キャンプ・イーストリバー沖にある無人島に設けられた訓練場の沖に展開していた、ムー海軍の新型空母ラ・カギーアの飛行甲板では、海上歩兵団の上陸前に行われる航空攻撃に備えて出撃予定の戦闘機と攻撃機が発進態勢に入っていた。
ミッドウェイ級空母と同等の性能を持つラ・カギーアには近代空母のようなアングルドデッキが採用されており、甲板上ではスチームカタパルトから出る水蒸気に覆われながらラ・カギーアに配属されている海軍空母航空団所属のマリンⅡとアタック・マリンを甲板作業員達は広い甲板上で格納庫からエレベーターを使って引き上げられた機体を発艦位置にまで誘導していき、最初に発艦するマリンⅡの主脚をカタパルトに固定し発艦準備を終える。
『各部オールグリーン、発艦準備完了』
『了解、発艦を許可する。10秒後に射出する』
『了解』
航空管制室からの指示に従いマリンⅡのパイロット達はエンジンの出力を最大に上げ、カタパルト要員が射出ボタンに指を掛ける。
『5、4、3、2、1、0!』
カウントの後、ボタンが押されるとカタパルトが作動し、マリンⅡを一気に時速250キロに加速させる。甲板から叩き出されるように飛び上がっていくマリンⅡを見て、甲板作業員達は待機していた次の機体の発艦準備に入った。
隣を航行していたラ・カーガからも、マリンⅡが次々と艦隊直掩任務のため発艦していく。
両空母から飛び立った航空部隊は二手に分かれ、爆装したアタック・マリンと護衛のマリンⅡの飛行隊は海上歩兵団が上陸予定の島を目指す。
『全機に告ぐ!間も無く目標だ!爆撃隊は高度を下げて侵入!』
アタック・マリンで編成された海軍第4戦闘爆撃飛行隊は、島からの対空砲火を避けるため高度を下げる。無論これは訓練のため実弾は飛んではこないが、訓練とはいえ実戦を想定した訓練のため基本的な行動はしなければならない。
大量の爆弾を抱えているアタック・マリンは低速で海面スレスレの低空飛行を維持しつつ、島へと接近する。
『爆撃隊、高度3000まで上昇!』
爆撃隊はその場で上昇し高度3000まで上昇し、島の真上に到達すると、今度は機首を真下に向けて急降下を開始した。
主翼のエアブレーキが開き、速度が下がっていく中、パイロットはGに耐えながら照準器を使って上陸地点にある目標を狙う。
「投下!」
左右主翼下のパイロンから合計12発の爆弾が投下された。同時に操縦桿を手前に引き、機体を急上昇させる。
「どうだ?」
キャノピーのバックミラーに目を向けると、爆弾を投下し終えた他の機体と上陸地点から多数の爆発が起こっているのが見えた。
「やった!成功だ!」
攻撃隊は攻撃成功の合図を送った。
「司令、攻撃隊より攻撃成功の報告です!」
ニューオリンズのウェルドック内の指揮型AAV7の車内で、報告を受けるヴァンデクリフト。
「よし!作戦を開始する!」
ウェルドックのドアが開かれ、ドック内に海水が雪崩れ込んでくると、待機していたAAV7の車体に海水が飛び掛かる。
『1号車、前進!』
『2号車、前進!』
先頭に居たAAV7が2両左右に並んで前進し、ドックから海上に出ると車体後部のウォータージェットが動き出し、水上航行を開始する。
後続の車両も次々とドックから海上へ出ると、島へ向けて進み始める。
波に煽られて揺れるAAV7の兵員室内では海上歩兵団の兵士と、指導役の合衆国海兵隊の隊員2名が搭乗しており、海兵隊員は海上歩兵団の能力を判定する判定官の任務を担っている。既に海上歩兵団の兵士達はニューオリンズ出発前から判定官達からの判定を受けており、緊張した面持ちで自身の銃を手にしている。
「いよいよか」
「あぁ……この2年の努力を試す時が来たんだ」
海上歩兵団の兵士達はこの2年間、合衆国と日本に留学し海兵隊と水陸機動団の双方で水陸両用作戦部隊としての基礎技術と高度な訓練を受けている。
2年間もの間、双方の部隊と共に寝食を共に、専用の訓練施設で基本的な陸上戦闘訓練、市街地戦闘訓練、隠密偵察訓練、射撃訓練、車両を使った訓練、緊急時の対応等の必要な訓練を積み重ねており、脱落者も大勢居た中で最後まで残った彼らは屈強な兵士に様変わりしている。
「上陸まであと1分!」
AAV7の車長がそう告げると彼らは手にしている装備と銃火器の最終点検と上陸のための準備を行う。
先頭のAAV7が浅瀬に差し掛かり、履帯が浅瀬に接触するとウォータージェットが止まり、AAV7は浅瀬を走行しながら砂浜へと上がる。
そして砂浜に上がったと同時に煙幕を展開し停止、兵員室のランプドアが開いた。
「行け!GO!GO!GO!GO!GO!」
ドアが開ききったと同時に海上歩兵団の兵士達は一斉に飛び降り、その場で伏せながら左右に展開していく。
「分隊前進!」
分隊は伏せた状態で、砂まみれになりながら前進を開始する。
すると、何処からともなくピッピッピッと電子音が聞こえてきた。
「やられた!」
「俺もだ!」
電子音が響くと同時に彼らは次々と銃を捨てて、その場で動きを止める。
この電子音の正体は、彼らが着ている戦闘防弾衣に装着されている交戦装置、所謂バトラーと呼ばれる、実弾を使わない訓練装置が発する音である。
これは相手側の銃に装着されている電波照射機から放たれる銃弾を模した電波を、戦闘防弾衣の受信装置が受信し撃破または負傷判定を下すのである。
今、電波を飛ばしてきたのは敵役の合衆国陸軍の兵士達で、彼等が手にしているM16の銃口には電波照射装置が取り付けられている。
「応戦!機関銃!」
海上歩兵団は訓練通り、ガエタン製7・62ミリ軽機関銃を装備した各分隊の軽機関銃手が直ぐ様伏せ撃ちの態勢で射撃を開始した。
無論これにもバトラーが装備され、実弾の代わりに電波が放たれており、敵陣地側からも電子音が聞こえてくる。
「擲弾手、撃て!」
M79グレネードランチャーを手にした擲弾手がランチャーに訓練用の着色ガス弾を装填、曲射で敵陣地に向けて発射した。
すると、敵陣地側から青い煙が漂ってきた。これは発射した擲弾が爆発したという想定である。
「分隊前進!」
分隊はそのまま前進を開始し、見事に敵陣地の制圧と橋頭堡の確保に成功した。
「司令、上陸部隊が敵陣地を占領したとの事です!」
「よし!今までの訓練の成果が出てきたな!」
ヴァンデクリフトはまずは部隊が上陸に成功した事を喜んだ。
そして此処からが、訓練の本場であると己を鼓舞する。
続く