日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第38話

レイフォルに突入したムー陸軍は、帝国軍のラルスフィルマイナに向けて前進を開始した。

ラルスフィルマイナがある軍事エリアの真正面にある、民間人達が暮らす市街地の大通りを突き進む第1戦車大隊は周囲を警戒しながら進んでいく。

 

 

『周囲に敵影なし』

 

 

第1戦車大隊は市街地へ突入すると広い市街地を制圧するため3つの中隊に分かれた。市街地中央部制圧を担当する第1戦車大隊第1中隊は、後方から歩兵を乗せた43式装甲車を率いて警戒しながら大通りを進んでいく。

 

 

「静かだな」

 

 

第1中隊を指揮する『ミラル・シュライダー』大尉は、防盾に覆われた自車のキューポラから周囲を見回しながら、敵からの攻撃が来ない事に違和感を感じていた。

 

 

「中隊各車、気を抜くな」

 

 

無線で指揮下にある全戦車に警告を送る。

 

 

 

その時、何処からか砲撃音が響き自車の鼻先の地面が爆ぜた。

 

 

「敵襲!周囲を警戒!」

 

 

敵襲だと判断した第1中隊は周囲を警戒する。

その直後、多数の銃声が響き渡り、各車の車体や砲塔に細かい火花と金属同士がぶつかるような音が響く。

 

 

 

「銃撃!何処から!」

 

 

ミラルは防盾に装備されているブローニングM2のライセンス生産型であるガエタン12・7ミリ重機関銃のハンドルを握りY字型のトリガーに指を掛けながら、防盾を旋回させる。

 

 

「居た!あそこだ!」

 

 

敵は建物の2階から軽機関銃やライフルを撃ち込んできている。ミラルは左側にあった2階建ての一軒家の2階に居る敵兵に向けて重機関銃を撃ち込む。

鑿岩機のような発射音と共に放たれる大口径の50BMG弾が木造の壁をあっさりと貫き、敵兵を吹き飛ばす。

 

 

ガァァァン!

 

 

「うおっ!」

 

 

突然、自車の車体右側面に衝撃が走る。何事かと右を向くと、車体側面に貼り付けられていた爆発反応装甲タイルがボロボロに剥がれ落ちているのが見えたが車体側面装甲に傷は付いていなかった。

視線を少し上に向けると、その奥にある一軒家の壁に大穴が空いており、その向こうから対戦車砲とそれを操作する敵兵の姿が見えた。

 

 

「あんな所に隠れてたのか!砲塔右旋回!」

 

 

ミラルは砲塔旋回を指示すると、砲撃手が砲塔旋回ペダルを踏み砲塔を右へ旋回させる。

その間に敵対戦車砲がもう一発撃ってきたが、これも爆発反応装甲タイルに阻まれダメージは受けずに済む。

 

 

「榴弾装填!!」

 

 

装填手が弾薬庫から榴弾を取り出し、素早く砲尾から榴弾を装填する。

 

 

「撃て!」

 

 

76ミリ戦車砲が火を吹き、敵対戦車砲は建物ごと吹き飛ばされた。

 

 

「よし!このまま進むぞ!中隊前進!」

 

 

銃撃が続く中、中隊は再び前進を開始した。

車体と砲塔に銃弾が当たる度に鋭い金属音が聞こえ火花が散るが、ミラルは重機関銃で応戦する。

 

 

「クソ!あちこちにいやがる!」

 

 

建物のあちこちから銃撃が加えられ、大雨のように銃弾が降り注いでくる。

 

 

「前方敵集団!」

 

 

暫く進むと、前方に新たな敵が姿を表した。

ハウンドとシェイファーが進路を阻むように横に並んで仁王立ちのように待ち構えており、敵歩兵も土嚢の奥から軽機関銃とライフルを構えている。

 

 

「やっとおでましか!前方敵戦車、徹甲弾!このまま全速力で突っ込むぞ!」

 

 

ミラルは敵へ向けて重機関銃を撃ち込む。それと同時に敵戦車と歩兵が攻撃を仕掛けてきた。

銃弾と砲弾が車体前面装甲に直撃するが、ミラルのラ・シャルマンは止まる事なくそのまま突き進む。

 

 

「撃て!」

 

 

76ミリ戦車砲から徹甲弾が放たれ、ハウンドに命中する。

 

 

「続けて撃て!」

 

 

装填手が徹甲弾を装填し砲手が照準を合わせ砲撃するという手順を繰り返しながら、敵に火力を集中させる。

 

 

「うぉぉぉぉぉぉ!」

 

 

ミラルは重機関銃のY字のトリガーを引きながらひたすらに撃ち続ける。敵側も真っ直ぐ突っ込んでくるミラルのラ・シャルマンに恐れおおのき後退を開始する。

ハウンドも必死に攻撃を仕掛けてくるが、車体前面の増加装甲タイルに阻まれてしまい大したダメージを与えられず、後退を始めた。

 

 

「突っ込め!」

 

 

そのまま敵防衛線に突撃すると、ラ・シャルマンの車体が土嚢を踏み潰し、防護壁を乗り越える。

 

 

「何っ!?」

 

 

防護壁を乗り越えた先に居たのは、シェイファーともハウンドではなく、帝国軍の虎の子である第23重戦車大隊所属の新型戦車『ワイルダー』重戦車が砲を向けて待ち構えていた。

 

 

「新型か!砲撃よう…」

 

 

だがそれより前にワイルダー2両が砲撃を行い、1発がラ・シャルマンの車体前面装甲に命中し増加装甲タイルにより阻まれたが、2発目が右側の履帯を破壊してしまった。

 

 

「クソ!中隊各車、敵新型戦車出現!性能はラ・シャルマンと同等と思われれる!こちらは履帯を破壊され行動不能!至急支援を頼む!」

 

 

ミラルは無線で後方の歩兵部隊に支援を要請した。

 

 

「この野郎!」

 

 

擱坐して動けなくなったが何とか戦車砲は使えるため、ミラルは応戦を指示し、ワイルダーに向けて戦車砲を発射し応戦する。

後方に控えていた43式装甲車のランプドアが開くと、中から携帯式対戦車擲弾筒を装備した対戦車兵が走ってやって来る。

 

 

「目標、前方敵新型戦車!」

 

 

対戦車擲弾筒を携えた2人1組で編成された対戦車チームは装填手がランチャーの先端から対戦車榴弾を装填し、射撃手が装填手からランチャーを受け取りワイルダーに照準を合わせる。

 

 

「発射!」

 

 

射撃手がトリガーを引くと、後ろに向けてバックブラストを排出しながら対戦車弾が飛び出し、ワイルダーの車体前面に直撃する。

 

 

「命中!撃破!」

 

 

戦後戦車を撃破可能なRPG-7の前では戦中戦車レベルの装甲など意味はなく、ワイルダーは車体前面に大穴が空き、車内から黒煙を吐き出しながら沈黙した。

しかし、もう1両のワイルダーが対戦車チームに気がつき、車体右側の37ミリ砲を向けてきた。

 

 

「退避!」

 

 

対戦車チームはその場からダッシュ、直後に彼らが居た地点に砲弾が撃ち込まれ、爆風に煽られる。

 

 

「隙だらけだぜ!」

 

 

対戦車チームに気を取られていたワイルダーに向け、ミラルのラ・シャルマンは砲弾を撃ち込み、撃破した。

 

 

「よしっ!」

 

 

2両のワイルダーの撃破に成功した第1中隊は、ミラルのラ・シャルマンの履帯の修理を終えると直ぐに進撃を開始した。

 

 

 

 

 

その頃、ラルスフィルマイナでは

 

 

「敵の進撃速度が速すぎる。状況はどうなってる!」

 

「現在、防衛線を構築していますが敵の進撃速度が速すぎで一部突破された箇所もあります!」

 

「第23重戦車大隊は!」

 

「他の戦車部隊と共に市内の各防衛線に展開し、応戦しています。何とか持ちこたえていますが敵戦車もワイルダーと同等の性能らしく、突破されるのは時間の問題かと」

 

 

ファンターレは最早レイフォルが陥落するのは時間の問題だと悟る。

 

 

「そうか………このレイフォルを守る任を受けておりながら敵の進撃を許し、陥落の一歩手前まで追い込んでしまった不甲斐ない私のせいで多くの将兵を失ってしまった」

 

 

彼は此処まで事態を悪く持っていってしまった自分の指揮能力を責めていた。

 

 

「かくなるうえは………私も陣頭指揮に立ち、多くの敵兵を道連れにする事で皇帝陛下に最大のお詫びをとる覚悟。レイ少佐!」

 

「はっ!」

 

「ルークスの用意は?」

 

「出来ております!」

 

「では直ぐに出撃だ!私が指揮を執る!」

 

「お供します!」

 

 

ファンターレはレイと共に司令室を立ち去ろうと入り口に向かおうとした時、ランボールに向けて話し掛けた。

 

 

「ランボール少佐」

 

「はい」

 

「君は今のうちに脱出しろ。此処から北へ真っ直ぐ走れば、海軍の潜水艦が待機している岬がある。それに乗って君は本土に戻り、この事を一言一句漏らす事なく、皇帝陛下に報告してくれ」

 

 

ファンターレはランボールに機密文書に指定されている最終報告書を託した。

 

 

「この1年、私と共にレイフォル方面軍のため動いてくれた事に感謝する」

 

 

それだけ言うとファンターレは黙って司令部を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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