F/at/eシリーズの中でも某作家リスペクトなので仕方がないネ…
とはいえ、元からこの表現方法は取り入れるつもりでいたので、やっと書けた!!と当方は満足しております←
気付けばUAが10万を超え、お気に入りも1500を超えました。感想、評価も「ありがたや…」となりながらいつも見ております。
本当に、ありがとうございます。
当作の終着点はまだ見えませんが、当方の他の作品のように途中でエタることなく、完結させられるよう頑張って参ります。
独白
しのぶさん視点独白
槇寿郎さん視点、過去話
独白
――――男の話をしよう。
平成の世に生まれ落ち、何の変哲もない人生を歩んだ。
どこにでもいる凡庸だったはずの男。
しかし、余人の評価は驚くほどに高かった。
男は、ただ取り繕うのが巧かっただけなのに。
人当たりがいい、と友人は言った。そんなことはない、と男は言う。
賢く努力家だ、と別の友人が言った。それは違う、と男は言う。
他人を慮れる子だ、と母は言った。そんなはずもない、と男は言う。
どこへやっても恥ずかしくはない自慢の息子だ、と父は言った。冗談だろ、と男は言う。
猫を被っているだけじゃないか、と男の弟が言った。それが正しい、と男は笑う。
余人の評価に合わせた仮面を張り付け、一日、一日が過ぎていく。
そうして、男は素顔を忘れ、摩耗した己を嘲笑する。
最期は、唐突に訪れた。
不仲だったわけではない。
ただ、擦りきれた兄を、弟が憐れに思ったが故だった。
感謝すらしていた。
それでも、“弟を殺人者にしてしまったこと”を心から悔いた。
これが、
**
前世での記憶は、他人が見ればあまり良い気はしない。そういう類いのものだと、季節は思っている。
全肯定しかしない父母と、上っ面しか見ないで“良い奴”と言ってくる友人たち。唯一の救いは弟が理解者であったこと。それだけで、季節はXXXとして生きてこれて良かったと思う。
しかし、前世の死因はその弟だ。もっとも、恨んでなどいないし、むしろ感謝しているくらいなのだが。
そんな前世で、唯一の趣味が読書だった。前世の彼の自室には天井まで伸びる本棚が壁一面に並んでいて、そのどれもが隙間なく様々な本で埋められていた。多言語かつ多岐に渡る専門書や図鑑、画集、ライトノベル、漫画、同人誌、etc…。いわゆる、“本・雑誌”に分類されるもの、特に漫画を蒐集した。
たまに、弟がおすすめだと言って勝手に棚に本を置いていくこともあった。それがいつしか、“弟のおすすめコーナー”を確立させ、本棚を一つ埋めたのだから何とも言えない。
前世の彼にとっての生き甲斐は、それらに埋もれながら読書することだった。その瞬間だけは誰の目にも触れず、あありのままの自分でいられた。故に、自室だけが、彼にとっての安息の地に他ならなかった。
そんな中で出会ったのが、“鬼滅の刃”という漫画だった。某少年週刊誌で連載が始まってすぐに、弟がすすめてきたものだ。独特の絵のタッチに、魅力的なキャラクター達。時代設定や話の作り込み方など、なるほど確かに弟好みの漫画だと思った。最初はその程度の感想、そして読んでいくうちにのめりこみ、そして、彼は運命を見つけた。
****
――――きっと、あの時に。
「昨日、婚約を申し入れられたの!」
「――――本当に?良かったわね、おめでとう!」
「ええ、ありがとう!」
「婚約の件は分かったわ、それじゃあ今後の予定は?」
「とりあえず、お互い直近の任務が片付いたらお館様に挨拶に行くことにしてるの。それからいつになるかは分からないけれど、祝言もちゃんと挙げようって……ああ、夢みたいだわ」
「……そう、そうね…本当に、夢みたい」
私は、芽吹いたそれに、そっと蓋をしたのだ。
**
(胡蝶しのぶ)
よくよく考えてみると、私は、姉さんと季節さんが交際を始めた切っ掛けを知らない。気付いたら、姉さんの横には季節さんがいて、季節さんの横には姉さんがいた。元々、姉さんに鬼殺隊の育手を紹介してくれたのは季節さんだ。その流れで交流を持つようになったのだろう。入隊後は何度か任務を共にしたこともある、と聞いている。
幼い姉さんを家まで送ってくれて、数年後には命を救ってくれた。両親を助けれらなかったことを悔やみ十以上も年下の私たちに頭を下げて。その後、両親の葬式と私たちが路頭に迷わないように手配をしてくれた。両親のことは今思い出しても悲しくなるし、残念だった、という言葉で終わらせることもできない。
それでもきっと、姉さんが季節さんに惹かれていくのは当然のことだったのではないか、と。そう、思ってしまう。そうなるのが当たり前なのだと周囲に思わせるほど、二人はいつも自然体だった。
少し歳の差はあるけれど、似合いの二人だと町でも評判になっていた。私もそう思っていたし、姉さんが幸せそうに笑う顔が見れることが嬉しかった。でも、どうしてだろう。二人が一緒にいる姿を見るたびに、顔を見合わせて笑う姿をみるたびに、ぎしりぎしりと、心が軋む。
別段、私は色恋に鈍いわけではない。だから、その理由は分かっていた。分かっていて無視し続けていた。だって、私の一番の願いは姉さんの幸せだ。姉さんが生きて幸せになってくれるのなら、もう何もいらない。――数年前、姉さんが上弦の鬼と戦い死にかけた時に、ことさら強くそう思った。
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(煉獄槇寿郎)
数年前のことだ。
何かの気配を感じて顔を上げると、そこに、真っ白な鳥がいた。首周りには、それなりに値が張りそうな碧い組紐で作られた飾りをつけている。一見そうは見えないが、これも鴉。鎹鴉の一羽だ。
しかも、特殊な能力も持っている。そして、この白い鴉の主はただ一人、――――季節津衣鯉しかいない。脳裏に浮かんだ知古の姿を懐かしく思うと同時に、ほんの少し、胸が痛む。あれは、背中を預けるに相応しい人物であると同時に、私の心を掻きまわす存在でもある。
「
確か、そんな名前だったはずだ。字は多少ひねってあったものの、安直な名前だな、と紹介されたときは思ったものだった。どうやら名前は当たっていたらしい。その白い鴉は満足げに頷いて、畳の上を跳ねるように進んでくる。お久しぶりでございます、元炎柱様。相変わらず流暢な喋りで鴉は言った。
「本日は
「やくそく…」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。もう一度、やくそく、と繰り返してハッとする。それは、もしかして、もしかしなくとも“あれ”の事だろうか。
「思い出していただけましたでしょうか?」
「よもや……今この時になってそれを引っ張り出されるとは、思わなんだ…」
喉が渇き、体から力が抜ける。今更、私にどうしろと言うのか。刀を捨て、酒に逃げて早数年。自分で言うのも何だが、腑抜けてしまったこの私に、いつかの約束を果たせるほどの力があると思っているのだろうか。
「――――、」
――――答えは、
現金な話だ。己の不肖さと妻を亡くしたことで荒み、折れ、落ちぶれた心のままに息子たちを遠ざけた自分が、今更刀を取って何になるというのか。その約束も、ただの口約束に過ぎず、もっと言えば酒宴の席で結ばれたものだ。守る必要がどこにある。
「――――、」
――――しかし、しかしである。たかが口約束だからなんだ、津衣鯉は言うのだろう。口約束だろうが、正式なものだろうが、あれにとっては違いなどありはしない。等しく、“約束”である。そして、その約束を、あれが破ることは決してない。
「元炎柱様――――否、煉獄槇寿郎様」
鴉が目の前にまでやってきていた。光を照り返す羽毛は銀に耀き、その黒曜石のような瞳の奥には、津衣鯉が持つ新緑の輝きが沈んでいる。その神々しさに息を呑み、同時に、カチリと何かが切り替わる。
「我が主、季節津衣鯉に代わりお願い申し上げます。どうか、若き柱を――――
「――――――――、」
体は勝手に動いていた。
****
――――男の話をしよう。
明治時代に生まれ落ち、いずれ鬼を狩る剣士となる。
凡庸なままではいられなかった男。
故に、余人は男を高く評価した。
辛ければすべて投げ出して構わない、母はそう言っていた。善処しよう、男はそう答えた。
一人で背負う必要はどこにもない、師にそう言われた。心に刻もう、男はそう答えた。
人当たりはいいが口が悪い、相棒にそう言われた。あんたの前でだけだ、男はそう言う。
才能に胡坐をかかない努力家だ、元継子にそう言われた。それは当然のことだ、男はそう言う。
お前の人生はお前が生きたいように、父がそう言っていた。ならばそのように、男はそうして笑った。
余人の声など気にもしなかった、ただ、全てが自由だった。
そうして、男は手に入れた、己が振るう刀の
最期は、まだ訪れない。
生きてほしい者がいる。
立ち直ってほしい者がいる。
生かしてくれた者がいた。
生かしたかった者がいた。
故に男は決めている。
それでも、きっと断ち切ることは出来ないのだろう。
ならばこの身は
これが、
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力強く、空高く、悠々自適に、真っ白な鳥が空を往く。鳥は謡う、遠い、遠い、大陸の歌を。
「
ほんの少し、歌詞を変えて。