B-52によるラルス・フィルマイナ爆撃終了と同時刻、レイフォル沖からジェットエンジンの轟音が聞こえてきた。
空母ロナルド・レーガンから飛びたったVFA-107のF/A-18Fがハープーンミサイルを搭載し、低空飛行からの攻撃態勢に入っていた。
『ターゲットインサイト、FOX-1、fire!』
10機のホーネットから放たれた40発のハープーンミサイルは、レイフォル港に向けて超低空飛行で飛翔を開始する。
爆撃で大混乱に陥るレイフォル方面軍は、国連軍の総攻撃に備えて戦闘態勢に入っており、レイフォル港に停泊していた第2艦隊の残存艦とレイフォル駐留艦隊の戦艦、空母、巡洋艦、駆逐艦は出港準備に入った。
「敵襲!」
沖から迫ってくる40発のハープーンがレイフォル港に迫ってきた。
「対空戦闘!」
艦隊は直ちに対空戦闘に入るが、音速で迫るハープーンを迎撃できる訳もなく、駆逐艦と巡洋艦、空母に次々とハープーンが命中していき瞬く間に無力化されていく。
「誘導弾全弾命中!」
「砲撃用意!」
残されていたヘルクレス級戦艦とオリオン級戦艦に乗り込む将兵は敵の攻撃を凌ぎきったと思い、急いで出港態勢に入り、錨を上げていく。
その直後……………
「うぉぉぉっ!!」
1隻のオリオン級に突如として大爆発が起きた。続けてヘルクレス級戦艦にも火の手が上がる。
「初弾命中!」
夜の海上を紀伊の主砲がレイフォル港に向け砲撃を行っていた。主砲に装填されているのはフォーク海峡戦でヘルクレス級3隻を無力化に追い込んだXM2017誘導砲弾の制式採用型『18式艦砲用誘導砲弾』であり、ミサイル攻撃ではヘルクレス級とオリオン級の無力化が難しい事から、沖合いからこの砲弾を使っての超長距離精密砲撃を行っていたのである。
「初弾、敵艦に全て命中!」
「次弾装填完了!」
「撃て!」
紀伊から行われる精密砲撃はGPS誘導により非常に正確で、レイフォル港に停泊していた戦艦にダメージを与えていき、僅か10回の斉射でいともたやすく無力化されてしまった。
「目標無力化を確認!」
「対地攻撃に切り替える!」
レイフォル港の軍艦を軒並み撃破した艦隊は次に、レイフォル港の物資集積所、燃料貯蔵施設、敵海軍基地撃破のため、艦砲射撃による対地攻撃に切り替えた。
GPSとRQ-2J無人機による観測情報を元に砲撃を再開した。
「だんちゃーく、今っ!」
砲弾が次々とレイフォル港へ着弾し、目標を破壊していく。一度の爆発で物資集積所に格納されていた武器弾薬や食料品と共に吹き飛ばされていく。
続けて石油貯蔵施設に着弾した砲弾は一度の爆発で、石油精製設備を破壊、衝撃波で燃料貯蔵タンクに穴が開きそこから漏れ出した燃料にも引火の後に爆発を起こし、熱波と衝撃波が他のタンクを破壊して燃料に引火が繰り返され、瞬く間に燃料貯蔵施設は高温の炎に包まれた。
そして、レイフォル港に設置されたグラ・バルカス帝国海軍レイフォル基地にも砲撃が及び司令本部、幹部宿舎、兵舎、基地警備隊本部、通信用アンテナが次々と破壊されていく。
幹部らがラルスフィルマイナに移動していたため最低限の警備として残されていた警備兵らは業火の中に消えていくか、命からがら脱出しラルスフィルマイナへと報告に走った。
1時間にも及ぶ砲撃の後、無人機からの映像で目標の無力化と判断された後、遂にレイフォル港完全制圧のため上陸部隊が動き出した。
「各員搭乗!」
ワスプ級強襲揚陸艦のウェルドックの扉が開かれ、新生合衆国海兵隊の上陸部隊第1陣を載せたAAV7水陸両用車が次々と海上へ降り、レイフォル港へ向けて前進していく。
同時に、飛行甲板からは航空支援のAV-8ハリアーが飛び立ち、上陸地点に設定されているレイフォル港第1埠頭の隣にある未整備区画の砂浜海岸へ向けて上陸前の偵察へと向かう。
『こちらメタルアロー、上陸地点へ接近』
『了解。敵残党による攻撃に注意せよ』
『了解』
先行するハリアーが上陸地点へ低空で接近する。
『hop up!』
海岸から1キロの地点で急上昇、上陸地点上空へと差し掛かる。
『目標確認できず。上空地点より奥は車両と建物の残骸が見える』
上空からの偵察により上陸地点に敵は居らず、上陸部隊は真っ直ぐと砂浜海岸に接近し、間も無くAAV-7が砂浜に乗り上がり上陸を開始した。
「降車!」
兵員室の扉が開かれ、完全武装の海兵隊員が砂浜へ降り立ち、車両を盾に前進を開始する。
「撃ってこねぇな」
「連中、ビビって逃げ出したか?」
全く攻撃が来ない事に海兵隊員達は戸惑いつつも、上陸地点である砂浜海岸を駆け周り無事に制圧。
後続のLCACも艦から装甲車や兵員輸送車を載せて、上陸地点でそれらを下ろしていき、瞬く間に砂浜海岸は海兵隊の橋頭堡となった。
海兵隊は態勢を整えると、レイフォル港一帯制圧のため動き出した。
「Go!」
LAV-25とAAV-7、ハンヴィーに乗り込んだ車列はヘリとハリアーからの支援を受けてレイフォル港へ向けて前進を開始する。
その頃、デスデモーナ基地から進出していたムー陸軍第1師団は攻撃態勢に入り、その後方を陸上自衛隊第7師団第7特科連隊所属の99式155ミリ榴弾砲、北部方面隊第1特科団所属のMLRSが攻撃準備を終えていた。
それらは全て南の方角に向けられている。
「攻撃開始!」
攻撃の火蓋を切ったのはMLRSだった。ランチャーから大量の噴射煙を吐き出しながらM26クラスター弾がレイフォルの南に展開している帝国軍の防衛陣地に向けて撃ち出された。
第1射目で放たれたM26の数はおよそ10発、ムー陸軍第1師団の頭上を通り過ぎ、遥か先にある丘の上と裏側に設けられた帝国軍の防衛陣地上空に到達すると、弾体から合計6440個の子爆弾が大雨の如く降り注いだ。
「うぉっ!」
防衛陣地で起きた多数の子爆発が空気を震わせ、衝撃波が第1師団が待機している場所までやって来た。
「スゲエな。爆発がまだ続いてるよ」
待機場所で停車している43式装甲車の車内で、ムー陸軍第1師団第1歩兵連隊第1中隊の第2歩兵小隊長『ライアン・レーロング』大尉がそう呟いた
「6000個の爆弾の爆発らしい。まったく、クラスター爆弾てのは恐ろしいぜ。アレ考えた奴は正気か?」
「俺、可笑しくなりそうです……戦う前に自分に負けそうです」
装甲車の車内で待機している部下の小隊兵士が爆発の衝撃波で車輌本体が小刻みに揺れいつまでも続く爆音に身体が震わせ身体を縮ませている中、自衛隊によるMLRSによるクラスター弾攻撃は続く。
『CQ、第1射射撃終了』
『了解。CQより第2射射撃開始!』
第1射が終わり、第2射目で放たれたM26の子爆弾の数は第1射を含め1万を越えており、敵防衛陣地一帯を土煙が覆い尽くす。
『CQへ、MLRS全車残弾なし、攻撃終了」
『CQ了解。各部隊はその場で待機』
MLRSによる攻撃が修了する。
攻撃が終わると同時にヘリコプターによる戦果確認が行われる。
『こちらレッドアイ、敵防衛陣地は壊滅状態。ただし敵残を確認』
『CQ了解。第3射攻撃を開始する』
残存している敵部隊に向けて、今度は99式による砲撃が行われる。
『全車射撃用意、撃て!』
第7特科連隊による砲撃が始まった。155ミリ榴弾砲による砲撃は、クラスター弾攻撃から生き延びた帝国軍部隊に降り注ぐ。
「凄い砲撃だ。ウチの砲兵隊の砲なんかオモチャだせ」
装甲車の車内にある視察窓から暗闇の中で99式の砲撃を見ていたライアンが素直にそう述べる。
「艦砲レベルの奴を載せてるんだぜアレ」
「マジですか!そりゃ凄い訳だ」
「でも凄い音だ。この中に居ても聞こえるくらいなんだからよ」
「いつまでやる気なんだ自衛隊さんは?」
砲撃は5分間続き、戦果確認が行われる。
『戦果確認。敵残存部隊半減』
『CQ了解。CQより各部隊、前身用意』
戦果確認の後、ムー陸軍第1師団は行動を開始した。
『師団司令部より各隊、前身!』
「ようやく動いたか。さて、気を引き締めるか!」
第1師団の先鋒を勤める第1歩兵連隊、その後ろを第1戦車大隊のラ・シャルマンがエンジン音を唸らせながら続き、履帯の金属同士が擦れる音を響かせながら丘を昇りながら防衛陣地へ向けて突撃を開始した。
丘を上り敵防衛陣地に突入すると、そこにはクラスター爆弾と砲撃によりクレーターが出来た地面と、ひっくり返ってしまっているシェイファーとハウンド、トラック等の車両やその残骸が散らばっており、人の姿は全く見られなかった。
「誰も居ないな」
ライアンは視察窓越しに居る筈の敵が居ない事に多少拍子抜けする。
「すまん、外の状況はどうだ?」
ライアンは搭乗している装甲車の車長に話し掛ける。
「あぁっ!?良く聞こえん!」
「周りの様子を教えてくれ!!」
「あぁ!熱気が凄い!何が燃えてるのか分からんが凄い匂いだ!吐きそうになる!」
車長はエンジン音に負けないよう大声で話す。
「うぉっ!!」
直後2両のラ・シャルマンが砲撃を受け、同時に機銃掃射が加えられた。
『8号車被弾!』
『12号車、脱出する!』
装甲が薄い側面に砲撃を受けたラ・シャルマンは大破炎上し乗員達が次々と脱出していく。
「右側方に対戦車砲視認!」
「左からも敵歩兵多数視認!戦車も居るぞ!」
砲撃を運良く切り抜けた帝国軍部隊の生き残りが、丘の制圧を行っていたムー陸軍部隊に襲い掛かった。
『どうする!?指示をくれ!』
『応戦だ!第1戦車小隊は敵戦車に対処!第2戦車小隊は第1戦車小隊を援護!第3と第4戦車小隊は歩兵と共同して援護に回れ!』
車内の無線機のスピーカーから各部隊の指示や状況報告の音声が飛び交う。
「無線借りるぞ!司令部に繋いでくれ!」
「分かった!!なるべく早くしてくれ!!」
ライアンは自身が指揮する第2小隊はどちらの戦車小隊に付くべきかの確認のため装甲車の無線を取り司令部に通信を送る。
「中隊長、こちら第2小隊ライアン!我々はどうする?」
『第2小隊は第4戦車小隊の援護に回れ!』
「了解!ライアンより第2小隊、我々は第4戦車小隊の援護に回るぞ!全員下車!ドアを開けてくれ」
「了解!!」
装甲車のハッチが開かれると同時にライアン達は飛び出す様に降りると、第4戦車小隊の援護に走る。
『敵はそんなに多くは無い!落ち着いて対処せよ!』
『クソ!また戦車がやられたぞ!』
『俺に任せろ!喰らえ!』
再び1両のラ・シャルマンが撃破されたが、別の車両が砲撃で敵の対戦車砲を破壊した。
『敵戦車出現!』
対戦車砲が時間を稼いだ隙に、敵のシェイファーとハウンドが姿を表した。
『クソ!まだ生きてた奴が居たのか!?』
『47ミリ付きを優先して仕留めろ!』
『奴ら突撃してくるぞ!』
『こっちも突撃だ!』
敵戦車隊に対してラ・シャルマンの戦車隊も車体を旋回させて、敵に向かって突撃を開始する。
『敵戦車発砲!』
ハウンドⅡの47ミリ砲が車体側面を晒していたラ・シャルマンに直撃し2両が撃破された。
『またやられた!』
『落ち着け!徹甲弾装填!目標敵戦車!撃て!』
しかし、やられているばかりではなくラ・シャルマンの76ミリ砲から徹甲弾が放たれ、シェイファーの前面装甲を容易く貫き撃破した。
『よし!どんどん行け!』
ラ・シャルマンから次々と砲撃を受け、火力と防御力の性能で圧倒的に劣るシェイファーとハウンドは次々と葬られていく。
「俺たちも負けるな!敵戦車に食らい付け!」
一方で対戦車隊の動きも凄まじく、味方戦車が敵戦車の注意を引いている間、彼らは敵戦車の防御が薄い真横や背後から接近を仕掛ける。
「撃て!」
射程距離に入ると、対戦車兵は短機関銃で戦車を守っている帝国兵に向けての掃射を始める。
「側方に敵だ!」
「奴らいつの間に!」
帝国兵達は慌てて反撃してくるが既に対戦車擲弾筒の発射態勢は整っており、シェイファーとハウンドに向けて照準を合わしている。
「RPG!」
対戦車擲弾筒を構えた対戦車兵が叫ぶと同時に、筒状のランチャーから対戦車弾が撃ち出され、シェイファーとハウンドの薄い車体側面に直撃し、内部の乗員ごと吹き飛ばした。
「RPGぃぃ!」
「RPG!!」
本来ならロケットランチャーからの攻撃を受けた場合に叫ぶその言葉はムーではRPG-7のコピーである対戦車擲弾筒を発射する合図として使われている。
対戦車兵は手持ちの弾薬量が許す限りの攻撃を行い、車両、対戦車砲を破壊していく。
「敵戦車が吹き飛んだ!突撃用意!」
ライアン達の第2小隊を含めた歩兵部隊小銃に銃剣を装着し突撃態勢に入る。
「突撃ぃぃぃ!!」
一時間にも及ぶ戦闘で丘を占領した第1師団はそのまま丘を駆け降り、レイフォルへ向けて進撃を続けた。
続く
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