町の入り口付近に設置された本陣から移動してきた歩兵団司令部では、工兵隊が近くにあった開けた空き地に巨大なタイルを敷き詰めていた。
「作業は後10分で終わらせろ!急げ!」
工兵隊は急かされながら、地面にタイルを大急ぎで敷き詰めていく。
既に9割程が完成しており、タイルの上には滑り止め用ゴムマットが敷かれ、その上をペンキを携えた工兵がタイルの中心から巨大な円を描き、大きく円の中心にアルファベットのHの文字を描いた。
「作業完了!」
工兵達が作業を終えると、彼らの目の前に広がったのは、即席のヘリコプター離発着用ヘリパッドだった。
これはヘリコプターの導入に踏み切ったムー陸軍が編み出した即席のヘリポート建設システムであり、前線にへリポートを建設し即座にヘリコプターの運用が可能なようにと考案されたものである。
建設に掛かる時間は人が少ない場合で遅くて30分、人的余裕がある場合は早くて20分から10分と即応性が高いのが特徴である。
このシステムが実行されたのは今回の演習が初でありり、早速、システムの特徴である建設速度の早さが生かされたが、それなりの重量があるラ・ソチカーが実戦を想定した現状で果たして問題なく離発着できるかは誰にも分からなかった。
「来たぞ!」
建設を終えて直ぐに、ラ・カギーアが飛来したラ・ソチカー4機が編隊を組んでやって来た。
編隊の一番先頭を飛行していた1機が速度を落とし、ヘリパッド上でホバリングを開始し、ゆっくりと降りてくる。
『よし、そのままの態勢を維持しつつエンジンスロットルダウン』
キャビンドアが開かれ、中に居た機長がヘルメットインカム越しにパイロットに自身の機体の位置とヘリパッドの中心線の位置を伝える。
『よしよしよし、そのまま、そのまま………タッチダウン!』
ラ・ソチカーの車輪がヘリパッドに触れ、機体は一気にヘリパッドへ降り立ち、見事に着陸に成功した。
「よし!直ぐに燃料補給だ!」
着陸と同時に待機していた補給部隊の燃料補給車からの燃料補給が開始される。
「来たか」
前線司令部からヴァンデクリフト達がヘリポートへとやって来た。
ラ・ソチカーのメインローターが起こすダウンウォッシュに帽子を飛ばされそうになるが、手で押さえる。
「閣下!燃料補給、後5分で終了します!」
「分かった。ではこちらも乗り込みを開始する」
そう言うと、ヴァンデクリフトの背後に居た幹部の一人で、海上歩兵団副司令官『リーチーモンド・ターナー』少将は部下2人と共に無線機と地図を携えてラ・ソチカーに乗り込む。
「ターナー!よろしく頼むぞ!」
「了解しました!」
ヴァンデクリフトからの言葉にターナーは敬礼しながら応え、機内通信用ヘッドセットを装着する。
『テイクオフ!』
ターナーを乗せたラ・ソチカー1号機はヘリパッドから離れ、街中の前線へと飛び立った。
「さてと」
ターナーは機内で組み立てた小さなテーブルに町全体を写した地図を広げ、部隊交信用無線機を設置し、機内をちょっとした司令部に変えた。
「現状を教えてくれ」
「はい。現在、敵最終防衛ラインにて第1と第2の歩兵連隊、戦闘上陸連隊が足止めを受けている模様。場所は最終防衛ライン手前の市街地内で、突発的なゲリラ戦にて苦戦しているとの事です」
「やはり市街地でのゲリラ戦になると地の利がある向こう側が有利か……無線を繋いでくれ」
「了解」
ターナーは地上部隊との無線交信を開始する。
「こちらスカイアイ。地上の全部隊、現状報告」
彼の呼び掛けに地上部隊から立て続けに報告が入る。やって来た内容から地上部隊はかなり不利な状況に置かれている模様だった。
「了解した。これより地上部隊全部隊を空中から誘導する。地上部隊は我々の指示に従って動いてくれ」
続く
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