レイフォル奪還を果たした第2文明圏を中心とした国連軍は戦闘終結から一週間後、旧レイフォル総督府庁舎にて両者の代表格による最終の休戦協定締結交渉が行われていた。
第2文明圏各国側の計画では、レイフォル情勢が落ち着いた頃にグラ・バルカスに停戦協定について外交交渉を持ち掛ける予定であり、それに備えてスケジュールを組んでいたのだが、予想外な事にグラ・バルカス側から外交ルートを通じて停戦協定についての協議が提案され、予定よりも早く停戦交渉が行われていたのである。
当初、停戦交渉に関してグラ・バルカス側のこれまでの態度から第2文明圏側から提示される停戦に関する条件内容から交渉は難航すると予想していた。しかしグラ・バルカス側はこちらから提示された条件を全てでは無いが、受け入れた事により交渉開始から僅か数日で交渉は纏まり、停戦から休戦協定へ移行した、
この日、レイフォル総督府庁舎では交渉の同意についての最終確認と休戦協定文書にサインを行う最終交渉が行われていた。
「ではこちらの休戦協定文書に双方のサインをお願いいたします」
第2文明圏各国と日本、新生合衆国から派遣されてきた代表と、グラ・バルカス側の代表であるシエリアが互いに作成した休戦協定文書にサインし、互いに交換する。これを以て、グラ・バルカスと第2文明圏、日本、新生合衆国との間で公式に休戦が交わされたのであった。
休戦交渉締結における内容は以下の通りである。
① グラ・バルカス帝国は保有する陸海軍全部隊をパガンダ島を除くムー大陸と第2文明圏からの完全に撤退させる事。
②今回の戦闘に於ける双方の捕虜の交換は1ヶ月以内に全て完了する事。
③グラ・バルカス帝国は今回の戦闘に於ける賠償を行う事。賠償の内容については今後の協議にて決定する。
④今後双方に於いて突発的、計画的軍事的行動が発生または発生する可能性が高い場合は双方にて緊急協議を行い平和的解決に勤める事。
⑤事前の協議なく双方の軍事勢力による軍事行動はこれを禁止する。但し、自然災害に於ける戦闘行為以外に於ける復旧活動に軍事力が必要な場合には事前の協議なしに緊急性が高いと判断されれば協議の必要ない。
⑥今後の外交交渉はパガンダ島に設置予定の共同連絡事務所にて執り行う。共同連絡事務所の警備は国連軍と帝国軍の双方が共同で行うものとし、共同警備区域を設定する。
⑦ムー大陸とグラ・バルカス帝国本土間の航路に於ける国連軍の通商破壊作戦はグラ・バルカス帝国陸海軍のパガンダ島を除くムー大陸と第2文明圏撤退を確認した後、直ちに中止し撤退するとするが以後はグラ・バルカス帝国も潜水艦や軍艦による第1、第2、第3文明圏各国への通商破壊行動を一切を中止し各国の領海に軍事行動を行わない。
しかし、グラ・バルカス帝国又は第1、第2、第3文明圏の何れかの国が事前の協議無しに再び軍事行動に出た場合はこの確約は失効する。
⑨レイフォルの統治については一時的に第2文明圏へ帰与され、以後は独立国として第1文明圏と第3文明圏各国から賛成多数が得られ、自治権獲得まではムー国が中心に経済・軍事支援を行う。
⑩前項の全ての停戦内容は今後4年毎に双方が協議を行い、内容の緩和と規制強化等の更新を行う事とする。
10個の内容について双方が同意を交わした事により、この休戦協定は『レイフォル休戦条約』と命名された。
休戦協定締結が完了したその日の正午、旧レイフォル総督府から出てきたシエリアはダラスと数人の職員を伴ってレイフォルの旧帝国陸軍航空基地跡に作られた国連軍レイフォル航空基地に向かい帝国本土へ帰還準備に入った。
「お疲れ様でした課長」
疲れきった様子のシエリアにダラスが労いの言葉を掛ける。
「あぁ……でもこれで帝国は一時的に言えど救われたな」
「えぇ。最悪な事態は免れただけでも、良しとしましょう」
2人ともパルゲールからの命令によりシエリアにはパガンダ共同連絡事務所最高責任者兼文明国外交交渉担当、ダラスには共同連絡事務所最高責任者秘書兼副所長の肩書きと権限が与えられており、今後はこの2人が中心となり文明圏各国や日本と新生合衆国との交渉を担当する事となる。
「外務省に入省して早10年でこのような大役を担う事になるとはな……感慨深いものだ」
「かつては外交官として悪戦苦闘していた新人時代が今は懐かしく思います」
2人は外務省入省前と後の新人時代から現在までの苦労が良い思い出として思い出される事に感慨深さを感じた。
「帝国の平和と安寧のため、今まで以上に努力せねばならんぞ」
「はい」
しかし2人は、この休戦協定が帝国による次なる世界への攻撃のための単なる時間稼ぎである事は知る由はない。
「しかし、向こう側から提示された条件ですが…」
「意外だったな。もっと我が国が不利になりかねない条件を出されるかと思ったが、落とし所としては充分すぎるな」
2人とも今回の停戦交渉前に、今回の戦闘の敗北者として勝者である向こう側がどんな条件を出してくるか内心不安で一杯だったが、勝者が掲げる敗北者への一方的な内容とは掛け離れたな内容に拍子抜けしていた。
しかしグラ・バルカスからしてみれば経済的に低迷している現状でこの内容は納得できるものになっている。
「兎に角、今後の事は我々の手に掛かっているぞダラス!」
「えぇ。粉骨砕身……その思いで死力を尽くします」
2人は迎えの飛行機に乗り込むと、そのままレイフォルを離れ本土に戻っていった。
続く