日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第33話

「撃て!」

 

 

海戦は双方とも距離を保ちながら互いに砲撃の応酬が繰り広げられていた。

砲撃音と衝撃が辺りに伝播し、時間が経つにつれて双方とも被害が広がっていく。

 

 

「右舷CIWS1番、3番大破!機能停止!」

 

「3番、5番速射砲射撃不能!」

 

「左舷シースパロー発射機被弾!使用不能!」

 

 

グレードウォールに向けている紀伊の右舷側に被害が集中しており、46センチ砲弾の直撃を受けた速射砲とCIWS、シースパローの発射機が次々と破壊、火災も起きておりスプリンクラーによる全力消火が行われる。

 

 

「攻撃の手を緩めるな!押し負けるぞ!」

 

 

紀伊はバルクルス基地からP-3C部隊が到着するまでの20分間を耐えるため、グレードウォールからの攻撃を正面から受け続け、その分を返すように反撃を仕掛ける。

 

 

 

 

『左舷直撃弾あり!』

 

『第7区画より浸水発生!』

 

『左舷各対空砲全基、応答無し!』

 

『航空機用カタパルト大破!』

 

『左舷1番、2番スクリュー破損!速力低下!』

 

「ダメージコントロール急げ!」

 

 

 

グレードウォールも多数の至近弾と直撃弾を受けダメージが拡大していき、速力も10ノット以下に落ちてきている。艦内でも浸水と火災に対して乗員達がダメージコントロールに走り回るが、被弾と水圧によって立て続けに起こる損害と死傷者多発により全てには手が回らず被害が津波のように広がっていく。

 

 

「この区画は危険だ!閉鎖する!」

 

「待避!待避!待避!」

 

 

 

既に浸水で艦内の一部区画は完全に水没してしまっており、完全水没の恐れがある区画は放棄され順次閉鎖されていく。

 

 

「うわぁぁぁ………痛ぇょ!」

 

「辛抱しろ!直ぐに診てやる!」

 

「そっちの奴は後回しだ!軽傷者を優先せよ!」

 

「こっちに止血剤と包帯を回せ!」

 

 

医務室でも軍医と衛生兵達が次々と運び込まれてくる負傷者の手当てに当たっており、医務室の床は負傷者の傷口から流れ出た血で真っ赤に染まっており、室内も医薬品と血の匂い、硝煙の匂いが混ざった異臭に包まれマスクをしていても匂いが鼻につく。

 

 

「左舷浸水増大!速力低下!」

 

 

艦内はもはや地獄と化していた。しかしそれを余所に、グレードウォールは紀伊との砲撃戦を続け、9門の46センチ砲の砲身は連続した砲撃により高熱となっており、砲撃により巻き上げられた海水が雨のように降り掛かると、水蒸気となり白い湯気を沸き立たせる。

 

 

「傾斜復元急げ!」

 

 

グレードウォールの艦長は必死に各所に指示を飛ばしながら戦闘指揮を続け、他の艦橋要員達も各々が受け持つ部署への指示に専念している。

 

 

 

「このまま押し切るぞ!何としても敵艦に一矢報いるんだ!」

 

 

アケイルは本来の目的である国連軍への艦砲射撃とグレードウォールを座礁させる作戦を諦め、紀伊に出来るだけ損傷を与え味方へ与える損害を少しでも減らすべく、部下達を鼓舞する。

 

 

 

 

 

 

その頃、バルクルス基地から飛び立った第2航空群第2航空隊は進路を南方海域に向けて編隊を組んで飛行していた。

 

 

 

『スカイアイよりODINへ、間も無く射程距離に入る。攻撃を開始せよ』

 

『ODIN1より各機へ、攻撃態勢!』

 

 

第2航空隊はE2Cからの指示に従い、吊り下げているASM-1Cの発射態勢に入る。

 

 

『各機、発射用意よし』

 

『攻撃開始!』

 

 

10機のP-3Cから1機当たり4発のASM-1Cが次々と放たれる。

主翼から切り離されたASM-1Cは投下後にターボジェットエンジンを始動させ、低空飛行モードで南方海域へ向かって飛翔していく。

ミサイル攻撃の報はデータリンクにより紀伊に直ちにもたらされる。

 

 

「司令、ミサイル攻撃が始まりました!」

 

「よし!待避する!」

 

 

紀伊はミサイル攻撃の巻き添えにならないように後退を開始した。

 

 

「敵艦後退!」

 

「怯んだのか!?しかし何故なぜ今さら?」

 

 

紀伊が後退したのをいぶかしく思いながらも、アケイルは追撃を指示する。

後退する紀伊を追撃を開始しようと艦首を紀伊に向けたグレードウォールのレーダーが新たな反応を捉えた。

 

 

『こちらレーダー室!9時方向より多数の高速飛翔物体を探知!』

 

「何だと!数は?」

 

『10…20……30……40っ!目標数40!』

 

 

アケイルはムー大陸方向に双眼鏡を向けると40発ものASM-1Cが見えた。真っ直ぐと自分達のところへ向かってきているのを理解した。

 

 

「対空戦闘!」

 

 

対空戦闘を指示したが、マッハ0.9で飛翔するASM-1Cは海へ出ると一気に高度を下げ海面スレスレの超低空飛行を開始、対空砲の死角に入った。

 

 

「駄目だ……早すぎる!」

 

 

40発のASM-1Cが迫る光景に艦長が絶望したかのような声をあげる。

対空戦闘を行おうにも紀伊との戦闘で左舷側の対空砲は全滅しており、右舷側の対空砲を使うには艦を回頭させる必要があるため、どちらにしろグレードウォールにASM-1Cの飽和攻撃を止める手だては無い。

 

 

「総員衝撃に備え!」

 

 

アケイルはそう叫び、その場に伏せる。

 

 

 

 

 

数秒後、40発のASM-1Cは海面から一気に上昇、ポップアップモードでグレードウォールの真上から降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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