槇寿郎さんの現役時代の喋り方は、杏寿郎を参考にしてます。
冒頭過去話
善逸視点原作軸
後半過去話
「禰豆子ちゃんは良い子ねぇ」
そう言って頭を撫でる手が好きだ。
「こんこん小山の子うさぎは…なぁぜにお耳が長うござる…」
ああ、その唄は知ってる。誰かが唄っていたのを、聞いたことがある。……
「小さい時に母様が…
優しくて、柔らかくて、暖かい声。疑問なんて、どこかに飛んでいってしまう。
「そーれでお耳が長うござる…」
――――ああ、本当に。泣きたくなるくらいの、
****
(我妻善逸)
「さ――――三十四歳!?嘘でしょ!!!?」
と、思わず叫んでしまったのは、大変申し訳ないと思う。けど、俺のせいではないとも思う。だって、それだけ衝撃的だったんだ。年上なのは分かってたけど、まさか干支が一回り以上も離れているとは思っても見なかった。
申告してきた
「十歳以上歳が離れているからって、それが障害になるとは思ってないわ」
そんなカナエさんの膝の上では、どこからともなくやって来た禰豆子ちゃんがすやすやと寝息を立てている。可愛い。炭治郎と一緒に行ったのかと思ってた。とても可愛い。
参ったな、と頭を掻く季節さんの顔は赤い。相変わらず仲睦まじくて羨ましい限りですね。爆発して欲しい。絶対カナエさんを幸せにしてあげなくちゃダメですよ。この色男め。――――っと、そうじゃなくて。
季節さんの顔を見ていて、とても表情が豊かなんだなと思った。お面をつけたままでも、結構豊かだったけど、余計に。というか、お面をつけてるときは意図的に感情を表に出していたんだと思う。喜怒哀楽がはっきりしている。けれど、その身から聞こえてくる音は雨の音だ。不思議だよね。
「お館様も含めて、鬼殺隊内で一番上なんだ。だから先代様のことも知っているし――――ああ、そうだ。煉獄が赤ん坊だった頃の姿も知ってるよ」
なんか、またとんでもないことを言い出したぞこの人。え?何て??煉獄さんの赤ん坊時代????
「あの……ちなみに、なんですけど」
「うん?」
「煉獄さんって、何歳なんですか?」
「確か今年で二十だったかな」
「にじゅう」
「そう、二十」
「私の二つ下ね」
「カナエさんのふたつした」
「そうよ」
ちょっっっっっっと待って??あの煉獄さんが??二十歳????え????はぁ????
「え、嘘じゃなくて??」
「嘘じゃないなぁ」
若くね??????思わず真顔になりながら、叫ぶのも忘れて考え込む。
え?若いな??もうちょっと年上かと思ったんだけど、煉獄さん、俺と四歳しか違わないの??それで柱??あっ、でもしのぶさんは俺と二歳違いで柱か。いやいや、それはそれでどうなの??何歳で柱になったのあの人たち??
「煉獄のことで驚いてる所申し訳ないんだが」
何です?これ以上の驚きがあるとでも??
「現在柱に就いている者の中で最も年若いのは霞柱だ」
「かすみばしら」
「君の二つ下じゃなかったかな」
「おれのふたつした」
――――え???年下です???しかも二つ下って、十四歳ということでは????
「ぅえぇええええ゛え゛!!!!!!??」
うっっっっっっそでしょ!!!?
「嘘じゃないんだなぁ、これが」
季節さんはカラカラと笑う。そして、一瞬だけ真顔になると、苦笑を浮かべて沁々と言った。
「霞柱――無一郎は、僅かな期間で柱に上り詰めた。その実力は本物だし、物言いにちょっと難はあるが、弱きを助け、護ろうという気概は柱に相応しいものだと思う。…けれど、俺よりも二回り近く年若い、幼いと言っても過言ではないあの子に、刀を握らせてしまったことが心苦しくもある」
しとしと、と。消え入りそうなほど静かな雨の音が聞こえてくる。これは、季節さんの心が奏でる、悲しみの音なんだと思う。小雨ほど強くはなく、霧雨ほど弱くもない。何とも言えない、絶妙な静けさを奏でる雨の音。
「鬼舞辻無惨を倒さなければ、無一郎のような子が増えていく。それは、避けたい。だから、急がなければならない。それが、産屋敷家の悲願であり――――」
――――
その時の季節さんの瞳が、鬼の目のように見えたのは、俺の見間違いだったのだろうか。
****
息子が生まれてから三か月後、奇妙な格好の客人が煉獄家に訪れた。それは、左頬に三つ雫が描かれた狐の面を被り、朝焼け色の羽織をまとっていた。年の頃は十代半ば、性別はどちらとも言えない。声を聴けばどちらか判別付きそうではあるが、その狐面の人は一言も喋ろうとはしなかった。
たまたま任務もなく家にいた槇寿郎は、この客人に困惑した。用向きを尋ねても無言、中に入るよう促しても無言ときた。いい加減、追い返してしまおうかと思った時に、その人は徐に懐から手紙を取り出し――――槇寿郎の顔へと叩き付けた。
「き、さま!!何をするか!?」
「はっ!!油断してるそっちが悪いんだよ!!」
「――――、」
反射的に怒鳴れば、その人も同じ声で返す。その声を耳にして、槇寿郎は思わず手紙を取り落とした。少年期独特の甲高さは無くなっているが、その声に聞き覚えがあったからだ。――――人の記憶は、声から薄れていくと言うが、槇寿郎はこの二年間、その声を忘れたことは一度もない。
「お前、季津か」
ニィッ、と。無機質な狐の面が、笑ったような気がした。
二年ぶりに再会した季津は、今年で十四だと言う。確かにそれくらいの年に見える、と槇寿郎が言えば、偉そうに胸を張る。それがどうにも癪に触って、小さいことには変わりないと頭を撫で繰り回してやった。
「やめろ!!せっかく成長期が仕事してんのに、縮むだろうが!!」
何とも不思議な言い回しに笑い、名残惜しかったが頭から手をどけてやる。そうして、上から下までまじまじと、季津のことを見つめた。
黒の隊服は鬼殺隊の物だし、その腰に差された刀は勿論日輪刀。その反対の腰には脇差があるが、その柄を見る限り、以前使っていた日本刀を短く摺り上げたものと察する。猫の毛のように柔らかな髪は、雨が上がったような色合いをしていて、朝焼け色の羽織によく似合っていた。狐の面の下には、あの新緑色の目が隠れていることだろう。
――――生きていた。そんな言葉が脳裏を過り、喉が引き攣る。鼻の奥がツン、と痛み視界が霞んだ。
「何で泣いてんだよ」
「歳を取ると涙腺が弱くなるんだ」
「俺と六つしか違わねぇじゃん」
情けねぇなぁ、と。笑う気配をさせながら差し出された手拭いを受け取って、槇寿郎も笑みを浮かべる。
「自己紹介をやり直そう」
ぐい、と涙を拭い、深呼吸を一つ。二年前よりも大きくなったその姿をしっかりと見やり、槇寿郎は言った。
「俺は、煉獄槇寿郎。恐れ多くも炎柱を任されている。君の名を教えてもらっても良いだろうか?」
ぐい、と面が上げられ、新緑色の双眸が覗く。整った顔つきは健在で、涼しげな目元に笑みが浮かんだ。
「俺は、季節津衣鯉。昨年鬼殺隊に入隊したばかりだが、階級は
ほう、と感嘆の息が零れる。
「一年でそこまで階級を上げたか……無理をして身長が止まるのではないか?」
「止まんねぇよ!?まだまだこれから伸びるんだよ!!」
「しかしなぁ…鬼殺隊の活動は夜間であるし、いくら伸び盛りとは言っても、任務が連日続けば体にも影響はあるだろう」
「そ…れは、そう、かもだけど……」
「育手の方に心配されてはいないか?」
「そんなへましねえ」
「なるほど、猫を被っているのか」
「被ってねーし!!鱗滝さんの前でもわりと素のままだし!!口調は気をつけてるけど…」
「それを、猫を被っている、と言うのだ」
「……」
「……ふ、」
勝った、と思った。不貞腐れた顔を面で隠し、押し黙った季津――もとい津衣鯉の頭を撫でる。高々一度会った事がある程度の槇寿郎に、育手よりも砕けた態度で接しているという事実に頬が弛む。
鱗滝、と言えば水柱を務めた実力のある剣士だったはずだ。その彼に師事したとあれば、階級の上がり具合にも納得がいく。何より、津衣鯉自身が、剣の才に恵まれているのだ。――――ご家族のことは残念ではあるが、良い師に出会たことを槇寿郎は喜ばしく思った。
「今一度、問うてもよいだろうか」
「ん?」
頭を撫でていた手を降ろし、表情を引き締める。空気が変わったのが分かったのだろう、津衣鯉も面を取って槇寿郎の顔を真っ直ぐに見上げた。
「何のために刀を取った」
それは、二年前の繰り返しのようで。
「――――斬らなきゃならない
「何?」
全く違う。
「俺は……
「――――、」
――――この日の出来事を、槇寿郎は忘れることはないだろう。
じんわりと滲むように薫る雨の匂いに、ゴロゴロと遠くで雷が鳴っていた。その眼差しは槇寿郎を貫かんばかりに愚直で、ほんの一瞬だけ、気のせいかもしれないが。
「(鬼の、目だ)」
瞳孔が縦に割れたように見えた。
視線を逸らすことも出来ぬまま、互いに見つめあっていると、ぎゃあぎゃあと家の中から凄まじい泣き声が聞こえて来た。その声に大仰に肩を跳ねて飛び上がった津衣鯉に笑い、上がっていけ、と背中を押す。まるで借りて来た猫のように大人しくなり、小さな声でお邪魔します、と言う姿は、先程までの異質さはどこにもない。むしろ年相応さすら感じられて、槇寿郎は酷く安堵した。
奥から妻が息子をあやしながらやってくる。その姿に口を開けて釘付けになっている津衣鯉に、槇寿郎はまた笑った。
竈門禰豆子
珍しく
お気に入りはカナエさんのお膝の上。
煉獄槇寿郎
※当作では20歳で第一子(杏寿郎)を儲けたことにしています。
季節とのファーストエンカウントは18歳の頃、炎柱になる直前くらいを想像。瑠火さんとは既に結婚していて、子供が出来るのをウキウキと待っていた。季節が藤の家紋の子であると知り、後日その家が鬼に襲われたかもしれないと聞いてめちゃくちゃ心配した。
セカンドエンカウントは二年後。槇寿郎は20歳、息子が生まれた3ヶ月後にひょっこり現れて、めちゃくちゃ安心したし、涙ちょちょぎれた。ただし、顔面に手紙を叩き付けてきたことは許さない(手紙はお館様からの物でした)。季節のことは名前で呼ぶ。
この後、季節との合同任務が増え、季節のストッパーをやりながら徐々に徐々に、季節との才能の差に悩まされていく事になる。その度に季節に激励されるが、それすら辛くなったところに妻の死が重なる不運。はっきり言って原作より落ち込みようが酷い。原因は間違いなく季節である。
後のことはお察しください。
季節津衣鯉
当時ピッチピチ()の14歳だった、現在34歳の当作主人公。ただし精神年齢はXX歳(自主規制)だ。ちなみに、カナエさんは22歳くらいだと思ってください。
記憶を思い出す前は、不死川兄みたいな感じだった。だから、不死川兄を見ていると昔の自分を見ているようで居心地が悪い。ちゃんとできるんだから、口調直そう?そしてそんな季節に、不死川兄はめちゃくちゃ噛みついてくる。
実は前世の記憶を思い出す前に、原作キャラと遭遇していた。思い出してから、「やっべーよ、とんでもなく生意気な態度取っちゃってたじゃん俺!!」と自分にビビる。なので鱗滝さんに会いに行くときはちょこっとだけ言葉遣いに気をつけた。大丈夫、まだ素の口調が悪いことは知られていない。今の喋り方が確立したのは20歳くらい。
異様に出世が早い。入隊一年半で丁まで階級を上げた才能お化け。その後、炎柱である槇寿郎との合同任務が二年ほど続いたため、鬼の討伐数は50を超え、下弦の鬼も二体屠った。以降、お館様から柱襲名打診されては断り、されては断る。そりゃあ、槇寿郎も自分の才に悩んで落ち込むわけである。
赤ん坊だった煉獄杏寿郎をあやし、おしめを換えた事もある。なんなら杏寿郎は父親の槇寿郎よりも季節に懐いていた。しかし、その事を杏寿郎は覚えていない。後々、そんな話をするかもしれないし、しないかもしれない。もししたとしたら、もれなく音柱に聞かれて爆笑される。憐れ、杏寿郎。
槇寿郎とは何らかの約束をしていた。それが明らかになる日も近い――――かも?