日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第53話

中央暦1644年2月1日、2月に入ってもまだ冬の寒さに覆われたクワトイネ公国。

城塞都市エジェイの東にあるダイダル平野に設けられた陸軍演習場では、ムーによる軍事支援の元、クワトイネ陸軍が近代化に向けての準備を着々と進めていた。

 

 

「戦車前進!」

 

 

連日の大雪で演習場には雪が積もり、その積雪量は膝の高さ程になっている。そんな中を車体後部のマフラーから黒い排煙を出し、鉄製の履帯で雪を踏み潰しながらラ・シャルマンの戦車隊が全速力で突き進んでおり、その後ろからは歩兵を載せた43式装甲車が続いている。

 

雪が降る中、クワトイネ陸軍はムー陸軍の指導の元、大規模な訓練を行っていた。

この日は1月から行われていたムー陸軍によるクワトイネ陸軍第1から4までの各師団から送り込まれた戦車部隊の前身となる戦車教育準備隊や、近代火器で武装した歩兵部隊への基本訓練教育過程の最終となる、実戦を想定した大規模演習が行われていた。

 

シナリオとしては非常にシンプルで、敵国による電撃侵攻で国境地帯が奪われ、それをクワトイネ陸軍が奪還するというものであった。

演習とはいえ本格的な実戦を想定しているためか、双方とも保有する戦力についての情報は一切知らされておらず、敵戦力を予め予想した上で戦略を立て、情報収集、偵察を行い、クワトイネは奪われた土地の奪還、対抗部隊役のムー陸軍は占領した土地の死守という戦いを展開している。

 

既に演習は佳境にまで入っており、現状はムー側の優勢で進んでおり、劣勢のクワトイネ側は現状を打破すべく、虎の子の戦車部隊を中心とした機甲部隊による一大攻勢を仕掛けようとしていた。

 

 

 

「寒いな…」

 

 

雪が降る中、ラ・シャルマンの車長用キューポラから半身を出していたクワトイネ陸軍の若い戦車兵が冬の寒さに凍えながら自車の指揮を執っている。

双眼鏡を使い辺りを警戒しつつ、所属している隊の指揮官の指示に従って自車を前方に見える対抗部隊の陣地が設けられた森へ向けて移動させていた。

 

 

「ん?」

 

 

ふと、森から光のような閃光が一瞬だけ見えた。

その直後、前方のラ・シャルマンから金属を叩きつけられたかのような衝撃音が響き、動かなくなった。

 

 

「敵襲!敵襲!7号車行動不能!」

 

 

動かなくなった友軍車両には赤い着色料で真っ赤に染められたトリモチがベッタリと付着していた。トリモチが詰め込まれた演習用のトリモチ弾から飛び出したトリモチが履帯と砲塔に絡まってしまった事により、車両は物理的に動けなってしまい即座に撃破判定が下された。

 

それを合図に、別の車両にもトリモチ弾が次々と命中していき、撃破判定が下されていった。

 

 

『指揮官車より各車へ!誰か敵影を視認したか!』

 

「こちら12号車!前方の敵陣地からの発砲を認める!」

 

『了解!各車、回避行動しつつ前進!』

 

「了解!操縦手、回避行動!」

 

 

戦車隊は敵に照準を合わせられないよう、速度を上げてジグザグに動きながら前進を続ける。

対抗部隊の陣地からは砲撃が立て続けに行われ、戦車隊に襲いかかるが、回避行動を取っているため最初の砲撃の時のように命中はせず、ギリギリ命中しなかったり、地面に突き刺さったりする。

 

 

「煙幕展開!!」

 

 

戦車隊のラ・シャルマンの砲塔左右両脇に備えられた6連装発煙弾発射機から12発の発煙弾が大量に打ち上げられ、隊は白い煙に覆われ姿が消えた。

 

 

「奴らは俺達を見失った!このまま突き進め!」

 

 

隊はそのまま煙に紛れながら対抗部隊の陣地に接近する。

 

 

「見えた!」

 

 

煙を突き抜けると目の前には対抗部隊の陣地が見えた。

 

 

「乗り込め!」

 

 

陣地の前衛に設けられた有刺鉄線を踏み潰し、遂に乗り込む事に成功した戦車隊。後ろから続いてきた43式装甲車から歩兵部隊が降りてくると、陣地内にいた対抗部隊役のムー兵に向けて攻撃的を開始した。

 

 

「いてっ!ヒット!」

 

「ヒット!」

 

 

彼らの持つ銃から放たれたのは実弾ではなく、エアガン用のバイオBB弾であった。そしてよく見ると彼らの持つ銃火器は全てプラスチックや亜鉛合金で作られている精巧な日本製エアガンだった。

殺傷力の無いエアガンはその安全性からムー陸軍が目をつけ演習用火器として大量に導入されており、日本のエアガンメーカーに依頼し自国のライフルに似せたエアガンを使った訓練が各地で行われ、今回の演習にもそれらがムーとクワトイネの双方で使用されている。

 

無論、安全のため演習に参加している各部隊の兵は安全のためゴーグルやフェイスガードを被っており、ちょっとしたサバイバルゲームのような様相を呈していたが、彼らに遊び心を持っている余裕はなく、実戦さながらの銃撃戦が繰り広げられる。

 

 

 

「もう少しだ!踏ん張れ!」

 

 

 

陣地内での戦いは勢いで勝っているクワトイネ側に傾き、30分の戦闘の末に遂に陣地は陥落、演習はクワトイネ側優勢に傾いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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