ディズィーの素敵な冒険   作:オンドゥル大使

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ACT12「ディズィー1999」

 ――ディズィーをキャスティングしようと思った経緯は何ですか?

(キャンベル監督以下C):とにかく彼女はスター性が強い。だから今回の映画には打ってつけだと思ったんだ。

 この作品ではスター性がとにかく命だからね。溢れ出るそのオーラみたいなものをカメラ越しでも感じたよ。それはカリスマと呼べるものであるのかもしれないし、何よりも生来に持っている偉大なる代物であるのは疑いようのないだろう。

 ――ではこの映画を大々的にヒットさせるのに、ディズィーというキャスティングは必須であった、というわけですね。

 C:なにせ、彼女には活躍してもらう部分が大きかった。アクション物だって言ったところで、彼女はノーの一つも言わなかった。今時出来た女優だ。

 カットもNGなんて出さないんだ。どこでもOKカットさ。エンディングのNGシーン集に足りないからって、わざと僕は彼女にNGを出してもらったほどにね(笑)

 ――それは大変でしたね(笑) この作品、彼女にとって躍進であると思いますか?

C:それは観客が決めるもので、監督である僕が決めるものじゃないと思う。僕がやったのは彼女を魅力的に見せる事、この映画を完成に導くまでに必要な工程を踏んだだけなんだ。だから、ほとんど彼女に任せ切りだったのかもしれないね。

副監督のジェニファーだって同じように答えるはずさ。元々ディズィーのファンは彼女で、だからこそ、この映画が完成にこぎつけたのも彼女の情熱が大きいんだと思っているよ。最初のほうこそ、僕は止めたんだ。「映画はファンアートじゃないぞ」ってね。

――ためになるインタビューをありがとうございました。

 

(ジェニファー副監督以下J):そもそも私は、キャンベルのやり方にどこか反発心を抱いていました。こう、フェミニズムの欠片もないというか、ほら、彼の作品の特徴でしょう? 男性信仰が強いんです、彼。だから、女優を、しかもずぶの素人を現場に入れた時には、もう大変。だって一晩中、怒りっ放しだったんだもの。どこからそんなエネルギーが出るの? って(笑)

 映画を撮っている時の彼はとても魅力的よ。ええ、素敵。でもそれ以上に、彼は分かってくれていたわ。

 この映画がディズィーの躍進に繋がる事を。

 でもそうじゃない。私の撮りたいものも、彼の撮りたいものも、芸術作品なのであって、歌手のPVなんかじゃ決してない。

 だからこれは、そう、私の最大限のわがままの通った作品でもあり、なおかつ、最初で最後の、プロモーション作品ね。

 ――ジェニファー副監督はこれが引退作品だと聞きましたが、如何でしたか?

 J:満足しているわ。最後の最後に、あのディズィーの作品に関われたんですもの。

 そう、満足。

 ……でもね、彼の言葉に惑わされないで欲しいのは、私は映画ってものは映画人のためだけにあるんじゃないのだと思っている。

 もちろん、映画の名だたる舞台で表彰されるのは偉大よ。ええ、それはもちろん。

 彼の撮ってきたのがノンフィクションだってのも、起因しているのかもね。

 だから今回みたいなのはやめてくれっって、三十回ほど説教されたわ。

 でも私は通したかった。

 引退作品なので自由にやらせてくれないか。そうやってようやく言いくるめられた。

 私の、最大限のわがままであり、なおかつ映画人としてではなく、私個人としてとても気に入った作品になったと思う。

 映画館に足を運んでくださった観客の皆さんはきっと、満足を胸に抱いて帰ってもらえると思うわ。

 ――ありがとうございました。

 

(VFX監修 リッツ以下R):編集? 大変だったよ。全編グリーンバックだって言われた時には、あそこが縮み上がる思いだったね。

 ミリター(キャンベル監督のファミリーネーム)は編集の大変さを分かっていないんだ。そりゃ、撮った素材を切って繋げるだけでしょ、って言われたらそこまでだけれど、そんな容易いものじゃない。

 ロペス(ジェニファー監督のファミリネーム)は楽観的過ぎだ。

 映画ってのはただ撮ればいいだけじゃない。その後の音響処理、他にも色々と粗雑なものが混じっている。

 俺はね、そういう粗雑なもの、要らないもの、不純物を取り除く作業こそが、この仕事なんだと思っている。

 大海で砂金を見つけ出すみたいなもんさ。

 カット数は相当に上ったが、使われたのはほんの千カット未満。

 こんなの映画じゃないって叩いてもらっても結構だよ。俺は納得していないし、この後だってミリターを相手に喧嘩するつもりさ。

 映画は監督が作るものでも、ましてや観客が自己完結する場でもない。

 映画は、こういう塵も積もれば山となる作業こそが真髄なんだ。

 誰も分かっちゃいないけれど、それを探る事こそが、業界人なんだと思いますよ。

 このインタビュー? 載せてもらわなくって結構。ギャラも要らない。

 何だってこんなもの……。俺はノンクレジットでもいいって言ったんだが、せっかくだからって……修学旅行かよ。

 とにかく俺は納得してません。ではこれで。

 ――ありがとうございました。

 

(映画評論家プリンス以下P):この二時間はまるで凝縮された宝箱の中を観覧しているかのようであった。

 私がそう錯覚するほど、映像密度、展開、音楽、全てが一体となって私の五感に問いかける。

 ここはディズィーの世界だ、と。

 ならば私は? 小さな業界人に過ぎない私は、観客か?

 否、この映画は断言出来る。

 これは映像体感型アトラクションだ、と。

 新感覚、なんてものは生易しい表現だ。 

 何よりも映画としての体裁を守りつつも、全ての映画を観るブラザーに、これは最良の選択であったと確信させる。

 そう、映画を観るというのは選択肢の連続なのだ。

 嫌ならばそのシーンは目を瞑ればいい。

 なかった事にするのは簡単だ。

 ディレクターズカット、という代物だってある。

 しかし私は断言する。

 これは、映画館に訪れた人間にしか分からない天啓なのだと。

 天啓を得るのには、古くより極限まで研ぎ澄まされた感覚が必要だ。

 最後の十分間。

 あなたは騙される。

 私はそう確信し、筆を置く。

(メールによるインタビュー)

 ――ありがとうございました。

 

(三十代女性Nのアンケートに書かれていたレビュー):まず、腹立たしいと思いました。

 わたしは映画を観るといっても年に三本あるかどうかです。ですが、この作品は大々的にマーケティングを打っておきながら、一度だって(有名俳優S)が出てこない!

 わたしはSを観に来たの! ディズィーなんてどうだっていいし、冗長な台詞回しやカメラワークが逆に気分を害しました。

 映画代を返して欲しいのが本音ですが、次回作が決まっているようなので今度はSを主役にしてください。

 

(十代男性Hのアンケートに書かれていたレビュー):スゲーいいじゃん。

 俺、そんなには期待していなかったんだけれどCGめっちゃすごかったし。

 金かかってんだなぁ、って思ったよ。

 何よりも(無名女優R)の演技がカワイイ! 

 俺はRを観に来たんだって確信したもん! 

 次に来る女優はRです。ヨロシク!

 

(ネットレビューから抜粋:星五つ評価)

 大胆不敵、その言葉がこれほど似合う映画に会えるとは思えなかった。

 なんていう事だろう。わたしは体感時間、三十分ほどに感じたのだが後から上映時間を見て二時間だという事に驚愕した。

 恐ろしく計算された映画だ。わたしはこのような映画を知らない。

 惜しむべくは最後のシーン、ハッピーエンドがよかった! でもいい映画です。星五つ評価とします。

 

(ネットレビューから抜粋:星一つ)

 映画を観ている途中でめまいがしました。

 何を映しているのか、そもそも何の映画を観に来たのか正直分からなくなりました。

 本筋からずれているような気がして、ストーリーには集中出来なかったし、何よりも俳優のドヤ顔が癇に障りました。

 謝ってください。

 連絡先は××△△です。このあて先まで返金をお願いします。

 

(脚本家ピー輔氏のインタビュー):とんでもない代物だったよ。

 ぼくの作品世界に通じるような、深い述懐にはため息さえ漏れた。

 それと同時に「やられた!」ともね。本当ならぼくがこれをノベライズしたかった! 

 でもNさんをノベライズ担当にしたのは妥当かな。

 だってSFだもんね。ぼくが書くのはラブロマンス。

 深い作品世界にただただ感嘆するばかりです。

 ぼくが書くとすれば、今度はこの映画の主演女優ディズィーのような、この作品世界におけるデウスエクスマキナの立ち位置を取る女性が主役かもしれない。

 影響を受けた映像作品十位以内には必ず入る。

 ――ありがとうございました。

 

(個人経営サイト「ホウエン映画会社のしがない社員のぼやき」より一部抜粋)

 いいんじゃないかな。

 だってこれはこういう映画だし。他の人が叩いているのを見ると、「まぁそうなんだけれどさ」ってなるけれど、自分は好きです、こういうの。

 文学作品の中に迷い込んだかのようなセットはただ純粋に、「すごいなぁ」って感心するし、映画館で観たほうが本当に、面白いとは思うよ。

 ただねw これ、何度も言われているけれどジュブナイル作品だからw ラブロマンスを期待した人にはゴメンねw

 

(ディズィー本人への電撃インタビュー。数百人の記者が詰めかける中、聞き分けた言葉)

 がんばりました。よろしくお願いします。

 ――ありがとうございました。

 

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