日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第9話

東部諸侯団壊滅から一日が経過した。

クワ・トイネ政治部会ではノウ将軍からもたらされた報告に、誰もが唖然としていた。

 

 

「これは本当なのか………敵先遣隊3万人を全滅させたと言うのは」

 

「はい。報告書とノウ将軍を含めた、エジェイの全将兵が目撃しております」

 

 

特科連隊の攻撃を自分の知る限りの知識を使って分かりやすいように作成されたノウの報告書に、皆、信じられないといった表情となる。

 

 

 

「ですが、これで敵の出鼻は挫く事は出来ました。先のロデニウス海戦の報告と合わせて日本の実力は分かりました」

 

 

クワ・トイネ首相『カナタ』は取りあえずその場を抑えて、次の議題に入った。

 

 

 

「日本から提案が書かれた資料があります。ご覧ください」

 

 

 

そう促され、全員が手元の資料に目を通す。

 

 

 

 

「これは……」

 

「正気か!?」

 

 

 

 

そこには、日本によるロウリア王国国王で、今回の戦争の首謀者でもある『ハーク・ロウリア34世』を逮捕するという前代未聞の作戦の内容書だった。

 

 

「日本はロウリア王捕縛の任務を行う特務部隊を乗せた鉄龍を飛び立たせ、首都ジン・ハークにある王城に強襲、ロウリア王を今回の戦闘の首謀者として捕縛したいとの事だ」

 

「なんと無茶な………首都やその回りには守りを固めている防衛部隊が居るというのに、そこへ飛び込むと言うのか」

 

「日本は敵主力の目を引き付けるために、ダイダルに居る部隊のほぼ全てを首都目前まで進出させるそうだ。特務部隊はその隙に突入すると言ってきている。そこで我が国に、敵首都への攻撃許可及び、自軍の大移動とロウリア軍との戦闘の許可を求めてきている」

 

 

 

その提案に暫くその場はザワついたが、結論は意外な程に早く出された。

 

 

 

「別に良いのではないか?我々に代わって日本がこの戦争を終わらせてくれるなら」

 

 

 

ある議員のこの言葉に、皆は次々と賛成の意見を出し、満場一致でロウリア首都への攻撃許可が出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギムの町に置かれた、ロウリア軍クワ・トイネ侵攻部隊本部では、副将『アデム』は目に見えて分かる程に苛立っていた。

 

 

「先遣隊とは連絡がつかないのかっ!」

 

「はい……先程から魔信で何度も呼び掛けてるのですが、応答はありません」

 

 

軍の魔導通信隊の兵士が、とてつもない剣幕で怒鳴り付けてくるアデムに怯えながら応える。

彼がここまで荒れているのは、先遣隊として派遣したジューンフィルア率いる東部諸侯団からの報告や連絡が昨日より途絶してしまっているからであった。

 

 

「偵察隊はどうなってますか?」

 

「間も無く、先遣隊が消息を絶った地点に到達します」

 

 

 

3万人にも及ぶ軍勢が一晩で消息を絶ってしまう事など、彼を含めた侵攻部隊の幹部達にとっては考えられない事だった。アデムは先遣隊の消息を確認するため、エジェイ方面に向けて朝早くからワイバーン1個小隊を編成させ現場に派遣していた。

 

 

 

 

 

その頃、エジェイ方面上空に到達した東部諸侯団所属のワイバーン小隊員、竜騎士『ムーラ』は先遣隊が野営していた地点の上空に達していた。

 

 

 

「これは………!?」

 

 

 

下を見ると第7特科連隊による榴弾砲と要塞砲の砲撃で出来た大きなクレーターがあり、そのクレーターの回りには焼け焦げた人間らしきものや、地面に突き刺さったままの棒に風で大きく揺れているボロボロの軍旗、武器や鎧の破片らしきものが散乱している。

 

 

「誰も居ない………全滅したのか」

 

 

ムーラはそれを見て、ジューンフィルア達が1人残らず全滅した事を悟った。

 

 

 

「直ぐに報告しなくては………」

 

 

魔信で本部に報告を送ろうとした時…

 

 

グワァァッ!グワァァッ!グワァァッ!

 

 

彼を乗せて飛んでいたワイバーンが、前方に顔を向けて何かが接近してくる合図を出した。ムーラは敵かと思い、その方向に視線を向ける。

 

 

 

「なんだ?竜……か?」

 

 

 

自分達よりも遥か先から、黒い点のような物が見えた。視力の良いムーラは黒い点の正体を確かめた。

 

 

「竜じゃ……無い?」

 

 

それは、正面から見てガラス張りの窓が縦についた幅の広い大きな胴体の上に羽のような物が高速で回転し、左右から何かをぶら下げている小さな翼が生え、左右に細い足を伸ばしている。竜とはとても思えない飛行物体がこちらに向けて高速で近づいてくる。

 

 

「敵の斥候か!?」

 

 

 

その時、相手の片方の翼から光が見えた。

翼から切り離されたその小さな光点が超高速で向かってくる。

 

 

 

「ちぃ!」

 

 

 

ムーラは慌てて左急降下で交わそうとしたが、至近距離で見えた小さな光点は細長い棒のようなものが突如として軌道を変えて彼の後を追いかけてきた。

 

 

 

「逃げられない!こんな所で!」

 

 

 

彼はいずれ自分と愛騎共々、粉砕されるのかと覚悟した。

 

 

 

「あ…」

 

 

 

出陣前に彼の妻がお守りとして腰から提げていた、金属の薄い板で出来たネームプレートがずり落ちた。

 

 

 

その直後、後ろから爆発音がした。

 

 

 

「何が………」

 

 

 

死を覚悟していた彼が後ろを振り替えると、空中に黒い煙の塊が起きていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありゃ?ミサイルが爆発した?」

 

 

コブラと共に陸上自衛隊の主力を努める戦闘ヘリ、AH-64Dアパッチ・ロングボウ。

TACネーム『ジェロニモ』の機長で第4対戦車ヘリコプター隊所属の『大塚明』1等陸尉は、ムーラに向けて発射したスティンガーミサイルが直撃寸前に爆発した事に驚いた。

 

 

 

「信管異常か?それとも何かしらの妨害手段を使ったのかな?」

 

「分かりません」

 

 

 

前席に座る射撃手『伊藤一晃』2曹が、メインローター上部のロングボウレーダーが補足していたムーラの動きを投影した多機能ディスプレイ画面に目を向ける。

 

 

 

「1尉、敵さんは向かってきます」

 

「ワイバーンの速度って何キロだったかな?」

 

「最大で280キロ、この機体の最大速度とほぼ同じくらいですね」

 

「敵の斥候かもしれん。ここで排除しとくか」

 

 

 

大塚はムーラを排除するため本来は想定されてない空中戦をする事になり、ムーラと対峙する。

 

 

 

「おっと!」

 

 

 

前方から真っ直ぐ突っ込んできたムーラのワイバーンが口を開き、火を吐こうとした瞬間に機体を左へ急降下させ回避させる。

 

 

 

「避けられたか!」

 

 

 

牽制のために放った火炎弾を見事に避けられたムーラは愛騎を巧みに操りアパッチの背後に付こうと食らい付く。

しかしそんな状況で大塚はムーラを振りきろうとせず、敢えて背後を取らせる。

 

 

 

「さぁ着いてこい!」

 

 

 

大塚はアパッチの操縦桿とスロットルレバーを小刻みに動かし自身を追いかけさせるように挑発する。

 

 

「舐めるな!」

 

 

見事に乗ったムーラはアパッチの後ろを全速力で食らい続け必死に追いすがる。

 

 

 

「攻撃来ます!」

 

 

 

後方確認用ミラーからムーラのワイバーンが導力火炎弾が放たのが見えた。その瞬間に機体を大きく右へ振って回避する。

 

 

 

「また来ます!」

 

 

 

再び攻撃が加えられ、今度は左に避ける。

 

 

 

「相手さん怒ってるぞ!伊藤、例の"アレ"やるぞ!用意は良いか?」

 

「何時でもどうぞ!」

 

 

 

火器管制システムを操作しハイドラ70ロケットポッドの安全装置を解除する。伊藤はヘルメットの左側に装着された機首のTADS目標補足・指示照準システムと連動した片眼鏡型のIHADSSディスプレイに投影される照準点に視線を集中しトリガーに指を掛ける。

 

 

 

 

「行くぞ!」

 

 

 

大塚は操縦桿を手前に目一杯引き、一気に機首を真上に向けてから急制動を掛けて機体をホバリングさせる。

背後からほぼ全速力で追い掛けて来ていたムーラは勢い余ってアパッチの真上を通り過ぎた。

 

 

 

「今だ!」

 

 

 

上を向いていた機体角度を水平に戻し、アパッチの前に出たムーラをロックした。

 

 

「喰らえ!!」

 

 

トリガーを引くと、スタブウィングに装着されたロケットポッドからハイドラ70ロケット弾が連射モードで放たれた。

 

 

 

 

 

「しまった!」

 

 

 

アパッチから放たれたハイドラ70を避けきれないと悟ったムーラは次こそは死を覚悟した。

 

 

 

「何っ!?」

 

 

 

突然、体が浮遊感に襲われた。彼は愛騎によって突然振り落とされ地面に向かって落下し始めていた。

落下していく彼の目の前で愛騎のワイバーンにハイドラ70が直撃した。

 

 

 

「!!!!!」

 

 

 

大爆発と共に、長年付き添ってきた愛騎が粉々に粉砕される。

 

 

 

その直後、ムーラは地面に落ちた。

 

 

 

「ぷはぁっ!」

 

 

 

だが運良く落ちた場所が沼だった事から、彼は命に関わるような怪我を負う事は無かった。

 

 

 

「負けた……………」

 

 

 

沼の水でずぶ濡れになりながら、東へ向けて飛び去っていくアパッチを見つめる。

 

 

 

「強かった………お前は何者なんだ?」

 

 

 

小さな声で、去っていくアパッチに向かってそう問い掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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