ロデニウス大陸に存在する国家の中で軍事力の近代化を図るクワトイネ公国に於いて、公国が保有する軍事力で一番強大な戦力を保有する公国陸軍では、先の海軍と同様に陸上戦力の近代化が急務となっていた。
先のロウリア戦争でムーと日本からの支援により、機械化戦力を保有するに至った公国陸軍だがクワトイネ政府は、今後の世界情勢を見据えて自国の防衛戦力増強によるロデニウス大陸全体の安全保障をより確実なものとするため、中央暦1643年の中旬より保有する全ての戦力の近代化を推し進めるための国家プロジェクトを始動させた。
そのプロジェクトの内容について簡単に説明すれば、ロウリア戦争やレイフォルのグラ・バルカス帝国の勢力を排除したレイフォル奪還作戦の結果から、それまで保有していた古典的な陸軍戦力ではこれからの世界情勢において自国の防衛は最早不可能に近いと試算された事から、戦車や自動車等の近代的な技術を大量導入し陸軍戦力全体の近代化を図ろうというものであった。
既に公国陸軍では輸入したトラックやジープ、ライフル銃等の装備がロウリア民国の国境に接する第3師団隷下の第1機動旅団を中心とした精鋭部隊向けに配備されてはいるが、何れも戦力としては非常に心もとなく、その他の部隊では車両どころかライフル銃すら配備されておらず、未だに武器は刀剣類、移動手段は馬に頼りきりという現状だった。
戦力の近代化を図りたいクワトイネ政府は現状を早急に打開するため、これまでの古典的な戦略と戦術を一新し、自国の防衛に適した新戦略と新戦術の立案、作成を行い、僅か1年半という短期間で基本となるモノを作り上げ、それらに基づき先ずは必要な戦力となる装備を整える事とした。
その成果が今、マイハーク港へと到着していた。
「接岸作業終了!」
「よし!浅橋降ろせ!」
中央暦1644年1月20日のこの日、マイハーク港に入港したムー船籍の大型貨物船5隻が港の一角にある大型の物資集積所に隣接する岸壁へと接岸していた。集積所に設けられた大型貨物を船から降ろすための大型クレーンが動き出し、貨物船の甲板に所狭しと積み上げられていたコンテナを1つ1つ集積所直通の貨物列島の貨車に積み上げていく。コンテナにはムーの国章が描かれており、蓋は厳重に閉められており、貨車に載せられたソレは奥の集積所へと運ばれていく。
その先にはクワトイネ陸軍の工兵部隊と、政府からの依頼を受けた民間の輸送会社の社員と会社が所有する超大型トラックと大型トレーラーが駐車していた。
「開封開始!」
陸軍工兵部隊は運ばれてくるコンテナを開けていき、中身が次々と引き出していく。
最初に運び込まれた100個のコンテナからは大量の木箱が表れ、木箱の幾つかが中身の確認のため蓋が開けられる。
「おぉぉ~………」
「これが噂の新型銃か………」
箱の中から出てきたのは、気泡緩衝材に包まれた大量の銃火器と弾薬だった。それらは全てムー軍で使用されていた、または現役で使用されている43式自動小銃と44式短機関銃、43式自動拳銃、ガエタン社製のブローニングM2重機関銃、同じくガエタン社製の分隊支援火器である42式8ミリ軽機関銃、携帯式対戦車擲弾筒とそれらに使用される弾薬が入っている。
更には42式戦闘鉄帽、防弾戦闘衣、迷彩戦闘衣、ブーツ等の最新の歩兵装備も入っている。
これらは全て、ムーがクワトイネへの有償軍事援助の一環として輸出したものであり、今回運び込まれたのは第1回目として送られてきたものであった。
「さて、此処からが本番だな」
工兵達は次に運び込まれてきた大型コンテナを解体していく。解体されたコンテナの中から表れたのは、分厚いシートに覆われた大型の物体だった。
大型物体を覆っているシートを固定している紐が解かれ、シートが剥がされる。
「で…デカイ!」
シートに隠されていたのは、砲塔を後ろに向けたムーの主力戦車であるラ・シャルマンだった。
これこそ、陸軍戦力近代化計画における最大の成果だった。クワトイネはムーに対外有償軍事援助として銃火器のみならず、ムーが輸出を提案している軍事兵器の中でも最高級と言われているラ・シャルマンも購入しており、その購入数はなんと驚きの200両である。
戦車は兵器の中では比較的高価な部類に入っており、一両でも億に迫る程の値が付くラ・シャルマンだが、クワトイネは他国との貿易や食料輸出により得た有り余る程の外貨を、200両のラ・シャルマンに加えて予備部品、弾薬の大量購入契約に宛てていた。
しかもこの大量購入契約にはメーカーによる手厚いサポートや運用のための教育とそれに掛かる費用も含まれており、それらの費用も一括で支払っているため、先述の銃火器の購入も合わせると、クワトイネが戦力近代化に力を入れているのが分かる。
今回運び込まれたラ・シャルマンはクワトイネが購入した200両のうちの100両程で、残りの100両は1ヶ月後にムー本土から第2次契約分の有償軍事援助で購入された別の各種兵器と共に運び込まれる予定であり、それらは全てムー陸軍による教育を受ける予定のクワトイネ陸軍各師団への配備が予定されている。
「運び出せ!」
軍からの指示で、運送会社の社員達はコンテナを次々と運び出し、トラックとトレーラーへと積み込んでいく。そして運び込まれた全てのコンテナを積み終えたトラックは順次、港から出発し、一時保管場所に指定されている近くの軍施設へと向かった。
続く
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