日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第64話

第2文明圏と日本、新生合衆国との休戦を果たしたグラ・バルカス帝国。レイフォルを失い、休戦前の通商破壊により経済と物流に深刻な影響を受け、その建て直しに尽力していた。

 

そんな中で、ラグナにある情報局内に存在する敵国、または仮想敵国の軍事技術に関して調査を行う専門部署『技術部』がある。

情報局本部庁舎の地下1階にあるこの部署には軍民問わず様々な専門分野の技術者が老若男女問わず属しており、その中の一人に20代後半の『ナグアノ』と呼ばれる若い技術者が居た。

 

 

「ナグアノ、情報部からお探し最終報告書が届いたぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 

自身のデスクで先輩から封筒にギッシリと詰まった資料を受けとるナグアノ。

 

 

「おいナグアノ。お前、顔色悪いぞ」

 

「そうですか?」

 

「無理するなよ。ただでさえウチは人手が足りないんだから」

 

「はい。この資料読んだら休みますよ」

 

「そうしとけよ。じゃあお疲れ」

 

 

先輩はそのまま部屋から出ていった。技術部のオフィスに1人残されたナグアノは受け取った資料を取り出すと、内容に目を通す。

 

 

「成る程………」

 

 

ナグアノの手にある資料には、ムー、日本、新生合衆国が保有する兵器に関する事が書かれている。

情報局に所属する優秀な諜報員が命懸けで調べあげた各国の兵器の内容にナグアノは驚く。

 

 

「やはりムーが保有していたあの戦車は日本の入れ知恵だったか」

 

 

彼が見ていたのは、ムーの主力戦車であるラ・シャルマンと、そのモデルとなったM4シャーマンに関する資料だった。

 

 

「可笑しいと思ってたが………成る程、これだけの戦車ならムーでも製造は不可能ではないな。しかしこんな戦車ですらも日本では骨董品とはな」

 

 

帝国には技術部と陸軍が共同開発した最新鋭のワイルダーがあり、その性能は帝国最強戦車と自負できる程で、レイフォル陥落以降、それまで主力だったハウンドを置き換えるため大量生産が開始されている。

しかし、資料に書かれているラ・シャルマンとシャーマンの性能はハウンドとほぼ同等である。しかもそれらの戦車は大量生産が容易で、信頼性と整備性、運用が比較的容易なように設計されている事に彼は注目した。

 

 

「ハウンドと同等のこの戦車が大量生産が容易で、しかも信頼性も整備性、運用が簡単だと!?何の冗談だよ………しかも現在までの推定生産量が自国内向けに既に5000両近く、輸出用も含めれば更に多くなる…………待て!?輸出だと!?」

 

 

資料に書かれていた輸出という単語に反応するナグアノ。資料を読み進めてみると、ラ・シャルマンは既に他国へ輸出されているとあり、そのリストには日本と新生合衆国と非常に緊密な第3文明圏国が中心で、しかも列強最大と言われているミリシアルにも研究用に輸出されていると記されていた。

 

 

「何てことだ………我が国でも一年に数百両、どんなに頑張っても1000両が限界なのに、向こうはこの戦車を一年で5000両近くを揃えて、尚且つ輸出に回す余裕すらあると言うのか」

 

 

もうナグアノは驚きから頭を抱えてしまう。

帝国が保有している戦車の総台数2900両を上回る数をムーは僅か一年で揃えてしまい、仮にペースが続けば単純計算で来年には10000両に達する計算になる。数と質でも帝国はかなり遅れを取っていると言う事実に頭痛と恐怖が襲ってきた。

 

 

「これでは勝てない………」

 

 

絶望に打ちひしがれるナグアノに追い討ちをかけるように、歩兵火器に関する資料に書かれた内容が襲い掛かる。

 

 

「自動小銃に対戦車擲弾筒、迷彩戦闘服に防弾服だと!歩兵火器や装備レベルでも我が国を凌駕しているのか!」

 

 

帝国の歩兵を上回るムー歩兵の装備に、自国の優勢が更に遠退くのを感じた。

帝国でも自動小銃や迷彩に関する研究は行われているが、実用化には殆ど至っていない。

先進的な技術にナグアノは言葉が出ず、ため息ばかりを吐いていた。

 

 

 

「もう………何が来ても驚かんぞ」

 

 

 

最早、諦めに近い感情を抱きつつ、ムー軍に関する資料を読み終えると、次に日本の陸海空自衛隊に関する資料に目を通す。

 

 

「なんだこれは…………日本はムーですら凌駕しているというのか!?」

 

 

彼は以前に紀伊型戦艦に関する資料を読んでおり、日本の軍事力についてはある程度理解しているつもりではあったが、精度が向上した新情報に腹痛がしてきた。

 

 

「レイフォル戦で自衛隊に被害が殆ど無かったという情報は信じざる得ないな。特にこの10式戦車って奴はなんなんだ?何の冗談なんだよ」

 

 

非常に断片的ではあるが、陸上自衛隊の主力戦車である10式戦車の基本性能は最早、冗談としか言いようがなかった。

 

 

「時速70キロ、重量48トン、エンジン出力1200馬力、主砲は120ミリの戦車砲。射撃統制装置による行進間とスラロームしながらの射撃の際の命中率はほぼ99パーセント!?しかも部隊間で情報共有がリアルタイムで可能!?」

 

 

10式戦車の能力を前に、先程のラ・シャルマンや帝国陸軍の如何なる戦車は足元にも及ばない。以前に聞かされた陸軍第4師団と第3師団が自衛隊と交戦し壊滅したという話に関して、いよいよ現実味を帯びてきた。

 

 

「我が国はムーはおろか、日本には手も足もでない………政府はどうするって言うんだよ!こんな兵器を運用している連中にまだ喧嘩売ろうってのかよ!!馬鹿げてる!非常に馬鹿げてる!」

 

 

ナグアノは誰もいない事を良いことに、大声で自分の素直な感想を叫びまくる。

 

 

「クソ!」

 

 

 

資料を机に叩き付けると、ナグアノはもう自分はどうなっても知らないぞと思いながら、上司のバミダルに提出する報告書を書き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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