日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第62話

日本、新生合衆国、ムーが世界的に注目されている中で、グラ・バルカスとの戦争で一度も動きを見せず、傍観を決め込んでいた世界第1位の大国『神聖ミリシアル帝国』は、窮地に立たされている。

窮地と言っても国家存亡に関わる程のものではないが、世界一の大国の共通問題である『求心力』の低下に彼の国は悩んでいた。

 

今まで、世界一の国力を盾に世界各国から求心を集めていたミリシアルだが、ここ3年間でミリシアルに対する第2、第3文明圏構成国が急速に衰えを見せ始め、外交的にも政治的にも徐々にではあるが影響を見せ始めている。

 

 

 

「今月の売上はこれだけか」

 

 

カルトアルパスに本社を置くミリシアル国営企業のとある大手貿易会社は、売り上げに関して悲鳴をあげていた。

 

 

「我が国の製品の売上が此処まで落ちるとはな……」

 

「今や我が国がトップを走っていた輸出品目はムーや日本製品に押されつつあります。しかも、彼の国の製品の品質は非常に高く、取引先からも我が国の製品よりも割高であっても購入したいと言う声が多く寄せられています」

 

 

日本と新生合衆国が新世界技術流出防止法を条件付きで緩和してから、各国に出回っている工業製品などにミリシアルはシェアを徐々に奪われつつある。

値段的にはミリシアルが格安ではあるものの、品質としては彼の国が上回っており、ミリシアルと国交のある国でも日本製品とムー製品が目立つようになってきており、更には日本との貿易に関する協定が結ばれるとミリシアル国内にもそれらが出回る事になり、シェアの損失に更に拍車を掛けていた。

一応、日本側も貿易摩擦を避ける様に配慮はしているものの、バブル崩壊時の時のような急激な不景気と転移直後に受けた経済打撃を再び起こさせる訳にはいかないとの思いによる、板挟みの状態であった。

 

 

「我が国は世界一の国なんだぞ。それが第3文明圏のぽっと出の国に此処までシェアを奪われるなど…」

 

「社長、そう言う発言は社内では………」

 

「分かっている。だが此処まで影響がくれば貯まったものではない。国はどう動くんだ?」

 

 

 

 

その頃、ミリシアルの首都の中心に聳え立つアルビオン城内では………

 

 

「以上が、魔帝対策省からの最終報告になります」

 

 

城内のミリシアル皇帝の自室内で片膝をつきながら、トーパ王国での魔王戦に関する最終報告に来ていたメテオス。

彼の目の前にはミリシアル最高位の人物しか座れない王座の椅子があり、その椅子には一人の老齢のエルフ男性、現ミリシアル帝国皇帝『ミリシアル8世』が座っている。

 

 

「分かった。ご苦労だっなメテオスよ」

 

「はっ!」

 

 

ミリシアル8世の言葉にメテオスは平伏したまま、一歩下がる。

 

 

「して、メテオス」

 

「はい」

 

「そちの目で見て、日本と新生合衆国の軍隊とは何れ程の実力があった?包み隠さず、全て話してはくれぬか?」

 

「では僭越ながら…………ハッキリと申し上げまして、あの2か国の軍隊、自衛隊と合衆国軍は我が国の軍を遥かに上回る程の能力があります」

 

「それ程か?」

 

「はい。あの魔帝の置土産の魔王をいとも簡単に倒してしまったあの実力、敵としては脅威ではありますが、味方としては非常に心強いかと」

 

 

メテオスは嘘はつかない人間である。

自身よりも遥かに上の身分である皇帝相手にも、自分が見聞きした事を包み隠さず、客観的に話す事ができるその根性は敬意に値する。

ミリシアル8世もメテオスのその性格を気に入っており、彼の上司であるヒルカネ・パルペですらもメテオスには頭が上がらないのである。

今回、魔帝対策省からの最終報告をヒルカネではなくメテオスに求めたのもそこにあった。

 

 

 

「陛下、実は今回の最終報告と共にお見せしたいものがございます」

 

 

メテオスはそう言うと懐から茶封筒を取り出し、蓋を破り中から日本製のビデオテープを取り出した。

 

 

「これには、今回の魔王戦における日本と新生合衆国の戦闘の様子を記録しております。この記録媒体……ビデオテープの内容は私が個人的に作成したもので、対策省の人間は関知しておりません」

 

 

その言葉にミリシアル8世は、ビデオテープの中に記録されている内容が気になった。

 

 

「分かった。そのビデオテープの中を見せてはくれぬか?」

 

「勿論でこざいます」

 

 

メテオスは室内に設けられていた日本製のビデオデッキにビデオテープを差し込む。ビデオデッキに接続されていた同じく日本製の小型ブラウン管テレビの画面に再生された映像が写し出される。

 

 

「ほう」

 

 

映像には、メテオスが持ち込んだビデオカメラで撮影された魔王戦で、トーパ王国に派遣された日米合同部隊の様子が写し出されていた。

派遣前の輸送艦の艦内での様子、トーパ王国到着後に先発した日米先遣小隊の行動が記録されている。

 

 

『貴様は……マラストラスか!!』

 

『撃て!』

 

『ファイア!』

 

 

城塞都市トルメス到着後に発生したマラストラスとの戦闘で、マラストラスに向けて日米部隊が銃撃を加えるシーンにミリシアル8世は度肝抜かれた。

自衛隊員と海兵隊員が手にしている小銃とカービン銃から、ミリシアルで一般的に知られているライフル銃を遥かに上回る連射速度で放たれる銃弾の雨にマラストラスはあっけなく倒される様子が克明に記録されている。

 

 

「成る程。彼の国の歩兵は我が国の歩兵を上回る火力を持っていると言う事か」

 

 

ミリシアル8世は映像に夢中となっていた。

マラストラス戦後の人質救出作戦に登場するヘリや車両、その次のカイザーゴーレムを操る魔王の姿は彼の興味を引いた。

その最中にカイザーゴーレムのコアをあっさり貫く16式の姿を見たミリシアル8世はメテオスに、この車両は何かと問う。

 

 

「この車両は装輪戦車と呼ばれる戦闘車両であります。日本人達は機動戦闘車と呼んでおりました」

 

「どう言った兵器なのだ?」

 

「私の主観ですが、この兵器は高威力の大砲を備えた砲塔を8個の車輪を備えた車体に取り付け、平地などの開けた場所で高速機動戦闘を主にしたものかと推測します」

 

「成る程。しかし驚いたな………走りながら、しかも車体を大きくゆらしながらも一撃でカイザーゴーレムのコアに当てるとは」

 

 

彼は機動戦闘車の乗員の練度の高さに感心する。実際は、動きのノロいカイザーゴーレム相手に射撃統制装置を使って射撃しているだけなのだが、ミリシアル8世は知るよしもない。

 

 

『よし今だ!サントス軍曹、奴を地面に叩き落とせ!』

 

了解!(yes sir!)

 

 

J-LTVからサントス軍曹がジャベリン対戦車ミサイルのランチャーを魔王に向ける。

 

 

『発射ぁ!』

 

 

ドスの効いた掛け声と共にランチャーからジャベリンミサイルが飛び出した。

 

 

「これは!?誘導魔光弾か!」

 

 

ミリシアル8世はサントスが放ったジャベリンを見てそう叫んだ。

伝承に魔法帝国が使用していたとされている誘導兵器を一人の歩兵、それも女性が携えて魔王に撃ち込む様子に驚かずには居られなかった。

 

 

「彼の国は誘導魔光弾を持ち運びできるまで小型化する技術力が…………」

 

 

以前に、日本に派遣した武官から富士演習の様子を撮影した映像には写っていなかった(外務省と国防省により意図的に削除されていた)兵器の様子に彼は日本と新生合衆国の技術力に戦慄した。

 

 

 

 

一通り見終わり、ミリシアル8世は精神的に疲れていた。

 

 

「情報部から外務省と国防省が日本に派遣した武官が撮影した映像の一部を削除した痕跡があったと報告があったが………あの馬鹿共め」

 

 

彼は富士演習の様子を撮影した記録媒体を提出した外務省と国防省の担当者に怒りの言葉を投げ掛けたい思いだった。報告でもミサイルに関する記述は一切なく、口頭でもそれが無かった事から、担当者達や他の省庁がグルとなり自身の興味が日本と新生合衆国、ムーをはじめとした第2文明圏と第3文明圏の科学力へ向く事を恐れたのであろうと察した。

 

 

「やれやれ……官僚主義に染まった今の政治からは何も産み出されないのがよく分かった」

 

「陛下、この件に関しては」

 

「分かっておる。お主から今日此処で見聞きした事は誰にも言わん」

 

「お気遣い感謝いたします」

 

 

メテオスはデッキからVHSを取り出すと、映像が記録されたテープを全て引き摺り出した上で、メラメラと炎を上げている暖炉に放り込んだ。

 

 

「良いのか?」

 

「はい。今お見せしたビデオテープは飽くまでコピー。マスターテープは誰にも悟られず見つからない場所に隠しています」

 

「そうか。下がってよいぞ」

 

 

メテオスは何も言わす部屋から出ていった。

一人残されたミリシアル8世は今後の国の方針について深慮する事となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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