インタビュアーが、30バンチ事件を知っていますかと質問してきた。組織が実行した忌々しい事件を聞いてくる事は想定済みだったが、話したくない事件だと私は思う。
エゥーゴの捕虜になった後、私は30バンチ事件をアングラ本やインターネットで調べた。事件の記録映像を見た時に私はティターンズの恐ろしさを実感した。何の罪のない1500万人の住民を全滅させた事実はあまりにも重い。
「私がその事件を知ったのは0087年です。それまでは徹底した情報統制が敷かれていたために、私のような士官は知る由がありませんでした。報道では爆発的な伝染病が流行したと伝えられていましたね」
「30バンチ事件を知った時、私は衝撃を受けました。ティターンズがやっていることはジオンと同類ではないかと思いましたね。毒ガスはジオンが使った細菌兵器へとして有名ですから」
インタビュアーが、ティターンズが非人道的な作戦を行なった理由を問いただしてきた。
「当時、30バンチでは連邦政府を支持しない集会が行われていました。本来ならば、デモ活動は催涙弾と放水車で鎮圧します。ですが、作戦を主導したバスク・オム大佐は、スペースノイドに恐怖心を与えるために毒ガスを使ったと私は考えています」
インタビュアーが、ティターンズが増長した原因は何ですかと聞いてきた。私は「話すと長くなりますよ」と前置きを入れながら語る。
「私達には地球圏の平和を守っているという自負がありました。ジオン残党を掃討する事で争いのない平和が訪れる。私はそのように考えていました。私はティターンズの正義を信じていたのです」
「ティターンズは連邦軍よりも1階級上という扱いがあり、エリート意識が非常に強かった。偉そうな雰囲気や横柄な態度が目立ちましたね。私はティターンズ隊員が連邦軍の軍人を殴り付ける場面を見たことがありますよ」
「一年戦争やテラーズ紛争を経験した連邦軍兵士は私達の姿を見て眉をひそめていました。連邦軍のベテランから見れば私達は実戦経験が少ないヒョッコでしょうね」
「隊員の中にはスペースノイドを宇宙人と呼ぶ者がいましたし、ジオン残党兵に虐待を行った隊員も少なくはありませんでした。一部の隊員がスペースノイドを見下していた事は事実でしょう」
「いつからか、私達は地球の重力に魂を縛られた人になりました。地球を第一に考える地球至上主義に捕らわれていたのです。その考え方がティターンズが負けた理由だと思います」