お前なんで俺ん家にいんの? 作:アナタは
無我の境地。
それは己の限界を超えた者のみが到達できる境地である。
俺は今そこに至ろうとしていた。いや、そこに至らざるをえないと言っていい。きっと見る人が見れば今の俺には迸るオーラが立ちこもっている事だろう。よし、これで俺もテニヌの王子様だぜ。
………………。
「……んっ」
「あのっ」
「…………なに?」
「ここからどいてくれたりは……」
「は?」
「あっ、すみません黙っときますね」
ちょちょちょちょっとさっきの声エロ過ぎやしませんかね!あと怖すぎワロタ。
まずは状況を説明せねばなるまい。俺が無我の境地へと至らざるをえなくなった理由を。
ズバッと言っちまうと俺が胡座かいて座ってる所にすぽんと収まっているこのオシャンティーな赤メッシュな女の子のせいである。
美竹 蘭。それがこの女の子の名前だ。
Afterglowのボーカルで俺の幼馴染である友希那とも劣らない実力を持っている将来有望株。
口数は少ないし少し怖いが友達思いで負けず嫌いという可愛い一面もあったりする。暗いところやお化けが苦手なのも俺的にポイントは高い。こう、普段と違って涙目とかになられて弱いとこ見せられると男的にはグッとハートを持ってかれる。いやそれ反則だわマジで。
まぁ俺が言いたいのはそんな事じゃないんだけども。
朝目が覚めてなんか揺れてんなって起きたら覗き込むように俺を見てる蘭の姿が。そしてそのまま座れって言われてこうなった。
謎である。謎である。大事なことなので2度言いました。というか当然の疑問なんだけど。
「なんで家にいんの?」
「なんか文句あるの?」
「いや無いです()」
ふぇぇぇ。怖いよー。
ほんと俺の家のセキュリティはどうなっているのか。
「ところで何してんだ?」
「んー、作曲」
「ほほう。作曲ってこんなんなってんなー」
と言ってみたものの全く分からん。
「けどこれここでする意味あんの?」
「文句あるの?」
「いやねぇけど珍しいなって。お前こういうの1人でやるタイプだと思ってたし」
「……私だって行き詰まることだってあるし」
ちょっと拗ね気味に言う蘭。なんやそれ可愛良すぎかよ。
それにしても蘭が行き詰まるとは珍しい。
勝手な想像になるがそういうのを苦もなくイメージを形に出来るやつだと思っていたんだが。
「ちょっと今回はいつもと違う曲風にチャレンジしたくて」
そこでなんでちょっぴり顔を赤くして俺を見上げるんですかね。上目遣いやめれ。
ところでさっきから目の前にある後頭部、まぁ蘭の頭なのだが髪の毛がさっきから俺の顔を擦れてこしょばい。いやそれよりもなんなんめちゃいい匂いやんふざけんなもっとやれ。んんっ!すまない、取り乱したようだ。いやこれは不味い、色々とこの体勢は健全な思春期の男の子的に宜しくない。だと言うのにこのすぽんと収まっているお嬢様は呑気に作曲している。あの、別に俺の上じゃなくても出来るよね?
だがさっきから話し掛けても威圧されて反論が封じられている。
ふっ、今にも俺の内なる野獣が暴れ出しそうだぜ。すまない蘭取り敢えず……
「っ!?ななな、なんなの!?」
「あ、悪い。ちょっと腰痛くなってきたから体勢変えたくて」
「あ、え?あぁ、うん……」
俺は蘭の前に手を回しほんの少し持ち上げて後ろへと移動する。ふぅ、これで背もたれが出来たな。
…………。
えっと蘭さん何で俺の腕掴んで離さないの?
これめっちゃ恥ずいんだけど。
「えっと……離してくれない?」
「やだ」
「いや割とこのじょ」
「やだ」
「あ、うん分かった」
何言っても無駄なんですねよく分かりました。にしても女の子はどうしてこんなにも柔らかいのか。友希那に散々謎のホールドくらって思ってたがこれぞ人体の神秘。
暫くこのお嬢様のお気の召すままにしておこう。まぁちょっと体勢キツイだけで特に無害だし役得だと思えば、ね。ちかく髪の毛サラッサラだなぁとかなんのシャンプー使ってんだろとか考えているとリズミカルで綺麗な鼻歌が聞こえてきた。
おお、さすがだなAfterglow。鼻歌超綺麗じゃん。内心感心してると突然鼻歌が止まった。あれ、と首を傾げていると突然蘭がふるふると震えだして何事かと思えば。
「……忘れて」
「何でだよ。あんなに綺麗な鼻歌だったのに勿体ない」
「っ〜〜〜!?」
「いってぇ!?抓るな痛てぇから!」
ふっ、照れ隠しか。可愛い奴め。
……嘘です。だから抓るのやめて結構痛いから。
それから暫く無我の境地を維持していた俺だがふと気になった質問を投げ掛けて見ようと思った。
「あのさ」
「……なに?」
あ、相変わらず不機嫌っすね。俺なんかした?そんなにツンケンされてたら聞づらいんだけど。
「この体勢、良い感じ?」
「うん。凄くいい……って何言わしてんのよっバカっ!」
「っておいっ!?」
ドタバタ、バタン。
顔を真っ赤にした蘭が急に振り向くもんだから体勢を崩して此方に倒れ込んできた。咄嗟に抱き抱えたから大丈夫だったが怪我したらどうするんだ、危ないじゃないか。
「大丈夫か?」
「…………」
「?どうした、どっか打ったのか」
返答がない。やっぱりどっか打ったのか。そこで俺は身体を起こそうとするが可笑しい、身体が持ち上がらない。
えっと蘭さんや、何故にそんな力入れてはるんですかね。
「えっと……離してくれたりは」
「やだ」
「いやいや流石にこの状態は」
「やだ」
お主は子供か。ギュッと抱き着いて離れない蘭はまるで駄々を捏ねる幼い子供のようだ。全身に感じる女の子特有の柔らかさと確かに胸に感じる男にはほぼない女性特有の膨らみ。それを正確に、全身に感じ取れてしまって心臓が激しく脈打つ。や、やばい。改めて意識すると色々と不味いのでは?
部屋はなんの音もしない静寂が支配していて俺の心臓の音だけが鮮明に感じ取れる。いやこれは俺だけじゃなくて……
「蘭お前……」
そこから先は言えなかった。いや言おうとしたら止められたというのが正しい。
ガバッと顔を上げた蘭はそのまま俺の顔の横まで自分の顔を落としていき、そして俺の頬に柔らかい感触が走る。余りにも突然の事で唖然とする俺から逃げるように離れた蘭の力強い瞳は俺を射抜き離さない。
「………………から」
「……えっ?」
「そういうことだからっ!」
叫ぶようにぶちまけて蘭は部屋から出て行く。そして頬を抑えながら唖然とする俺。
…………。
いやどういう事なんだ?
次の日聞いてみたら腰の入ったいいビンタを頂くことになった。理不尽だ。
加藤 虎之助
朝起きたらいつも違う人が居ることに違和感を持たない。
これも幼馴染ズの陰謀か。
美竹 蘭
ツンデレ。しかし湊友希那のオリ主に対する態度を見てありゃねぇわと思って少し丸くなった。けどやっぱり恥ずかしい。
何しても動じないので最近は割と開き直って好き勝手やってる。
実はあすなろ抱きに憧れてた。
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