友人枠だが百合に挟まれと圧力が来ている。   作:杜甫kuresu

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「男が首突っ込むから出てくる尊い展開も有るよね!?」という怒りで書きました。男がいるだけで犯罪みたいな風潮にも逆らいました。反骨精神の塊。
でもやりますよ、だって書きたいから。

ちなみに私は純愛が好みです、浮気はさせません。それだけは顔も知らない私を信用して大丈夫です。


他の本に重ねて堂々と置こう

”百合だけを愛でる部下を常に私は諭してきた。やはり鉄道の傍に咲く、雑草の中に紛れた百合を愛でる事こそ情緒であると感じるし、何よりそう思う性質の者は関わる人間も当人も幸せに近づけてくれる筈だと思うからである”

 

――陽斜暦1042年 グローネス・ルチアーノ 帝国会議後における、統率者としての人間査定の質問への返答より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 単純に言うと、俺は掃除だけして屋敷に雇われていたい。

 例えば主とのラブロマンス? 上流階級のあれこれをぶち壊す恋愛は無理だろ。

 同僚とのオフィスラブ? 公私混同してパフォーマンスが下がると俺が疲れる。

 

 恋愛に首を突っ込むのも好きじゃない。ごちゃごちゃと言ってしまう性分は反省すべき所で、恋愛なんてもうかなり個人的でワガママにやっていい領域。俺の価値観を持ち込んじゃあ強要と変わんないだろ?

 

 だから雇い主の主従百合に首を突っ込むなんてとりわけ。ぜーったいにゴメンだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言える賢い転生者だった。昔は。

 

「はぁ~」

「いつまで溜息をついてるんだ、仕事をしろ」

 

 すんませーん、と抜けた調子で答えたら怒られた。相変わらず我らが当主殿はお硬いぜ、いや正常だけど。

 普通の職場で敬語も使えないやつは雇ってもらえないが、俺は「転生者的に年上だよな」と感じてしまってまーったく敬語が使えない。元々人に使えとも言わないし。

 

 今思うと雇ってくれてる彼女は神だな。崇めるべきかもしれん。

 

「いや天下のヘルメス様にわたくしめふかーいお辞儀とか靴舐めとか必要かと今思いまして。して欲しい?」

「結構。やったら顎を外すつもりで蹴ると思う」

 

 やーんドS。そういう所も、コ・ワ・イ♡

 

 から回った一昔前のオネエキャラみたいな言動はさておいて。しかし実際ヘルメス・ルチアーノという少女に俺は感謝するべきだ。

 砂金でもまいたような輝く色のストレートロングに、やはり上流階級は顔に宝石でも埋め込むんだろうか。翡翠に近い輝く瞳。

 

 言うまでもなく美少女。体型が少々スレンダーでバカにする命知らずもいるかもしれないが、真面目な話それはそれで女性美ではなかろうか。

 恐ろしい事に頭もよく、戦闘力も地味に高く、つまり完璧なお方であり、俺から話しかけるのはそれなりに無礼である。位も高いしね。

 

 なんて事を考えながら小箒を遊ばせてると、とうとう俺は溜息をつかれる。

 

「仕事に不満はないが、どうしてそう、何だ? 動作が適当なんだ…………そういう調子だから誤解されるんだぞ」

「誤解じゃなくて多分事実です」

 

 掃除だけは俺がハウスダストに弱かった前世が関係するだけ。基本かなりテキトーに生きてる自堕落な男だと思いますようんうん。

 

 というのも俺、ここに働いて長いので若い割には現当主のヘルメスの部屋の掃除を仰せつかっている。

 ひんしゅく、そりゃ買うだろ。しかも給料は高いが仕事には誇り高いどころか、高いところのホコリを落とすだけのプライドゼロの始末なので、「何やコイツ」みたいな視線をよくもらう。

 でも隠すの面倒だからな、しゃーない。自称「掃除ガチ勢」、使用人ガチ勢とかではないのが慎み深さとスタンスを端的に表してんじゃないだろうか。

 

「しっかりしてくれ、使用人の品位も重要だ」

「じゃあ首にしてもいいと思いますよ、教育のコストって結構かかりますから」

「そういう事を言ってるんじゃない」

 

 怒られた。でも費用勘定で言えばそうだと思わんかね。開き直るようで悪いが。

 

 昔は泥だらけでカブトムシを誇示したヘルメスを俺がたしなめていたが、気づけば俺が怒られる立場になった。溜息つくしヲタ笑いキモいしそりゃそうなんですけど。

 でも。昔に比べてずーっとキリッとして「しまった」。

 

 五年前に両親共々お亡くなりになってからこうなった。うなぎのぼりだった俺の呼び名は「お兄ちゃん」から「貴方」に超格下げされたんだぜ酷えだろ? まあ素行の悪さがバレただけの説もある。

 

 仕事といえば。全く関係ない事を考えている俺に健気にもお小言を言っていたヘルメスに振り向く。

 

「そう言えばヘルメス様」

「様は要らない」

「まあ仕事なんでね。ところでお言葉ですが、俗世のアレな本はもう少ししっかり隠しませんかね?」

 

 ヘルメスが口を開けて固まった。

 

 いやー、でもさ。ベッドの下とかベタベタ過ぎる。というかホコリ溜まるし普通に掃除しちゃうからさ、ええっと。なあ?

 赤くなる頬を手で隠しながらあからさまにうろたえた声で怒鳴られる。

 

「な、何の話だ!? というか見たのか、見たんだなそのニヤケ面! おい!」

「いーえ? 見ておりませんよぉまさかまさかぁ。まあ少々内容が特殊というか……………………言葉責め好きなのな」

 

 しかも重ったるい。百合のレーベルもたしなめた俺ですら「シーンの描写重ったるぅいっ!?」って叫びながら本を投げかけたレベル。

 

「――――――ッ!?」

 

 スンッ、という効果音と共に土気色の顔をしたヘルメスが後ろに倒れ込む。こんなラブコメみたいな動きするヤツがマジで居るのか、カルチャーショックだわ。

 

 途端に凄い反り返りで飛び起きると、翡翠の瞳が光を吸うなりぐにゃぐにゃと吐き散らす。気づけば首元を掴まれている、痛い。痛いよこれ。

 

「お、おい待て! 言うなよ、誰にも言うなよ!?」

「言えるかんなもんっ! あっ、でもアストラさんに教えたら面白そう…………」

「それが一番ダメだ! ダメったらダメ! 雇い主の命令だ!」

 

 権力乱用極まってるぜこの嬢ちゃん。

 愛しのアストラにだけはバレてはヤバイと涙目で俺に迫ってくる。

 

「ジョーダンですよジョーダン。言いませんって」

「本当か!? 言いふらしたら酷いぞ!」

「いや本当本当、だから上手く隠してくださいって忠告したんだから」

 

 それもそうか、と素面に戻ったヘルメスが胸に手を置いて息を吐く。言った本人がのたまう事じゃないが単純だなお前。

 

 しかし機に乗じて色々言っておくか、後で怒られても責任取れんし。

 

「後さ、俺を隣の部屋で寝かせてもらえるのはありがたいのよ。すっごいベッドいいやつだし。でも”そういう事”してる時に音がだだ漏れなんですわ」

「――――――――ヒンッ」

「あ、死んだ」

 

 でも聞こえるしな。ヘルメス=サン、言葉責めで興奮するタチなのはそこでもバレバレです。いやタチじゃなくてネコなんだけど。

 

 別に百合百合してるの見せつけられても「そりゃあ恋愛観は好き勝手よ手前の好きにしろ」というタイプなので全く何も言わん。というか百合は好きだった。

 ただ夜中に変な声出されても困る。最近聞きながらでも寝れるようになってきた自分にある意味ショック受けてんだぜ? 適応の仕方が我ながら規格外。

 

 まあそれもあるし、後でなんかの拍子で「い、今まで――――ッ!?」みたいなテンプレになっても困る。

 という親切心と保身混じりの完璧な策だった。

 

 

 

 

 

 だったのに。

 

 

 

 

 

「何で反省文書く必要があるんだ…………え? 俺が悪いのこれ? ホワイ?」

 

 甦った神の子ヘルメスにまくしたてられた後、反省文を書くことになった。早三十分だが、俺はさっきからどうしてこうなったのかの自問自答をロボットみたいに繰り返して思考の論理バグの発生手前になっている。

 

 屋敷は言葉通りヘルメスの有形財産で、しかも中々広い。そんな場所の一角、でっかいテーブルで一人紙とにらめっこしてる俺はやっぱりアホっぽい。

 しかし「今すぐ書いて!」と紙とペンを持たせるなり怒鳴り込むのは相当だ。野暮なツッコミはしないほうが良いと思う。

 

「でも文字苦手なんだよなあ、マジで!」

「また反省文?」

 

 ひょこっと、天を仰いでいた俺の視界にまっさかさまの女の顔。テーブルの紙に胴体がこんにちわするぐらい反り返る。

 

「ふにゃげし!?」

「え、何その悲鳴」

「――――――ア、アストラさんかよ。びっくりさせやがって」

 

 悲鳴についてはご内密に。

 メッセージは伝わったのか、くすくす笑って口元を抑える。許された? 俺許された?

 

「まだ敬語使う気? 私の方が年下じゃない」

 

 それ言ったらヘルメスにもタメ口きいちゃいますけど。

 アストラ・ファンタール。この屋敷でハウスキーパーと侍女を兼任するメイドの家系の美人のねーさん。

 

 ファンタール家は女の子に恵まれないと孤児を引き取るのだが、彼女はその手癖の賜物。鋼のようで柔らかい輝きに満ちた銀のポニーテールと、思考の読めない薄目がトレードマーク。

 俺より後に入ってきたのにお仕事は俺より圧倒的に出来る。というか先代も凄い人だったのでそういうことだろう。俺の師匠も先代様だが、今では掃除しか出来ない無能っぷりに俺は平謝りしか出来ないだろうね。

 

「ハウスキーパーと侍女って字面だけで俺はもう長いものに巻かれるためにすぐ側で体をぐるぐる回転しちゃうので」

「そう? でも敬語が酷すぎるけど」

 

 先代の当主もそこめっちゃイジってきたな。でも「掃除できるから万事オッケー」みたいな事をマジで言ってた人だった、抱かれても良い。いや無理か…………。

 

「ヘルメスも容認してくれるからな。そこら辺、甘いっちゃ甘いが似てるよ。グローネスさんと」

「あ~…………」

 

 やっぱり敬語とかマナーで人を測るっていうのも一定の限界が有って、いやまあ俺が該当するとは思わないがそういう事にとらわれ過ぎないっていうのは統率者にあって良い能力だと思う。

 と考えていると、気づけばアストラの笑顔が曇っていた。何か言いにくそうと言うか、苦笑いと言うかそんなものが混じった乾いた声。

 

「いや、そうじゃないか? こんな敬語も背筋もフザけてる男、寛容な家じゃなきゃ雇ってくれませんよ。多分」

 

 他のお家知らないけど。偶に会った時に知り合いの掃除ガチ勢とかから聞きかじる程度だけど。

 アストラがやれやれ、と言った感じでようやく喋りだす。

 

「ヘルメスはそういうの厳しいと思うよ? あなたが特別」

「ん?????????? いや、ああ????????」

 

 違うと言おうと思ったが心当たり超あるわ参ったな。

 

「言われてみればさっきも敬語関連で怒られたな…………」

「そう。だからそれでも側に置きたいだけじゃないかな――――――ふーん、そうなんだ」

 

 ところで。

 そう言った彼女の赤い瞳が僅かに開く。ヤバイ、なにか俺は要らないことを言ってしまった予感だ。

 

 アストラが目を開いた時は追加で怒られるバッドエンドシナリオに直行するお約束キャンペーンが存在する。

 逃げようと思ったが手を掴まれた。おかしいよ全く体が動かない。やめろCPの出汁にするな俺は眺めてるだけで十分だ勘弁してくれマジで。

 

「さっきは何の話してたの? 自分から絶対にヘルメス様に話しかけないよね?」

「アッイヤベツニィ!? ちょ~っと怒られただけですよ、特筆することはぁっ!?」

 

 無事全部吐きました。凄い圧力だよ毎度ながら、くらげレベルでフヨフヨしている俺には約束を守り通す強さはない。

 その日の夜は俺との関係性について言葉責めされてた。声がえらく大きかったな、ふたりとも。結果オーライ? いや俺の好感度爆下げがダメですよねそりゃね。

 

 今日も今日とて無事、俺は”エロい神の見えざる手”で百合のシチュづくりに貢献させられた。ちなみに後日すっごい涙目で怒られた、ゴメンな。




百合厨が百合に挟まらざるを得ないという地獄。主人公のストレスに関して私は何の責任も取れませんよHAHAHAHA。
男を挟むと「男が居て構わない理由」も必要なので本題までちょっと長いですよね、次回から考えていきます。
後の詳しいことは本編に任せて豆知識でも。

名前の由来
ヘルメス…よく聞く名前。錬金術師とか男の子の名前らしい。ほんと? 可愛くないこの名前?
アストラ…闇の魂なあのゲームのとある国より。冒頭の彼のムービーを見る度、不死人には彼の意志を継いで欲しいと思う。
ファンタール…ファントム+ファンタ+カマタマーレ讃岐。ネタに見えますが大マジです。

どうしてここまで読みましたか

  • 主従百合と聞いて
  • ギャグと聞いて
  • ファンタジーと聞いて
  • R-17.9と聞いて
  • 明らかに苦労枠の男がいると聞いて
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