ロウリア軍東部諸侯団壊滅より3日後の早朝。
ダイダル基地では、ロウリア王逮捕に向けた作戦のため陸海空自衛隊の全部隊がギム奪還と、越境、首都ジン・ハークへ向けての進出のため作戦行動を始めていた。
航空自衛隊エリアからは、ギムにあるロウリア軍のクワ・トイネ侵攻部隊本部への爆撃のため、爆装したF-2戦闘機、護衛のF-15Jが発進していき、陸上自衛隊第7師団が基地警備のための第1空挺団を残し、全ての地上部隊とヘリ部隊が基地を出て、西へ向かっていく。
「師団長、全作戦部隊、行動を開始しました」
「うむ」
師団指揮の82式指揮通信車車内で報告を受けた大内田は作戦が上手く行くよう祈りながら、全部隊の指揮に専念した。
先行して飛び立っていた航空自衛隊の爆撃隊と護衛戦闘機隊は高高度を維持し、E2Cホークアイによる航空管制を受けながら、ギムに向けて飛行していた。
『こちら
603飛行隊所属のE2Cからの指令で、爆撃隊の護衛に就いていた201飛行隊所属のF-15Jは、高度を下げる。
E2Cからのデータリンクにより、ギム周辺を飛行するロウリア軍のワイバーン部隊の状況はリアルタイムでF-15全てに伝わっている。
『こちらモール1、目標を補足。これより攻撃を開始する』
F-15に搭載されたレーダーが、ギムを周回するワイバーン部隊を補足し、ミサイル攻撃のため火器管制システムを起動、全機がワイバーンに向けてレーダーロックを掛けた。
『レーダーロック、FOX-1、fire!』
パイロットが操縦桿のトリガーを引くと、F-15の胴体下の半埋め込みステーションに搭載されていた99式空対空誘導弾『AAM-4』中距離ミサイルが発射され、超音速で目標に向かって飛び去っていった。
その頃、ギムにあるロウリア軍本部では…………
「まだ偵察隊からの連絡は取れないのですか!」
本日何度目となるアデムの質問に部下達は冷や汗をかいて応える。
「現在、調査中でして」
「具体的にどのように調査しているんだ!」
「それは……現在、別の偵察隊を向かわせる準備をしております」
「だったら早く出せぇ!これでは全く状況が分からないではないかぁ!」
既に冷静さを失っているアデムを宥めるように、侵攻軍の指揮を努める『パンドール』将軍が口を開いた。
「落ち着くんだアデム君。ここで冷静さを欠いていてはどうにもならん」
パンドールの言葉にアデムは冷静さを取り戻し、指揮所内は静まり返る。
「兎に角今は出来る事をしよう。上空直掩は?」
「ワイバーン50騎を上げております」
「50騎も………少し多くはないか?」
「いいえ。先遣隊や偵察隊が相次いで消息を絶った事を考えますと、敵は何らかの力を手に入れたのかもしれません。万が一にも我々が壊滅してしまっては、今回の作戦は破綻してしまいます。ここは念には念を入れて掛かりましょう」
「………………そうだな。用心する事に越した事はないな」
パンドールは今までの事態から、本格的に事を構えないと足元を掬われると感じ、ギムに駐留する全部隊に警戒体勢を敷くように命じる。
ここで一度休憩のためパンドールは指揮所から外へ出た。
「50騎のワイバーンか………壮観だな」
上空を警戒するワイバーンの数を見て、少なくとも負ける事は無いだろうと心で思った。
だがその思いを崩壊させる事態が突然起きた………
警戒飛行をしていたワイバーンが突然、爆発し炎と煙に包まれ落ちていく。
「何だ!?」
上空に居たワイバーンが一気に20騎近くが落とされ、本陣は一瞬で蜂の巣を突いたような騒ぎとなった。
「何なんだこれは!何が起きたんだ!」
パンドールの目の前で精鋭のワイバーン部隊が、何も出来ずに落とされていく現実に、彼は理解が追い付かなかった。
『こちらエクセル、敵航空戦力消滅を確認。
ギム周辺の航空脅威を排除した201飛行隊に変わり、第3飛行隊のF-2が高度を下げてギム上空に到達した。
『こちらバフリーダー、ターゲットインサイト』
エアインテイクの右に取り付けられているレーザー指示目標ポッドのカメラがギムにある敵司令部に向けてレーザー光線を照射する。
『ドロップ、レディ……ナウ!』
F-2の主翼下のパイロンから、GBU-54LJDAMレーザー誘導爆弾が投下され、目標からのレーザー反射を捉えて誘導装置とリンクした制動翼が小刻みに動き、爆弾本体を目標に向けて落下させていく。
そして………
『ヒット!』
投下されたLJDAMは、見事に敵司令部を直撃した。
LJDAMの熱波と爆風はパンドールやアデムを含めた軍幹部ごと、この世から消し飛ばしてしまった。
「敵司令部の爆撃終了!」
「次は我々だ!作戦を開始せよ!」
大内田の号令で、地上を移動していた第7師団全作戦部隊はギム奪還に向けての作戦を開始した。
『FOよりFDC、攻撃位置___』
先ず最初に、先行していた第7偵察隊に護衛された第7特科連隊の観測員がギムの真正面から着弾観測を開始する。
「FDC、各中隊効力射。目標20発榴弾!」
報告を元に、待機していた特科連隊のFH-70と99式の砲身が上を向き、装填役の隊員達が砲尾から砲弾の装薬を装填し尾詮を閉める。
「装填よし!」
「射撃用意、撃て!」
合図と共に一斉射撃が開始された。
『弾着_______今っ!』
ギムの街中に榴弾が一斉に降り注ぐ。
『FOよFDC、弾着修正_____』
『FDC、次弾発射』
前進観測員と射撃指揮所による連携で特科隊は修正をしながら砲撃を続ける。
「うわぁぁぁ!」
「何なんだ!」
降り注ぐ榴弾の爆発はギムに駐留していた兵士らを大混乱に陥れる。空中での爆発により大勢と言う兵士が吹き飛び、建物が破壊、ありとあらゆる物が爆風と衝撃波、破片が周囲を飲み込む。
『FOよりFDC、全弾目標へ弾着』
特科による10回の射撃にてギムは壊滅状態に陥った。つい数分前まで存在した家屋や倉庫、畑、石畳は悉く破壊され、動く物は少ない。
「前進!」
砲撃終了と同時に第7偵察隊の90式戦車がギムに突入する。後方の普通科の到着までの間、威力偵察行動を開始する。
「周囲を警戒しろ!敵兵が何処かに隠れてるかもしれん!」
偵察隊を率いる大隊長が全偵察隊員に指示を出しギムへ入る東門を中心として周囲の偵察を行う。
しかし先の砲撃で周辺に敵はおらず、偵察隊はロウリア軍の襲撃や奇襲を受ける事なく東門の確保に成功し、後方からやってきた普通科連隊と無事に合流を果たした。
「突入!」
それからの彼らの動きは早く、車両を使ってギム全体に展開し、ヘリからの支援を受けながら普通科隊が無事な建物を虱潰しに制圧していき、やがてギム中央広場にある司令部へと到達した。
「完全に潰れてるな」
「空自も派手にやったもんだ」
序盤の爆撃と先程の砲撃で吹き飛んだ敵司令部があった場所に出来ていたクレーターを前に、隊員達は言葉が出なかった。
その日の正午にはギムは自衛隊により完全に奪回され、ロウリア軍クワ・トイネ侵攻部隊は生き残った数百人の捕虜を遺し壊滅した。
自衛隊はロウリア王捕縛作戦の第1段階を無事に終了させ、次なる段階へと移る。
続く
少し早足でしたが作戦第1段階は終わり、次話で第2段階に入ります。
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