レイフォルに突入した国連軍地上部隊は、ムー陸軍第1師団の活躍により、6割を手中に納めていた。
民間人達が生活している市街地一帯はムー陸軍が抑え込み、敵は市街地から郊外にあるラルスフィルマイナへと後退している。
破竹の勢いでレイフォルに突入した国連軍は、帝国軍最後の砦であるラルスフィルマイナ陥落を目指し、ラルスフィルマイナへと進撃を開始した。
「司令、敵地上部隊は市街地一帯を占拠、こちらへ向かってきています」
「分かった、では最後の大戦と行くか。少佐、出してくれ」
「了解!」
地下格納庫に隠匿されていたレイフォル方面軍の最高戦力の一角である超重戦車ルークスは、航空機用水冷エンジンを改造した専用の900馬力エンジンを唸らせる。
ルークスを乗せた専用エレベーターがゆっくりとせり上がりると、地上にある防護壁が開かれる。
そして、遂にルークスは朝日の光に照らされ、その姿を表した。
「よし!基地正門へと向かうぞ!」
「了解!前進!」
マフラーから黒い排気ガスを吐き出しながら、ルークスは非常にゆっくりとした速度で動き始めた。
攻勢を強めていたムー陸軍第1師団は基地へ続く防衛線を切り崩しながらラルスフィルマイナへと近付いていた。
防衛線を張っていたレイフォル方面軍の帝国兵の抵抗は凄まじく、第1師団は前進に手間取っている様子だ。
『2号車被弾!』
『16号車行動不能!脱出する!』
敵が繰り出してくるワイルダー重戦車と多数の対戦車砲の攻撃を前にラ・シャルマンとラ・ドークは次々と撃破され、その他の車両は中々前に進めないでいた。
「クソ!あの重戦車を何とかしないと」
ワイルダー重戦車はラ・シャルマンと正面から戦えるの性能を持っており、戦車隊のラ・シャルマンは次々と撃破されていく。
「撃て!」
勇敢なラ・シャルマンと対戦車チームも奮闘しているが、決定的な打撃を与えるには至っていない。
「チクショウ!窮鼠猫を噛むってのはこの事だな………しょうがない!第2小隊、俺に続け!」
市街地へ突入していたライアンら第2小隊は市街地の路地裏に入る。彼は敵の防衛線の背後から奇襲を仕掛けようと、地図を見ながら静かに移動する。
「この先だ」
複雑な路地裏を走り回り、やがて敵防衛線の背後に続く路地裏の出口近くへと到達した。
「ラッキーだ。奴らは気付いてない。此処から隊を2つに分ける。第1分隊は建物の上から、第2分隊は奴らの背後から仕掛ける」
ライアンは此処で隊を2つに分けて、第1分隊を建物の2階に配置し、自信は第2分隊を率いて敵の背後から奇襲を仕掛けようとする。
第1分隊は敵を頭上から狙える近くの建物の二階へと上がり、第2分隊は対戦車擲弾筒を携えた対戦車チームを先頭に攻撃準備を整えた。
「隊長、配置完了!」
「よし!行くぞ!」
ライアンの合図で対戦車チームの対戦車擲弾筒兵がワイルダーに擲弾を撃ち込んだ。
「命中!」
放たれた対戦車弾はワイルダーのエンジンに命中、爆発炎上を起こした。
「攻撃開始!」
同時にライアン達も飛び出し背後から銃撃を仕掛ける。
敵は背後からの攻撃に気が付き応戦するが、2階から第2分隊が軽機関銃とサブマシンガンによる攻撃を始める。
「よし!このまま押し上げるぞ!匍匐前進だ!」
ライアン達第2小隊は障害物に身を隠して前進する。
「小賢しい真似を!押し返せ!」
敵も必死に応戦するが2階からの銃撃と真正面の戦車部隊による3方向からの攻撃に徐々に押されていく。
「手榴弾!」
手榴弾のピンを引き抜いて、敵に向かって放り投げる。
「手榴弾だ!」
地面に落ちた手榴弾が爆発し敵兵が吹き飛ばされた。
「良いぞ!手榴弾を投げろ!」
小隊は次々と手榴弾を相手に投げつけ、爆発から機関銃と小銃の連射を繰り返しながら速足で距離を詰めていく。
「味方戦車が来たぞ!」
そして最後の防衛線は1両のラ・シャルマンが陣地内に突入した事により完全に瓦解、防衛線を破る事に成功した。
「よし!もう敵基地は目の前だ!このまま行くぞ!」
彼らはそのまま基地へ向けて進撃を開始する。
しかしその直後、正面に見えるラルスフィルマイナの巨大な正門が開かれていく。
「何だ?」
何事かと動きを止める。
扉が開かれると、その奥から巨大な鉄の塊が姿を表した。
「な、何なんだ!?」
「戦車か!?」
姿を表したルークス超重戦車はムー兵達の度肝を抜いた。ラ・シャルマンがまるで玩具に見える程に巨大なルークスはそれだけの衝撃を彼らに与えたのである。
「応戦!撃て!」
戦車隊はルークスに向けて砲撃するが、放たれた砲弾は全て弾かれてしまった。
「弾かれた………」
ラ・シャルマンの性能に絶対の自信を持っていた戦車隊の兵士は驚きを隠せなかった。そんな彼らを嘲笑うかの如く、ルークスは門を出ると動きを止めて、車体前方の副砲と車体中央部の主砲塔を戦車隊に向けてきた。
「ヤバい!!退避!後退しろ!急げ!」
ルークスの3つの砲が火を吹いた。
その直後、3両のラ・シャルマンが大爆発を起こし破壊された。回りに居た歩兵も爆風で吹き飛ばされる。
「うっ……………」
爆風に吹き飛ばされたライアンは爆音で一時的に起きた耳鳴りの中、起き上がり辺りを見回す。
「これは………!?」
辺りには吹き飛ばされた友軍兵士の亡骸、破壊され炎上するラ・シャルマンの残骸が鎮座していた。ライアンは自身の負傷を確認するが、最新の防弾戦闘衣が破片を防いでおり本人に怪我は無かった。
「クソ!起きろ!」
ライアンは側に倒れていた部下を叩き起こす。
「隊長……」
「無事みたいだな。分隊後退!」
「了解!」
ライアンは生きていた第1分隊と第2分隊を一先ず路地裏に後退させる。
「隊長ぉ!何なんですかアレは!」
「俺が知るか!アレは敵だ!敵の新兵器だ!」
「どうしましょう?」
「取り敢えず報告だ!通信兵!」
「はい!」
通信兵を呼び寄せ、本部へ報告を入れる。
「こちら第2小隊!中隊は敵最終防衛ラインを突破するも敵の新型兵器の攻撃により被害甚大!至急救援求む!」
『こちら作戦本部、敵の詳細を報告せよ!』
「敵は超大型の戦車みたいだ!幅は数メートル、高さ3メートルくらいはある!砲が3つ付いていて、動きはノロい!ラルスフィルマイナ基地の正門に張り付いてる!」
『了解した。そちらに増援を送る。貴隊は現状に留まり、逐一報告せよ!』
「了解!」
ライアンは無線を切る。
「直ぐに増援が来るそうだ!俺たちは此処に留まって敵状報告だ!」
「そんな!上は俺達に死ねとでも言うんですか!」
「ゴチャゴチャ言うな!俺たちがやらねぇで誰がやるんだ!それに奴はあんな図体だ、動きもノロいし此処にまでは入ってはこねぇよ!誰か、鏡持ってる奴は居るか?」
ライアンは部下の一人から小さい鏡を受け取り、ライフルの銃身に紐で括り付ける。そしてゆっくりと路地裏から銃身を突き出し、鏡に映るルークスを見る。
「野郎……基地を死守するつもりだな」
ルークスは門の前で止まったまま動かず、2門の副砲と1門の大口径榴弾砲を撃ち、ラ・シャルマンと歩兵を次々と蹴散らしていく。
一方で作戦本部では、大内田達がライアンからもたらされた敵の新型戦車について、騒ぎとなっていた。
「これが敵の新型戦車か」
無人機から送られてくるLIVE映像に映される、ルークスと破壊されていくラ・シャルマンの光景は衝撃的だった。
「事前の情報には無かったが………まさか奴等はこんな物を」
「恐らく彼らの秘匿兵器だろう。ここに来てコレを出してきたと言う事は敵も後が無いと言う事だ」
「ですが大内田殿、この戦車に居座れていては基地への突入は不可能です。この戦車にはラ・シャルマンでは到底太刀打ち出来ない」
「分かっています。こちらから増援を出しましょう!」
大内田は此処で虎の子である第71戦車連隊と第11普通科連隊を増援に出す事を決め、待機していた両部隊に出撃命令を出した。
本来なら対戦車ヘリもつける所だが、今の所レイフォル市街地に展開している普通科部隊とムー陸軍の支援に回っている事と、制空権は確保出来ている事から上空支援無しのまま両部隊をレイフォルへと出撃させたのである。
「上空支援が無いのは不安だな」
第71戦車連隊を指揮する『真山謙三』1佐は90式戦車のキューポラから身を乗り出しながら、指揮下の戦車を率いてレイフォルに向かう。
後ろからは各中隊の90式と10式戦車が続いている。
「1佐、間も無くレイフォルに突入します!」
「よし。第1中隊はこのままラルスフィルマイナへと向かう」
連隊はそのままレイフォルに突入した。連隊はそこで隊を分けてレイフォル市内に展開している普通科部隊とムー陸軍の支援に向かったが、90式戦車を装備している第2中隊はラルスフィルマイナへと向かった。
続く