

「ライダー!」

 

強烈な一撃を叩き込まれた3号は軽く吹っ飛び、地面へと叩きつけられる。

マスターである立香は安全を考慮して少し離れた所の隠れており、迂闊に手出しはできない。

その立香にタイラントの剣先を向けたファントム・ドレイクは嘲笑しながら鼻で笑った。

 

「おっと、出てきていいのかな。誰とも知らぬマスターよ。真っ先に斬られるのはいつも弱いものからだ」

「ぐっ……」

「ふん、どうせ消えるのはサーヴァントでもマスターでもどっちも一緒だ。ならば私は楽な方をとらせてもらう」

 

ファントム・ドレイクはそういうと、タイラントを構え立香へ迫り始める。

戦闘能力を持つサーヴァントならまだしも、一般人である立香では怪人に対抗できる手段はない。

死が目の前に近づくその時、ファントム・ドレイクの背後から手刀が振り下ろされる。

 

「―――させるかっ!」

「なに!?」

「ライダー…チョップ!!」

 

3号が放った必殺の手刀【ライダーチョップ】。かつて伝説の1号ライダーが使った必殺技の一つであり、本来初代仮面ライダー達を倒すために作られた3号にとっては組み込まれた技と言えるだろう。

咄嗟にタイラントで受け流すも、あまりの勢いにタイラントは弾かれてしまい遠くへと投げ出されてしまう。

 

「チッ、どうやらなかなかやるではないか!」

「これでも一応はサーヴァントでな。少なくともマスターを守るのは当然だろう」

「ふん、戯言を……少しは面白くなってきたではないか。そうでなくては楽しみがいがない!」

 

不満そうな態度から余裕を取り戻すと、ファントム・ドレイクはあるモノを差し出す。

それは、手形のデザインがされた大きなドライバーで、ドレイクは腰辺りにそれをつける。

3号は既視感を感じ、そしてそれが『かつて戦ったことのあるライダー』の物と酷似していた事に気づくのはすぐだった。

 

「それは……まさか貴様も!」

【シャバドゥビタッチヘンシーン、シャバドゥビタッチヘンシーン】

【チェンジ・ナーウ】

「―――変身!」

 

黒色の指輪・チェンジウィザードリングを変身ベルト・ワイズドライバーに翳すと、魔法陣が出現。

魔法陣がファントム・ドレイクの体を潜り抜けるとそこに現れたのは金色の魔法使い。

背中のマントを広げ、高らかに名乗り上げた。

 

「サーヴァント・キャスター、改め仮面ライダーソーサラー……さぁ、お楽しみはこれからだ!」

 

仮面ライダーソーサラー。

かつては魔法の国を作り上げ、魔法使いの住人全員を魔物・ファントムに仕立て上げるために暗躍していた悪しき魔法使い。

一度はとある魔法使いによって倒されて野望は阻止されたが、度重なる奇跡と偶然を以て再びその姿を現した。

 

 

―――――

 

【ATTACK-RIDE!BLAST!】

「ぶっ飛べ!」

 

ディケイド・オルタの「アタックライド ブラスト」による射撃が、三騎士達に叩き込まれる。

その猛攻の隙をついて近づき迫ったジャンヌ・オルタが炎を翳して攻撃を仕掛けた。

 

「ぶっつぶれなさい!」

「グッ!?」

 

ジャンヌ・オルタの炎を避けながら後退するセイバー・オルタ。

彼女と入れ替わってバーサーカー・オルタがジャンヌ・オルタの相手を、その後方ではアーチャー・オルタが援護射撃をディケイド・オルタに対してお見舞いする。

相手の統率の取れた連携にディケイド・オルタは応戦しながら舌打ちをする。

 

「チッ、こうまで厄介とは……こいつら、仲良すぎなんじゃねえのか!?」

「そんな事は本来の本人達に言うのね!もっとも嫌な顔されるだけだろうけど」

「犬猿の仲ってやつかよ畜生」

 

ディケイド・オルタは新たなるカード「ATTACK-RIDE TORNADO」を装填。

仮面ライダーカリスが持つラウズカードの一つ『ホークトルネード』の力をライドブッカーに宿し、引き金を引くと巨大な風の渦が巻き起こる。

風の渦は竜巻と化し、三騎士の身動きを封じる。

その隙に物陰へ避難した二人は、倒すための対抗策を練っていた。

 

「さぁて、どうするかな。対抗策はあるかい」

「ないわよ。そんなもの。そういうアンタは考えてるの?」

「あるぞ」

「ふん、ほら見なさい、アンタが思いついてるなら私だってとっくに思いついて……え?」

 

待っていた答えと予想外な答えに素っ頓狂な声を上げるジャンヌ・オルタ。

ディケイド・オルタは彼女に何枚かのカードを見せる。

それは、ディケイド・オルタが使ってきたアタックライドとは別の種類のライダーカードのようだ。

見たこともないカードにジャンヌ・オルタは首をかしげるが、ディケイド・オルタは余裕綽々と話す。

 

「とっておきだ。俺自身の宝具と言ってもいいかもな。そいつをここで開帳する」

「アンタの宝具ですって……?」

「ま、サーヴァントを一気に仕留めるには手数不足なんだがまあ大丈夫だろう」

「チッ、何が大丈夫なのよ?根拠あるの?」

「なぁに。おれとお前がいるんだからだ、ジャンヌ」

「ふざけんじゃないわよ!ああもう口説くならもうちょっとマシな格好しろ!」

 

顔を赤面しながら拳をぶつけるジャンヌ・オルタを、ディケイド・オルタは軽くあしらう。

その直後、三騎の取り囲んでいた竜巻が斬撃によって吹き飛ばされ、そこからセイバー・オルタが這い出てくる。

 

「さあてと、そろそろ逆転の一手をやるか」

「フン、なら任せましょうか。ディケイド・オルタ」

 

ジャンヌ・オルタは不敵な笑みを向けると、セイバー・オルタ相手に腰に携えた剣を引き抜き、炎を纏わせて飛び掛かる。

その一方、ディケイド・オルタはアーチャー・オルタとバーサーカー・オルタと対峙し、彼らに対して先程のライダーカードを取り出す。

 

「よーく見とけよ。これがおれの宝具《とっておき》だ」

 

ディケイドライバーにその「黄金色の無敵の戦士」のカードを装填する。

 

【FINAL-KAMEN-RIDE!EX-AID MUTEKI-GAMEAR!】

 

【輝け!流星の如く!黄金の最強ゲーマー!ハイパームテキエグゼイド!!】

 

 

黄金色の流星がディケイド・オルタの姿に纏わりつき、その姿を別のライダーへと変えていく。

その姿は流星を思わせる金色の戦士。

『仮面ライダーエグゼイド ムテキゲーマー』となったディケイド・オルタはバーサーカー・オルタへ指を指して言い放った。

 

「テメェにはこれがお似合いだ。さぁ、こっからは逆転ゲームでクリアと行こうか!」

「チッ…!!」

 

挑発と言わんばかりの言葉に舌打ちを曝したバーサーカー・オルタは得物の朱槍・ゲイボルグを構え、飛び掛かる。

Dエグゼイドはライドブッカー・ソードで防ぎつつ、拳を突き出して応戦。

暫く剣と槍、素手と素手のぶつかり合いの末にDエグゼイドがムテキゲーマーの力を込めたライドブッカーによる斬撃を放った。

 

「どっせい!」

―――ガキャアァァァァン!!

「なっ……!?」

「これで自慢の武器がなくなったな!ゲイボルグがなくなればこっちのものだ!」

 

エグゼイドの攻撃によりゲイボルグは真っ二つに折られ、光の粒子となって消えていく。

相棒というべきいよいよ後が無くなったバーサーカー・オルタは構えを取る。

彼の体から発生した闇が彼の体に纏わりつき、漆黒の魔獣のような外骨格へと変化していく。

 

「全呪解放、加減は無しだ……ここまでしてくれたんだ。この絶望砕いてみろ!」

「喋れたのか、お前……まあいい、だったら!」

 

Dエグゼイドは金色のエンブレムが描かれたカードをディケイドライバーに装填。

互いが互いに必殺の一撃を決めるために、その身に力を溜めていく。

やがて、力が溜まり切ったとき、両者は相手を仕留めんと必殺の一撃を繰り出した。

 

「――噛み砕く死牙の獣《クリード・コインヘン》!」

 

【FINAL-ATTACK-RIDE!E-E-E-EX-AID!!】

【キメワザ・ハイパークリティカルスパーキング!】

 

「「ハァァァァァァァ!!」」

 

バーサーカー・オルタの繰り出した【噛み砕く死牙の獣《クリード・コインヘン》】による刺突の一撃と、Dエグゼイドの繰り出した必殺キック【ハイパークリティカルスパーキング】。

両者の放った技はぶつかりあい、その余波が周囲のものを吹き飛ばしていく。

今にも内側から食い破らんと突き貫こうとするアーマーの棘がいくつも分裂し、Dエグゼイドへと迫り行く。

だが、Dエグゼイドの蹴りの勢いは止まる気配はなく、それどころか勢いがどんどん増していく。

 

「うぉおおおおおおおお!!」

 

黄金の流星のような一撃がバーサーカー・オルタの纏う『噛み砕く死牙の獣(クリード・コインヘン)』を打ち砕いてゆく。

そして、バーサーカー・オルタの体にDエグゼイドの連続キックが叩き込まれた。

 

 

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【GREAT!】

【PERFECT!】

 

「これでフィニッシュだ!!」

 

【究極の一発!完全勝利】

 

Dエグゼイドの必殺の蹴りを受けたバーサーカー・オルタは、爆発を起こしながら散っていく。

その去り際の顔は僅かながら、笑っていたように見えた……。

 

だが、バーサーカー・オルタ撃破から間髪入れず銃撃が降り注ぎ、Dエグゼイドを襲う。

アーチャー・オルタが二丁拳銃を合体させ、双剣として切りかかっていく。

 

「チッ…!次はお前か!」

「随分と馬鹿な成り立ちの英霊がいたものだ。呆れを通り越して笑えてくるよ」

「お前も喋れるのかよ……!」

 

双剣から二丁拳銃の形に変えて、近距離射撃を仕掛けるアーチャー・オルタ。

銃口から放たれる銃弾はムテキゲーマーのボディが弾いていくが、それでも猛攻は止まらない。

 

「ああそうさ。自分が目指していた者が目の前にあると……無償に腹が立つ!おまえにも、己自身にも!」

「てっめぇ……」

「お前のせいで嫌でも思い出すよ……かつて俺が抱いていた願いや、そのために犯してきた罪も!」

 

接敵したアーチャー・オルタが引き金を引き、零距離で銃口から穿たれる極光の銃弾。

【偽・螺旋剣《カラドボルグ・Ⅱ》】の強烈な一撃により、Dエグゼイドの姿は元のディケイド・オルタの姿へと戻ってしまう。

 

「お前はどっちだ……英雄!

自分より他人が大切だという考えか?。誰もが幸福であってほしい願いなど空想のおとぎ話でも信じているのか?そんな夢を抱いてしか生きられぬのであれば、抱いたまま溺死しろ!」

 

最後の一撃を放たんと、吹き飛んでいくディケイドへ銃口を向けながら詠唱を始める。

無限の剣製《アンリミテッド・ロストワークス》、着弾すれば内部から固有結界を発生させ、対象の内部から剣が突き出るオルタナティブ化した彼の宝具。当たればサーヴァント相手でも一溜りはない。

一方、強烈な一撃をくらいながらもディケイド・オルタは態勢を立て直し、何とか着地をすると彼に向けて口を開いた。

 

「―――何を言うかと思えば、答えはもっと単純だぜ。名もなき英雄《ノーネーム・ヒーロー》」

「……なに?」

「仮面ライダーってのは正義のために戦ってきたじゃない、人間の自由のために戦ってきた!」

 

ディケイド・オルタは新しい一枚のカードを取り出し、ベルトに装填。

それと同時に子供が想像する未来都市のような明るい巨大なステージが出現し、沢山のボトル型アイテムが出現する。

 

「そんでもって愛と平和、どっちも守り抜く!そんなあいつらを否定させたりはしないためにおれはここにいるんだ!」

【FINAL-KAMEN-RIDE!BUILD-GENIUS!】

「あえて言おう、ビルドアップ!」

【完全無欠のボトルヤロー!ビルドジーニアス!スゲーイ!モノスゲーイ!】

 

ディケイド・オルタの決め台詞と共に、その姿を白を基調とした仮面ライダーへと姿を変えていく。

『仮面ライダービルド ジーニアスフォーム』と変身したディケイド・オルタは、アーチャー・オルタとの間合いを一瞬で詰めて、片腕で彼の首根っこを掴みながら耳元でささやく。

 

「覚悟しろ、錆鉄。こればかしはちっときついぞ」

「なんだとッ!?」

【FINAL-ATTACK-RIDE!B-B-B-BUILD!】

【ワンサイド!逆サイド!オールサイド!ジーニアスフィニッシュ!】

 

Dビルドから虹色のエネルギーから溢れだし、アーチャー・オルタ共々二人を包み込む。

それは『感情のエネルギー』、人の強い想いを攻撃力へと変換する感情がエネルギーの奔流となって両者を追い込んでいく。

特にアーチャー・オルタにとってビルドジーニアスの『感情を与える事』のソレは劇薬に等しくその身の著しく削っていく。

 

「貴様ぁッッ!!」

「なぁに一人寂しくではいかせないさ、地獄の相乗りと行こうか付き合ってもらおうか!!」

 

Dビルドはさらにエネルギーの奔流を加速させていく。

そして、感情のエネルギーの臨界点は超え、大爆発を起こした。

 

 

――――

 

 

一方、セイバー・オルタと対決するジャンヌ・オルタ。

自前の剣も折られ、宝具の一つでもある呪いの旗だけを構えて応戦する中、遠くで起きた爆発を感じ取る。

 

「チッ、アイツ……!やられたんじゃないでしょうね!」

「………」

「なによ、言いたいことあるなら言え!」

 

無言のセイバー・オルタにジャンヌ・オルタは業火を再び巻き起こして浴びせようとするが、叩き防がれて接近を許してしまう。

目の前に迫るは、振り下ろされた反転した黒き聖剣。一太刀浴びればたまったものではない・

 

(こんな所でやられるわけには……!)

 

走馬灯のように思い出したのは、分かれる前にディケイド・オルタから渡された一枚のカード。

銀色の南蛮鎧の仮面の戦士が描かれたそのライダーカードを懐から掴み、念を通す。

すると、セイバー・オルタの聖剣を防ぐように現れたのは二つの武器。

果実の断片を模したバズーカ銃と、日本刀型の銃剣一体武器。

 

『無双セイバー!』

『火縄大橙DJ銃!』

「―――おっらあっ!」

 

ジャンヌ・オルタは旗をセイバー・オルタの方へ投げつけ、その現れた武器を手にする。

無双セイバーの刀身と火縄大橙DJ銃の銃口を通し、一本の大剣のような形に合体させる。

 

「まったく、これでダメなら恨むわよ……!」

 

対してセイバー・オルタは聖剣を構え、光を収縮。黒く染まった光の剣と化し、必殺の一撃を放とうとしている。

狙うは目の前に立つ竜の魔女……!

 

「『卑王鉄槌』、極光は反転する。光を呑め……!」

 

 

「約束された勝利の剣《エクス……カリバー!》」

 

 

放たれた光を飲む闇の斬撃が迫る。

先に必殺技を放たれてジャンヌ・オルタは身構える……だが、彼女の傍に立った『銀色の仮面の戦士』が身を挺してエクスカリバーの斬撃を防ぐ。

ジャンヌ・オルタにとって何者なのかは分からないが、今がチャンスと察した彼女は火縄大橙DJ銃 大剣モードを力強く振り下ろした。

 

『極チャージ!』

「ハァァァァ!!!」

 

ジャンヌ・オルタの業火と混じった炎の斬撃がエクスカリバーを飛び越えてセイバー・オルタの体に刻み込まれる。

仮面が砕け、その奥の眼が露になってジャンヌ・オルタを捉える。

 

「フン……一人だけでは無理だったではないか。突撃女め……」

「言ってなさい……今度はどこぞの馬に操られないようにね。アホ毛女」

 

彼女の毒の入った言葉を聞いてセイバー・オルタは満足そうに消えていく。握っていた武器は空気に溶けるように消えてゆき、ジャンヌ・オルタは仰向けに倒れながら地面に突っ伏した。

 

「まったく、正義のヒーローなんて柄じゃないわよ……まったく」

 

「生きていたら。あいつに文句言ってやるんだから……!!」

 

ジャンヌ・オルタは特異点の広がる空を見上げながら、恐らく生きているであろう『彼』に対してぶつくさとつぶやいた。

 


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