友人枠だが百合に挟まれと圧力が来ている。   作:杜甫kuresu

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個人的に百合に男がいると不味い、という風潮はちょーっと違うんですよね。それも形だと分かってくれる人、増えると嬉しい。
男が居ればエセ百合ハーレムだ!!!!!!! という訳でもない。

本作はそこら辺は気を遣うので、安心して百合もお楽しみください。百合に男挟みたい馬鹿である以前にアスxヘル信者ですから!!!!!!!!!


ともかく家では気楽に・前編

 今日も今日とてアスxヘル賛同派の凶刃に震える愚かな被害妄想家、掃除ガチ勢です。

 実際は絶対殺しはしないんだけど、絡まれてる時にいい顔はしてくれない。俺からすりゃたまったもんじゃないが、このご時世で同性愛に寛容な彼女らを邪険にも出来ん。視線を感じたら素直に下がってる。

 割にいきなりポッと消えても二人の関係性がグラグラするのが分かるのか、あんまり避けていると適度にぶつけてくる。お気遣いご苦労とは思うが、放っといてやれというのが本音だろうか。いやだってアイツラが云々以前に恋愛にごちゃごちゃされるの、嫌じゃね?

 

 と言っても解決もしないので、やっぱり俺は適度にぶつけられてしまうその日までは空気を務める訳である。

 では舞台は代わっていつものお屋敷、ルチアーノ様のお部屋の掃除事情のお話だ。

 

 

 

 

 

「ははぁ、おぬし。覚者の社会復帰の援助を続ける「申し立て」でもしに来たな?」

 

 何気なく掃除していたメイドの一人がビクゥ!とした。図星も図星、ヘルメスが全く動じてない方が異常なくらいだ。

 ヘルメスの斜め横で昼食に洒落込んでいるのは、かの王立魔術協会の取り締まり、というか何だろうか。校長? よく分からんがトップに立っているトンデモ女。アンナ・ドライツェン。

 

 黒髪ツインテという時代錯誤に加えてお国まで間違えたような(髪色は俺も言えないが)髪型に加え、どうやら「不死」らしく肌も青白けりゃ目は金色。見た目は肌以外は10代後半だが、実際は400才超えてる。ところで何でいっつもセーラー服着てんだ? 分かんねえな。

 どうでも良いが俺の養母。

 

 呵々、と笑う。

 

「あの事業は奉仕活動? だったか、アレとしての側面もあるからな。手を貸した方がルチアーノ家的に世間体も悪くはない…………とか?」

「――――――まあその通り。教会の残党がぞろぞろと摘発されて、覚者の療養に国はてんてこ舞いのようだからな」

「機に乗じてわたし毎使ってやろうだって? 派手に躍り出る気じゃないか、ヘルメス」

 

 こんな直球で小細工のない女だが、ヘルメス家とは先代より前から交友があったり抜け目がない。

 魔術が広まったのもこいつの仕業というか。王様引っ張って偏見も差別もぶっ飛ばそうなんて発想するのは歴史を見ても後にも先にもコイツだけ、要は頭がおかしい。

 

――ちなみに先代と交友があるというと。

 ドライツェンが笑いながら椅子の背もたれに左腕を預ける。

 

「昔は魔術の一つも使えずにわたしに泣きついてきたあのヘルメスがなあ! いや全く、人はいつの時代も突然成長するな。参った参ったぁっ!」

「なっ!? 真面目な話をしているのだが!?」

 

 まあモチのロンでヘルメスの無邪気かつ天真爛漫ピュアピュア時代を知っている。たしかに俺も今「何こいつ叔母さん同然の女に強気に出てんだよワロタ」ぐらいには思ってた。

 

 過去をほじくり返されてあっきらかに慌てだすヘルメス。アストラが後ろでくすくす笑ってんぞ。

 

「真面目? 真面目か、ほーん。おい!」

 

 俺を呼ぶの? ここで? めっちゃ笑ってる、嫌だなあ。コイツ、笑う時ろくな振りしねえ。

 

「何だよ、アンナ」

「だーかーら! アンナさんと呼べと言っているだろうが馬鹿者…………それはさて置き、ヘルメスの言い分? どう思う?」

 

 どうって。簡単な内容だったな。

 

「そりゃあアストラを側で観察した結果、覚者に支援しようって考えてんじゃね。政治的意図はあったとしても本題じゃねえだろ」

「やはりか。では受けた、今後は「びじねすぱーとなー」というやつとして世話になるな」

「あのな、貴方もそうほいほいと私の個人情報をしゃb――――――え?」

 

 あっさりと手を差し出してきたドライツェンにヘルメスは目を剥いた。

 

 でもドライツェンは別に「自分のやりたいこと」の為に政治的な頭は使うが、ほぼ身内の女相手にそんなまどろっこしいことは好まない。感情を直球でぶつけたほうがまだ話になることが多い。

 ヘルメスはいつも真意が読めない会話ばっかり余所でするからな、ドライツェンも今回ダダ漏れの献身オーラに鈍くなってたようだ。

 

「いやな、「凍血大公」殿と喋っているとよーするに何がしたいのかが分からんもので。「ヘルメス」と喋っているなら話はぶっちゃけ二つ返事でオーケーだ」

「そ、そうだったのか…………すまない。まどろっこしかったか」

 

 明らかに落ち込む凍血大公殿。何であれ、交渉で有力な手を打てなかったのが自分の中で消化できないんだろう。

 五年前から当主やってる性質上、外面に関しては正気を疑うくらいの完璧主義者になったからな。

 

 付き合いの長さも武器ってことだ。いつも子供とよそで馬鹿にされてたから、そこら辺麻痺ったんだろうけど。

 アンナが飯を食って腹いっぱいなんだろう、すぐに立ち上がると去り際に頭をくしゃくしゃと撫でる。

 

「もっと人を信用しろ。あの時、ヘルメス・ルチアーノは孤立無援だったか? 捨てる神あれば拾う神あり――――だ」

 

 まあアンタと「あの人」が居なきゃ孤立無援だったんだがな。

 その例えだとドライツェンは拾う神だった。

 

「…………ごめんなさい」

「そうしょげるな。また世間話でもしに来る、何せわたしも魔術協会に縋り付く馬鹿の露払いで固っ苦しいのよ! 呵々ッ!」

 

 アンタ絶対ぶった切ってるよな、交渉の余地なしだよな。「軟弱者は帰れ」とか言ってるよな。

 疑惑の発言を残したまま、タダ飯食って満足したのかどっか行ってしまった。あいつがそんなヤツまともに相手にしてるのか? 方便だろうか、うーん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

「ねえ兄貴、ヘルメスさんすっごい落ち込んでますよ」

 

 例のデカイテーブル。ヘルメスは……というか代々この家は使用人の余暇は大事にするらしく、何ならヘルメスと同じ席で食事も許される。今回もそうだ、ドライツェンが出ていくとぞろぞろと皿を置いて食い始めた。

 

 ヘルメスは固まって食事を取らない。周りのメイドがなんだ、妙に耳ざわりのいい言葉を並べてるっぽいけどありゃダメだな。アイツはそういうのすぐ分かるから。

 俺はヘルメスとは当然、逆位置ィッ!なので詳しい内容は聞こえてこないけど。

 

「ねえったら!」

「うるせえなレノン、俺に何が出来んだよ」

 

 レノン。後輩で男の使用人、ボーイってやつだ。メイドはメイデンから来てるから、男性系はボーイらしい。

 

 異性に抵抗がなさすぎてヘルメスに近づく無謀な男だが、今回ばかりは下がってる。しっかし俺が気配を消し、喋りかけられても耳が悪いふりをし、首根っこを掴まれてようやく対応するのにコイツはタフ過ぎる。

 男連中は俺が最年長を差し置いても、カップルに手を出すまいと思っているやつばかりで喋るのもある意味怖がってる。

 だから無謀さがヘルメスの興味関心は引いてるみたいだな。

 

 レノンが負けじと言い返してくる。

 

「兄貴が何か言えば、こう、ビシッと! 男でしょ!?」

「あのなあお前、俺はただの雇われ。あろうことか雇い主に説教垂れて明日も食っていけるわけじゃないの」

「で、でもですよ! 兄貴なら多分――――」

 

 多分。多分ねえ。

 

「俺が何か言ってこれ以上あいつを傷つけたらそれこそ気分が最悪だ! こっちだって我慢してんだから外野がごちゃごちゃ言うもんじゃないぞ!」

「…………すみません」

 

 しまった大声出しすぎた。

 

「あー悪い、ちょっと頭冷やしてくるな」

 

 レノンを置いてテーブルを後にする。アイツの視線も感じたが、今は気のせいだったことにしておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「外野がごちゃごちゃ言うもんじゃないぞ!」

 

 カトーが大声を出すのは珍しい。騒ぎ立てたりからかったり、おどけても怒鳴ることがめったに無いからだ。

 ヘルメスが思い出す限り、大声を聞いたのは自分がさらわれた時。後は何が有っただろう、しかし大抵彼女が絡んでいた気はする。数は少ない。

 

 カタンとフォークを置いて彼が去っていく。横の青年はシュンとうなだれている、確かレノンだっただろうか。

 ボウッとヘルメスは消えていく彼の後ろ姿を眺めながら、ぼんやりと出来事を反芻する。

 

「ヘルメス様、私が追いかけましょうか?」

 

 アストラが後ろから両肩に手を置いて尋ねる。

 正直、彼女は少し迷った。彼女だったらそっとしておいてもらいたいだろうし、何より自分の意思で出ていった人間を引き止めに行くほど無思慮なことがあるだろうか。

 

 カトーは一時の感情でそんな事をするとも思えないし、そこを疑いたくはない。

――疑いたくない、か。

 そんなだけのことかもしれない。

 

 彼女は基本的に外の人間を疑う。そうせざるを得なかった。父母が死んだときに、よそ者は誰一人信用できなかった。

 悪意はともかく思惑に晒された。甘言に惑わされた。幻想に騙された。

 

 だから、自分の家にいる人間まで疑うのが怖いのかもしれない。

 特に彼は。

 

 正常な判断が出来ないと思ったらしく、逆に聞き返す。

 

「どうするべきだと思う?」

「そう思うなら放っておくべきかな」

「では辞めておこう」

「かしこまりました」

 

 それ以上アストラは返さなかった。当然のように隣に皿を置いて食事を取り始める。

 大体、そう思うなら自分でやるべきだ。外面を気にするならともかく、そんな事まで人を使おうなんてヘルメスにとっては傲慢に見える。

 

「心配?」

「しない方が不自然じゃないか」

「凍血大公様には似合いませんよ、心配って言葉」

「それは――――」

 

 思わず振り向いたヘルメスにアストラはしー。っと指を口元に当てる。

 

 その呼び名の原因は他ならぬ他人のせいで、本当は心外なものだ。振る舞う上で役に立つ武器としては業物たる異名だが、家に飾るには彼女にとって汚すぎる剣と言える。

 実際、その歳で大公をこなし続けた経歴は今まででもほぼ例がないらしい。大抵蹴落とされるか、良からぬ輩の庇護下に「閉じ込められて」終わり。途絶える家である、というのが五年前直後のルチアーノ家の評価だったのだから。

 

 持ち直したのは大抵が彼女の常軌を逸した尽力にあり、またそれを支えた人間の根気強さでもある。

 

「まあ、凍える大公様の唯一の暖炉なんでしょ? 多くは言わないけど」

「…………違う。彼は薪だ、あまり焚べれば燃え尽きる」

「それは貴方も一緒じゃない?」

「私はまだまだ残っているから」

「強情ですね」

 

――強情で結構。こういう生き方しか知らない。

 それと。

 

 ヘルメスが口ごもる。アストラが耳ざとく口を閉ざしたのに気づいて顔を覗き込んだが、目を泳がせて合わせようとしない。

 心なしか頬に朱が刺していた。口元も引き結んでいる。

 

「…………何言おうとしたの?」

「――――――――アストラだって、私には大事なものだ。この家のもの全てが、私にとって守るべきものなんだから」

 

 納得言ったようにニコニコとしてみせる。

 

「あー、うん。それは分かってる」

「そうじゃなくて…………アストラは、その。特別だ」

 

 アストラが完全に固まるのを他所に、逃げ出すみたく冷めた昼食を頬張る。普段では想像もつかない焦った手付きに周りのメイドがザワつきだす。

 

 ヘルメスは気づかれていないと思って無我夢中に皿とにらめっこを続けていたが、ザワつく中で急に立ち上がった大仰な物音。二人も同時にその方へ顔を向ける。

 

「すみません。ちょっとアイツを見てきます」

 

 そう言って走っていったのはまた「彼」だった。

 周囲の「またお前か」という呆れたような何とも言えない視線を受けながら疾風のように走り去っていく。

 

 後ろ姿を眺めながら、ヘルメスは零したようにクスクス笑った。ちょうど誰も見ていない刹那のことだ。

 

「私達が手出ししなくても、彼のほうが上手くやってくれるかもしれない」

「…………一理、ある。かも」

 

 アストラは顔を合わせず答えた。




主人公は失敗を踏まえて「バランス感覚」を超重要視してます。
男が嫌だと言うなら「男が居なければCPは存在しなかった」とし。
逃げ腰が嫌だと言うなら「人の恋愛事情に首は突っ込まない」とし。
何故首にならないかと言えば「他ならぬ当主の兄代わりだから」とし。

「姉でも良いのでは」ですって? 知りませんよ兄の方が好き。
生真面目で優秀な妹とどうしようもなさそうなやつなのに最後に泣きつける兄貴って構図が私は好きなんですよ! 恋愛ではないんですこれは! ねえ!?

ちなみにどうすれば20代前半で大公を一人で出来るかは私も分かりません。分からないので相応に精神状態が滅茶苦茶です。余程強い強迫観念と底意地が必要なのは確か。


キャラの元ネタ
ヘルメス…ドルフロのAN-94
アストラ…同原作よりAK-12
ガチ勢(カトー)…原型が残ってないけどクラウディア・ホッジンズ
レノン…中身は不明、外見はベネディクト・ブルー
ドライツェン…「自称魔法使いなんだけど大変手に余る弟子もどきに困っている」より(ダイマ)

どうしてここまで読みましたか

  • 主従百合と聞いて
  • ギャグと聞いて
  • ファンタジーと聞いて
  • R-17.9と聞いて
  • 明らかに苦労枠の男がいると聞いて
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