海上歩兵団上陸から数時間が経過し、島一帯の制海権と制空権は確保され、上陸した地上部隊もゲリラ戦で損害を出しつつも島の制圧に向けて動き出していた。
最初の偵察分隊が受けたゲリラ攻撃により、偵察分隊は大規模な損害判定を受けたものの、直ぐに態勢を建て直し、後方の本隊は上空支援を受けながら前進を開始した。
今回の演習の最終目的、は島の反対側の平地にある市街地を模した演習場一帯を制圧する事が任務のため、海上歩兵団は市街地に向けて一直線に前進する。
敵役の合衆国陸軍による散発的なゲリラ攻撃を受け、損害を負いつつも海上歩兵団は島の反対側へ向けて前進を続ける。
「第1歩兵連隊、敵と交戦中。航空支援要請あり」
「第2歩兵連隊は?」
「現在、散発的な襲撃を受け損害を負いつつも前進しています」
「各隊は連携と連絡を密にせよ。足並みが乱れるようなら多少進撃速度の低下はやむを得ん」
本隊の後方から続く、海上歩兵団本部中隊に配備されている42式装甲車改造の43式指揮通信車の車内では、ヴァンデクリフト達が指揮を執っている。
狭い兵員室には無線機が多数あり、車体上部に設置された受信用アンテナが各部隊からの通信を受け、送信用アンテナが各部隊へと通信を送る。
「少将、現在の各部隊の現在地です」
参謀が小さいテーブルの上に地図を広げ、ペンで各部隊の現在位置を記していく。
「此処までは予定通りだ。各隊の損害率は?」
「現在15パーセント程です」
「15パーセントか………どう思われますかな?」
ヴァンデクリフトはアドバイザーとして同行していた合衆国海兵隊の幹部に質問する。
「そうですね。此処までは我々の概ね予想通りと言えるでしょう。むしろこの程度の損害を受けつつも、この前進速度は文句の付けようはありません」
「そうですか。この状態でなら島の占領は明日にでも終了しそうですな」
「しかしこれは飽くまで演習であり、実戦では状況は大きく変わってきます。決して油断しないように」
損害を受けながらも、持ち前の機動力と沖に居る空母からの航空支援により海上歩兵団本隊の前進速度は早かった。海上歩兵団には機動力に優れた車両が多くあり、その中でも43式軽装甲車の活躍が大きく、装輪式車両の利点である高い機動力と銃弾を防げる十分な装甲を生かし、歩兵部隊と共同でゲリラ部隊を制圧しつつ、徐々に敵役達を島の反対側へと押し上げていく。
そしてその日の夕方には、海上歩兵団は島の反対側にある演習場を見下ろせる丘へと到達した。
「予想よりも早かったな」
本隊と合流したヴァンデクリフトは、双眼鏡で演習場を見回す。
開けた場所にある演習場に設けられた市街地を模した大規模な訓練施設があり、民家や商業施設を再現した様々な建物が複雑に並び、本格的な訓練施設として力の入った作りをしていた。
「此処からが正念場だな」
「えぇ。市街戦となれば恐らく今まで以上の損害を受ける事になるでしょう。レイフォルの時の陸軍がそうだったように」
「だが我々は敵に真正面から挑む、殴り込み部隊だ。損害はある程度覚悟しなければならん」
ヴァンデクリフトがこの市街地戦が演習の正念場である事を理解している。
市街地戦ともなれば、平地で戦うよりも奇襲による損害率は遥かに高くなる上に、今回の演習では本格的な市街地戦を想定して街の住人として非戦闘員役も多数参加しており、非戦闘員に対する損害も今回の演習結果に大きく影響する。非戦闘員に注意して戦えるかが肝になる。
「さて、明日は忙しくなるぞ。今のうちに負傷者の後送と休息だ」
「了解」
海上歩兵団本隊はその場に陣地を形成し、明日の市街地戦に備えて一部の部隊を除き休息に入った。
続く
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