上陸に成功した海上歩兵団は、上陸地点を中心に橋頭堡を築き上げていた。
沖に居る新生合衆国海軍所属のホイットビー・アイランド級揚陸艦『アシュランド』からはLCACが海上歩兵団のラ・シャルマンと43式装甲車、トラック、武器弾薬をピストンで砂浜に揚陸させていく。
その側には前線指揮所が設けられており、ヴァンデクリフト以下の幹部達がやって来る。
「司令、入られます」
指揮型AAV7から降りてきたヴァンデクリフトと海上歩兵団の幹部達は指揮所へと入った。
簡易テントで作られた指揮所内には、多数の無線機、黒板、地図や作戦書が広げられた長机があり、急造とはいえ指揮所としては立派なものである。
ヴァンデクリフト達は宛がわれた自身の椅子に座ると、直ぐ様、報告を受ける。
「我が隊は上陸地点を中心に橋頭堡の確保に成功し、一帯の確保に成功しています。現在、周辺を工兵隊が防衛陣地を急ピッチで構築し後1時間程での完成を予定しています。構築完了の後に敵側のゲリラ攻撃に備え、防衛部隊を配置し備えます」
「敵側の様子は?」
「偵察隊からの報告では、島の奥に後退した模様で、接敵したとの連絡はありません」
「油断するな。相手は元の世界では最強と呼ばれている合衆国海兵隊だ。我々の動きは既に読まれていると思え。もしかしたらゲリラ攻撃による各個撃破の戦術をとってくるやもしれんぞ」
「了解」
ヴァンデクリフトは海兵隊創設に当たって様々な戦術研究を行っており、地球世界に於ける近代戦争の歴史に関しても頭の中に入っている。
その中で彼が最も恐れているのは、ベトナム戦争のようなゲリラ戦による戦闘の長期化と疲弊であった。
海兵隊のような遠征部隊は本国からの補給があるとはいえ、ゲリラ戦のような泥沼のように戦闘が長期化したとなれば物資の消費は必然的に増し、本国から遠く離れた場所での戦闘の場合、補給線が伸びるが、その補給線も常に安定しているとは限らない。
補給線の維持安定が絶対的と言うのであれば話は別であるが、万が一にも補給線の維持が困難な状況やそう言った事態になれば物資の供給量は減り、部隊はたちまち戦闘行動が制限される事になる。
ベトナム戦争でもアメリカ軍はゲリラ戦により多大な犠牲と損害を負い、20年近く続いたベトナムから撤退する事となり、事実上の敗北という結果となってしまった過去がある。
その戦訓を知っているヴァンデクリフトは、ゲリラ戦に持ち込まれる前に決着をつけるための、短期決戦を選択し、海上歩兵団が得意とする機動力を重視した戦術を執っていた
「兎に角、偵察は入念に。物資と車両の揚陸を急がせろ。予定時間に直ぐ動けるようにな」
「了解」
その頃、前線偵察に出ている海上歩兵団偵察中隊は部隊を4つに分け、敵が後退していった島の南へ向けて広い範囲の偵察を行っていた。
各偵察隊に配備されている42式装甲車を先頭に、配備されたばかりの新型装輪装甲車『44式軽装甲車』と42式小型機動車が森の中を進んでいる。
42式装甲車の車体前面には障害物を退けるためのドーザーが設けられており、草や木々をなぎ倒し、後続の車両のための道を拓いている。
「これじゃ、見つけるのに苦労しそうだな」
第1偵察分隊の分隊長は指揮車両の42式の車内でそう呟く。
先頭の装甲車が道を切り開いているとはいえ、周囲の視界は悪く、何処に敵が潜んでいるか分からない。
その時……
ピィィィィィィィ
「何だ!?」
「敵襲!」
交戦装置の電子音が鳴り響き、偵察隊は戦闘態勢に入る。
周囲からはスピーカーを介して発砲音を模擬した音が鳴り響き、偵察隊の兵は次々と戦死判定を受ける。
「全周警戒!」
「あ!やられた!」
「俺もだ!」
電子音が鳴り響く中、発砲音がした方向に向けて射撃を行うが、何処に隠れているのか分からない状況では対処の仕様がなかった。
「通信兵!」
「はい!」
「本部に増援要請連絡!」
「了解!」
通信兵が上陸部隊の本部に連絡しようとした瞬間、通信兵のヘルメットの交戦装置から電子音が鳴り響いた。これは頭を撃ち抜かれ、戦死と判定された証拠である。
「スナイパーだ!スナイパーがいるぞ!注意しろ!」
分隊長は戦死判定を受けた通信兵から無線機を受け取ると、車両の下に隠れながら本部に報告を入れる。
「こちら第1偵察分隊!敵襲を受けた!至急増援を要請する!」
続く