日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第13話

海軍基地壊滅と、首都の防空戦力を失ったロウリア軍の目線は完全に地上へと向けられていた。

軍の指揮を執る『パタジン』将軍は、敵が正面から攻めてくると読んで、首都の東にあるビールズと呼ばれる町に伏兵を置いて、侵攻してくる敵の側面を突いて相手を混乱させようと画策する。

 

 

彼から説明を受けていたハークはパタジンに質問を投げ掛ける。

 

 

「パタジンよ、40万の諸侯はどうなっておる?」

 

「再召集には応じず、傍観を決め込んでおります」

 

「では彼らを動かせ。最早手段は問わん」

 

「はい」

 

 

 

ハークは後の事をパタジンに任せると、自室に籠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パタジンの命令によりロウリア軍は敵がビールズに向かってくると読んでビールズ近郊に軍を集結させ、侵攻してくる敵を待ち受けた。

 

 

 

 

だが、第7師団はパタジンとロウリア軍の予想に反した行動を取っていた。

 

 

 

『敵首都を確認』

 

 

 

夜明け前の薄明かるい光に厚い霧が立ち込め視界が悪い中、広い荒野の中に作られた首都ジン・ハークの正面から、第7師団第71戦車連隊が接近していた。前衛に10式戦車、後衛に90式戦車が展開しており、薄暗い中をライトを点灯させる事なく赤外線カメラ映像を頼りに前進を続けている。

 

 

 

 

「囮とはいえ、この距離にまで敵の本拠地に近づくってのはかなりのストレスだな」

 

「現代戦ではまず有り得ない距離ですからね」

 

 

 

82式指揮通信車に乗っていた大内田は霧の切れ目から見える敵首都を見る。車内に戻ると、机の上に置かれたノートPCに表示されるジン・ハークの地図を見ながら最初の攻撃目標を定める。

 

 

 

「特科に攻撃を指示」

 

「了解」

 

 

指揮通信車の無線機を通じて、後方に控えている特科連隊に攻撃指示が出されると同時に、99式の長い砲身が上を向いて曲射砲撃の態勢に入った。

 

 

「師団長、攻撃用意よし」

 

「そのまま待機、戦車隊をギリギリまで接近させろ」

 

 

 

戦車隊の乗員達は上空の無人偵察機と赤外線カメラを頼りに霧の中をエンジン出力を絞り低速で接近し徐々に距離を詰めていく。

 

 

 

「全車停止」

 

 

 

連隊はその場で停止。エンジンも切られ辺りは完全な静粛に包まれた。

 

 

 

「師団長、間も無く空自による電波妨害が始まります」

 

「敵の通信装置機に効果はあるのか?」

 

「実験でも充分妨害は可能との事なので、心配は無いかと」

 

 

 

 

 

大内田達が展開している第7師団より遥か上空、灰色迷彩塗装が施された航空自衛隊所属のEC-1電子戦訓練機が飛行していた。

本来は電子戦訓練用に使用されており、1機しかない貴重な機体だが、防衛装備庁が新世界にて多用されている通信手段である魔導通信装置の研究で電子戦システムが魔導通信装置に対しても有効であるとの実験結果を示し、戦術研究とデータ収集を兼ねて本来想定していない実戦に投入されていたのである。

 

 

 

「時間です」

 

「よし。EA準備」

 

 

 

機内に設けられたコンピューター室で隊員達が、搭載されている電子戦装置の電源を入れて、電波妨害の準備を始める。

 

 

「出力最大に設定、EA用意よし」

 

「秒読み5、4、3、2、1、今っ!」

 

 

 

電子戦装置に電源が入りECMが起動すると、機体各部のアンテナフェアリングから強力な妨害電波が広範囲に照射され、その効果は第7師団の標的に指定された城壁東塔内にて現れ始めた。

 

 

 

「どうだ?」

 

「この霧だ。深くて何も見えないよ…………ん?」

 

「どうした?」

 

 

 

見張りの一人が単眼鏡で、霧の中に見える複数の黒い物体を確認した。

 

 

「何だ?」

 

 

単眼鏡の倍率を調節し物体に焦点を当てる。

 

 

 

「あれは……………」

 

 

 

彼は直感的に敵であると判断した。

そして、敵の出現に見張りは慌てた様子で通信員に指示を出す。

 

 

 

「敵だ!敵襲!直ぐに防衛騎士団に魔信を入れろ!」

 

 

 

通信員は直ぐに魔信を起動させる。

 

 

「こちら東塔!東門正面に敵集団を確認した!至急指示を乞う!」

 

 

しかしヘッドセットから聞こえてくるのは酷い雑音ばかりで返答は返ってこない。

 

 

「繰り返す、こちら東塔!東門正面に敵集団を確認した!至急指示を乞う!」

 

 

何度も報告を行うが強力な電波妨害で送信も受信も機能しないため酷い雑音しか聞こえてこない。

 

 

「駄目だ!雑音しか聞こえない!」

 

「こんな時に故障か!直ぐに伝令を出せ!」

 

 

伝令兵が出発した直後……

 

 

『だんちゃーく……今っ!』

 

 

通信室と塔が大爆発を起こして吹き飛んだ。特科の99式から放たれた155ミリ榴弾が直撃し塔内に居た見張り員と通信員は跡形もなかった。

 

 

 

「何だ!この音は!」

 

 

 

パタジンは突然聞こえてきた轟音に目を覚まし、自宅の2階から城門を見る。

 

 

 

「馬鹿な……敵はビールズを迂回して広い荒野を突き抜けてしてきたと言うのか?」

 

 

 

第7師団による予想外の展開速度にパタジンの元に部下が慌てた様子で報告にやって来た。

 

 

 

「将軍、敵襲です!正門の塔が魔導攻撃で破壊されました。敵は正門から4キロ地点に展開中!」

 

「見張りは何をしていたのだ!直ちに当直の騎兵隊を迎撃に出せ!」

 

「それが、先程の攻撃直前から各部隊の魔信機が麻痺してしまい、命令伝達に支障をきたしています」

 

「何だと!?原因は?」

 

「現時点では分かりませんが、敵が攻撃する直前に起きたので偶然では無いかと。おそらく何らかの方法を使って魔信が無力化されたものかと思われます」

 

「ならば伝令を出せ!騎兵隊には迎撃と威力偵察を指示せよ!急げ!」

 

「はっ!」

 

 

 

パタジンの命令は伝令兵によって直ちに騎兵隊に伝達され、約400騎の騎兵隊が正門より強襲偵察を兼ねた迎撃戦闘に出た。

 

 

 

 

『09より01、正門より敵襲!』

 

『迎撃する!攻撃始め!』

 

 

 

各戦車は騎兵隊に向けて攻撃を開始した。

10式と90式のM2重機関銃、主砲同軸の74式車載機関銃の射撃は向かってくる騎兵隊に鉄の雨を浴びせる。

 

 

「何なんだこれは!?」

 

「光弾なのか!?後退!後退!」

 

 

突然浴びせられた見たことの無い攻撃に騎兵隊は戦車隊に近付く前に退却を余儀なくされ、攻撃から命からがら少数の騎兵は正門の奥へと引き返していく。

 

 

 

「敵、後退していきます!」

 

「攻撃止め!」

 

 

 

無駄弾を控えるため戦車隊は敵の撤退を確認した後、射撃を止め、砲塔を正門に向けたままその場に留まる。

 

 

 

 

何とか逃げ戻った騎兵隊の隊長がパタジンに報告する。

 

 

 

「将軍、敵は少数ですが、礫のような光弾を信じられない速度で放ってきました……」

 

「そうか。ご苦労だ……直ちに手当てを受けるのだ」

 

 

 

パタジンは彼を下がらせて、次の策を講じる。

 

 

 

「敵の光弾の貫通力が高い。ならば次は防御力重視の重装歩兵を向かわせる」

 

 

 

今度は、分厚い鋼鉄で出来た鎧と盾で武装した重装歩兵を正面に出し敵の視線を引き付けてから、その他の戦力を相手の死角に回り込ませる作戦を取る。

 

 

 

 

「突撃ぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

 

 

 

正門から重装歩兵達が姿を表す。

 

 

 

『05より01、今度は違うのが出てきた。重装歩兵かと思われる』

 

「防御力重視の戦力を囮に出したか」

 

 

 

大内田は無人機からの映像で重装歩兵を囮にして別動隊が戦車隊を包囲しようとしていると、あらかじめ想定されていた敵の動きに対して次なる指示を出す。

 

 

「作戦想定3を発動。ヘリに支援要請」

 

 

沖に待機している護衛艦ひゅうがのヘリ部隊に出撃命令を出し、出撃準備を完了していたひゅうがの甲板からAH-1Sコブラ、AH-64Dアパッチが飛び立つ。

 

 

 

 

戦車隊は向かってくる重装歩兵に向けて再度攻撃を開始する。

 

 

「グァバ!」

 

「ギャッ!」

 

 

防御力重視と言われている重装歩兵の鎧を銃弾は呆気なく貫通し次々と倒されていく。

 

 

 

「な、何だアイツは!」

 

 

 

その中で一人だけ、重厚な盾を構えた一人の重装歩兵が立っていた。

その盾は機銃弾を悉く弾き飛ばし、地面に根を生やしたかのように動かない。

 

 

「うぉぉぉぉ!!!彼に負けるなぁ!突撃ぃぃぃぃぃ!」

 

 

その重装歩兵を目撃した別の重装歩兵が声を張り上げて全体を鼓舞、勇気づけられたのか盾とランスを構えて戦車隊に向けて突撃を慣行してくる。

 

 

 

『07より01!敵集団接近、機銃攻撃効果なし!』

 

『こちら04、敵騎兵集団確認!向かってくる!』

 

『09、こちらでも敵騎兵集確認!』

 

「やっぱり包囲する気だな。第3小隊、砲撃を許可する!第2小隊と第4小隊はヘリが到着するまで機銃と砲撃で足止めせよ!」

 

 

 

中隊長の指示で重装歩兵と対峙していた戦車小隊は前進し砲撃態勢に入る。

 

 

「目標12時の敵集団!距離200、弾種榴弾!」

 

 

 

小隊長車に乗り込む小隊長はタッチパネルを使い小隊の車両に目標の割り振りをリアルタイムで指示を出し、砲手がコントロールスティックで自動装填装置を作動させ44口径120ミリ戦車砲に砲弾を装填する。

 

 

「小隊照準よし!撃て!」

 

 

前進する10式戦車小隊が一斉に砲撃、砲弾は敵重装歩兵の隊列へと殺到し爆発を起こす。

 

 

「次弾装填、続けて撃て!」

 

 

再び一斉砲撃が重装歩兵に見舞われ、最初の砲撃でほぼ全滅していた重装歩兵にトドメを刺した。

 

 

 

 

 

「小隊各車!目標1時方向、敵騎兵集団!弾種榴弾、撃て!」

 

 

挟撃を仕掛けてきた敵騎兵隊に向けて、10式が戦車砲による砲撃を仕掛ける。

 

 

「散開!」

 

 

砲弾が敵騎兵の目先に着弾した直後、敵は集団体系から一斉に散開を開始する。

 

 

 

『敵騎兵散開!』

 

「慌てるな!機銃を使え!」

 

 

 

散開した敵に戦車砲は効果は無いため、再び機銃による射撃に切り替えた。後衛の90式も加わりヘリ部隊が到着するまでの時間を稼ぐ。

 

 

「早く来てくれよ……」

 

 

 

 

護衛艦ひゅうがから飛び立った第4対戦車ヘリコプター隊のアパッチ、コブラは編隊を組んで現場に急行しており、その様子はジン・ハークにある飛竜基地からも見えていた。

 

 

 

「北の方角より敵の飛行物体が向かってきています!」

 

「迎撃は?」

 

「駄目です。我々にもう航空戦力は残されていません。迎撃は不可能かと」

 

 

 

防空司令部では誰もが意気消沈するが、一人の竜騎士がやってきた。

 

 

「君は?」

 

「第2竜騎士団所属のターケナインです。私に行かせてください」

 

「行かせろと言われても、敵の飛行物体は10騎は居るぞ」

 

「大丈夫です。敵は既に我々が航空戦力を失ったと思っています。その油断につけ込み、奇襲を仕掛ければ少なくとも撤退には追い込めるかと」

 

「ふむ………分かった!やってみてくれ!」

 

「はっ!」

 

 

 

ターケナインは愛騎を操り出撃した。

彼は航空自衛隊のイーグルの時のように、ミサイル攻撃を警戒し、敵の攻撃が遠距離から目標を探知して攻撃してくると考え、障害物が多い超低空飛行で相手の真下から仕掛ける作戦を取る。

 

 

 

 

「来た!」

 

 

 

 

地面スレスレで待機していたターケナインは第4対戦車ヘリコプター隊を目視で捉えると、手綱を使って相棒を真上に向けて一気に上昇させた。

 

 

 

「あのデカイ奴を狙う!」

 

 

 

ターケナインは編隊の真ん中を飛んでいたアパッチに狙いをつける。愛騎は口内に炎を貯めて、導力火炎弾の発射態勢に入った。

 

 

「堕ちろ!」

 

 

合図と共に、導力火炎弾が放たれた。

 

 

 

「やった!」

 

 

 

ターケナインは火炎弾が当たる物と思った。

 

 

 

「何っ!?」

 

 

 

だがそのアパッチは、直撃寸前で機体をターンさせギリギリで避けてしまった。

 

 

「尻尾を振って避けたか!」

 

 

攻撃を受けたそのアパッチを操縦する大塚1尉と伊藤2曹は突然の奇襲に驚いた。

 

 

 

「危なかったな」

 

「空自の撃ち漏らしか。1匹だけとは言え厄介だぞ」

 

 

偶然にも伊藤がガンカメラで真下から突き上げてくるターケナインの姿を見つけ、咄嗟に大塚が操縦桿を操作したお陰で直撃は免れたが敵に航空戦力が残っていた事に、脅威を感じる。

 

 

 

 

「スカイリーダー、こちらジェロニモ。奴は自分らが引き受けます。行ってください」

 

『ジェロニモ、単独じゃ危険だ!』

 

「アイツは危険です!放っておくと隊に損害が出ます!隊から引き離すからその間に」

 

『しかし!』

 

「自分らが載ってるのは最強ヘリのアパッチです。火炎放射程度なら耐えられますし、ヘリにしか出来ない動きもできます!許可願います!」

 

『……………………許可する!すまんが頼む』

 

「了解!」

 

 

 

大塚は隊から離れ、ターケナインの注意を引き付ける。

 

 

 

「さぁ!お前の相手はこっちだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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