『ロデニウス沖不審船事件』後、マイハーク港に帰還したコーメに曳航された43-2号とリーム船、パールネウスの4隻は海軍による調査が行われた。
「また酷くやられたな」
銃撃で穴だらけにされた43-2号は修理のためドック入りとなり、その様子を見に来ていたパンカーレはそう言い放った。
「こちらの被害は?」
「43-2号は航行不能、艇内に浸水あり。乗員10名のうち7名が負傷、うち2人が重傷ですが命に別状は無いとの事です」
「死人が出なかったのが幸いだな。で、例のリーム王国の船の調査はどうなってる?」
「ブルーアイ少佐以下の調査チームが乗組員達に事情を聞いています。どうやら彼ら、定期的に海賊と接触していた様で、今回もあの違法植物の取り引きをしていたみたいです」
そう言いながら部下の海兵は押収された物品を保管する、保管庫へ案内する。
既にそこでは海軍本部とクワ・トイネの警察関係者が保管庫内に整然と並べられていた鉢に植えられた違法植物の調査を行っていた。
「また凄い数だな」
「全部合わせて500個を回収しました。末端価格で10億は下らないそうです」
「10億か………コーメ型護衛艦が3隻は買える程だな」
パンカーレは植物から生えている実を手に取る。
「見た目は只の木の実なんだがな………この実の中に詰まってる液を簡単に加工するだけで身も心も破壊する悪魔のようなクスリに変わるなんてな」
彼を含めた世界中の人間はこの植物の恐ろしさを子供の頃から教えられている。パンカーレもその一人である。
「こんな物があるから犯罪は無くならないのかもな……
でも今回の事件で調査が進めばこう言った事件が少しでも少なくなると思いたい」
パンカーレは事件の調査に期待しつつ、自分がやるべき事を考える。
事件から一週間後、公都クワトイネの官庁街の一角にあるリーム王国大使館の会議室では、緊張に包まれていた。
「………………………」
駐クワトイネのリーム大使は今回の事件で自国の関係が明るみに出てしまい、その件についてクワトイネ政府からの質問に対して返答に困り果てていた。
だが大使はそもそも自国がそのような重大犯罪に関わっていた事自体知らなかったため、質問されようとも返答は出来ない。
「確かに………その件に関して我が国が関わっていた証拠込みで本国に問い合わせてしますので1日程お待ちください」
大使は取り敢えずその場しのぎの返答をして会議室から退室すると、魔導通信を使って本国に報告する。
「なんですと!」
しかし本国から返ってきた命令はとんでもないものだった。
『我が国は関知せず。これらの証拠は我が国がそのような重大犯罪行為に関わっていたという明確な証拠に値せず。よって謝罪も賠償も行わない』
という、あくまでも自国は事件に関与せずを貫き通すつもりである。大使はクワトイネから提示された証拠があるのにどうやって貫き通すのだと苛立つ。
「馬鹿げてる!これだけの証拠があるのに、そんな事を言えば我が国は更に窮地に立たされるのが分からないのか!!」
大使は魔信機を殴り付ける。
本国からの命令は自国を窮地に追いやるに等しい物であった。
大使は何度か命令変更を提案するが、それは覆る事はなく、彼はクワトイネにこの嘘を貫き通す事しか出来なかった。
そして翌日
「と言う訳でありまして、我が国は一切関与していません」
大使は緊張した面持ちでクワトイネ側の代表にそう告げる。
「では貴国はあくまでも関与していないと?」
「はい」
「ですが、海軍が拿捕した貴国の船の船長はそちらの有力貴族だと聞いています」
「我が国にそのような貴族は存在しません」
「では貴国は我々の調査結果に疑問を?」
「そう言う訳では………本国は貴国の調査結果を見て、我が国が関与しているという明確な証拠にはならないと言っていて」
大使は兎に角包み隠さずありのままを述べる。
「分かりました。ではそれを証明するため、貴国もそれなりの証拠を示していただきたい」
「……………分かりました」
その後、リーム王国はクワトイネを筆頭とした国際調査団の受け入れに合意した事により、本格的な調査が行われる事になった。
続く
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