午前0時を回り、海上歩兵団陣地では、本隊が休息をとっていた。
敵側の夜襲を警戒して電気や火等の光を放つ物は一切消され、本隊の兵士達も音を極力立てないよう、ライフル等の装備品同士がぶつからないよう徹底して工夫していた。
陣地の周りも、見張りを数十メートルに1人から2人ずつ立たせた上で、有刺鉄線と簡易フェンスに守られている。
普通なら、これだけの防御力を持っている陣地に夜襲を仕掛けてこようとする者は居ない。
しかしそれは普通ならの話であり、それを実行しようとする者達が、静かに佇んでいる。
「お手本のような陣地構成だな」
陣地から西に位置する小高い山の中腹からその様子を伺っていた多数の影の姿があった。
闇に紛れるように辺りの景色と同化し、完全装備の彼らの正体は元第3海兵遠征軍第5武装偵察中隊、所謂フォースリーコンと呼ばれるアメリカ海兵隊の特殊作戦能力を持つ部隊だった。
現在は新生合衆国海兵隊特殊作戦群に再編された彼らの任務は元の世界と同じ、偵察任務と情報収集、監視であり、今回彼らは敵戦力の偵察と監視を行うグリーンオペレーションを実行している。
「陸軍の連中はどうだ?」
「既に攻撃準備は終わってる。何時でも仕掛けられる」
「分かった。そろそろだな」
腕時計を見ると、針は午前0時59分5秒を刺していた。
「5、4、3、2、1、0、it's showtime!」
時計の針が午前1時を刺したと同時に、何処からともなくヘリコプターのローター音が聞こえてきた。
ナイトビジョン越しに、東方向の空に4機のAH-1Zが編隊を組みながら超低空飛行をしながら近づいてきているのが見えた。
「連中、流石に目が覚めたみたいだ」
誰かがそう呟く。言葉の通り、海上歩兵団の陣地は突然聞こえてきたヘリコプターの音に気がついたのか、数人の伝令兵が奇襲を知らせる笛を鳴らし、それを聞いた兵士達がテントから完全装備で飛び出してきた。
流石に海兵隊で猛訓練を受けただけあり、彼らの動きは早く、予め用意していた対空機関砲を用意し、ヘリコプターが向かってくる方向に砲身を向け、何時でも撃てるように備えた。
その直後、陣地内のあちこちから撃破判定を示すブザー音が立て続けに鳴り響き、車両からも撃破を意味する白煙が発煙装置より吹き出してきた。
「撃て!撃て!」
対空機関砲によるヘリコプターへの対空射撃が始まった。無論、機関砲に実弾は装填されておらず、機関砲と連接している照準用レーダーを使った模擬射撃によるものであった。
彼らの注意がヘリに向けられたタイミングで、想定外の事態が発生した。
ブゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!
突如として、陣地の東側にあるジャングルからエンジン音が響き渡った直後、草木を掻き分けながら彼らの真後ろより小型バギー4台飛び出してきた。
「うぉっ!!」
「敵襲!」
背後を突かれる形となった海上歩兵団に襲い掛かったのは、有刺鉄線を突き破って突入してきたポラリス社製MRZR4に乗り込んだ合衆国陸軍特殊部隊グリーンベレー1個小隊だった。
陸軍の精鋭である彼らは、バギーを操りながら陣地内を脱兎の如く駆け回る。
「応戦!」
海上歩兵団の兵士らは彼らに銃口を向けて射撃するが、夜間で視界が悪く、しかも素早く動き回る彼らに中々照準が定まらない。それどころか、バギーに乗っているグリーンベレーの隊員の正確な射撃により逆に戦死か負傷判定を受けてしまう。
ヘリコプターとグリーンベレーの2つの敵を相手取る事になった海上歩兵団は混乱に陥りながらも懸命に応戦するが、僅か数分程の交戦でグリーンベレーとヘリコプターは脱兎の如く去っていき、戦闘は終了した。
「被害報告と死傷者の集計急げ!」
「了解!」
夜中に叩き起こされたヴァンデクリフトは情報収集に勤める。
「完璧な筈の警戒配置を易々と突破してくるとはな……流石は世界最強だった……いや、今でも最強なだけの事はあるな」
こうなる事を想定し、夜襲に備えた警戒配置を指示していたにも関わらず、それをあっさりと破ったグリーンベレーの力量にヴァンデクリフトは恐れおののいた。
完全にしてやられてしまった形となった海上歩兵団の損害は昼間の戦闘程では無いが、士気に大きな影響が懸念される。
「作戦を早めた方がいいか………至急、各部隊の指揮官を召集!」
続く
皆様からのご意見とご感想お待ちしております。