友人枠だが百合に挟まれと圧力が来ている。   作:杜甫kuresu

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面白いことを思いついたので前回ラストの「彼女」は「彼」に変更になりました。
よろしくね。

ちなみに今回から本題です。結構真面目な話が続くから疲れないように気を遣った。かもしれない。
というか本題じゃなかった今までは何なんだろ…………何だと思います?(聞くな)


ともかく家では気楽に・後編

 もうこれは屋敷内で恥ずかしいくらい有名だけど、俺は身内に関わる話は短気だ。いい年こいたやつの紹介じゃねえな…………。

 長ったらしいバックはお涙頂戴と化すので言うことはないが、ともかく身の回りにあるものは結構大事に扱ってるつもりだ。

 

 これ以上は出来ない。はねつける事になる。

 という訳なんですがね、こりないやつも居る。

 

「大声とはらしくない。どうした、カトー」

「…………ああ? ピポパポか」

「フィナボッチだ――――――違ったフィボナッチ。ピポパポじゃない」

 

 ピポパポ、本名フィボナッチ・ポロピリン。名前は気が抜ける感じだが、顔腕っぷし頭性格オーケーのなろう系イケメン。

 アダ名は俺が最初聞いたときに電話のアラームみたいに聞こえたから。コイツも名前噛むしプラマイゼロ。

 

 切れ長のエメラルドの目つきから分かるとおりの正統派イケメン、あー眩しい灰になっちゃう―。

 

「察するにドライツェン氏との会食の話題だったようだが」

「察し良すぎキモい。レノンが励ませって言うから言葉選びむずい、って大声出したバカが俺」

「そうか。いつもカトーはバカだが」

 

 ガキが…………舐めてるとつぶすぞ? 真面目イケメンは撤回、口は悪い。

 まあピポパポは基本悪いやつでもないまじめくんなのは事実、ある一点を除けば。

 

 指を立てたピポパポの真顔が俺に急接近する。

 

「励ましてみてはどうだろう」

「お話聞いてましたフィボナッチさん!? バカなの死ぬの!?」

 

 それがダメだって話したのにマジのアホなのか! 俺に寄ってくるやつ大体頭おかしいよなったく!

 

 しかしだな、と神妙な顔をして考え込みだすピポパポ。顔が良いから頭良さそうだが多分トンチンカンなやつだぜコレ?

 

「ヘルメスさんは君を信用しているぞ、軽い一言でも掛ければ――――」

「何、掛ければ俺にヘルメスがさらなる好意をふじこふじこって?」

「そうだ」

 

 コイツ、何がやばいかって。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。訳が分からん、何故そうなる。お前の脳みそ司法解剖してその空回りまくった思考の果てについて研究論文でも出したいね俺は。

 

 とは言ったが。

 ピポパポがドン引きしてる俺に熱弁する。

 

「しかし実際問題としてルチアーノ家は存続の危機に有る。ヘルメスさんがご存命のうちは良いが、世継ぎもなしに家は続かない。家が消えればどうなる?」

「あーはいはい、お前はそれだとあらゆるところに波紋が起きて無用な変革が発生しますエトセトラ~って言うんだろ? 知ってる知ってる」

「その通りだ、笑い事でもない」

 

 まあ、笑い事ちゃうわな。大公の家がいきなり「百合だったので絶縁確定でーすっ☆」って言って波紋を呼ばないのも妙だ。いや無理にでもなんとかしろよって心無い外野の声が見える聞こえる感じるぜ、ああ不愉快でーす。

 

 何がうざったいって、養子を取ればそれはそれで元々浮いているヘルメスの立ち位置が浮いてしまうってことだ。本当は堅実であるべきだろう。

 確かに男が必要だというのは一理ある。理屈もごもっともだ。何で俺なのかが謎だが。

 そして。

 

「人の恋愛事情に首は絶対に突っ込まん。どうしてもそんなことを俺にさせたいってんなら、精々黒幕ムーブ頑張り給えよ。空回りイケメンのピポパポ殿?」

 

 大体。

 あんだけ頑張ったなら滅びるも生かすもアイツの自由だ、というか人類は誰だって生き死にぐらいは自由だし。本当に頑張ってたからな、アイツが諦めるならもう仕方ないんじゃないのかね。

 

 まあ言い分は分かるけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 戻ってくればもう食器は下げられてた、俺の飯…………。俺がレモンをそのまま食う人だって皆知ってるよな…………? どうして?

 へこみつつ座りっぱなしのヘルメスの前まで歩く。

 

「なあ、ヘルメス」

「!?」

 

 えっ、名前呼んだだけでそんな不審者を見る目になる必要ある? アストラまでご丁寧に目を見開いてる、そんな珍しいか?

 

――あー、でも俺から歩いてきて話しかけるまではしてなかったかもな。受け答えはもちろんしてたけど。あくまで話しかけられたついでで全部済ませてた気がする。

 慌てふためいたヘルメスが俺の両肩を強く握る。

 

「いた、いてえ!?」

「ど、どうした。熱か? いや流行病? 気の迷いか?」

「話しかけただけで大騒ぎし過ぎでは?」

 

 天変地異か何かと間違えられてる。単にお前らがイチャコラしてるから男は近づくまいとしてただけなんだがなあ、アストラは見るからに独占欲強そうだし後が怖いってのも追加。

 

「すまない。な、何の要件だろうか」

「お前、ルチアーノ家は誰に継がせる気なんだよ」

「!?!?!?!?」

 

 目をグルグルさせ始める。だから何で俺の一挙一投足でそんな七変化してんだよこの当主様!?

 遅れて帰ってきたらしきピポパポ氏もずっこけた。頭から行ったなお前、大丈夫なんだろうか。

 

 手をブンブン振り回しだすヘルメス、何してんだこの子。

 

「え、あれだ。それはだな、えーっと、何だっけ?」

「落ち着けよルチアーノ殿、アストラさんなんとかしてコレ」

「――――――ハッ! そ、そうだった」

 

 完全に固まってたアストラを叩き起こす。

 ヘルメスを体ごと持っていったかと思うと、ぺちぺちと両頬を叩く。何かもうちょっと理知的な対処を期待してたんですが思いの外ファンシーなやり方だったわ。

 

 ようやく思考がまとまったらしい、もう一回詰め寄られる。

 

「五年ぶりに貴方から話しかけてきたかと思えば何だその話題は! 無遠慮というものじゃないか!?」

「いや知るかよ。俺は意味もなくそんな事聞かねえ」

「それはそうだが…………じゃなくて! 他の女性にもそんな事をしていては誤解されるぞ!」

 

 あー、それは、何というか返す言葉はない。

 

「そりゃそうかも。気をつけるわ」

「――――――相変わらず喋りにくい人だ」

 

 よく物言い考えろとは言われます。

 

 何だかんだ質問には答える気があったらしく、突然ヘルメスの顔が神妙なものになる。

 結構な時間を置いて返事が来た。

 

「…………正直な所、今は深く考えていない。大きな問題ではあるが、生憎そんな縁談を持ってこれるほど人望はない。それに今は建て直しが優先だ、代替わりで疎遠となった要人も多い」

「要するに算段は無いと」

「まあ、そうだ。相手だって誰でも良いって問題でもないだろう」

 

 だよなあ。ピポパポ君そこら辺がなーんか違和感というか、おかしい。

 というかこのままだとなんか勘違いされそうだな。

 

「別に責めようってんじゃなくて何考えてんのかって興味本位だぞ。そうか、そんな感じなのか」

「――――――彼が何か言ったのか?」

 

 ヘルメスの目つきがあからさまに鋭くなると、鼻を擦って泣きべそをかいていたフィボナッチの方をじぃと見る。

 あちらも全く動じてない。流石にここまで睨まれたら俺はビクつくけどな、アイツのハートには毛がびっしりのようですぞ。

 

 余計な詮索は結構。

 

「いえ、別に。アイツは俺がレモン食わないのかって聞きに来ただけですね、案の定下げられてたけど! けど! おい頼むよメイドの皆さんさぁ!」

 

 おいこら俺の目線から逃げんじゃねえ! お前らのせいだからな、レモン食えなかったの! 俺の数少ない食嗜好を貴様らときたら!

 

「レモンか…………私は食べないから残しているが、要るか?」

「え、マジ?」

 

 柄にもなく思いっきり食いついたので笑われた。

 

「必要なら」

「じゃあ遠慮なく――――――」

 

 気前のいい当主様を拝み奉って了承しようとした瞬間、背筋がブルリと震える。こんな感覚は戦場に出てた時以来だわ、なにこれこわい。

 

 後ろのアストラのどぎつい視線に思わず逃げる。

 

「あ、いや辞めとくわ。俺ちょっと用事思い出したから――――――――さいならぁっ!?」

「え? おい!」

 

 これ以上会話を続けて選択ミスをしたら後で殺される!? アレは人を殺す目だ!

 

 

 

 

 

 

 

「ア、アストラ。何故怒っているんだ…………?」

「別に怒ってないけど?」

 

 じっとりした湿り気のある視線にヘルメスはかなり居心地が悪い。何となくレモンをかじって酸っぱさに目をつむりながら顔を逸らす。

 

 カトーはよく食べるな、なんて関係ない話題で精神的に籠城していく。

 

「私が何かしたか? いや、本気で分からないんだが」

「別に怒ってないけど」

 

――それはないだろう。

 居心地が悪すぎてメイドもテーブル周りから撤収していて、仕方なくヘルメスが自分で皿を食堂に持っていこうとするぐらいだ。

 

 正直今すぐ逃げたかったが手を掴まれた感触に絶望しながらゆっくり振り向く。

 

「そう言えばフィナチッチ君ともよく喋ってるよね」

「いやアストラ、彼はフィボナッチだ」

 

 ピポパポが涙ぐみつつ静かに部屋を後にした。

 

 ピポパポ、改めフィボナッチであるが、そもそも彼の家系は軍略政略を補佐していた血族で、使用人とは少し事情が違う。

 歴代「感情的である君主と、カウンターである補佐」としての立ち位置を徹底しており、先代も彼と同じくよく外交にも口を出していた。

 

「彼は私の暴走を食い止める鎖の役だ、用があれば勿論話しかけてくるさ」

「それにしては随分楽しそうだったけどね」

「私が? まさか」

 

 そもそもカトーと喋っている時すら怒りはすれどあまり笑わない。リラックスしてるとは言うにしても、まあ楽しそうには見えない。

 大体飛んでくるのはお小言が多い。

 

 アストラが違う違う、と手を振る。

 

「いやフィボチッチ? だっけ、彼の方が」

「だからフィボナッチ。というかそれは私、別に関係なくないか?」

 

 大いに関係がある。

 不満げなアストラにいよいよ参ってきたのか肩を落として縮こまってくるヘルメス。外ではともかく家ではあまり強気になれない。

 

「フィ、フィナ、フィボ…………ピポパポ君」

「とうとう諦めたか。彼も哀れなものだ」

「ともかく、カトーはさておきピポパポ君は色目使ってると思うけど。あんまり仲良くしないほうが良いんじゃない、気がないなら」

 

 ごもっともな事を言ったが、自分が気に食わないほうが理由としては強いだろう。

 ヘルメスがきょとんとしたかと思うと、何だそんなことかと言わんばかりにアストラの肩を叩く。

 

「それは問題ないだろう、彼は一度断った」

「ことわ…………っ!? 初耳だけど」

「まあきっぱり諦めたと言っていたし、大丈夫だろう。大体浮気性に見えるか? 私が?」

 

 一転して勝ち気な顔をしたヘルメスに、アストラはたじたじになって何も言えなかった。

 いよいよ歩き出したのに我に返って騒ぎ出す。

 

「じゃなくて!? えっ、そんな話聞いてないけど?」

「別にいいだろう? その後も何もなかった訳だから」

 

――そういう問題かなあ。

 

 何となくもやもやとしたまま歩いていくヘルメスを追いかける。




ピポパポ兄貴大先輩がログインしました。タイトルの全ての原因。別に悪いお兄さんじゃないから説明はちょっと待ってね。
ようやくタイトルに似つかわしい動きができそうなんですよヤッター!

気づいてしまったが百合がどうよりその先のバタフライエフェクトに大きな関心がある。

ピポパポは二秒で考えたアダ名なのでモチーフなし。フィボナッチはフィボナッチ数列より、ポロピリンはアラームっぽい語感。特効薬っぽい。
冷静を装ってますが涙脆く、また名前がコンプレックス。残念イケメンとも言う。

どうしてここまで読みましたか

  • 主従百合と聞いて
  • ギャグと聞いて
  • ファンタジーと聞いて
  • R-17.9と聞いて
  • 明らかに苦労枠の男がいると聞いて
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